アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、メタ、GEほかアナリストが目標株価を引き上げた銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、メタ、GEほかアナリストが目標株価を引き上げた銘柄~

投資情報部 榮 聡

2023/05/29

先週は主に債務上限問題に関する交渉が停滞したことで週前半は下落、週後半にはエヌビディアの2-4月期決算発表を受けてテクノロジー株への物色が盛り上がり、債務上限問題の解決に対する期待も高まって反発、S&P500指数は終値ベースで年初来高値を更新しました。今週の株価材料として、AI相場の持続性、債務上限問題の行方、金融当局者の発言、などが注目されます。

今回は直近の四半期決算を挟んでアナリストの目標株価の引き上げが大きかった銘柄から、エヌビディア(NVDA)メタ プラットフォームズ A(META)ゼネラル エレクトリック(GE)フェデックス(FDX)マイクロソフト(MSFT)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

S&P500指数は終値ベースで年初来高値を更新しました。相場上昇をけん引するナスダック指数は年初来高値を大幅に更新して、2022年8月16日の52週高値13,181.09ポイントに対して1.6%まで迫っています。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 5.1% 9.8% 22.3%
コミュニケーションサービス 1.2% 6.3% 21.5%
一般消費財・サービス 0.4% 3.3% 5.3%
S&P500 0.3% 0.9% 5.9%
エネルギー -1.1% -8.0% -5.6%
不動産 -1.4% -5.5% -6.7%
資本財・サービス -1.4% -1.9% -2.5%
金融 -1.5% -3.4% -10.2%
公益事業 -2.4% -6.9% -0.8%
ヘルスケア -2.9% -4.6% 0.2%
素材 -3.1% -5.5% -6.9%
生活必需品 -3.2% -5.2% 1.7%
騰落率上位(5日) 騰落率
エヌビディア 24.6%
アドビ 11.9%
テスラ 7.2%
メタ・プラットフォームズ 6.7%
キャピタル・ワン・ファイナンシャル 5.0%
騰落率下位(5日) 騰落率
メドトロニック -8.8%
ターゲット -8.8%
オールステート -7.0%
スターバックス -6.6%
ナイキ -6.3%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.3%の上昇、NYダウは1.0%の下落、ナスダック指数は2.5%の上昇でした。エヌビディアの決算発表を受けてテクノロジー株への物色が強まり、NYダウとナスダック指数の騰落率の乖離が3.5%ポイントと大きくなりました。

週の前半は債務上限問題が足かせとなり下落したものの、週後半にはエヌビディアの5-7月期売上ガイダンスが市場予想を5割以上上回ったことを受けてテクノロジー株への物色が盛り上がり、債務上限問題の解決に対する期待も高まって反発、S&P500指数は終値ベースで年初来高値を更新しました。

債務上限問題は5/22(月)のバイデン大統領とマッカーシー下院議長の3回目の会談は成果なく終了、その後共和党、民主党双方から債務上限合意のハードルを引き上げる動きが出て解決への期待が低下、5/23(火)、5/24(水)の相場下落につながりました。一方、5/26(金)には債務上限を2年引き上げる一方で、大方の支出を抑制する案で合意に近づいているとされました。

FOMC議事要旨では、6月FOMCでの利上げ休止、あるいは、利上げ継続に関して参加者の意見が割れていることが判明しました。さらに5/26(金)の4月個人消費支出物価指数は、総合指数、コア指数とも前月からインフレ加速を示し、追加利上げの見方が強まりました。米10年国債利回りは前週の3.6%台から3.8%台へ上昇となっています。

業種指数では、「情報技術」が5.1%の大幅高となりました。同指数の上昇寄与率上位は、エヌビディアが38.1%、マイクロソフトが22.8%、ブロードコムが12.0%、AMDが6.6%、アドビが5.4%で、この5社で85%を占めます。テクノロジー株以外で上昇したテスラ(TSLA)は、フォードモーターとEV充電器に関して提携したことが好感されました。一方、下落率が大きいメドトロニック(MDT)は2024年5月期のEPSガイダンスが市場予想を下回って嫌気されましたが、売上見通しが保守的となっている可能性が指摘されています。

