アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算発表を受けて株価が上昇した、AMD、ストライカー、WWグレインジャーほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算発表を受けて株価が上昇した、AMD、ストライカー、WWグレインジャーほか~

投資情報部 榮 聡

2023/02/06

先週はFOMCで利上げ幅が0.25%ポイントに縮小、さらにパウエルFRB議長が「デフレ的プロセスが始まった」と発言して株価は上昇が続きましたが、週末には1月雇用統計の非農業部門雇用者数が大幅な増加となり、また、大手テクノロジーの決算が不振だったことで反落しました。今週の株価材料として、パウエルFRB議長を含む金融当局者の講演、バイデン大統領の一般教書演説、10-12月期決算の発表、などが注目されます。

今回は先週に10-12月期決算を発表した銘柄でポジティブと考えられるものから、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)ストライカー(SYK)WW グレインジャー(GWW)アライン テクノロジー(ALGN)パルト グループ(PHM)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(日足、6ヵ月)

200日移動平均線を上抜けてから上昇が加速しました。目先は押す可能性が高そうですが、200日移動平均と50日移動平均が交差する3,950ポイント辺りは下値支持ラインとして期待できそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーションサービス 5.3% 16.5% 26.4%
情報技術 3.7% 13.7% 17.0%
一般消費財・サービス 2.2% 14.5% 10.3%
資本財・サービス 1.7% 1.9% 8.3%
S&P500 1.6% 6.2% 9.7%
不動産 1.5% 8.1% 13.6%
金融 0.9% 3.4% 8.0%
生活必需品 0.6% -3.3% 2.5%
素材 0.0% 3.8% 10.8%
ヘルスケア -0.1% -2.3% 1.5%
公益事業 -1.5% -4.4% 1.3%
エネルギー -5.9% -2.0% -6.1%
騰落率上位(5日) 騰落率
メタ・プラットフォームズ 22.9%
フェデックス 12.7%
ゼネラル・モーターズ(GM) 8.4%
インテル 7.7%
テスラ 6.8%
騰落率下位(5日) 騰落率
コノコフィリップス -12.5%
シュルンベルジェ -7.6%
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) -7.2%
キャタピラー -6.3%
シェブロン -5.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.6%の上昇、NYダウは0.2%の下落、ナスダック指数は3.3%の上昇と2週連続でナスダック指数の上昇が目立ちました。

1/30(月)は利食いで反落となったもの、1/31(火)は雇用コスト指数や住宅価格の伸びが鈍化して、FOMCのお膳立てとして良好と捉えられて大幅反発しました。2/1(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では予想通り0.25%の利上げが決まり、声明文では利上げの継続が強調され、ややタカ派の印象となりました。一方、パウエルFRB議長が会見で、「デフレ的プロセスが始まった」と発言、FRBによる利上げは最終局面にあると捉えられ、株式相場は上昇に転じました。

2/2(木)はメタプラットフォームズの決算でコスト削減、投資抑制の方向が示され、また、400億ドルの自社株買いが発表されたことを受けて株価が23%上昇しました。これが大手テクノロジー銘柄の株価を刺激して、ナスダック指数は3%を超える大幅上昇となりました。

一方、2/3(金)は1月雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比51.7万人増と非常に強く、米10年国債利回りが上昇して株式相場は反落となりました。前日引け後に発表されたアップル、アルファベット、アマゾンの決算が冴えなかったことも相場の足をひっぱりました。

業種指数では、メタプラットフォームズを含む「コミュニケーションサービス」、アップル、インテルを含む「情報技術」、テスラを含む「一般消費財・サービス」の上昇が大きくなっています。一方、原油価格の下落を受けて「エネルギー」が大幅安、ディフェンシブ業種も劣後しました。

個別ではメタ プラットフォームズ A(META)が22.9%の上昇となってトップです。10-12月期決算は減収減益ですが、コスト削減、投資抑制の方向を明確に打ち出したことが好感されました。また、広告単価は前年同期比22%減の一方、アドインプレッション(広告表示回数)は同23%増と予想以上に良好だったこともポジティブでした。2023年12月期の予想EPSは、決算発表時をまたぐ過去4週に12.3%の上方修正となっています。

経済指標では、1月雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比51.7万人増と市場予想の同18.9万人増を大幅に上回りました。雇用の増加は、レジャー、ホスピタリティ、プロフェッショナル&ビジネスサービス、ヘルスケアなど幅広い産業にわたっています。昨年8月から12月まで5ヵ月連続で低下してきましたが、これが途切れた形です。

