アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算発表を受けて株価が上昇した、テスラ、アメリカンエキスプレス、ビザほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算発表を受けて株価が上昇した、テスラ、アメリカンエキスプレス、ビザほか~

投資情報部 榮 聡

2023/01/30

先週は大手テクノロジー企業の決算に対する楽観、市場予想を上回る10-12月期GDP、決算発表を受けたテスラの大幅高などを受けてS&P500指数は200日移動平均線を明確に超えてきました。今週の株価材料として、山場を迎える10-12月期決算発表、FOMC(米連邦公開市場委員会)、米国の景気指標、などが注目されます。

今回は10-12月期の決算発表を受けて株価が上昇した銘柄から、テスラ(TSLA)アメリカン エキスプレス(AXP)ビザ A(V)ロッキード マーチン(LMT)ラスベガス サンズ(LVS)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(日足、3ヵ月)

これまで相場の頭を抑えていた200日移動平均線を明確に上抜けました。次に下押すときには、下値支持ラインとして機能すると期待できそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
一般消費財・サービス 6.4% 14.5% 1.6%
情報技術 4.1% 9.8% 5.0%
コミュニケーションサービス 3.3% 14.8% 11.1%
不動産 2.8% 9.2% 9.9%
金融 2.5% 5.8% 6.2%
S&P500 2.5% 6.0% 4.3%
資本財・サービス 2.1% 2.9% 6.9%
エネルギー 0.8% 4.2% 2.2%
素材 0.7% 7.3% 11.7%
生活必需品 0.4% -2.2% 0.0%
公益事業 -0.5% -2.3% 2.3%
ヘルスケア -0.9% -2.4% 0.0%
騰落率上位(5日) 騰落率
テスラ 33.3%
エヌビディア 14.2%
アメリカン・エキスプレス 13.7%
キャピタル・ワン・ファイナンシャル 12.9%
メタ・プラットフォームズ 8.9%
騰落率下位(5日) 騰落率
ネクステラ・エナジー -7.6%
コルゲート・パルモリーブ -5.1%
IBM -4.8%
3M -4.5%
メルク -4.1%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.5%、NYダウは1.8%の下落、ナスダック指数は4.3%の上昇でした。

先週は1/20(金)の株価上昇の流れ(直前の株価下落の行き過ぎに対する反動、ネットフリックスの決算を受けた株価上昇、タカ派とされるFRBウォラー理事が0.25%の利上げが妥当と示唆したことなどが背景)を引き継いで上昇基調が続きました。

週の前半は大手テクノロジー企業の決算発表を控えて人員削減などのニュースで悪い要素の織り込みは進んでいるとの楽観的な見方が台頭して、S&P500指数で4,000ポイントの節目を迎えての利食いにも押し目買いが入ったとみられます。

1/26(木)には10-12月期実質GDPが市場予想を上回って米国経済のリセッションは深刻なものにならないとの見方が広がり、S&P500指数で4,000ポイント前後の抵抗ラインを突破しました。また、テスラの決算が好感されて大幅な株価上昇となったことがテクノロジー企業の株価を刺激しました。1/27(金)はインテルの10-12月期決算および1-3月期の低調な売上見通しが足をひっぱったものの、相場上昇の流れは変わりませんでした。

業種指数では、GAFAMおよびテスラを含む「一般消費財・サービス」「情報技術」「コミュニケーションサービス」の上昇が大きくなる一方、ディフェンシブ業種は引き続き劣後しました。33.3%上昇して個別で上昇率トップのテスラ(TSLA)は「今週の5銘柄」で取り上げています。

経済指標では、10-12月期の実質GDP速報値が前期比年率2.9%増となり、市場予想の同2.6%増を上回って、相場上昇に寄与しました。ただし、在庫投資が2.9%のうち1.5%ポイント寄与しています。売上拡大を見越して「在庫に投資した」というよりは「商品が売れ残った」可能性があり、見かけほど内容はよくない点には注意が必要でしょう。

今週の米国株式市場

米国市場では、10-12月期決算の発表が進むにつれ、企業業績見通しが下方修正されることへの警戒が高まっています。一方、インフレピークアウトを織り込む動きが続いているため、これは相場を支える要因になると期待されます。今週は大手テクノロジー企業の決算発表を契機に相場が下げに転じる可能性を警戒しておくべきでしょう。

