日銀が政策変更!~金利上昇に強い無借金10銘柄は?

日銀が政策変更!~金利上昇に強い無借金10銘柄は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2022/12/23

日銀が政策変更!~金利上昇に強い無借金10銘柄は?

東京株式市場が波乱の展開です。日経平均株価は12/20(火)に前日比669円超下落した後、12/21(水)も続落し、12/15(木)以降5営業日続落となりました。日経平均株価は10/13(木)以来の安値水準まで沈みました。

連敗の前半では、12/14(水)まで開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、会合参加者が2023年末の予想政策金利を従来の4.6%から5.1%まで引き上げたことや、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、2023年中の利下げに否定的な見解を示したことが警戒され、米国株が波乱になったことが響きました。さらに、12/20(火)まで開催の日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動許容幅が±0.25%から±0.50%に拡大。市場参加者の多くがこれを「事実上の利上げ」と認識したことから、市場が動揺しました。

今後はどうなるのでしょうか。政策金利(短期金利)は-0.1%で変更されてはいません。このため、住宅ローンの多くを占める変動型ローンや、多くの企業貸付の金利がすぐに上昇する公算は小さく、金融全体の引き締め効果は限定的であるとみられます。長期金利の変動許容幅についても、日銀は当面、±0.5%を維持する姿勢を見せています。日経平均株価の動揺は間もなく収まるとみられます。

しかし、少しの変化を、増幅させて織り込む市場の特質を考慮すると、日本の株式市場が金利上昇を織り込み始める可能性は大きいと考えられます。日銀の「政策変更」を受けて銀行株や保険株が動意をみせていますが、その動きは中期的に続く可能性がありそうです。

ちなみに、銀行株や保険株の他に、市場が金利上昇を織り込む過程で、選好されそうな銘柄は何でしょうか。「日本株投資戦略」では、仮に金利が上昇局面となっても選好されやすい「無借金で、逆に受取利息の増加まで期待できる現預金比率の高い企業」を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証プライム市場上場銘柄

(2)時価総額1,000億円超

(3)直近四半期末の長短借入金がゼロ

(4)同流動比率(流動資産/流動負債)が300%超

(5)現預金が総資産に対し30%超

(6)業績を予想するアナリストが2名以上

(7)市場予想営業利益が今期・来期ともに増益見通し

図表1の銘柄は、上記のすべての条件を満たしています。掲載は(4)の比率が高い順となっています。なお、無借金で現預金比率が高いと、資金効率が悪く「ROEは低いのでは?」と思われがちですが、図表1の銘柄のうち7銘柄はROEが10%を上回っています。

図表1 日銀が政策変更!~金利上昇に強い無借金銘柄は?

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄 株価(12/22) 流動比率 現預金/総資産
7730 7730 7730 7730 マニー 2,074 859.0% 45.4%
4684 4684 4684 4684 オービック 19,910 733.0% 44.0%
2127 2127 2127 2127 日本M&Aセンターホールディングス 1,597 650.2% 76.9%
8227 8227 8227 8227 しまむら 12,900 587.2% 36.7%
3076 3076 3076 3076 あいホールディングス 2,086 533.4% 47.4%
9759 9759 9759 9759 NSD 2,365 512.2% 56.3%
4151 4151 4151 4151 協和キリン 3,035 498.7% 35.4%
4967 4967 4967 4967 小林製薬 8,420 390.5% 37.9%
9744 9744 9744 9744 メイテック 2,380 371.7% 60.1%
6465 6465 6465 6465 ホシザキ 4,540 317.6% 54.6%
  • ※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※財務データは直近四半期末時点のものを使用
  • ※流動比率=流動資産/流動負債
  • ※現預比率はここでは、現金預金/総資産と定義

掲載銘柄の投資ポイント

ここでは、図表1の銘柄の一部について、投資ポイントをご紹介します。

しまむら (8227)~ローコストオペレーションを徹底し、「最高益」を更新

★週足チャート(1年)

  • ※データは2022/12/23 9:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★連結業績(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■国内第2位のアパレル企業。独自のローコストオペレーションを有する

国内アパレル業で売上高第2位の企業です。
「ファッションセンターしまむら」を中心に衣料品販売のチェーンストアを展開しています。日常生活のために使用する衣料品(=デイリーファッション)を良質低価の“しまむら安心価格”で提供することを基本政策として掲げています。

当初は郊外から店舗展開を始めていましたが、近年は人口密度の高い大都市圏や商業ビルへの出店も積極的に進めています。店舗数はグループ全体で2,204店舗です(2022/8期末時点)。2020/10からは、自社ECサイトをオープンしました。