ただし、年末年始の季節要因の影響が大きい時期であること、雇用鈍化を示したADP雇用統計と大きく乖離していることから、イレギュラーな数字だった可能性も考えられ、その分市場の反応もマイルドになったとみられます。また、平均時給が前年比4.4%増と前月の同4.8%増から低下したことも市場の反応を抑えたとみられます。

今週の米国株式市場

米国市場では、10-12月期決算の発表が進むにつれ、企業業績見通しが下方修正されることへの警戒が高まっています。一方、インフレピークアウトを織り込む動きが続いているため、これは相場を支える要因になると期待されます。

今週の株価材料として、パウエルFRB議長を含む金融当局者の講演、バイデン大統領の一般教書演説、10-12月期決算の発表、などが注目されます。

FOMCを通過したことで、パウエルFRB議長のほか、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、FRBのウォラー理事、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁など、再び金融当局者の発言機会が増えます。先週のFOMC後の会見では、パウエルFRB議長が「デフレ的プロセスが始まった」と発言して市場は好感しましたが、これが幅広い金融当局者に共有されている見方なのかチェックすることになるでしょう。

バイデン大統領の一般教書演説は2/7(火)の米東部時間午後9時から上下両院合同会議で行われます。経済、国際安全保障、警察、銃による暴力など幅広い問題が扱われる見込みです。また、2024年の大統領選挙選に向けてのスタートに利用されることも想定されています。

10-12月期決算発表は大手テクノロジー企業が一巡して、すう勢は決したと言えるでしょう。ただ、企業数ではS&P500指数採用銘柄のうち50%の発表が残っています。今週はズームインフォテクノロジーズ、ウォルトディズニー、アッヴィ、ブリティッシュアメリカンタバコ、キャノピーグロース、ペイパルホールディングス、ペプシコ、S&Pグローバルなどの発表が予定されています。

FactSet社の集計によるS&P500指数採用銘柄の10-12月期EPS(発表済み企業の実績と今後発表する企業の予想の混合)は、2/3(金)に発表進捗率が50%の時点で、前年同期比5.3%減となっています。2020年7-9月期以来の減益となる見込みです。

経済指標では、2/10(金)に2月ミシガン大学消費者信頼感・速報値(前月の64.9から65.0に改善の予想)などの発表が予定されています。 

今週の5銘柄

今回は先週に10-12月期決算を発表した銘柄でポジティブと考えられるものから、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、ストライカー(SYK)、WW グレインジャー(GWW)、アライン テクノロジー(ALGN)、パルト グループ(PHM)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表3 決算がポジティブと考えられる銘柄(先週決算を発表したS&P500指数採用銘柄を対象に選定)

銘柄名(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) 1.5 3.6 16.0 -25.0
ストライカー(SYK) 5.0 5.8 10.7 10.7
WW グレインジャー(GWW) 1.0 2.2 13.2 31.3
アライン テクノロジー(ALGN) 2.3 11.8 -12.6 -38.9
パルト グループ(PHM) 12.3 24.4 18.7 44.6

注:※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(2/3)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)86.09ドル27.2

【データセンター向けと組み込み半導体が堅調】

・10-12月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回りました。データセンター向け売上が「エピック」の販売好調を背景に前年同期比42%増となったのが好感されました。インテルのデータセンター向けCPUの売上が33%減となっていたのと対照的で、同社の不振はAMDにシェアを食われている要因も大きいことが判明しました。前年同期比減益となっているのは、2022年2月に実行したザイリンクス買収にともなうのれん代償却の影響です。

・1-3月期の売上見通しは50~56億ドルで、中央値は前年同期比10%減と、ザイリンクス買収による押し上げ効果が剥落することもあって売上成長は大幅に鈍化する見通しですが、市場予想を上回りました。パンデミック時の需要先食いの反動によってPC市場の落ち込みは続きますが(10-12月期の売上は前年同期比51%減)、サーバー向けと組み込み半導体の事業は引き続き強い見通しです。

買付チャートストライカー(SYK)283.14ドル28.3

【好決算で上場来高値を更新】

・整形外科用医療機器メーカー。手術機器(手術用電動鋸)と股関節インプラント、骨接合材が柱で、2021年12月期の売上は手術機器および脳神経外科分野が56%、整形外科および脊椎分野が44%を占めます。事業拡大に企業買収を積極的に利用する会社で、2022年には医療コミュニケーションのプラットフォームを提供するVoceraを買収しています。

・10-12月期決算は、売上が前年同期比11%増、ドル高の影響を除いたオーガニック成長は同13%増、EPSは同11%増と堅調でした。分野別の売上成長は、手術機器および脳神経外科が同16%増、整形外科および脊椎が同4%増です。2023年12月期については、マクロ経済環境の変動性の高さに言及しつつも、同社の多くの事業分野のモメンタムは堅調であるとして、売上のオーガニック成長率は前年比7.0~8.5%増、EPSは9.85~10.15ドルが想定されています。

