アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、ブロードコム、アドビほかAI関連として物色されている銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、ブロードコム、アドビほかAI関連として物色されている銘柄~

投資情報部 榮 聡

2023/06/05


先週は債務上限の停止法案が議会で可決されてリスク要因が当面解消したうえ、5月雇用統計で雇用の堅調とインフレ鈍化が示されて主要3指数が揃って大幅上昇となりました。今週の株価材料として、AI相場の持続性、アップルの年次開発者会議、6月FOMCの市場予想、などが注目されます。

今回は5/24(水)のエヌビディアの決算以降に物色されたAI関連銘柄から、エヌビディア(NVDA)ブロードコム(AVGO)アドビ(ADBE)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)マーベルテクノロジーグループ(MRVL) を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

相場上昇をけん引するナスダック指数は2022年8月16日の52週高値13,181.09ポイントを更新、6/2(金)終値は13,240.76ポイントに達しました。S&P500指数も2022年8月16日52週高値4,325.28ポイントまであと1.0%に迫っています。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は5/25(木)終値~6/2(金)終値のデータによります。)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
一般消費財・サービス 5.7% 7.0% 8.2%
不動産 4.3% -1.8% -5.2%
情報技術 4.1% 10.7% 20.8%
資本財・サービス 3.4% 1.2% -2.6%
素材 3.3% -1.7% -7.3%
S&P500 3.2% 3.5% 5.9%
金融 2.9% 1.4% -8.9%
コミュニケーションサービス 2.9% 10.0% 19.8%
ヘルスケア 2.0% -2.6% 0.9%
エネルギー 0.9% -1.1% -8.1%
公益事業 0.7% -6.2% -1.8%
生活必需品 0.6% -4.6% 1.5%
騰落率上位(5日) 騰落率
テスラ 16.0%
インテル 14.3%
アメリカン・エキスプレス 11.6%
ネットフリックス 11.6%
アドビ 11.3%
騰落率下位(5日) 騰落率
ターゲット -5.3%
フェデックス -1.5%
アッヴィ -1.3%
モンデリーズ・インターナショナル -1.2%
オールステート -0.9%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.8%、NYダウは2.0%、ナスダック指数は2.0%の上昇でした。

債務上限を2025年1月まで停止する法案が、5/31(水)に下院で、6/1(木)に上院で可決、米国政府のデフォルト回避が確実となりました。ここ数ヵ月市場で意識されていたリスク要因が当面解消したことで、リスクプレミアムが縮小してPERの上昇要因となりました。

さらに、6/2(金)の5月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比33.9万人増と市場予想の19.0万人増を大きく上回った一方で、平均時給は前年比4.3%増と前月の同4.4%増から低下、インフレの低下トレンドが継続していることを確認したことから一段高となりました。

経済指標では、上記雇用統計や4月求人数など雇用の堅調が確認された一方、5月ISM製造業景気指数は46.9と7ヵ月連続で50を下回り、景気減速を示唆しました。中国の5月製造業・非製造業PMIも前月から低下して低調でした。

企業決算では、メーシーズ、ダラーゼネラル、カプリホールディングスなど小売企業が物価上昇を背景とする個人消費の鈍化に言及し、景気の先行きに懸念材料です。AI相場の中心銘柄となっているエヌビディアは5/25(木)に24.4%の上昇となった後、先週は400ドル手前でもみ合いとなりました。

業種指数では、テスラがけん引した「一般消費財・サービス」、AI関連が注目されている「情報技術」のほか、強い雇用統計を受けて6/2(金)に大きく上昇した「資本財・サービス」「素材」も上位となっています。個別銘柄で上昇率トップのテスラ(TSLA)は、マスクCEOが訪中して中国泰外相と会談、中国ビジネスの拡大を再確認したことが好感され、大幅続伸しました。

今週の米国株式

年前半の米国市場については、バリュエーションに割安感がないため持続的な株価上昇は難しく、景気減速の程度が確認できるまではレンジ相場になりやすいと見ています。相場が高いところでは売り、十分な押し目を入れたところでは買うという投資行動が有効と考えられます。

債務上限引き上げ交渉の進展、AI相場の継続を考えると、当面は相場上昇が続きそうですが、その後は反落を警戒するべきタイミングにきていると考えられます。S&P500指数の予想PERは今期予想基準で19.6倍(予想EPSは218.51ポイント)、来期予想基準で17.7倍(予想EPSは241.76ポイント)です。来期基準ならまだ買えそうですが、足もとの景気鈍化を考えると予想EPSが楽観的となっている可能性がありそうです。

今週の株価材料として、AI相場の持続性、6月FOMCの市場予想、アップルの年次開発者会議、などが注目されます。

AI相場で物色の中心となっているエヌビディアは先週、高値圏でのもみ合いでした。エヌビディアの後に決算を発表した半導体のマーベルテクノロジーグループ、ブロードコムはいずれもAI関連の売上が倍増する見込みとしましたが、その他分野の減速で今四半期の売上成長率は前四半期から低下するガイダンスでした。また、AIに注力しているセールスフォースも売上への具体的なインパクトには言及しませんでした。AI相場の持続性を推し量る動きが続きそうです。