今週の米国株式市場

年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効と考えられます。

債務上限引き上げ交渉の進展、AI相場の継続を考えると、当面は相場上昇が続きそうですが、その後は反落を警戒するべきタイミングにきていると考えられます。年初来の株価上昇はインフレピークアウトによる予想PERの上昇が主因ですが、足もとでインフレ低下の歩調が鈍っていることが主な懸念要因です。

今週の株価材料として、AI相場の持続性、債務上限問題の行方、金融当局者の発言、などが注目されます。

エヌビディアの決算によって、生成AIを自社の事業に取り込もうとうする企業の熱い意欲が明らかとなりました。生成AIの普及は、2000年にITバブルを生んだインターネットの普及に匹敵するとの見方もあります。このような見方からすると、AI利用によってテクノロジー業界が活性化し、さらに幅広い産業での生産性の上昇につながり、その結果として予想PERの上昇許容度が広がって株式相場全体を押し上げるというシナリオも描けるでしょう。

一方、アナリストがエヌビディアの売上急拡大を全く想定していなかったことからは、需要拡大の動きがいまのところエヌビディアに集中しており、他の産業統計や企業の売上動向にはその兆候がまだ表れていないということがうかがえます。上記のような壮大なシナリオを織り込むには、エヌビディアの決算だけでは証拠が足りないと考えられます。

このため、AI利用の波及効果を確認するため、例えば、AIの利用でデータセンターの稼働率が上昇している、AIを利用したサービスの需要が拡大している、などのさらなるハードデータによる証拠を探しにいくと考えられます。それが確認できるまでは、相場の押し上げは一旦休止となるのではないでしょうか。

債務上限問題は、バイデン米大統領と野党共和党のマッカーシー下院議長が5/27(日)に、債務上限を2年間引き上げる一方で、同期間の歳出を抑制する(国防費以外の裁量的支出を1年間は2023年水準に抑え、2025年には1%増やす)ことで合意しました。今後は5/31(水)に予定される議会での採決に向け、各党での議員に対する説得が行われます。なお、米政府の資金が枯渇するとされる日付はイエレン財務長官によって6/1(木)から6/5(月)に繰り下げられています。

再来週にサイレント期間を控えて、引き続き金融当局者の発言が多く予定されています。先週発表の5月FOMC議事要旨では追加利上げに関して参加者の意見が割れていることが判明しました。これを受けて6月FOMC(6/13(火)、6/14(水)開催)も利上げとなる可能性が高まってきましたが、この流れ続くか注目されます。

経済指標では、5/30(火)に米国5月のコンファレンスボード消費者信頼感(前月の101.3から99.0に悪化の予想)、5/31(水)に中国の5月製造業PMI(前月の49.2から49.4に改善の予想)、同非製造業PMI(前月の56.4から55.2に悪化の予想)、6/1(木)に米国の5月ADP雇用統計(16.5万人増の予想)、米国5月ISM製造業景気指数(前月の47.1から47.0に悪化の予想)、6/2(金)に米国の5月非農業部門雇用者数(前月比19.0万人増の予想)、などが発表予定です。

企業イベントでは、キャノピーグロース、HP、クラウドストライクホールディングス、セールスフォース、ブロードコム、ダラーゼネラルなどの決算発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は直近の四半期決算を挟んでアナリストの目標株価の引き上げが大きい銘柄をご紹介いたします。

S&P100指数採用銘柄を対象に、過去3ヵ月の目標株価修正率上位15銘柄を図表3に抽出しました。

上位の銘柄から、エヌビディア(NVDA)メタ プラットフォームズ A(META)ゼネラル エレクトリック(GE)フェデックス(FDX)マイクロソフト(MSFT)を選んでご紹介いたします。

