波乱相場で買い場到来?~高成長予想のグロース7銘柄
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2022/12/21
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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波乱色が強まる
12/13(火)~12/20(火)の東証マザーズ指数は7.5%下落しました。同期間における日経平均株価のパフォーマンスは-5.0%、TOPIXは-3.1%であり、それらを下回りました。
同じ期間内の重要日程としては、12/14(水)に米国で、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表が行われたことがあげられます。FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を0.5%引き上げたことは市場の予想通りでしたが、FOMCメンバーによる2023年末予想政策金利が9月時点の4.6%から今回は5.1%に上昇し、さらにパウエルFRB議長が2023年の利下げ転換に否定的な見方を示しました。これにより、2023年の利下げ期待が後退し、米国株(S&P500)は12/12(月)~12/19(月)に4.3%下落し、日本株も連れ安となりました。
ただ、米10年債利回りは12/12(月)の3.61%から、12/19(月)には3.58%に低下しました。米金融引き締めが長期化することで、米景気が後退する可能性が大きくなるとの見方が強まり、長期金利(10年債利回り)を引き下げる形になりました。本来であれば、相対的には、グロース銘柄が多いマザーズ指数の相対パフォーマンスが強くなっても不思議ではない局面でした。しかし、12/20(火)には、日銀が長期金利の許容変動幅を±0.25%から±0.5%に拡大。国内で金利上昇圧力が強まるという環境の変化もあり、東証マザーズ指数の下げが膨らむ展開になりました。
また、12/13(火)~12/20(火)は、東証マザーズ指数構成銘柄の時価総額上位銘柄について、下落が目立ったこともパフォーマンスの悪化を助長したと考えられます。
東証マザーズ指数構成銘柄で時価総額トップのビジョナル(4194)が大きく下げました。12/14(水)に2023/7期・第1四半期決算を発表し、営業利益は前年同期比46%増の大幅増益となりました。しかし、業績予想の上方修正がなかったことや、事前に期待先行で株価が上昇していたこともあり、12/15(木)は急反落となりました。12/20(火)には、日銀会合を受けた全般的な株安の中、さらに下げが加速しました。
株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄では、クラウドを使ったシステム開発を手掛けるFIXER(5129)の上昇が目立ちました。12/15(木)に2023/8期の業績を上方修正し、営業利益は14.1億円から18.6億円に上方修正されました。保守的に見積もっていた案件が予想を上回ったとのことで、特に翌12/16(金)の上昇が目立ちました。
図表1 日経平均株価と東証マザーズ指数の推移
図表2 主な東証マザーズ指数構成銘柄の値動き
図表3 12/13(火)~12/20(火)で株価上昇が大きかった東証マザーズ指数構成銘柄
波乱相場で買い場到来?~高成長予想のグロース7銘柄
2022年も残すところあとわずかになりました。日銀が金融政策を事実上変更したことで、金利上昇に弱い、東証グロース市場の銘柄や、それを中核とする東証マザーズ指数は当面、不安定な動きになる可能性がありそうです。しかし、もともと2023年の新興株市場でリード役を期待されていた銘柄にとっては買い場提供となっている可能性もありそうです。
2023年の東証グロース市場では、どのような銘柄がけん引役になるのでしょうか。グロース市場ですから、当然、企業の成長性にスポットが当たることになりますが、実はアナリストが調査対象としている銘柄は限定的となっています。さらにその中から、アナリストが3期程度先まで連続で増益を予想している会社は、市場での注目度も高くなる可能性がありそうです。
今回の「新興株ウィークリー」では、2023年に活躍期待の成長銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行ってみました。
(1)東証グロース市場に上場
(2)業績予想を公表しているアナリストが2名以上
(3)時価総額100億円超 (2022/12/19終値ベース)
(4)今期、来期、再来期の売上高について3年連続で10%超の増加を市場が予想
(5)今期予想営業利益について市場が黒字を予想
(6)今期、来期、再来期の営業利益について3年連続で15%超の増加を市場が予想
(7)時価総額(12/19)が、3年後の市場予想営業利益の20倍未満
図表4の銘柄は上記の条件をすべて満たしています。(6)において計算される予想営業増益率(3年間)の単純平均が高い順に掲載しています。
図表4 アナリスト高い成長率を予想している東証グロース市場7銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株値(12/19) | 3年平均 予想営業増益率 |
時価総額/3年後営業利益 |