「ローコストオペレーション」を基本とする、生産性の高い当社独自の仕組みが強みです。出店、仕入れ、物流、販売の全工程でローコスト運営が徹底されています。

いくつか詳細をご紹介すると、物流では約600社あるサプライヤーからの納品を自社運営の商品センターへ共同でまとめられています。商品センター内は機械化・自動化がなされており、会社資料によると荷物1箱当たり、手紙1通程度の低コストで運営で配送が可能です。

商品の仕入れでは、業者に対し返品なしの「完全買取」と、全ての商品の発注が本社で完結する「セントラルバイイング」によって、大量発注によるコストの削減を図っています。

10/3(月)に発表された2023/2期中間決算では、売上高3,013億円(前年同期比5.9%増)、営業利益289億円(同14.1%増)と上期ベースで過去最高を達成。一方、通期の業績見通しは物価高による売上減少リスクと、中国のロックダウンなどによる商品供給面のリスクといった外的要因を理由に据え置きとしました。

12/26(月)には2023/2期第3四半期決算が発表予定となっています。前述の中国ロックダウンに関しては、現在では「ゼロコロナ」政策が緩和され、大きな懸念事項が一つ後退した形です。

■堅固な財務体質。実質的な無借金経営

堅固な財務基盤を有する企業です。資本政策には、安定した手元資金確保による持続可能な経営を掲げています。

流動比率(短期の支払い能力から財務の安全性を見る指標。200%以上が望ましいとされている)は587.2%です。

自己資本比率(総資産に対する純資産の割合。高いほど経営の安定度が高いとされる。70%以上が望ましいとされている)も87%と高水準です。

借入金は0で実質的な無借金経営であるため、金利上昇が業績の痛手となることは考えられづらいといえるでしょう。現金及び現金同等物の残高も年々増加傾向で、前期末(2022/2期)は、1824億円と4年前と比べて3倍弱となっています。

2024/2期を最終年度とする中計では、ROEは8.0%以上となっていますが現時点で8.9%と目標を達成している状態です。

小林製薬(4967)~「小さな池の大きな魚」を目指す

★週足チャート(1年)

  • ※データは2022/12/23 9:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★連結業績(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■ニッチ分野のユニークな製品の開発に定評


当社は医薬品、医薬部外品、芳香剤、衛生材料などの家庭用品を製造・販売しています。トイレタンククリーナの「ブルーレット」、額用冷却シートの「熱さまシート」など、ニッチ分野のユニークな製品を提供し、消費者によく知られた企業です。「小さな池の大きな魚」を目指すニッチ戦略で、「あったらいいな」と思われる、消費者の悩みや困り事を解決する製品を提供していることが特徴であり、強みと言えます。

2022/12期第3四半期(累計)の売上高は1,142億円(前年同期比6.1%増)で、売上構成比は国内事業(インバウンド消費を含む)が73.0%、米国・中国等へ販売する国際事業が21.5%、通販事業が5.5%となりました。

国内事業の売上高は前年同期比1.7%増でした。オミクロンの影響で「のどぬ~るスプレー」や「熱さまシート」が好調だった他、新製品も好調でした。海外事業は同29.1%増で「熱さまシート」が好調でした。

同四半期の営業利益は187億円(前年同期比3.5%減)でした。増収やコストダウンの効果を、原材料費、固定費、物流費他コスト上昇が上回りました。

2022/12期は売上高1,620億円(前期比4.3%増)、営業利益270億円(同3.6%増)との会社予想は据え置かれています。コスト上昇を値上げで吸収する方針です。来年は値上げにより、国内外で10億円の利益を創出したいとしています。なお短期的には、With コロナに舵を切った中国でコロナの感染が再拡大しており、当社製品への需要が高まったり、市場で話題になる可能性がありそうです。

■無借金経営。現預金も豊富

2022/9末のバランスシートをみると、総資産は2,555億円で、そのうち約3分の2に相当する1,733億円が換金性が高い流動資産で、さらに流動資産の56%=969億円が「現金及び預金」です。現預金の比率は総資産に対しても38%に達しています。

長短借入金は名実ともにゼロの「無借金経営」で、流動比率(流動資産/流動負債)は390%もあります。財務体質は相当に堅固であると言えそうです。

一般的に、財務体質が堅固でキャッシュを多く抱えている企業は、投資が少なく、利益を生み出していないことが多いとみられることが多いようです。しかし当社のROE(前期純利益/第3四半期末純資産)は9.6%と日経平均採用銘柄の8.5%上回っています。

なお当社は11/1(火)開催の取締役会決議に基づき、翌日に126.5万株(100億円弱)の自社株買いを実施しています。自社株買いについては過去何回か実施しており、積極的な企業の1社であると見受けられます。

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