「金利上昇」にも負けないグロース銘柄は?

「金利上昇」にも負けないグロース銘柄は?

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/01/11

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大きく下げた後、買い戻しが増える

年が明けました。東証再編(2022/4)からも9ヵ月が経過しております。「新興株ウィークリー」では、本年より、東証マザーズ指数への論評ではなく、東証グロース市場指数を用いてゆきます。なお、東証スタンダード市場の上場銘柄も、引き続き当レポートの対象です。よろしくお願い申し上げます。

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年末年始(2022/12/28~2023/1/10)の東証グロース市場指数は2.8%上昇しました。同じ期間の日経平均株価は0.6%、TOPIXは1.5%の下落であり、グロース市場指数がアウトパフォームしました。12月は日銀金融政策決定会合で、長期金利の許容変動幅が拡大されるなど、国内でも金利上昇圧力が強まり、グロース市場への逆風が強まっていました。月間では結局、日経平均株価が6.7%下げたのに対し、グロース市場指数は8.0%も下げました。ただ、上記期間は年末年始で様子見気分が強まり、大きく下げていたグロース市場は逆に買い戻しが増える展開となりました。

時価総額上位銘柄では、創薬ベンチャーのそーせい(4565)の値上がりが目立ちました。1/5(木)に提携先の米企業がそーせいが導出した化合物を使って治験を開始するための承認を得たことが報じられ、株高となりました。出張訪問買取を中心にサービスを手掛けるBuySell Technologies(7685)も上昇しました。12月はほぼ一方通行で大きく下落してきたこともあり、年明け後は自律反発局面となったと考えられます。

時価総額100億円以上の広範な銘柄の中では、マイクロ波化学(9227)が大きく値上がりしました。こちらも特に新しい材料が出た訳ではありませんが、12/16(金)小天井2,936円から12/29(木)1,662円まで43%も急落した後だけに、その後は自律反発局面入りとなりました。

図表1 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

図表2 主な東証グロース市場指数構成銘柄の値動き

図表3 22/12/28(水)~23/1/10(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

「金利上昇」にも負けないグロース銘柄は?

2022年は欧米主要国の政策金利が引き上げられ、世界的に金融引き締めが進みました。そうした中、日銀は緩和的金融政策を継続したため、日米・日欧の金利差が拡大し、外為市場では円安傾向となりました。

こうした中、12/20(火)まで開催の日銀金融政策決定会合では、日銀が長期金利の許容変動幅を0%±0.5%に拡大したため、市場関係者の多くはこれを「事実上の利上げ」とみなしたようです。市場の見方が正しいか否かはさておき、日銀が将来の政策金利(短期金利)引き上げに向け、舵を切ったことは確かであるように思われます。これを反映し、日本の10年国債利回りは2023年に入り、0.5%近辺での動きに転じています。

そこで、東京株式市場でも金利上昇本格化が意識される局面の到来に備え、今回の「新興株ウィークリー」では、金利上昇に強い「無借金」で、財務体質が強いグロース銘柄の抽出を試みてみました。抽出条件は以下の通りです。

(1)東証グロース市場に上場
(2)無借金(直近四半期末の長短借入金がゼロ)経営であること
(3)時価総額50億円超
(4)総資産に対する現預金の比率(直近四半期末)が50%超
(5)直近四半期末の流動比率(流動資産/流動負債)が200%超
(6)前期純利益、今期会社予想純利益が黒字
(7)1/6(金)までの20営業日で、1日当たり平均出来高が2万株超
(8)直近が四半期決算の場合、累計の最終増益率(純利益・前年同期比)が、通期予想増益率(前期比)よりも大きいこと

図表4は、上記の条件をすべて満たしています。また、銘柄の掲載は(4)の現預金比率が高い順となっています。

図表4 「金利上昇」にも負けないグロース銘柄は?

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株値(1/10) 現預金/総資産 流動比率
7370 7370 7370 7370 Enjin 1,888 80.7% 515.5%
3991 3991 3991 3991 ウォンテッドリー 2,767 76.5% 213.0%
4429 4429 4429 4429 リックソフト 1,791 69.8% 249.6%
4071 4071 4071 4071 プラスアルファ・コンサルティング 2,686 69.0% 445.7%
4431 4431 4431 4431 スマレジ 2,247 66.3% 426.7%
6554 6554 6554 6554 エスユーエス 865 58.5% 264.3%
4582 4582 4582 4582 シンバイオ製薬 630 57.8% 516.6%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとに、SBI証券が作成。
  • ※年初来騰落率は、株式分割等を考慮した実質的な値上がり率です。
  • ※シンバイオ製薬(4582)は、前期は2021/12期(単独)、今期は2022/12期(連結)とします。