7695 | 7695 | 7695 | 7695 | 交換できるくん | 4,530 | 95.5% | 15.7 |
9218 | 9218 | 9218 | 9218 | メンタルヘルステクノロジーズ | 1,360 | 93.0% | 15.3 |
6069 | 6069 | 6069 | 6069 | トレンダーズ | 1,951 | 48.2% | 8.0 |
4194 | 4194 | 4194 | 4194 | ビジョナル | 9,490 | 39.2% | 16.5 |
7373 | 7373 | 7373 | 7373 | アイドマ・ホールディングス | 4,375 | 32.4% | 17.5 |
7803 | 7803 | 7803 | 7803 | ブシロード | 688 | 27.6% | 7.0 |
3991 | 3991 | 3991 | 3991 | ウォンテッドリー | 2,436 | 24.3% | 9.6 |
- ※Bloombergデータをもとに、SBI証券が作成。
以下、掲載銘柄の一部について、ポイントをご紹介します。
■交換できるくん(7695)
給湯器、食洗器、トイレ機器等、各種住設機器の交換、取り付け工事について、PCやスマホなどネットから写真で受け付け、取り付けまでを一気通貫で提供している会社です。2001年に「写真によるネット見積もり」を業界に先駆けて開始。信頼と実績を積み重ね、住設機器ECのパイオニア的存在になっています。圧倒的な情報量のECサイト、現地調査不要のスピード見積もり、追加請求のない明朗会計、エンジニアによる責任施工、10年間無料保証等が差別化要因となり、業績を伸ばしています。
2023/3期・第2四半期(累計)は売上高28.6億円(前年同期比18.3%増)、営業利益1.75億円(同213.9%増)と大幅増収・増益。通期会社予想は売上高58億円(前年同期比20.6%増)、営業利益2.6億円(同150.9%増)ですが、市場予想(Bloombergコンセンサス)では今期3億円、来期4.4億円、再来期6.5億円の営業利益となっています。なお、出来高が薄めの点は十分注意が必要です。
■メンタルヘルステクノロジー(9218)
事業所において、人々が健康で快適な環境のもと仕事できるよう、専門的な立場から指導や助言をおこなう医師を産業医と言います。当社の主力事業であるメンタルヘルスソリューション事業(2022/12期・第3四半期累計)では、産業医、保健師等による役務提供サービスと人々の心身の健康管理に関する各種クラウドサービスをパッケージで提供しています。その他は主に医師向けの求人支援サービス他も行っています。従来産業医が行ってきた業務を整理・効率化し、当社人材による事務代行等も提供しています。
メンタルヘルスケアの深刻化や、規制強化に対し、企業が形式運用だけで対処するには限界があり、従業員のメンタルヘルスケア/健康問題を積極的に解決する課題解決型運用が増えており、当社へのニーズが高まっています。
2022/12期・第3四半期(累計)決算では、売上高17.6億円(前年同期比75.4%増)、営業利益4.1億円(同247.1%増)と大幅増収・増益。通期会社予想は売上高20.2億円(前期比39.5%増)、営業利益3.4億円(同151.4%増)ですが、営業利益の進捗率は120.7%と順調で、業績予想の上方修正が期待されている状況です。市場予想(Bloombergコンセンサス)では今期3.8億円、来期5.3億円、再来期8.7億円の営業利益となっています。
■トレンダーズ(6069)
主力事業であるマーケティング事業(売上高構成比92.3%・2023/3期第2四半期累計)では、トレンドを捉え、クライアント企業にマーケティングソリューションを提供しています。生活者(多様な価値観を持って、多様な生活行動をする者を指す)に対しては情報コンテンツの提供・製品の販売を行っています。生活者が多様化していることを背景に、ターゲットごとにメッセージや手法を変える「次世代マイクロマーケティング」を提唱する企業です。そこでは、インフルエンサーネットワーク「LIN」、美容メディア「MimiTV」、食メディア「おうちごはん」等を活用し、企業のプロモーション・PR活動の支援等を行っています。社員の女性比率79%、管理職の女性比率72%と、女性が中心の会社です。
2023/3期・第2四半期(累計)は売上高46.1億円(前年同期比50.2%増)、営業利益6.58億円(同117.9%増)と大幅増収・増益。通期会社予想は売上高74億円(前年同期比12.8%増)、営業利益8.5億円(同43.2%増)ですが、営業利益の進捗率は77.4%と高く、上方修正の余地が大きくなっています。市場予想(Bloombergコンセンサス)では今期11億円、来期14.3億円、再来期18.5億円の営業利益となっています。
■ビジョナル(4194)
当社は東証グロース市場で時価総額最大企業(2022/12/20時点)で、ハイクラス向け転職支援サイト「ビズリーチ」の運営で急成長してきました。おすすめのユーザー(求職者)を経営幹部・管理職などのプロフェッショナル人材に絞り、企業の求める採用人物像とユーザーが求める転職先企業のミスマッチを減少させ、利用者拡大に繋げました。ユーザーからは求人情報を見るための定額制課金料を徴収しており、これはユーザーの質の高さの担保にも繋がっています。また、一般的な転職支援サイトは、採用を依頼する企業からプラットフォーム利用料や採用支援の成功報酬を受け取るという、1方向からだけの収益構造が多くなっています。これに対し、当社は、ユーザー(求職者)とヘッドハンター(採用企業とユーザーの仲介者となる人材紹介会社)からも収益を獲得し、収益源が合計3方向あることが強みです。企業と求職者間の直接採用の為のプラットフォーム(箱)を経営し、多方面から収益を得ている構造になっています。
