2023年の注目テーマ(1) 地銀株

2023年の注目テーマ(1) 地銀株

投資情報部 鈴木 英之

2023/01/06

2023年の注目テーマ(1) 地銀株

2022年が終わりました。日経平均株価は年間(2022年末株価を2021年末株価と比較)で9.4%、TOPIXは5.1%下落しました。欧米で金融政策が引き締めに転じ金利が上昇したこと、ロシアとウクライナの間で戦争が勃発したこと、サプライチェーンの混乱・半導体不足等が長期化したこと、インフレ・景気鈍化が懸念されたこと等が要因とみられます。ただ、外為市場で円安が進んだこと、政府が日本入国に関する水際対策を緩和したこと等は、企業業績や株価の下支え材料になったとみられます。

東証業種別指数の年間上昇率上位は、第1位鉱業(上昇率+40.4%)、第2位銀行業(同+33.1%)、第3位保険業(同+26.9%)、第4位空運業(同+19.2%)、第5位卸売業(同+17.0%)の順でした。エネルギー・商品価格等の上昇が鉱業や卸売業の、金利上昇が銀行業や保険業の、水際対策の緩和が空運業のプラス材料になりました。逆に電気機器、サービス業、精密機器、金属製品、輸送用機器等は下落しました。

2023年の株式市場では、どのような投資テーマや業種が注目されるのでしょうか。「日本株投資戦略」では今回、その有力な候補と考えられる地銀株を採り上げたいと思います。理由は、おもに以下の3点が指摘されます。

(1)日銀が2023年にも金融政策を変更し、マイナス金利が終わるとの期待が膨らんでいること

(2)株主還元の強化がさらに続くとの期待が強いこと

(3)業績の底打ちが見込まれること

SBI証券では、企業調査部から銀行株に関し、10月以降以下4本のアナリスト・レポートが発行されています。詳細についてはこちらをご覧ください。

10/7 銀行:強気継続、地銀に注目~2022-No41QFY3/23後のアップデート

11/28 銀行:地銀に注目!~地銀3社を比較する

12/20 銀行:YCCの上限引上げ~いったん落ち着こう

12/23 銀行:金利の復活と銀行~2022-No5銀行セクターに対し強気継続

ご参考までに、図表1は東証業種別株価指数「銀行業」を構成する銘柄のうち、「地銀」に属す銘柄を、時価総額上位から10銘柄を並べて掲載したものとなっています。

このうち銘柄名左に「★」を付けた銘柄は、12/23の企業調査部レポート(12/23付)において、投資判断が「買い」となっている銘柄です。

ちなみに、SBI証券Webサイトにおいて、テーマ株投資を容易にする投資ツールである「テーマキラー!」の1月の新テーマ株のひとつとして「地方銀行」が採用されています。図表1の銘柄名左に「☆」を付けた銘柄は、この「テーマキラー!」に掲載された銘柄になっております。

図表1 2023年の注目テーマ(1) 地銀株

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄 株価(1/5)
(円)
時価総額
(百万円)
純資産
(百万円)
PBR
(倍)
8331 8331 8331 8331 ★☆千葉銀行 961 783,716 1,041,828 0.75
7186 7186 7186 7186 ★☆コンコルディア・フィナンシャルグループ 551 666,498 1,140,064 0.58
5831 5831 5831 5831 ★☆しずおかフィナンシャルグループ 1,049 624,290 1,110,298 0.56
8354 8354 8354 8354 ☆ふくおかフィナンシャルグループ 2,953 564,431 868,205 0.65
8369 8369 8369 8369 ★☆京都銀行 5,760 436,842 1,015,987 0.43
7167 7167 7167 7167 ★☆めぶきフィナンシャルグループ 330 359,388 883,490 0.41
8359 8359 8359 8359 八十二銀行 539 264,705 851,590 0.31
8418 8418 8418 8418 ★☆山口フィナンシャルグループ 859 227,080 613,216 0.37
5830 5830 5830 5830 ☆いよぎんホールディングス 706 221,267 727,098 0.30
8334 8334 8334 8334 ★☆群馬銀行 504 214,648 497,915 0.43
  • ※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※純資産は2022/9末時点。PBRは時価総額(1/5時点)÷純資産

なぜ「地銀株」なのか?

ところで、なぜ今「地銀株」なのでしょうか。その大きな理由のひとつに「日銀による金融政策の修正」があげられます。

日銀は2016年9月にYCC(イールドカーブ・コントロール=長短金利操作付き量的・質的緩和)と呼ばれる金融政策に移行し、短期金利を-0.1%前後、長期金利を0%前後に誘導してきました。ここで、10年国債利回りについては0±0.25%の範囲内で変動することが許容(2021年3月以降)されてきました。

昨年12/20(火)まで開催の「日銀金融政策決定会合」では、日本の10年国債利回りの変動許容幅を、これまでの0±0.25%から0±0.5%に拡大するとの方針変更が示されました。市場はこれを「事実上の利上げ」と受け止め、長期金利は上昇。貸出金利や債券利回りの上昇を通じ、銀行の資金利益(貸出金利息や有価証券利息・配当から資金調達費用を差し引いたもの)が拡大するとの思惑から、銀行株の上昇が加速しました。

ただ、10年国債利回りの変動許容幅拡大は固定金利の上昇にはつながるものの、ただちに変動金利(住宅ローンの9割を占め、短期プライムレートに連動)の引き上げにつながる訳でなく、実質的な引き締め効果は当面大きくないとみられます。実際に銀行の収益回復が本格化するのは、マイナスの政策金利が解除された後でしょう。今回の銀行株上昇は「市場の驚き」による部分が大きく、市場の落ち着きとともに銀行株の株価上昇もいったんは落ち着くかもしれません。

それでも「時期を正確に当てることは難しいが、マイナス金利政策はいずれ解消される」(SBI証券企業調査部)とみられます。マイナス金利という投資環境が長く続いてきた分、「金利の回復」へ金融政策が動き始めたとみられることは、大きな変化とみられます。そして「金利が上がるから資金利益が増加する。だから銀行株を買うというのは正しい見方である」(同)と考えられます。

それでは、銀行株のうち、地銀株をより選好する理由は何でしょうか。金利が復活すると、銀行がリスクに見合った貸出金利を取れるのか、貸出以外でいかに顧客のニーズを汲み取り、ソリューションを提供できるかということが重要になってくると考えられます。大手地銀の多くは、コンサルティング能力を高め、事業領域を広げてきたと、SBI証券では評価しています。また、日本の金利の復活は国内の顧客に影響し、地銀のポートフォリオは殆どが国内の顧客なので、その意味でも地銀の業績増へ期待される面は大きいとみられます。

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