図表3 目標株価上方修正率トップ15社(過去3ヵ月、S&P100指数採用銘柄対象)

コード 銘柄名 目標株価
修正率
(3ヵ月)
(%)
EPS
修正率
(3ヵ月)
(%)
目標株価
乖離率
(%)
株価
(5/25)
(ドル)
予想
PER
(倍)
NVDA エヌビディア 68.8 56.3 13.0 379.80 45.7
META メタ・プラットフォームズ 26.5 15.3 8.0 252.69 17.2
GE ゼネラル・エレクトリック(GE) 24.6 6.1 6.1 101.52 41.8
FDX フェデックス 23.5 8.8 12.0 225.08 12.9
MSFT マイクロソフト 14.8 3.4 2.9 325.92 30.7
AMD アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) 13.1 -8.3 -15.8 120.35 38.4
INTC インテル 12.0 -46.2 16.6 27.40 42.3
LLY イーライリリー 11.4 1.8 -0.1 427.31 44.9
MDLZ モンデリーズ・インターナショナル 8.7 0.8 7.9 75.18 23.1
LIN リンデ 8.6 3.0 13.5 356.59 25.5
MCD マクドナルド 8.4 4.5 10.6 285.52 25.5
AAPL アップル 7.2 -1.1 4.6 172.99 27.7
PEP ペプシコ 6.8 1.0 9.6 183.80 24.8
BKNG ブッキング・ホールディングス 5.4 4.7 11.6 2597.37 19.1
CL コルゲート・パルモリーブ 5.2 1.1 10.3 76.25 23.7

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(5/26)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)389.46ドル55.6

【生成AI向け需要が急拡大】

・2-4月期決算は売上が前年同期比13%減、調整後EPSが同20%減となったものの、それぞれ市場予想を10%、19%上回りました。さらに、5-7月期の売上ガイダンスは110億ドルと市場予想の71.8億ドルを5割以上上回る驚異的な売上急増が見込まれています。「ChatGPT」の出現により生成AIに注目が集まり、企業がAIを自分の事業に取り込むために非常に熱心に動いている結果と考えられます。アナリストの目標株価平均値は300ドル前後から約440ドルへ引き上げられました。

・フアンCEOは、「1兆ドルに上る世界のデータセンターインフラは、企業が生成AIをあらゆる製品、サービス、事業プロセスに応用する中で、(CPUによる)汎用コンピューティングから(GPUを使った)加速コンピューティングに移行するであろう。」とし、急増する需要に対応するため、データセンター向け製品群の生産を大幅に増やしているとコメントしています。

買付チャートメタ プラットフォームズ A(META)262.04ドル19.9

【4四半期ぶりの増収】

・1-3月期は4四半期ぶりに増収となりました。4-6月期の売上見通しも市場予想を上回り、中央値は前年同期比7%増相当で売上成長率の改善が続く見通しです。2023年通期の総費用見通しは860~900億ドルとし、従来予想の860~920億ドルから上限を引き下げました。リアリティーラボ部門は赤字ながら、コスト抑制と売上高成長率の改善がうまくミックスしつつあり、見通しが明るくなってきました。

・10-12月期から1-3月期にかけて、売上は前年同期比1%減→同3%増、営業費用は同23%増→同10%増、営業利益は同38%減→同15%減と、売上の伸びが改善、費用の増加が鈍化して、利益の伸びが改善しています。マーク・ザッカーバーグCEOは「好調な四半期だった」とコメント、AIへの取り組みが良い結果を生んでいるとしました。

買付チャートゼネラル エレクトリック(GE)102.74ドル50.4

【業績改善と分社化による再評価】

・1-3月期決算は売上が前年同期比14%増、調整後EPSが黒字転換、それぞれ市場予想を4%、100%上回りました。利益の上振れは、主力のエアロスペースの営業利益が市場予想を13%上回ったことが要因です。受注は同25%増と好調です。通期調整後EPSガイダンスは1.70~2.00ドルへ、下限が1.60ドルから引き上げられ、市場予想も上方修正となっています。

