決算発表開始!好決算期待の中小型株

決算発表開始!好決算期待の中小型株

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/01/25

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金利上昇圧力が後退し、グロース指数がアウトパフォーム

東証グロース市場指数は、1/17(火)~1/24(火)に7.0%上昇しました。同期間に、日経平均株価は4.4%上昇、TOPIXは3.7%上昇していたので、それらをアウトパフォームした形になっています。

この期間に先立つ1/10(火)~1/17(火)、日経平均株価が0.1%下落、TOPIXが1.2%上昇していたのに対し、東証グロース市場指数は1.3%下落していました。大型株に対してグロース市場はアンダーパフォームしていましたので、1/17(火)~1/24(火)はその反動が表れたものとみられます。

1/17(火)・1/18(水)に開催の日銀金融政策決定会合では、金融緩和が維持され、国内債券市場では、10年国債利回りが低下方向に転換し、グロース銘柄に追い風が吹いた形になりました。

なお、チャート的に東証グロース市場指数は1/11(水)の戻り高値を更新したため、W底からの上放れが「完成」した形になっています。当面は上昇局面が継続しやすい形状といえそうです。

東証グロース市場が反発傾向となったことで、同市場の時価総額上位銘柄(図表2)はおおむね堅調に推移しました。このうちティーケーピー(3479)は上昇率が18.7%と目を引きました。1/12(木)に2023/2期第3四半期の決算発表を実施し、赤字拡大を嫌気され、1/12(木)~1/17(火)の株価は10.4%も下げていました。しかし、その後は同社株を前向きに評価するアナリストレポートが目立つようになり、1/18(水)~1/23(月)には4連騰となり、昨年来高値更新となりました。

時価総額100億円超の幅広い銘柄の中では、医療用細胞シートを手掛けるセルシード(7776)が株価2.2倍となる急騰劇を演じました。1/17(火)に東海大学の研究チームが変形性膝関節症の臨床研究で、細胞シート(ヒトの細胞から接種・作成された薄い膜で、細胞・臓器の再生を図るもの)の有効性・安全性が確認されたと発表。同研究チームともに製品としての承認取得を目指すセルシードに対する期待が高まりました。なお、セルシード株については1/18(水)を中心に新株引受権の行使があり、1/23(月)の行使をもち、未行使分がなくなっていることも明らかとなり、需給悪化懸念が後退したとの見方も出ていました。

図表1 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

図表2 主な東証グロース市場指数構成銘柄の値動き

図表3 1/17(火)~24(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

決算発表開始!好決算期待の中小型株

今月下旬からは、2022年10~12月期の決算発表が始まります。前号でもご説明した通り、グローバル景気の減速・悪化懸念が強く、上場企業の業績に対し、楽観は禁物とみられます。特に、中小型株については、決算や業績予想修正、それに関した観測報道等により、株価が大きく変動する場面も増えそうです。

前回は、すでに決算発表を終えた銘柄について、上記のリスクが後退することに加え、好業績銘柄の場合、市場の評価向上による買いも期待できるとして、好業績銘柄を抽出してみました。今回は、今後決算発表が本格化する銘柄群を対象に、好決算、さらには業績上方修正が期待銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。条件は以下の通りです。

(1)東証グロース市場、または同スタンダード市場に上場
(2)時価総額100億円超~1,000億円未満(1/24時点)
(3)1営業日当たりの平均出来高が2万株超(1/23までの20営業日)
(4)3月決算銘柄 ※1/27(金)までに決算発表予定の銘柄は除く
(5)上半期(2022/4~9期)営業利益が黒字
(6)同営業利益が前年同期比黒字転換、または同増益率が50%超で、通期会社予想増益率を10%超上回っている
(7)同営業利益が通期(2023/3期)会社予想営業利益に対し、進捗率が50%超
(8)今期(2023/3期)会社予想営業利益が前期比で黒字転換、または10%超の増益予想
(9)前回の決算発表時に業績予想の下方修正を行っていないこと

図表4は、上記の条件をすべて満たしています。また、銘柄の掲載は上半期(累計)営業増益率が高い順となっています。以下、掲載銘柄について投資ポイントをご紹介します。

図表4 決算発表開始!好決算期待の中小型株

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(1/24)
22/4~9期営業増益率 進捗率 今期会社予想
営業増益率
6257 6257 6257 6257 藤商事(2/3) 1,210 黒字転換 169.5% 黒字転換
7014 7014 7014 7014 名村造船所(2/13) 364 黒字転換 98.1% 黒字転換
9726 9726 9726 9726 KNT-CTホールディングス(2/9) 1,678 黒字転換 50.6% 黒字転換
6565 6565 6565 6565 ABホテル(1/31) 1,870 491.2% 56.6% 118.9%
9272 9272 9272 9272 ブティックス(2/14) 3,845 97.6% 67.2% 19.3%
6125 6125 6125 6125 岡本工作機械製作所(2/10) 4,660 79.5% 55.5% 17.6%
3793 3793 3793 3793 ※ドリコム(1/30) 837 66.2% 80.4% 25.7%
5449 5449 5449 5449 大阪製鐵(1/31) 1,268 52.2% 80.1% 34.6%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとに、SBI証券が作成。
  • ※銘柄名右カッコ内の日付は決算発表予定日(出所は弊社Webサイト)。
  • ※22/4~9期営業増益率の「増益率」は前年同期比。
  • ※進捗率は「上半期(22/4~9期)営業増益/通期(23/3期)会社予想営業利益」として計算。
  • ※ドリコム(3793)は信用取引上の「注意喚起銘柄」に指定されております(1/25時点)のでご注意ください。


