どっちが割安?日経平均 VS NYダウ

どっちが割安?日経平均 VS NYダウ

投資情報部 淺井一郎/栗本 奈緒実

2023/01/24

海外投資家にとって、堅調な推移の日経平均

1月第3週(1/16-20)の日経平均株価は434円01銭高(+1.7%)と続伸しました。

東京株式市場が好調なパフォーマンスをみせた背景には、1/17-18に開催された日銀・金融政策決定会合で金融緩和の維持が決定されたことがあります。昨年12/19-20に開催された前会合では、市場と対話することなく、長期金利の許容変動幅の拡大が決定されました。それを受けて、企業業績に寄与していたドル高・円安方向の動きも、円高方向に急速に進み、株式市場では混乱が生じていました。

長期金利の許容変動幅の拡大は“金融緩和政策の変更のための置石”として市場では、受け止められた形です。前会合時は、日銀の行動ががあまりにも唐突であったため、直後の会合であった1月会合(1/17-18)でも「また日銀が何かするのでは」と警戒感が強まっていた状態でした。

結果的には、1月会合で金融政策変更に関するサプライズはありませんでした。よって、事前に売られていた銘柄などが会合通過後に反動買いが入り、日経平均株価は大幅高となりました。

半面、図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(1/16~1/23)では、日銀の金融緩和政策変更への期待感から上昇が続いた銀行株の反動売りが目立ちました。

同期間の米国市場では、S&P500が▲0.7%と東京市場を下回るパフォーマンスでした。米国では、小売売上高など弱含みの経済指標が発表されたうえ、大手銀行などの企業決算が振るわなかったこと、大手IT企業等で大規模な人員削減の発表が続いていること等から米景気後退への懸念が増している形です。

12/19-20の日銀金融政策決定会合以降、日経平均株価は1/20(金)までで▲0.05%と軟調な値動きです。しかし、ドル建て日経平均株価は同期間+2.8%上昇しています。さらに、米経済指標がインフレ鈍化を示し始めた3ヵ月前からは+14.1%と円高のおかげで堅調な値動きです(同期間の円建て日経平均は▲1.3%)。よって、東京市場の7割を占めているといわれる海外投資家からみた日経平均は、上昇トレンドに乗っている最中で、堅調な株価推移となっています。

1月第4週以降、10-12月期の決算発表シーズンが本格的にスタートします。景況感悪化の影響による業績見通しの変化などに留意して、相場の方向感を見極めたい所です。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(1/16~1/23)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(1/16~1/23)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

どっちが割安?日経平均 VS NYダウ

2022年の日経平均とNYダウの年間騰落率は、日経平均が▲9.4%、NYダウは▲8.9%でした。NYダウは、米国の利上げの影響などで年央にかけて日経平均をアンダーパフォームしましたが、年末にかけて値を戻し、日経平均とほぼ同程度の騰落率となりました。今年に入ってからも、両指数のパフォーマンスには大きな差はないと見られますが、両指数のバリュエーション(割安・割高)を比較すると、どちらの指数が割安と言えるのでしょうか。

図表9 日経平均株価とNYダウの推移

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


まず、バリュエーションを測るうえで最も一般的な指標となる株価収益率(PER ※)で比較してみましょう。
※【株価収益率(PER)】=【株価】/【予想1株当たり利益(EPS)】 
【予想1株当たり利益(ESP)】は、ブルームバーグが算出している12ヵ月先予想EPS


現状、日経平均のPERは14倍台後半、NYダウが17倍台前半で推移しています(図表10)。両指数のPERと単純に比較すると日経平均の方がNYダウよりやや割安と言えます。ただ、過去のPERの推移を見ると、両指数ともに2020年のコロナショック発生前のピーク水準を下回っており、ヒストリカルに見ると両指数ともに割高感は無いように思えます。

図表10 PERの推移 (日経平均 VS NYダウ)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


もっとも、PERを長期金利との比較でバリュエーションを評価したイールド・スプレッド(※※)から見ると、見え方が少し違ってきます(図表11)。

※※ 【イールド・スプレッド】=【長期金利(10年国債利回り)】-【株式益利回り(PERの逆数)】

上の式では、長期金利が上昇すると、イールド・スプレッドが上昇することがわかります。これは株と債券の関係から見て、債券が相対的に割安(株が割高)になっていることを意味します。米国ではFRBによる金融引き締め政策の影響等で長期金利が大幅に上昇しており、イールド・スプレッドは歴史的な高値圏にあることが分かります。一方、日銀の金融政策により長期金利の上昇が限定的な日本のイールド・スプレッドは歴史的に低水準にあります。イールド・スプレッドから見ると、単純にPERで比較する以上に、日経平均がNYダウに対して割安感が強いと考えられます。

足元、日米主要企業の22年10-12月期(4Q)決算発表シーズンに差し掛かっています。一足先にシーズン入りした米国では、大手金融機関を中心に決算の不調さが目立ちます。今週以降、主力テクノロジー企業の決算発表が控える中、業績の下振れ傾向が続けば、業績予想(予想EPS)が引き下げにつながる可能性があります。そうなれば、NYダウの割高となり、日本株の割安感が強まるでしょう。日本企業の決算発表シーズンはこれからとなりますが、全体として順調な業績推移が確認されるようであれば、日経平均を評価する動きが強まることが期待されます。

図表11 イールド・スプレッド推移 (日経平均 VS NYダウ)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

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