アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~中国回復の恩恵期待のスターバックス、キャタピラー、ナイキほか~

投資情報部 榮 聡
2023/03/06
先週は米10年国債利回りが4%台に到達して徐々に「金利上昇過熱感」が醸成された一方、株式には下落の行き過ぎに対する警戒から下落幅が限定されるようになり、週末にかけて金利低下、株式上昇という形で一気に反転しました。今週の株価材料として、パウエルFRB議長の議会証言、米2月雇用統計、中国貿易統計(1・2月累計)、などが注目されます。
今回は先週の中国PMIの改善を踏まえて中国経済の回復から恩恵が期待される銘柄として、スターバックス(SBUX)、キャタピラー(CAT)、ナイキ B(NKE)、ラスベガス サンズ(LVS)を、また、先週の決算発表が好感されたセールスフォース(CRM)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、6ヵ月)

一目均衡表の「雲」から反発しました。今週はもう一度下値を確認しにいく可能性がありますが、来週にかけて上値を試す展開が想定できそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
素材 | 4.0% | 2.3% | 4.2% |
コミュニケーションサービス | 3.3% | -6.3% | 6.9% |
資本財・サービス | 3.3% | 0.7% | 4.2% |
エネルギー | 2.9% | 1.2% | 2.3% |
情報技術 | 2.9% | -0.1% | 7.5% |
S&P500 | 1.9% | -1.6% | 2.6% |
一般消費財・サービス | 1.6% | -3.4% | 5.2% |
不動産 | 1.6% | -4.9% | 2.2% |
金融 | 0.8% | -1.7% | 3.7% |
ヘルスケア | 0.5% | -2.2% | -5.9% |
生活必需品 | -0.4% | -1.5% | -4.2% |
公益事業 | -0.7% | -3.8% | -6.8% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
セールスフォース | 14.9% |
フォード・モーター | 10.1% |
メタ・プラットフォームズ | 8.7% |
ボーイング | 8.6% |
キャタピラー | 8.1% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
CVSヘルス | -4.6% |
メルク | -2.7% |
コストコホールセール | -2.7% |
オールステート | -2.6% |
AT&T | -2.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.9%、NYダウは1.7%、ナスダック指数は2.6%の上昇でした。
米10年国債利回りが4%台に到達して徐々に「金利上昇過熱感」が醸成された一方、株式には下落の行き過ぎに対する警戒から金利上昇の割には下落幅が限定されるようになり、週末にかけて金利低下、株式上昇という形で一気に反転しました。S&P500指数の一目均衡表では、ちょうど「雲」を下値支持ラインとして反発した形です。
米10国債利回りが4%台に到達する過程では、米国の2月ISM製造業景気指数の価格指数が前月の44.5から51.3へ大幅に上昇、新規失業保険申請件数が7週連続で20万人を下回るなど経済指標の動向に加え、ドイツ、フランスの10年国債利回りが昨年来の高値を更新して上昇したことなどが刺激材料となりました。
一方、金融当局者からの発言では、3/2(木)にアトランタ連銀のボスティック総裁が、次回FOMCでは0.25%の利上げを支持する、政策金利のターミナルレート(最高到達点)として5.1%前後を想定すると発言したことで、株式反発の契機となりました。
業種指数では、中国のPMIが改善したことから、「素材」「資本財・サービス」「エネルギー」などの上昇が大きくなりました。「コミュニケーションサービス」の上昇にはメタプラットフォームズの上昇が効いています。相場が上昇に転じたことでディフェンシブ業種が劣後しています。
個別銘柄ではメタ プラットフォームズ A(META)の上昇が目立ちました。仮想現実(VR)用のゴーグル型端末の普及促進に向けて、普及機のメタ・クエスト2を1割、上位機種のクエストプロを3割、価格を引き下げると3/3(金)に発表して、株価が6.1%の上昇しています。
経済指標では、米国の2月ISM製造業景気指数が前月の47.4から47.7に改善、ISM非製造業景気指数は前月の55.2から55.1にやや低下しました。製造業が低調、非製造業が頑強との基調が続いていることが確認されました。
今週の米国株式市場
年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効と考えられます。
相場下落の一因となっていた金融当局者の発言は3/11(土)からブラックアウト期間に入るため、3/22(水)のFOMC結果発表までなくなりますので、反発を試す展開が続くと期待できそうです。
今週の株価材料として、パウエルFRB議長の議会証言、米2月雇用統計、中国貿易統計(1・2月累計)、などが注目されます。
3/7(火)、3/8(水)のパウエルFRB議長の議会証言は、3/11(土)からFOMCを控えたブラックアウト期間に入るため、一連の金融当局者の発言を締める形です。最近の金融当局者からのタカ派発言をやや和らげる方向が想定されそうです。