今週の株価材料として、山場を迎える10-12月期決算発表、FOMC(米連邦公開市場委員会)、米国の景気指標、などが注目されます。

今週はGAFAMのうち、アップル、アルファベット、メタプラットフォームズ、アマゾンドットコムの決算が発表され、10-12月期決算発表の山場を迎えます。いずれも業績見通しの下方修正が続いているため、警戒が必要と考えられます。このほか、AMD、エクソンモービル、ファイザー、スターバックスなども発表予定です。

FactSet社の集計によるS&P500指数採用銘柄の10-12月期EPS(発表済み企業の実績と今後発表する企業の予想の混合)は、1/27(金)に発表進捗率が29%の時点で、前年同期比5.0%減となっています。

FOMCでの利上げ幅について、FedWatchでは0.25%ポイントの確率が99.2%となっており(日本時間30日(月)午前9時)、サプライズの可能性は低そうです。市場は、「ターミナルレート(政策金利の最高到達点)」と今年中に利下げの可能性があるかについて、手がかりをさぐることになりそうです。

米国の景気指標では、企業景況感や雇用統計で米国経済の現状を見極めることになります。2/1(水)の1月ISM製造業景気指数(前月の48.4から48.0に悪化の予想)、2/3(金)の1月非農業部門雇用者数(前月比18.5万人増の予想)、1月平均時給(前年比4.3%増の予想、前月は同4.6%増)、米国の1月ISM非製造業景気指数(前月の49.6から50.5に改善の予想)、などが特に注目です。

経済指標では上記のほか、1/31(火)に中国の1月製造業MI(前月の47.0から50.0に改善の予想)、同非製造業PMI(前月の41.6から52.0に改善の予想)、ユーロ圏の10-12月期実質GDP(前年比1.7%増の予想、7-9月期は同2.3%増)、米国の1月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の108.3から109.0に改善の予想)、2/1(水)に米国の1月ADP雇用統計(前月比17万人増の予想)、2/2(木)に米国の12月製造業受注(前月比2.3%増の予想)などの発表が予定されています。 

         

今週の5銘柄

今回は先週10-12月期決算を発表した銘柄で、当日あるいは翌日(前日引け後に決算を発表した場合)の株価が上昇した銘柄から、テスラ(TSLA)、アメリカン エキスプレス(AXP)、ビザ A(V)、ロッキード マーチン(LMT)、ラスベガス サンズ(LVS)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表3 決算発表後に株価が上昇した銘柄(先週決算を発表したS&P500指数採用銘柄を対象に選定)

銘柄名(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
テスラ(TSLA) 1.1 6.1 37.2 40.6
アメリカン エキスプレス(AXP) -0.3 -6.6 16.7 -5.1
ビザ A(V) 2.8 8.8 11.9 20.4
ロッキード マーチン(LMT) 4.1 5.2 7.1 4.3
ラスベガス サンズ(LVS) -5.1 -123.5 10.8 13.6

注:※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(1/27)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートテスラ(TSLA)177.90ドル41.0

【マスクEOが需要に自信を示す】

・10-12月期決算は売上・EPSは市場予想を上回ったものの、自動車事業の粗利率とフリーキャッシュフローは予想を下回って、好悪まちまちでした。一方、マスクCEOは決算説明会で「投資家は需要に対する疑問を抱いているが、懸念を払拭したい。1月現在では過去最高水準の引合い、生産能力の2倍のオーダーがある。」「年初の値下げは当社の製品を求める一般顧客に手の届く価格にする必要性を踏まえたものでもある。」と発言して好感されました。

・2022年は、130万台を上回る出荷台数と営業利益率は前年比17%を達成しました。今後複数年にわたり年平均50%の成長を目指す従来計画に沿う形で増産を進め、2023年は約180万台の納車を見込みます。ピックアップトラック「サイバートラック」の組み立てをテキサス州オースティンの工場で年内に開始する計画です。

買付チャートアメリカン エキスプレス(AXP)172.31ドル17.5

【市場予想を上回る業績見通し】

・2023年12月期の業績見通しを売上が前年比15~17%増、EPSは同12~16%増相当の11.00~11.40ドルとしました。市場予想を大きく上回ったことから、1/27(金)の株価は10.5%の上昇となりました。2022年の新規カード獲得が12.5百万件に達し、顧客の利用頻度、顧客保持とも好調、かつ、プレミアム顧客が多いことを背景に信用指標も堅調と、事業モメンタムが強いことが背景にあるとみられます。