■藤商事(6257)

同社は、パチンコおよびパチスロ遊技機の開発・製造・販売を行っています。大阪が本社で「リング」などホラーものが得意です。売上高(2022/4~9期)の88%がパチンコ遊技機、同12%がパチスロ遊技機となっています。上半期は(2022/4~9期)は売上高が前年同期比2.2倍近くとなったうえ、営業利益は前年同期34億円の営業損失から25億円の利益へ黒字転換しました。「パチスロ6.5号機」の登場など規制緩和が進み始めたことが追い風になっているようです。パチンコ・パチスロ業界が規制強化から同緩和の方へ動き始めたことは大きな変化である上、今後はスマートパチスロ、スマートパチンコの普及等も想定されます。業界環境の改善を追い風に、当面は収益拡大が期待されます。

2023/3期・第3四半期の決算発表は2/3(金)の予定です。


■名村造船所(7014)

同社は1911年に設立された造船業界の中堅企業です。日本の造船業の世界シェア低下が続く中、同社も2017/3期以降2022/3期まで営業赤字が継続し、株価は昨年1月に182円の安値を付けるなど低迷していました。しかし、同月に日本郵船から「LNG燃料」の大型受注を決め、株価も昨年8/15(月)には高値760円まで回復しました。その後は好材料織り込み済みとみられ、株価は下落基調となりました。円安一服で来期以降の業績見通しに懸念も強まったもようです。

昨年11/11(金)に発表された2023/3期上半期(2022/4~9月期)決算では、営業損益は93億円の黒字となり、前年同期の赤字64億円から急改善しました。不況時に受注した低価船の予想収益が円安で改善し、多額の工事損失引当金を取り崩すことができました。会社側は、これを機に通期予想営業損益について5億円の赤字から95億円の利益に上方修正しました。株価も本年1/19(木)に347円の安値を付けて以降、落ち着く兆しをみせています。上半期末の同社純資産480億円に対し、時価総額は250億円前後で推移しており、割安感が強まっています。

2023/3期・第3四半期の決算発表は2/13(月)の予定です。


■KNT-CTホールディングス (9726)

近鉄グループホールディングス(9041)傘下の持株会社で、近畿日本ツーリスト、クラブツーリズム等の旅行代理店を擁しています。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に業績が急速に悪化、2019/4~12期に営業利益505億円を計上して以降、2021/7~9期まで7四半期連続で計413億円の赤字を計上するなど、業績悪化に苦しみました。その後、2021/10~12期以降は営業黒字に転換しています。

2023/3期・上半期(2022/4~9期)は売上高1,067億円(前年同期比85.5%増)、営業利益20億円(前年同期は84億円の赤字)でした。新型コロナウイルスからの経済再開の動きが追い風とみられます。本年1月上旬をピークとした新型コロナウイルス第8波もピークアウトしつつあります。政府は春にも新型コロナウイルスの伝染病としての位置付けを現在の第2類から第5類に引き下げる予定で、経済の正常化はさらに加速すると期待されます。

2023/3期・第3四半期の決算発表予定日は、2/9(木)です。


■ABホテル(6565)

ABホテルは愛知県を中心にホテル事業を展開しています。国内宿泊業の延べ宿泊者数は2019年比では減少していますが、2021年比では回復傾向です。そうした中、当社についても、2022/4~9期の営業利益は前年同期比491.2%増と回復傾向を示しました。これを受け、通期営業利益は12億円→21億円(前期比118.9%増)、予想1株配当は5円→8円と上方修正されました。

株価は昨年9月以降、ほぼボックス圏(1,800~2,000円前後)での推移になっています。今期予想業績の増額や、来期の増益維持が見通せてくれば、株価の上放れも可能とみられますが、製造業等の出張回復や全国旅行支援が追い風になりそうです。なお、東祥(8920)は同社の親会社であり、ABホテルの事業の他、大人専用スポーツクラブ「ホリデイスポーツクラブ」を全国で101店舗(2023/3期上期末時点)展開しています。

ABホテルと東祥の2023/3期・第3四半期の決算発表は、1/31(火)の予定です。


■ブティックス(9272)

介護業界に特化した企業です。「M&A仲介(売上高構成比63%)」と東京ビックサイトなどで行われる「商談型展示会(同37%)」を事業の2本柱としています(2022/3期末時点)。特に、M&A仲介業で業績を拡大しており、同事業の前期売上高は前々期の2倍超でした。