図表4の銘柄の一部について、投資ポイントをご紹介します。

ウォンテッドリー(3991)~ビジネスSNSを運営

★週足チャート(2年)

  • ※データは2023/1/11(週足) 9:00 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■「シゴトでココロオドルひとをふやす」ためのビジネスSNSを展開

当社は、『ウォンテッドリー』というビジネスパーソンのためのビジネスSNSを運営している企業です。「採用」サービスが収益源で、月額料金体系は一般的な成果報酬型ではなく、おもにサブスクリプション型となっています。

当社サービスは企業にとっても採用コストを抑えられるというメリットがあります。また、企業と個人の“ビジョン”や“価値観”に主眼を置いたサービス展開が顧客に受け入れられ、2022年8月末時点で個人ユーザー数は355万人、企業ユーザー数は4.3万社に上ります。ユーザー属性に、成長産業であるWEB領域人材、ミレニアル世代・Z世代が多いことが当社の強みです。

2022/10/14(金)に、2022/8期決算を発表。営業利益は前期から3倍超となる12.5億円となり、同時に営業利益率も過去最高となりました。会社側は今期(2023/8期)見通しに関しても、採用需要が継続し、新規獲得が安定に推移すると想定しています。会社予想営業利益は15.5億円(前期比23.8%増)、同営業利益率31%(前期は27%)となっています。(1/10現在)

なお、今期第1四半期の決算発表が1/12(木)に予定されています。決算発表をまたいだ保有については一応の注意が必要です。

■財務体質は堅固

2022/8期末時点の当社総資産は36億円で、うち32.8億円が流動資産です。さらに、現預金は27.5億円あり、総資産の4分の3強を占めています。長短借入金もない「無借金」経営であり、金利上昇局面でも不安はほとんどないとみられます。

ちなみに、2022/8期の純利益は7.4億円、純資産は20.5億円であり、前者を後者で割ったROEも36%あるので資本効率も高めです。足元は増収・増益基調となっていることもあり、市場からの評価が高くなっても不思議ではない状態です。

11月中旬以降、株価は下落局面となりましたが、100日移動平均線前後まで押した後は反発に転じています。1/10(火)には商いを増やしつつ大幅高していますが、第1四半期決算を期待した買いである可能性もありそうです。このため、決算発表後は、目先筋の利益確定売りが増える可能性も出ており、注意が必要です。

スマレジ(4431)~高機能クラウドPOSレジが主力の好財務企業

★週足チャート(2年)

  • ※データは2023/1/11(週足) 9:00 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■高機能クラウドPOSレジ

iPadやiPhone等のアプリで使用可能な高機能クラウドPOS
レジ*、『スマレジ』を取り扱う企業です。スマレジのクラウドサービス利用料等は売上高の約56%を占めており、残りは初期費用(関連機器の販売等)となっています(2022/4期)。

  • *POSレジ…「Point of Sales(販売時点情報管理)」。POSシステムとは、顧客データの記録や売上分析等が可能なシステム。POSレジはPOSシステムを備えたレジ。

“高機能×簡単×低価格”を同社製品の特徴として挙げており、全国12万店以上で使用されています(2022/11、当社HPより)。

同社サービスは業種もアパレル、飲食、医療など多岐に渡っております。メインターゲットは中規模事業者ですが、基本的なレジ機能は無料で利用できることなどから実際には1店舗から600店舗以上を運営する事業者まで客層は広いです。

1/10(火)の当社株価は10%超の大幅高となっています。1/6(金)の大引け後に、12月度の月次登録店舗を発表し、増加が好感された模様でした。

売上高は9期連続増加と順調です。営業利益に関しては、中計に基づいた宣伝活動等により前期(2022/4期)は前期比19.3%減となっています。なお、認知の向上策とユーザ層の拡大のための取り組みは2024/5期まで行われる予定です。

■好財務企業・広告宣伝費の有効活用が鍵

好財務企業としての面も持ち、借入金はゼロです(2023/4期第2四半期時点)。現金及び現金同等物の残高は36億円と、総資産に対して66%もの割合を占めています。

200%以上が望ましいとされている流動比率は、426.8%と高水準といえるでしょう。

来期以降の事業計画に関して、会社側は広告宣伝費に関し無駄なお金は使いたくはないと言及しています。その上で、絞るのが得意な企業風土の中、どれだけ資金をうまく使えるのかが現在の経営陣の課題と認識していると明らかにしました。

2021年の中計策定以降、営業利益率が10~15%の範囲以内で広告宣伝費等の投資を実行しています。(中計策定前は20~25%)2023/4期の上期累計は15%で、計画の範囲内でした。

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