米国の1月雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比51.7万人増と非常に強く、株式市場が上昇から下落に流れが変わる一つのきっかけとなりました。ただ、1月の数字は「季節調整のゆがみ」が出やすいことや通常より温暖な天候のため、基調から乖離した数字となっていた可能性もあり、今回はそれが確認できるとみられます。市場予想は前月比21.5万人増と通常ペースに戻る予想です。
中国の貿易統計は、1・2月累計の輸出が前年比9.0%減の予想(12月は同9.9%減)、1・2月累計の輸入が前年比5.5%減の予想(12月は同7.5%減)です。中国の年初の統計は旧正月のタイミングによってかく乱されるため、1月・2月の累計で発表されることが慣例となっています。世界経済の減速を和らげる効果が期待されている中国経済の指標には注目が高まっています。
なお、3/5(日)に開幕した中国全人代では、2023年の実質GDP成長率目標が前年比5%前後と発表されました。2022年の同3.0%増からの回復を目指しています。
経済指標では上記のほか、3/6(月)に米国の1月製造業受注(前月比1.8%減、輸送除いて同1.0%増)、3/8(水)に米国の2月ADP雇用統計(前月比20万人増の予想)、3/10(金)に米国の2月雇用統計の失業率(3.4%の予想)、平均時給(前年比4.7%増の予想、前月は同4.4%増)、などの発表が予定されています。
企業イベントでは、クラウドストライクホールディングス、アルタビューティ、オラクルなどの決算発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は中国の「ゼロコロナ政策」の見直し、経済再開の動きから恩恵を受けると期待される米国企業をご紹介いたします。
先週発表された2月の製造業・非製造業PMIは2ヵ月連続で大きく改善して50を上回り、中国経済が順調に回復していることが確認されました(図表3)。
さらに今月は貿易統計や鉱工業生産、小売売上高などのハードデータによって経済回復の動向が判明します。というのも、昨年末に「ゼロコロナ政策」は撤廃されましたが、直後の12月は感染急増によって経済の回復がままならず、1月の経済指標は旧正月の関係で発表されず、1月・2月累計の数字が今月に発表されるためです。
中国関連から、スターバックス(SBUX)、キャタピラー(CAT)、ナイキ B(NKE)、ラスベガス サンズ(LVS)の4銘柄を選びました。さらに、先週市場予想を大きく上回る決算を発表したセールスフォース(CRM)を加えて、今週の5銘柄といたします。
図表3 中国の製造業・非製造業PMI(購買担当者景気指数)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (3/3) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | スターバックス(SBUX) | 104.55ドル | 30.8 | 【中国事業の回復に期待】 ・中国事業の回復が期待されます。2022年9月期の中国売上は9%を占め、同期末の中国店舗数は5,360店です。2020年9月期から2022年9月期の店舗数の伸び率は、全社が15%であるのに対して中国は52%に達しており、中国は同社の成長をけん引する市場となっています。 | |
買付 | キャタピラー(CAT) | 255.31ドル | 16.1 | 【建機、鉱山機械とも堅調】 ・10-12月期のEPSは市場予想を3%下回りましたが、主に為替の影響によるもので、製品需要は堅調であることから業績見通しの上方修正につながったとみられます。10-12月期の売上(金融部門を除く)は、ディーラーの在庫積み上げを受けて販売数量・販売価格ともプラスに寄与、前年同期比21%増と好調でした。部門別の売上は、建機が前年同期比19%増、鉱山機械が同26%増、エネルギー&トランスポーテーションが同19%増でした。 ・2023年12月期については、価格引き上げの効果で増収を見込んでいます。ディーラーの在庫に大きな変動はなく、最終顧客の購入は増加する見通しです。説明会でCEOが中国売上は年内に回復しない見通しだとしましたが、経済再開のもとで需要が回復しないのは考えにくく、足もとの状況から保守的な見方を示したものとみられます。中国の売上構成比は5~10%とされ、さほど大きくありませんが、非鉄金属類の消費が世界の半分を占めるなど、間接的なものも含めると影響は非常に大きいと考えられます。 | |
買付 | ナイキ B(NKE) | 120.94ドル | 38.5 | 【中国事業の回復に期待】 ・スポーツ用品の世界首位企業。2022年5月期の売上構成比に占める中国割合は16%と比較的高く、これまで業績の足をひっぱっていました。しかし、中国のリオープンは今後の業績伸長に寄与することが期待されます。12-2月期決算は3/21(火)の引け後に発表の予定で、市場コンセンサスは、売上が前年同期比5%増、EPSが同39%減の予想です。 ・9-11月期決算は売上が前年同期比17%増と伸びましたが、在庫削減のための値引きとドル高(売上の伸びを10%ポイント押し下げ)で粗利率が3.0%ポイント低下してEPSは同2%増にとどまりました。ナイキブランドの北米売上が前年同期比30%増と値引き販売の効果もあって大きく伸びましたが、中華圏売上は同3%減(為替の影響を除いて同6%増)と業績の足を引っ張っています。在庫は8月末の96.6億ドルから11月末に93.3億ドルに低下して、ピークは過ぎたとみられます。 | |
