アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~先週の注目決算、ネットフリックス、JPモルガンチェース、インテューイティブ サージカルほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~先週の注目決算、ネットフリックス、JPモルガンチェース、インテューイティブ サージカルほか~

投資情報部 榮 聡

2023/04/24

先週は2月高値が意識されて利食いが出ていたとみられ、またテスラ、ネットフリックスなど注目度の高い銘柄の決算が不振でセンチメントを悪化させました。一方、米10年国債利回りは頭打ちとなり相場を支える要因になったとみられます。今週の株価材料として、テクノロジー大手の決算、米国の1-3月期GDP速報値、債務上限に関する議論、などが注目されます。

今回は4/14(金)から4/20(木)にかけて発表された1-3月期決算から注目できる銘柄として、ネットフリックス(NFLX)JPモルガン チェース(JPM)インテューイティブ サージカル(ISRG)ラスベガス サンズ(LVS)M&Tバンク(MTB)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

2/2(木)に付けた今年の高値が意識されて利食いがでているようです。一方、押し目には買いも入っているとみられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
生活必需品 1.7% 4.9% 4.5%
不動産 1.6% 4.5% -6.1%
公益事業 1.1% 6.0% 0.0%
金融 1.0% 7.1% -7.2%
資本財・サービス 0.8% 3.8% -0.1%
一般消費財・サービス 0.5% 4.4% 4.9%
S&P500 -0.1% 4.1% 2.9%
ヘルスケア -0.2% 5.4% 0.6%
素材 -0.3% 5.0% -3.0%
情報技術 -0.5% 1.4% 10.4%
エネルギー -2.5% 9.2% -5.6%
コミュニケーションサービス -3.1% 1.3% 6.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
アボットラボラトリーズ 7.4%
メドトロニック 6.2%
モルガン・スタンレー 5.1%
ロウズ 4.4%
アマゾン・ドット・コム 4.3%
騰落率下位(5日) 騰落率
テスラ -10.8%
AT&T -8.6%
シスコシステムズ -6.9%
コノコフィリップス -5.8%
フォード・モーター -5.7%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.1%、NYダウは0.2%、ナスダック指数は0.4%の下落でした。

2月高値が意識され利食いが出ているとみられるほか、企業決算は全体では予想を上回っているものの、テスラ、ネットフリックスなど市場の注目度が高い銘柄が不振で相場のセンチメントを悪くしているようです。

経済指標では、NY連銀製造業景気指数が大幅改善の一方、フィラデルフィア連銀製造業景気指数が大幅悪化、S&Pグローバル米PMI(購買担当者景気指数)が予想外の改善など、まちまちでした。一方、中国のGDPや月次経済指標は改善して下支えの要因となりました。

米10年国債利回りは前週から4/17(月)にかけて3.6%台まで上昇しましたが、その後景気指標の悪化を受けて3.5%台半ばまで反落しています。金融当局者の発言にはタカ派のものが目立ち、株価を抑える方向に作用しているようです。

業種指数では、ディフェンシブの「生活必需品」や配当利回りが高い「不動産」、「公益事業」、銀行の決算発表が進んだ「金融」などが上昇する一方、AT&Tの下落が効いた「コミュニケーションサービス」の下落が大きくなりました。

個別銘柄では、テスラ(TSLA)の下落が目立ちました。1-3月期決算で値下げなどにより粗利率が19.3%と市場予想の21.2%を大きく下回ったことが嫌気されました。マスクCEOは利益の確保より台数の伸びにフォーカス、値下げ継続を示唆するも将来的な果実の最大化に自信を示しましたが、市場は足元の業績悪化を懸念しているようです。

今週の米国株式市場

年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効と考えられます。

押し目には買いが入っているもようで、相場にさほど弱い印象はありません。テクノロジー大手の決算が市場予想並みで出てくれば、まだ2月高値を超える可能性はありそうです。ただ、3ヵ月程度を見渡すと、相場下落の可能性が高いと思われるため、上昇した局面では売り目線で臨むのがよさそうです。

今週の株価材料として、テクノロジー大手の決算、米国の1-3月期GDP速報値、債務上限に関する議論、などが注目されるでしょう。

今週はマイクロソフト、アルファベット、メタプラットフォームズ、アマゾンドットコムの決算が発表されます。GAFAMのうち、アップルは5/4(木)の予定です。FactSet社の集計によるS&P500指数採用企業のEPS(発表済み企業の実績と今後発表される企業の予想の混合)は前年同期比6.2%減と前四半期の同4.6%減に続いて低調が見込まれています。