12/14(水)に発表された2023/7期・第1四半期(累計)決算では、売上高132億円(前年同期比38.1%増)、営業利益37億円(同46.0%増)と大幅増収・増益。通期会社予想は売上高560億円(前年同期比27.4%増)、営業利益125億円(同50.9%増)ですが、営業利益の進捗率は29.6%と順調な滑り出しと言えます。ただ、市場の一部では業績予想上方修正を期待していたものの、据え置きとなり、決算発表後の株価は下げています。市場予想(Bloombergコンセンサス)では今期132億円、来期176億円、再来期220億円の営業利益となっています。
■アイドマ・ホールディングス(7373)
日本がこれから直面するであろう労働人口減少という社会課題の解決を、事業活動を通じて取り組んでいる会社です。企業が効果的な営業活動をするためのコンサルティングサービスを事業の主軸にしつつ、営業活動に必要な機能を搭載したクラウド営業ツール『Sales Crowd』の提供や、主婦のための在宅ワーク求人サイト『ママワークス』の運営等を行っています。近年は、M&Aによる事業拡大を活発に行っています。
10/14(金)に発表された2022/8期決算では、売上高61億円(前期比67%増)、営業利益16億円(同98%増)と過去最高を達成。当社の売上高と営業利益は2019/8期以降、一貫して右肩上がりです。今期(2023/8期)見通しに関しても、営業利益20億円(前期比26%増)と堅調な見通しです。労働力や生産年齢人口の減少といった社会構造的な要因を背景として、今期も当社サービスの需要は継続して高まるとの見方を示しています。市場予想(Bloombergコンセンサス)では、今期営業利益は22億円(同35%増)と会社予想を上回っています。さらには、来期30億円(同37%増)、再来期37億円(同25%)の営業利益を予想しています。
■ブシロード(7803)
IP事業を主軸とする企業です。IP(Intellectual Property)とは、知的財産を指します。ゲーム業界では、漫画・アニメの版権や有名キャラクターの使用権を指すことが多く、例えば、『スーパーマリオ』は任天堂IPの一つです。当社の著名な自社IPは、トレーディングカードゲーム(以下、TCG)の『カードファイト!!ヴァンガード』やガールズバンドにスポットを当てた『BanG Dream!(バンドリ!)』、『新日本プロレス』等が挙げられます。
前期(2022/6期)はTCGユニットが好調であったことが寄与し、過去最高の売上高・利益を達成しました。TCGの市場規模は、コレクション需要が高まっていることなどから年々拡大傾向にあり、2021年度は前年度比46%増となる1,782億円まで成長しています。
今期(2023/6期)会社予想の業績は、売上高500億円・営業利益35億円と過去最高を更新予定です。市場予想(Bloombergコンセンサス)では、同営業利益39億円(前期比17%増)と更に強気です。また、市場予想では来期営業利益は55億円(同40%増)、再来期は69億円(同26%増)と引き続き好調な業績が続くとされています。
一方、会社は中計達成のため、今期は先行投資としてゲーム開発費などの増加を見込んでいます。そのため、今期経常利益に関して会社は35億円、前期比31.5%の減益見通しです。市場でも今期経常利益は会社予想と同様に減益予想ですが、来期に関しては過去最高の62億円を予想しています。
■ウォンテッドリー(3991)
『ウォンテッドリー』というビジネスパーソンのためのビジネスSNSを運営している企業です。「採用」サービスが収益源であり、月額料金体系は一般的な成果報酬型ではなく、おもにサブスクリプション型となっています。当社サービスは企業にとっても採用コストを抑えられるというメリットがあります。また、企業と個人の“ビジョン”や“価値観”に主眼を置いたサービス展開が顧客に受け入れられ、2022年8月末時点で個人ユーザー数は355万人、企業ユーザー数は4.3万社に上ります。ユーザー属性に、成長産業であるWEB領域人材、ミレニアル世代・Z世代が多いことが当社の強みとして挙げられています。
2022/10/14(金)に、2022/8期決算を発表。営業利益は前期から3倍超となる12億円となり、同時に営業利益率も過去最高となりました。会社側は今期(2023/8期)見通しに関しても、採用需要が継続し、新規獲得が安定に推移すると想定。これを基に、会社予想営業利益は15.5億円(前期比23.8%増)、同営業利益率31%(前期は27%)を示しています。市場予想(Bloombergコンセンサス)でも、今期営業利益は会社予想と同水準、来期は20億円(前期比32%増)、再来期は24億円(同20%増)と好調な見通しです。また、当社株式は、浮動株比率が2.8%と低く、流動性が乏しい点はご留意いただければ幸いです(2022/8期末時点)。
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