6/13(火)、6/14(水)開催の6月FOMCでの利上げ確率が目まぐるしく動いています。日本時間6/5(月)午前9時では、据え置きの確率が77%、0.25%の利上げの確率が23%となっています。据え置きの確率は前回FOMC直後の5/3(水)には77%でしたが、金融当局者の度重なるタカ派発言によって5/30(火)には一旦33%まで低下しました。

しかし、先週のジェファーソンFRB理事、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁らの発言によって77%まで上昇しています。一方で、最近発表された雇用指標や物価指標からは利上げとなる可能性も残っていると判断され、まだ、市場の見方が振れる可能性がありそうです。

アップルの年次開発者会議が6/5(月)から6/9(金)にオンラインで開催されます。最新のiOS、iPadOS、macOS、watchOS、tvOSの進化について紹介されるほか、iPhone、Mac、アップルウォッチなどで新製品が発表される可能性があります。また、AIに関する取り組みについても言及されると見込まれ、AI相場の持続性の観点からも注目されるでしょう。

経済指標では、6/5(月)に米国の4月製造業受注(前月比0.8%増の予想)、米国の5月ISM非製造業景気指数(前月の51.9から52.5に改善の予想)、6/7(水)に中国5月貿易統計(輸出は前年比2.1%減の予想、前月は同8.5%増、輸入は前年比8.0%減の予想、前月は同7.9%減)、などが発表予定です。

今週の5銘柄

今回は米国市場でAI相場の中心銘柄として物色されている銘柄群をご紹介いたします。

5/24(水)に発表されたエヌビディアの5-7月期売上ガイダンスが市場の想定をはるかに超える額であったことで、テクノロジー企業が「生成AI」を取り込むために活発に動き始めていることが判明し、AI関連銘柄への物色が強まりました。

そこで5/24(水)終値から6/1(木)終値にかけての株価上昇率が高いAI関連銘柄をリストアップしてご紹介いたします。エヌビディア(NVDA)ブロードコム(AVGO)アドビ(ADBE)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)マーベルテクノロジーグループ(MRVL)の5銘柄です。

なお、AIに関しては、3月8日付外国株式特集レポート「ChatGPT」で注目高まる「生成AI」の注目銘柄に、物色の筆頭銘柄はエヌビディアであり、なぜエヌビディアがそういう地位を獲得できたのかに関してご報告しています。こちらもご参照ください。

図表3 エヌビディアの決算発表以降に物色されたAI関連銘柄

銘柄名(コード) 株価
5/24
(ドル)
株価
6/1
(ドル)
騰落率
(%)
予想PER
(倍)
時価総額
(億ドル)
エヌビディア(NVDA) 305.38 393.27 28.8 44.4 9,714
ブロードコム(AVGO) 679.53 812 19.5 18.7 3,385
アドビ(ADBE) 365.76 436.37 19.3 27.4 2,002
アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) 108.27 117.86 8.9 37.8 1,898
マーベルテクノロジーグループ(MRVL) 45.98 60.18 30.9 35.0 518

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

買付 チャート 銘柄 株価
(6/2)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)393.27ドル51.2

【生成AI向け需要が急拡大】

・2-4月期決算は売上が前年同期比13%減、調整後EPSが同20%減となったものの、それぞれ市場予想を10%、19%上回りました。さらに、5-7月期の売上ガイダンスは110億ドルと市場予想の71.8億ドルを5割以上上回る驚異的な売上急増が見込まれています。「ChatGPT」の出現により生成AIに注目が集まり、企業がAIを自分の事業に取り込むために非常に熱心に動いている結果と考えられます。アナリストの目標株価平均値は300ドル前後から455ドルへ引き上げられています。

・フアンCEOは、「1兆ドルに上る世界のデータセンターインフラは、企業が生成AIをあらゆる製品、サービス、事業プロセスに応用する中で、(CPUによる)汎用コンピューティングから(GPUを使った)加速コンピューティングに移行するであろう。」とし、急増する需要に対応するため、データセンター向け製品群の生産を大幅に増やしているとコメントしています。

買付チャートブロードコム(AVGO)812.00ドル19.3

【AIにはデータセンター等の通信機器で関連】

・2016年にブロードコムとアバゴテクノロジーズが経営統合した半導体メーカーで、ソフトウェア(2019年に買収したシマンテックが中心)も手掛けます。半導体の主な向け先は、データセンター、通信キャリア、スマホ、自動車などです。同社はAI計算には直接関係していないものの、CEOは決算リリースでAI関連の投資を行う企業向けの売上は四半期当たり10億ドルに達し、AI関連の売上構成比は近く25%に達する見通しとしています。