4/27(木)に発表予定の米国1-3月期実質GDP速報値は、前期比年率2.0%増の予想で、2022年10-12月期の同2.6%増からは鈍化の予想です。ただし、1、2月の経済指標が強かったことを受けて1-3月期GDPの予想は年初来上方修正されてきました。足もとでは景気減速が続き、先行き緩やかながらリセッションも想定されている中、市場の反応が注目されます。

4/19(水)に米下院のマッカーシー議長(共和党)らが債務上限を最大1.5兆ドル引き上げる一方、連邦政府の支出を4.5兆ドル削減する独自の法案を発表、債務上限問題に対する市場の注目が高まっています。バイデン大統領は今回の共和党案について、「最も脆弱な人々を傷つける」ものとして、支出に関する交渉は行わないとしています。

債務上限に関する対応が行われない場合、米国政府が債務不履行に陥る時期は従来予想されいた7~9月ではなく、6月前半になる可能性が高まっていると言われています。米国の債務上限問題は過去十数年で何回も問題になり、相場の決定的なネガティブ材料となることなくやり過ごすことができてきましたが、それが油断になる可能性には注意が必要だと思われます。

経済指標では上記のほか、4/25(火)に米国の3月新築住宅販売件数(前月比-1.6%減の予想)、米国の4月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の104.2から104.0に悪化の予想)、4/26(水)に米国の3月耐久財受注(前月比0.8%増の予想)、4/28(金)に米国の3月消費支出物価指数(総合指数は前年比4.1%増の予想、前月は同5.0%増、コア指数は前年比4.5%増の予想、前月は同4.6%増)、などの発表が予定されています。

企業イベントでは上記のほか、コカコーラ、ビザ、ベライゾンコミュニケーションズ、マクドナルド、インテル、3M、ボーイング、インテル、メルク、キャタピラー、シェブロン、エクソンモービルなどの決算発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は4/14(金)から4/20(木)にかけて発表された1-3月期決算から、注目できる銘柄をピックアップしました。ネットフリックス(NFLX)、JPモルガン チェース(JPM)、インテューイティブ サージカル(ISRG)、ラスベガス サンズ(LVS)、M&Tバンク(MTB)を選んでご紹介いたします。

図表3 注目決算の概要(4/14(金)~4/20(木)発表、S&P500指数採用銘柄)

  売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
ネットフリックス(NFLX) -0.2 0.7 3.7 -18.4
JPモルガン チェース(JPM) 6.8 21.3 24.5 55.9
インテューイティブ サージカル(ISRG) 6.1 1.7 14.0 8.9
ラスベガス サンズ(LVS) 16.1 68.7 124.8 黒字転換
M&Tバンク(MTB) 1.0 1.0 66.1 46.9

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(4/21)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートネットフリックス(NFLX)327.98ドル29.1

【世帯外のアカウント共有対策を進める】

・1-3月期の加入者純増は175万人と市場予想の241万人を下回り、4-6月期見通しは売上が前年同期比3%増、EPSは同11%減で、これも市場予想を下回って決算は低調でした。一方、世帯外のアカウント共有に追加で課金する試みをカナダなど4ヵ国で行っていることが注目されます。同社の加入者数は3月末時点で2.3億人ですが、不正にアカウントを共有して視聴している人が1億人程度いると言われており、現在対策を進めています。

・米国での実施は当初1-3月期の終わりを予定していましたが、現在の試行で積み上がりつつある知見を活かすめ、4-6月期に延期しました。4-6月期のガイダンスが予想を下回った一因とみられます。当面、加入者数、業績とも不安定となりやすいものの、中期的な業績拡大につながると期待されています。

買付チャートJPモルガン チェース(JPM)140.54ドル10.0

【業界内のポジションを強める】
 
・1-3月期の純金利収入は金利上昇を背景とした純貸出利ざやの拡大によって前年同期比49%増となり、市場予想も8%上回りました。非金利収入も同5%増と堅調でした。注目された預金額は2022年末から1.6%増加しました。大手を含め多くの銀行が預金を減らす中、業界の中で信用力が特に高い銀行とみられている証拠と言えるでしょう。今回の銀行破綻問題により、業界内のポジションを強めたといえそうです。

・1-3月期決算は好調でした。営業収益は前年同期比25%増、EPSは同56%増で、それぞれ市場予想を7%、21%上回りました。部門別の純利益は、コンシューマー&コミュニティバンキングが同80%増、コーポレート&インベストメントバンクが同1%増、コマーシャルバンクが同58%でした。金利収入が非常に好調、手数料数入はさほどでもないことが反映されています。

買付チャートインテューイティブ サージカル(ISRG)300.22ドル55.2

【業績回復が安定化】

・手術支援ロボットで世界トップの実績を誇る「ダビンチ」を販売する会社です。地域により濃淡はあるものの、全体的にパンデミックによる混乱から回復して売上・利益とも安定しつつあるようです。ジョンソン&ジョンソンの医療機器売上の伸び率が10-12月期の前年同期比1%減から1-3月期に同7%増に加速したこと、アボットの1-3月期医療機器売上が市場予想を5%上回ったことなど、医療機器の売上回復は業界全体で進んでいるとみられます。