・同社は昨年来会社の3分割(GEヘルスケア、GEエアロスペース、GEヘルスケア、GEベルノバ)を進めていますが、計画通り順調に進んでいることも株価見通しが引き上げられた背景と考えられます。複合企業は外部からの分析の難しさから、企業評価が割り引かれる「コングロマリットディスカウント」が適用されると言われますが、分社化することによってディスカウントが解消されつつあると言えるでしょう。

買付チャートフェデックス(FDX)224.15ドル12.3

【コスト削減が評価される】

・同社は現在、中期経営計画「DRIVE」を実行中ですが、4/5(水)のインベスターデーで順調に進捗していることが評価されて目標株価が引き上げられたとみられます。「DRIVE」では、固定費、変動費とも削減し、より需要動向に沿った柔軟な物流ネットワーク構築を目指しています。この取り組みが評価されて目標株価が上方修正されていると考えられます。「DRIVE」では2025年5月期の売上1,000億ドル(2022年5月期は935億ドル)、調整後営業利益率10%(同じく9.2%)を財務目標として掲げ、調整後EPSでは30ドル(同じく6.87ドル)に近い水準を目指しているとみられます。

・12-2月期決算は売上が前年同期比6%減、EPSが同26%減と景気減速を受けて低調でしたが、EPSは費用削減が予想以上に進んで市場予想を26%上回りました。3-5月期決算は6/20(火)に発表予定です。

買付チャートマイクロソフト(MSFT)332.89ドル30.3

【売上の伸びが改善】

・売上の伸び率が10-12月期の前年同期比2%増から同7%増に改善しました。堅調な法人需要を背景に「Office」や「Windows」OSなどの売上伸び率が改善しています。昨年7月、10月、今年1月と続いた決算発表後の業績見通し下方修正のトレンドを断ち切ることができたとみられます。中期的にはAI技術の導入の効果が期待されます。

・1-3月期の業績は、売上が前年同期比7%増、EPSが同10%増で市場予想も上回りました。部門別の売上は、プロダクティビティ&ビジネスプロセス(「Office」等ビジネスソフトウェアなど)が前年同期比11%増、インテリジェントクラウド(企業向けクラウドサービスなど)が同16%増、モアパーソナルコンピューティング(「Windows」OS、ゲーム、検索サービスなど)が同9%減でした。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、フェデックスが2024年5月期、マイクロソフトが2024年6月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
29(月) ・米国市場休場(メモリアルデー)  
30(火) ・ユーロ圏景況感(5月)
・米S&PコアロジックCS住宅価格指数(3月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(5月)
・リッチモンド連銀のバーキン総裁が講演
キャノピーグロース、HP
31(水) ・中国製造業・非製造業PMI(5月)
・米求人労働異動調査(4月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
・ボストン連銀のコリンズ総裁、FRBのボウマン理事がFEDのイベントで発言
・フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が講演

・FRBのジェファーソン理事が講演
クラウドストライクホールディングス、セールスフォース
6月
1(木)
・米チャレンジャー人員削減数(5月)
・米ADP雇用統計(5月)
・米ISM製造業景気指数(5月)

・フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が講演
ブロードコム、ダラーゼネラル
2(金) ・米雇用統計(5月)  
5(月) ・米製造業受注(4月)
・米ISM非製造業景気指数(5月)
 
6(火) ・ユーロ圏小売売上高(4月)  
7(水) ・中国貿易統計(5月)
・米消費者信用残高(4月)
 
8(木) ・日本実質GDP(1-3月期、確報値)
・ユーロ圏実質GDP(1-3月期、確報値)
・米新規失業保険申請件数(6月3日に終わる週)
・米家計純資産変化(1-3月期)
 
9(金)    

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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