・7-9月決算はカード利用額が前年同期比12%増と好調で、売上はカード利用増に加えて金利収入の増加を受けて前年同期比17%増と拡大しました。一方、顧客サービスなどの費用が嵩んだことに加え、信用コストでは前年同期がプラスとなっていた反動もありEPSは同5%減となりました。ただ、一時要因による減益とみられます。事業の基調は堅調で、会社は1株当たり配当を0.52ドルから0.60ドルへ15%引き上げる意向です。

買付チャートビザ A(V)231.44ドル27.5

【世界的な旅行回復の恩恵を受ける】

・カード利用の回復が続いて増収増益、かつ、市場予想を上回る好決算となりました。カード利用額(為替変動の影響除外)は前年同期比で7%増で、このうちクロスボーダー取引額(同)は22%増と旅行の回復がけん引した形です。米国の個人消費はインフレ高進の影響とパンデミック時に積みあがった貯蓄がなくなることで、減速傾向が想定されます。一方、世界的な旅行需要の回復が継続することでクロスボーダー取引消費減速の影響をある程度カバーすると期待されます。

・同社の決算説明会資料によると、カード利用額の前年比伸び率は昨年中は月を追うごとに鈍化傾向にありましたが、23年1月1日~21日の伸び率は昨年10、11、12月の水準を上回っており、動向が注目されます。

買付チャートロッキード マーチン(LMT)459.60ドル17.2

【市場予想を上回る堅調な決算】

・10-12月期は売上・EPSとも市場予想を上回る堅調な決算でした。売上は、前年同期比7%増となった「エアロノーティクス」(戦闘機など)、「ロータリー&ミッションシステム」(ヘリコプターなど)で市場予想を上回りました。米国の防衛品の調達サイクルからみて業績が大きく伸びることはないものの、堅調な業績を達成することはできるとみられています。

・2022年末の受注残は1,500億ドルと前年比11%増と堅調でした。ロシアとウクライナの戦争が続いていることから、世界的に防衛費の拡大機運が高まっているため、受注の勢いがますのではないかとの期待が根強くあります。実際に直近でもNATO加盟国から戦闘機をウクライナに送りたいとの引き合いがあるため、同社は「F-16」戦闘機の生産を増やす意向を表明しています。

買付チャートラスベガス サンズ(LVS)58.92ドル37.3

【マカオ事業の回復が期待される】

・決算は市場予想を大幅に下回りましたが、決算発表翌日26日(木)の株価は6.1%の上昇となりました。中国のリオープンに対する市場の期待が強いと考えられます。同社は2022年2月にラスベガスの事業を売却したことで、マカオの「ベネチアン・マカオ」など5つの統合リゾート(IR)とシンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」が主力事業となっています。コロナ前2019年12月期のラスベガスを除く売上構成比は、マカオが66%、シンガポールが34%です。

・アナリストからは「マカオの不動産EBITDA(利払い・税金・償却前利益)の損失が予想よりも少なく、シンガポールではEBITDAの回復が続いている。マカオのロンドナーとシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズの両ホテルがフル稼働していない状況で、これだけの結果を出したことは心強い。フル稼働に戻ればさらなるEBITDA回復余地があることを示唆している」と前向きな評価が聞かれました。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ビザは2023年9月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
30(月) ・ユーロ圏景況感(1月)  
31(火) ・日本鉱工業生産(12月)
・中国製造業・非製造業PMI(1月)
・中国工業部門利益(12月)
・ユーロ圏実質GDP(10-12月期)
・米S&PコアロジックCS住宅価格(11月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(1月)
AMDファイザーエクソンモービルマクドナルド
キャタピラー、ゼネラルモーターズ
2月
1(水)
・米ADP雇用統計(1月)
・米ISM製造業景気指数(1月)
・米求人労働異動調査(12月)
・米FOMC政策金利
メタプラットフォームズアルトリアグループ
2(木) ・米チャレンジャー人員削減(1月)
・ECB主要政策金利
・米新規失業保険申請件数(1月28日に終わる週)
・米製造業受注(12月)
アップルアマゾンドットコムアルファベットメルク
スターバックス
、イーライリリィ、クアルコム
3(金) ・米雇用統計(1月)
・米ISM非製造業景気指数(1月)
 
6(月)   ズームインフォテクノロジーズ
7(火) ・米貿易統計(12月)
・米消費者信用残高(12月)
 
8(水)   ウォルトディズニー
9(木) ・日本工作機械受注(1月) アッヴィブリティッシュアメリカンタバコキャノピーグロース
ペイパルホールディングス
、ペプシコ、S&Pグローバル
10(金) ・中国生産者・消費者物価指数(1月)
・ミシガン大学消費者信頼感(2月、速報値)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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