M&A仲介ビジネスにおいては、M&A仲介会社や証券会社・銀行が大型~中型案件を手掛け、参入企業も近年増える傾向にあります。一方、ほとんど手掛ける会社がいない小型~超小型(零細企業)案件に当社は狙いを定めています。その中でも、元々ノウハウを有していた介護業界に絞り、自社開発の工程管理システムを用いて「量産化」させることで、コストカットを行います。業界平均が通常最低1~2千万円といわれる仲介手数料を、当社は最低100万円からと、破格の低水準(HPより)にとどめています。

今期(2023/3期)上半期時点での売上高進捗率は48%と一見して標準以下です。この理由は、「商談型展示会」で大規模な展示会の開催が、第4四半期会計期間(1~3月)に集中しているため、売上高及び営業利益も第4四半期に急増するという同社の特徴にあります。今期も同様に3月に大規模な展示会が既に開催予定です。また、今期は稼ぎ頭であるM&A仲介で建設分野への本格参入も行われています。営業利益の進捗率は現時点(今期中間期)で67%と好調であり、通期業績の上方修正は射程圏内に位置しているといえるでしょう。

2023/3期・第3四半期の決算発表予定日は、2/14(火)です。


■岡本工作機械製作所(6125)

当社は研削・研磨用の砥粒加工機の世界的企業で、半導体製造装置も手掛けています。今年度第2四半期(2022/4~9期)決算の内容は、需要増から前年同期比で大幅増収増益となりました。ただ、通期業績予想の上方修正はなく、顧客業界である半導体市場の先行き不透明感から決算発表直後の株価は大きく下落しています。

2023年に入ってから株価は回復傾向にあります。中国でのゼロコロナ政策の撤廃や、米国での積極的金融引締めのペース鈍化に対しての期待が強まったことで、SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)が上昇し、同社の株価も連れ高した形です。同社業績を見極める際には、半導体業界の他社業績もチェックすることをお勧めします。世界最大の半導体製造会社であるTSMCは1/12(木)に本決算を発表。2023年の見通しに関し、上期は米ドルベースで減収となるものの、下期での回復を見込みを示しました。TSMCの2022/12期の決算は、市場で好感され、足元でのSOX指数の上昇に大きく寄与した形です。

2023/3期・第3四半期の決算発表予定日は、2/10(金)です。米国時間1/31(火)の引け後に、半導体大手AMDが、2/9(木)の大引け後に半導体製造装置の東京エレクトロン(8035)などが同社の前に10-12月期決算を発表予定ですので、確認しておくとよいでしょう。


■ドリコム(3793)

スマホ向けゲーム事業が売上高の98%以上を占める会社です。ゲームの開発や運営を行っており、「課金型ビジネスモデル」を導入しています。近年では、IP(*知的財産)に焦点をあてた戦略をとっており、自社のみならず、他社IPの開発やプラットフォームの運営も手掛けています。現在、IPがジャンル別(RPG、スポーツetc)の売上高で過半数を占めています。(2022/3期時点)
*IP(Intellectual Property)...知的財産。ゲーム業界では、漫画・アニメの版権や有名キャラクターの使用権を指すことが多い。例えば、『スーパーマリオ』は任天堂IPの一つ。
今上半期(2022/4~9期)は、『ONE PIECE トレジャークルーズ』等が業績をけん引する形で、過去最高となる利益を達成しています。第1四半期決算時点でも好調であったため、通期業績見通しに対して期待感が募っていました。しかし、第2四半期決算発表では、市場で期待されていた通期業績の上方修正が行われませんでした。それを受け、株価も決算発表(2022/10/27)後に大幅安となっていました。

上記直近決算発表後の個人投資家向けQ&Aセッションで、上期通過時点で好調な業績を示したにも関わらず、通期業績見通しを据え置きとした理由を問われた当社代表は、『下期の見極めもあるものの、足元の業績を見てジタバタするのではなく、通期ベースで、長いスパンを捉えて事業を見通してゆきたい』との旨を回答しています。この回答に関しては、業績の上方修正可能性という面からみると正直やや懸念材料です。

2023/3期・第3四半期の決算発表予定日は、1/30(月)です。


■大阪製鐵(5449)

鉄スクラップを電炉で溶解し鋼材を製造する「電炉」の一角で、日本製鉄の子会社です。エレベータガイドレールでは国内で圧倒的なシェアを誇ります。海外では、インドネシアで国営企業と合弁を展開しています。2022/4~9期の営業利益は前年同期比52%増と好調です。値上げを進める中、スクラップ価格が低下したことで増益を確保しました。

2023/3期・第3四半期の決算発表予定日は、1/31(火)です。

同じ「電炉」の大手である東京製鉄(5423)が発表(1/20)した2022/4~12期営業利益は前年同期比46%増でしたが、10~12月期に限れば7%増でした。エネルギー価格上昇が逆風でしたが、主原料である鉄スクラップ価格の安定や堅調な国内需要が下支え要因となりました。ただ、2023/1~3期は販売価格、コストともに厳しめに見ているようです。東京製鉄の株価は決算発表後一時下げたものの、その後は上昇に転じました。ライバルのこうした動きは参考になるかもしれません。

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