どうする日銀?日本株の今後は?

どうする日銀?日本株の今後は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/01/17

円高に上値を抑制される日経平均

1月第2週(1/10-13)の日経平均株価は145.67円高(+0.6%)と小幅高となりました。

同期間の米国市場では、NYダウが+2.0%、グロース株中心に構成されたNASDAQが+4.8%と東京市場を上回るパフォーマンスでした。

同週内に発表された米12月消費者物価指数(CPI)やミシガン大学消費者信頼感指数で1年先の期待成長率が、インフレ鈍化を示す形となりました。FRB(米連邦準備制度理事会)による金融引締めへの鈍化観測が強まり、市場心理が改善。1/10(火)-13(金)の米国市場は主要3指数が揃って続伸しました。

米国市場に比べ、1月第2週の東京市場が軟調となった要因は「円高」にあります。1/17(火)~1/18(水)の日程で日銀金融政策決定会合の開催が予定されています。1/12(木)以降は、日銀会合や米インフレ指標鈍化により日米金利差は縮小するとの見方が強まり、円高ドル安が急進。1/16(月)時点で1ドル127円20銭台まで進み、2022/5以来の円高水準となっています。

前回の日銀金融政策決定会合では、長期金利の許容変動幅が拡大され、一気に円高が進行しました。日銀側は否定しているものの、2023/4の総裁交代を見据えた大規模緩和政策を変更するための「はじめの一歩」として、市場では捉えられています。1/12(木)以降は、日銀の金融政策変更の織り込みが進みました。株式市場でも、図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(1/10~1/16)にあるよう、銀行株の顔ぶれが目立っています。

日本の7‐9月期決算では、円安が業績や業績見通しを押し上げる企業が多々ありました。よって、目下の円高外貨安の進行が、今後の懸念材料とみられ、株式市場で重しとなっています。

他には、ファストリ(9983)が1/12(木)大引け後に、8-11月期の決算発表を経て株価が続落したことも日経平均株価の大きな上値抑制要因でした。中国事業が新型コロナの影響で苦戦を強いられ、純利益が前年同期比▲9%という結果となりました。図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(1/10~1/16)では、第2位で株価は▲10%超です。同社株は日経平均株価に対するウエイトが9.6%(1/16時点)を占めているため、単体での大幅安でも指数全体の下落圧力として作用しました。

1/16(月)の日経平均株価は、1/17(火)-18(水)開催予定の日銀金融政策決定会合への警戒感から続落スタートとなっています。ただ、1/17(火)は午前は大幅高しており、東京市場は同会合の結果発表を控え、神経質な展開になっています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(1/10~1/16)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(1/10~1/16)

どうする日銀?日本株の今後は?

国内では、1/17(火)~1/18(水)の日程で、日銀金融政策決定会合が行われています。前回(2022/12/19~20)では、イールドカーブ・コントロール(YCC)について、10年国債利回りの許容変動幅を±0.25%から±0.50%へ拡大することが発表されました(図表9)。従前、黒田日銀総裁は、YCCの変動許容幅の拡大に否定的な見解を示しており、同発表は市場の意表を突くサプライズとなりました。
これ以降、市場では日銀の金融緩和策が出口戦略へ向かうのでは?との思惑が高まっています。国債先物市場では、10年国債利回りの変動許容幅の再拡大(又は撤廃)を見込み、長期国債先物に対し主に投機筋と見られる売り仕掛けが見られます。株式市場では、金利上昇圧力が高まる中、銀行などの金融株が上昇していますが、その一方でテクノロジーなど金利上昇に弱い株が売られ、相場全体としては重い値動きとなっています。

そこで本稿では日経平均の先行きを占う上で注目される日銀の動き(金利動向)について考えてみましょう。

図表9 日本10年国債利回りと許容変動幅

  • ※日本銀行、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1)日銀は10年国債利回りの許容変動幅の再拡大(又は撤廃)に動く??

これは時間の問題でしょう。前回の会合後も、債券市場では10年国債への売り圧力が強く、国債のイールドカーブが歪(いびつ)であるなど、市場機能が損なわれた状態が続いています。一部の報道では『今回の会合で日銀は、現状の金融緩和策による副作用について改めて点検する』と報じられています。今回の会合で許容変動幅の拡大が行われるかは断定できませんが、いずれ許容変動幅を拡大し撤廃する方向性にあると考えられます。ただ、安易な政策変更は却って市場の混乱を強める可能性があるため、慎重に進められるのではないでしょうか。

2)長期金利(10年国債利回り)はどこまで上昇するの??

10年国債利回りの許容変動幅が拡大されれば、そのタイミングで金利は急上昇し、円高や株安につながることが予想されます。許容変動幅が最終的に撤廃されたとして、その際の10年国債利回りの水準はどの程度になるのでしょうか。00年以降の10年国債利回りの推移を見ると、もっとも高い時で2%弱の水準でした(図表10)。現状が0.50%程度なのでまだまだ大幅な上昇余地がありそうに見えます。しかし、その一方で日本の潜在成長率は22年4-9月期で+0.3%(日銀推計)と、00年代前半に比べて大きく低下しています。このことを考慮すると、10年国債利回りの上昇余地は、現状水準と比べて限定的と考えられます。

3)政策金利の引き上げはあるのか??

日本でも欧米のように政策金利が引き上げられれば、これは疑いようのない金融引き締めになると言えます。ただ、日銀にとって政策金利の引き上げはハードルが高いと思われます。その理由としては、日銀は足元のインフレは、資源高や円安を背景とするコストプッシュ・インフレであり、一時的なものと見做していることが挙げられます。また、かつて日銀は2000年8月に政策金利を引き上げ、ゼロ金利を解除する方向に金融政策の舵を取りました。しかし、そのころの米国はITバブルが終焉し、景気後退へ向かっていました。日本経済はその煽りを受けて失速してしまい、結果として利上げは大失敗に終わりました。現在、米国ではテクノロジーセクター主導の景気拡大が一服し、米経済が後退へ向かっていますが、その姿は当時の状況とダブって見えます。日銀としても同じ轍は踏めないでしょうから、政策金利の引き上げには相当、慎重にならざるを得ないと考えられます。

当面、金融政策変更への思惑が高まる(≒長期金利に上昇圧力がかかる)局面では、円高進行や株価下落など、相応の影響が出ることが想定されます。ただ、10年国債利回りの上昇余地が限定的であれば、市場の影響も軽微にとどまるでしょう。また、日本の金融政策が本格的に引き締めへ移行するにはハードルが高いため、こうした認識が市場に浸透すれば、日経平均の不透明感についても緩和へ向かうと考えられます。

図表10 日本長短金利と潜在成長率

  • ※日本銀行、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

おすすめ記事(2023/01/17 更新)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎のSPAN掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額はSPAN証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。