買付チャートWW グレインジャー(GWW)675.81ドル20.8

【2023年12月期業績見通しが市場予想を上回った。】

・工具など維持補修用の産業資材販売で全米最大、日本のMonotaROの親会社です。10-12月期決算は市場予想を若干上回る程度でしたが、2023年12月期の業績見通しが市場予想を上回って好感され、株価は上場来高値を更新中です。2023年12月期の売上は市場予想の159億ドルに対して162~168億ドル(前年比7~11%増)、EPSは30.6ドルの市場予想に対して32.0~34.5ドルを見込みます。

・10-12月期決算は、売上が前年同期比13%増、EPSが同31%増でした。為替の影響を除く売上は同17%増で、ドル高円安でMonotaROの業績が目減りして計上された影響が出ています。粗利率は価格引き上げ、配送効率の向上、事業ミックスなどにより前年同期の37.3%から39.6%に大きく改善し、EPSの大幅増加につながっています。景気減速の影響を受けやすい事業ですが、会社は堅調な業績拡大を見込みます。

買付チャートアライン テクノロジー(ALGN)343.10ドル43.4

【市場予想を上回る決算】

・プラスチック製の透明な歯列矯正システム「インビザライン」を世界の歯科医に提供している会社です。パンデミック時のリモートワークを機に歯列矯正をする人が増えたと見られますが、その反動で足もとは図表3の通り減収減益です。しかし、7-9月期との比較では、売上は1%増、EPSは6%増となって業績底入れの兆しがみられます。

・ワイヤー式の歯列矯正器の置き換えが進むことで、中期的な成長が期待されている会社です。ただ、歯列矯正にはお金がかかるため、景気動向の影響を受けます。いまのところ、リセッションはあっても浅いとみられていますが、会社はマクロ環境の不透明感を理由に2023年12月期の売上見通しは発表しませんでした。景気動向には注意が必要な会社です。

買付チャートパルト グループ(PHM)58.80ドル8.0

【上場来高値に接近】

・大手住宅メーカーの一角。24州にわたる41市場でに展開し、2021年の引き渡し戸数27,570戸は米国3位です。図表3の通り10-12月期は市場予想を大きく上回る増収増益の決算となって株価は上昇、2021年5月につけた63.91ドルの上場来高値に接近しています。

・住宅メーカーの足もとの事業環境は厳しく、2023年12月期は売上が前年比12%減、EPSは同32%減への悪化が見込まれています。しかし、住宅ローン金利が昨年10月にピークアウトしていることから、住宅市場は底入れをうかがう展開とみられます。今期予想EPSは7.39ドル、実績BPSが39.2ドルで、58.8ドルの株価は予想ER8.0倍、PBR1.5倍で典型的なバリュー株と言えるでしょう。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ビザは2023年9月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
6(月) ・ユーロ圏小売売上高(12月) ズームインフォテクノロジーズ
7(火) ・パウエルFRB議長が講演(ワシントン)
・バイデン大統領の一般教書演説(米東部時間午後9時)

・米貿易統計(12月)
・米消費者信用残高(12月)
エンフェーズエナジー
8(水) ・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁のインタビュー
(WSJ紙のライブイベント)
ウォルトディズニー
9(木) ・日本工作機械受注(1月)
・米新規失業保険申請件数(2月4日に終わる週)
アッヴィブリティッシュアメリカンタバコキャノピーグロース
ペイパルホールディングス
、ペプシコ、S&Pグローバル
10(金) ・中国生産者・消費者物価指数(1月)
・FRBのウォラー理事、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁
の講演(暗号資産コンファレンス)
・ミシガン大学消費者信頼感(2月、速報値)
 
12(日) ・第57回スーパーボウル(NFL優勝決定戦、アリゾナ州)  
13(月)   パランティアテクノロジーズ
14(火) ・日本実質GDP(10-12月期、速報値)
・ユーロ圏実質GDP(10-12月期、速報値)

・NFIB中小企業楽観指数(1月)
・米消費者物価指数(1月)
コカ・コーラ
15(水) ・ユーロ圏鉱工業生産(12月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(2月)
・米小売売上高(1月)
・米鉱工業生産(1月)
・NAHB住宅市場指数(2月)
アルベマール
16(木) ・日本機械受注(12月)
・米住宅着工・建設許可件数(1月)
・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(2月)
・米生産者物価指数(1月)
・米新規失業保険申請件数(2月11日に終わる週)
アプライドマテリアルズ
17(金)    

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

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