買付 | ラスベガス サンズ(LVS) | 60.80ドル | 39.0 | 【マカオ事業の回復に期待】 ・10-12月期決算は市場予想を大幅に下回りましたが、決算発表翌日の株価は上昇し、中国のリオープンに対する市場の期待がうかがえます。同社は2022年2月にラスベガスの事業を売却したことで、マカオの「ベネチアン・マカオ」など5つの統合リゾート(IR)とシンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」が主力事業となっています。コロナ前2019年12月期のラスベガスを除く売上構成比は、マカオが66%、シンガポールが34%です。 ・アナリストからは「マカオの不動産EBITDA(利払い・税金・償却前利益)の損失が予想よりも少なく、シンガポールではEBITDAの回復が続いている。マカオのロンドナーとシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズの両ホテルがフル稼働していない状況で、これだけの結果を出したことは心強い。フル稼働に戻ればさらなるEBITDA回復余地があることを示唆している」と前向きな評価が聞かれました。 | |
買付 | セールスフォース(CRM) | 186.43ドル | 27.5 | 【今年度の利益見通しが市場予想を大きく上回る】 ・ 企業向け顧客関係管理(CRM)ソフトウェアで世界首位の会社です。2024年1月期のガイダンスは、売上が前年比約10%増と2023年1月期の同18%増から減速するものの、調整後営業利益率が約27%、1株利益は7.12~7.14ドルで、それぞれ市場予想の22.4%、5.87ドルを大きく上回りました。最近の人員削減と不動産削減が寄与するほか、経営の優先事項がこれまでの売上拡大から収益性向上に舵をきったことがうかがわれます。 ・11-1月期決算は、売上が前年同期比14%増(為替の影響を除いて同17%増)、調整後EPSは1.68ドルで同2倍、それぞれ市場予想を5%、23%上回ってポジティブサプライズとなりました。2-4月期のガイダンスは、売上が前年同期比約10%増、調整後EPSは1.60から1.61ドルです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、スターバックスが2023年9月期、セールスフォースが2024年1月期、その他はいずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
6(月) | ・ユーロ圏小売売上高(1月) ・米製造業受注(1月) |
・米国のエネルギー年次カンファレンス「CERAWeek」開催 (ヒューストン、10日まで) |
7(火) | ・中国貿易統計(2月) ・パウエルFRB議長議会証言(上院銀行委員会) ・米消費者信用残高(1月) |
クラウドストライクホールディングス |
8(水) | ・ユーロ圏実質GDP(10-12月期、確報値) ・パウエルFRB議長議会証言(下院金融サービス委員会) ・米ADP雇用統計(2月) ・米貿易統計(1月) ・米求人労働異動調査(1月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
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9(木) | ・日本実質GDP(10-12月期、改定値) ・中国生産者・消費者物価指数(2月) ・日本工作機械受注(2月) ・米バイデン政権が2024会計年度予算教書提出 ・米チャレンジャー人員削減数(2月) ・米新規失業保険申請件数(3月3日に終わる週) ・米家計純資産(10-12月期) |
オラクル、アルタビューティ |
10(金) | ・日銀金融政策 ・米雇用統計(2月) |
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13(月) | ジムインテグレーテッドシッピング | |
14(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(2月) ・米消費者物価指数(2月) |
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15(水) | ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(2月) ・米生産者物価指数(2月) ・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(3月) ・米小売売上高(2月) ・米NAHB住宅市場指数(3月) |
アドビ |
16(木) | ・日本機械受注(1月) ・ECB主要政策金利 ・米輸入物価指数(2月) ・米住宅着工・建設許可件数(2月) ・米新規失業保険申請件数(3月10日に終わる週) ・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(3月) |
フェデックス、ダラーゼネラル、レナー |
17(金) | ・米鉱工業生産(2月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(3月、速報値) ・トリプルウィッチング (株価指数先物・オプションの取引期限満了日) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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