・1-3月期の「ダビンチ」を使った手術件数は前年同期比26%増でした。中国ではパンデミックの影響が残った一方、米国では前年同期にパンデミックの影響で落ち込んだ反動増があったとしています。「ダビンチ」の設置台数は前年同期比12%増と堅調です。Bloombergアナリストの分析では、2025年までの売上成長は10%台後半、2023年は20%台の可能性があるとしています。

買付チャートラスベガス サンズ(LVS)63.05ドル34.5

【マカオの回復が順調】 

・中国の「ゼロコロナ政策」撤廃を受けて、マカオのカジノ売上が市場予想以上の回復となっています。マカオ事業の売上は2019年1-3月期の約半分の水準で、さらに回復の余地が大きいと言えます。同社は2022年2月にラスベガスの事業を売却したことで、マカオの「ベネチアン・マカオ」など5つの統合リゾート(IR)とシンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」が主力事業となっています。コロナ前2019年12月期のラスベガスを除く売上構成比は、マカオが66%、シンガポールが34%です。

・1-3月期は売上が前年同期比2.2倍、純利益は147百万ドルで黒字転換し、2020年1-3月期以来3年ぶりの黒字化を達成しています。マカオ事業の売上が同2.3倍、マリーナ・ベイ・サンズが同2.2倍で、調整後の不動産EBITDA(利払い、税金、償却前利益)はそれぞれ、398百万ドル、792百万ドルに回復しています。

買付チャートM&Tバンク(MTB)124.09ドル7.4

【NY州地盤の地方銀行】 

・S&P500指数に採用されている7つの地方銀行のうちの一つです。銀行破綻を受けて株価は大幅に下落しましたが、1-3月期決算は好調で預金の流出も大きな懸念のない水準のため、銀行不安の終息とともに株価の戻りが期待できそうです。同行はニューヨーク州バッファロー地盤の金融持ち株会社で、買収によりニューヨーク州に隣接するニューイングランド地域へ展開することで成長が期待されています。

・1-3月期決算は営業収入が前年同期比66%増、EPSが同53%増で、ほぼ市場予想並でした。長期金利の上昇を受けて純貸出利ざやが2.65%から4.04%に拡大、純金利収入は同2倍に伸びて業績をけん引しました。預金額については2022年末比2.7%減少して、大手銀行よりも減少率が大きくなっているものの、破綻につながるようなものでなく、安心感が広がっているようです。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
24(月) ・ドイツIFO企業景況感(4月)
・米シカゴ連銀全米活動指数(3月)
コカコーラ、ファーストリパブリックバンク
25(火) ・S&PコアロジックCS住宅価格(2月)
・米新築住宅販売件数(3月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(4月)
マイクロソフトアルファベットビザ3M
ベライゾンコミュニケーションズ、
マクドナルド
ダウ、ダナハー、ゼネラルエレクトリック、エンフェーズエナジー
26(水) ・米耐久財受注(3月) ボーイングメタプラットフォームズ
ヒルトンワールドワイド、サービスナウ
27(木) ・中国工業部門利益(3月)
・ユーロ圏景況感(4月)
・米新規失業保険申請件数(4月22日に終わる週)
・米実質GDP(1-3月期、速報値)
・米中古住宅販売成約(3月)
アマゾンドットコムアルトリアグループ、アッヴィインテル
メルク、イーライリリィ、アメリカン航空、キャタピラー
28(金) ・日銀政策金利
・ユーロ圏実質GDP(1-3月期)
・米個人所得・個人支出(3月)
・米消費支出物価指数(3月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(4月、確報値)
シェブロンエクソンモービル
30(日) ・中国製造業・非製造業PMI(4月)  
5月
1(月)
・米ISM製造業景気指数(4月)
・財新中国製造業PMI(4月)
ズームインフォテクノロジーズアリスタネットワークス
2(火) ・米求人労働異動調査(3月)
・米製造業受注(3月)
・ワーズ自動車販売台数(4月、3日までに発表)
アドバンストマイクロデバイセズファイザースターバックス
3(水) ・米FOMC政策金利
・ISM非製造業景気指数(4月)
 
4(木) ・ECB主要政策金利
・チャレンジャー人員削減数(4月)
・新規失業保険申請件数(4月29日に終わる週)
インテルコインベースグローバル
5(金) ・ユーロ圏小売売上高(3月)
・米雇用統計(4月)
・米消費者信用残高(3月)
バタフライネットワークスワーナーブラザーズディスカバリー

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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