・6/1(木)に発表した2-4月期決算は売上が前年同期比8%増、調整後EPSが同14%増でした。5-7月期の売上ガイダンスは前年同期比5%増の88.5億ドルで、伸びは2-4月期から鈍化の見通しです。AI関連の売上は増加するものの、幅広い産業向けの鈍化を埋め合わせるほどではない見通しです。

買付チャートアドビ(ADBE)436.37ドル28.2

【画像生成AI[Firefly」(ベータ版)を公開】

・ソフトウェアの世界的大手です。画像編集の「Photoshop」、グラフィックデザインの「Illustrator」等のクリエイター向けサービスや、総合PDFソリューションの「Adobe Acrobat」など世界標準のサービスを多数擁します。2016年にAIテクノロジー基盤の「Adbe Sensei」を投入し、AI技術の利用に早くから注力してきた会社です。2023年3月、商用利用に特化した画像生成AI、「Adobe Firefly」のベータ版を初公開しました。

・12-2月期は、売上高が前年同期比9.2%増、EPSが3.80ドルといずれも市場予想を上振れ好調で、通期予想EPSを上方修正しました。CEOはフィグマ社買収に関し、2023年末までの完了に向け、順調に進んでいると述べています。3-5月期決算を6/15(木)に発表予定です。

買付チャートアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)117.86ドル42.1

【AI計算でエヌビディアの唯一の競合】

・GPU、CPU、組み込み半導体などを手掛ける半導体メーカーです。AI計算に使われるGPUでは、エヌビディアの唯一の競合企業です。ただし、同社の売上に占めるAI計算向けの比率は小さく、エヌビディアとは大差がついています。ファイナンシャルタイムズの記事で紹介された、AI分野への投資を事業とする会社役員の推定では、エヌビディアに対して2年遅れているとされます。マイクロソフトはAI計算の市場をエヌビディアが独占してしまうことを懸念して、同社のAI計算への進出に支援を表明しています。

・同社は現在、サーバー向けのCPU市場でインテルからシェアを奪いつつある点が注目されています。ただし、1-3月期はパンデミック時に売上が拡大した反動で、売上は前年同期比9%減、調整後EPSが同47%減でした。4-6月期の売上については、50~56億ドル、前年同期比24~15%減として、減収率が1-3月期よりも拡大する見通しです。

買付チャートマーベルテクノロジーグループ(MRVL)60.18ドル39.3

【AI関連売上が倍増以上の見込み】

・1995年設立のファブレス半導体メーカー。製品の最終市場は、データセンターのインフラ、通信サービス企業のインフラ、企業の通信ネットワーク、自動車などです。5/25(木)に発表した2-4月期決算で、AI関連の売上(データセンターのネットワーク機器向け)が2023年1月期から2024年1月期にかけて倍増以上になるとコメントし、5/26(金)の株価が32.4%の上昇となって注目されました。小ぶりな半導体メーカーで、市場にAI関連との認識がなかったため、株価の上昇が大きくなったようです。

・2-4月期決算は、売上が前年同期比9%減、調整後EPSが同40%減でした。5-7月期の売上ガイダンス中央値は13.3億ドルで前年同期比12%減と減収率は拡大の見通しです。CEOは、AI関連が成長ドライバーとして浮上しており、売上は下半期に加速する見通しとコメントしています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディア、マーベルテクノロジーグループが2024年1月期、ブロードコムが2023年10月期、アドビが2023年11月期、アドバンストマイクロデバイシズが2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
5(月) ・米製造業受注(4月)
・米ISM非製造業景気指数(5月)
アップル年次開発者会議(オンライン、9日まで)
6(火) ・ユーロ圏小売売上高(4月)  
7(水) ・中国貿易統計(5月)
・イエレン財務長官が地銀破綻に関して議会証言
(下院金融サービス委員会)

・米消費者信用残高(4月)
キャンベルスープ、ブラウンフォーマン
8(木) ・日本実質GDP(1-3月期、確報値)
・ユーロ圏実質GDP(1-3月期、確報値)
・米新規失業保険申請件数(6月3日に終わる週)
・米家計純資産変化(1-3月期)
 
9(金)    
12(月) ・日本工作機械受注(5月)  
13(火) ・独ZEW景気指数(6月)
・米NFIB中小企業楽観指数(5月)

・米消費者物価指数(5月)
オラクル
14(水) ・ユーロ圏鉱工業生産(4月)
・米生産者物価指数(5月)
・米FOMC政策金利
 
15(木) ・中国鉱工業生産・小売売上高(5月)
・ECB主要政策金利
・米小売売上高(5月)
・米新規失業保険申請件数(6月10日に終わる週)
・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(6月)
・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(6月)

・米鉱工業生産(5月)
アドビ
16(金) ・日銀政策金利
・ミシガン大学消費者信頼感(6月)

・トリプルウィッチング
(株価指数先物・オプションの取引期限満了日)
クローガー

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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