アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~生成AI関連として物色されているソフトウェア企業~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~生成AI関連として物色されているソフトウェア企業~

投資情報部 榮 聡

2023/06/19

先週はオラクル、アドビの好決算、インフレ鈍化を示す5月消費者物価指数、市場予想を大きく上回る5月小売売上高などが好材料となりました。FOMCでの政策金利見通しの上方修正はネガティブサプライズでしたが、これを振り落として相場は上昇となりました。今週の株価材料として、金融当局者発言、AI相場の持続、短期的な上昇過熱感、などが注目されます。

今回はAI関連として注目されているソフトウェア銘柄から、サービスナウ(NOW)アドビ(ADBE)オラクル(ORCL)マイクロソフト(MSFT)セールスフォース(CRM)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

6/12(月)に昨年8月の高値を力強く更新、その後上昇は加速しました。週末のトリプルウィッチングも波乱なくクリアしました。ただ、短期的には上昇過熱感が意識されそうです。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 4.4% 10.5% 22.4%
素材 3.3% 3.5% 8.0%
一般消費財・サービス 3.2% 9.5% 18.3%
資本財・サービス 2.9% 5.5% 9.1%
S&P500 2.6% 5.2% 12.6%
コミュニケーションサービス 2.1% 4.1% 18.8%
生活必需品 2.0% -1.5% 3.6%
ヘルスケア 1.4% 0.5% 5.0%
公益事業 1.3% 1.5% 0.4%
不動産 1.2% 3.5% 3.8%
金融 1.2% 2.8% 8.5%
エネルギー -0.7% 1.2% 5.4%
騰落率上位(5日) 騰落率
インテル 16.0%
オラクル 14.2%
エヌビディア 10.1%
アドビ 9.1%
ナイキ 7.3%
騰落率下位(5日) 騰落率
ユナイテッドヘルス・グループ -7.1%
CVSヘルス -5.6%
バイオジェン -3.7%
アルトリア・グループ -2.5%
エクソンモービル -2.1%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.6%、NYダウは1.2%、ナスダック指数は3.2%の上昇でした。S&P500指数は52週高値を力強く更新しています。

(1)オラクル、アドビの好決算がAI相場を支えたこと、(2)5月消費者物価指数がインフレの鈍化を示して米10年国債利回りが横ばい圏で推移したこと、(3)5月小売売上高が市場予想を大きく上回って消費の堅調を示したこと、中国の景気刺激策への期待が高まったこと、などを受けて力強い上昇となりました。

注目の6月FOMCでは、予想通りに政策金利が5.00~5.25%で据え置かれました。一方、FOMCメンバーの2023年末政策金利見通し(中央値)は5.1%から5.6%へ引き上げられ、年内2回の利上げが示唆され、サプライズとなりました。株式は下げても良いくらいの内容でしたが、上記のような株価上昇要因に加え、市場のセンチメントが非常に強く、悪材料を振り落として相場上昇が続きました。個別ではAI相場の象徴となっているエヌビディアが決算発表後の高値を更新しました。

業種指数では、先々週には利食いが出ていた「情報技術」が反発して上昇トップとなりました。景気敏感株に対する出遅れ物色が継続し、「素材」「一般消費財・サービス」「資本財・サービス」も市場平均を上回る上昇となっています。

個別銘柄では、インテル(INTC)が大幅に上昇しました。半導体設計のARMのIPOにアンカー投資家として参加するのではないかとの観測報道、ポーランドに半導体組み立て工場を建設する計画、ドイツ政府から半導体工場建設に対して110億ドルの補助金を受ける見通し、などのニュースがありました。

今週の米国株式

先週の米国市場では、S&P500指数は6/12(月)に昨年8月の高値を力強く更新、その後上昇は加速して、週末のトリプル・ウィッチングも波乱なくクリアしました。短期的にはテクニカル指標に上昇過熱感がみられますが、当面は堅調な相場が続く可能性が高そうです。

その先には4-6月期の決算発表が控えますが、S&P500指数採用銘柄のEPSは前年同期比6.2%減が予想されています。株価が大きく上昇した後ですので、決算発表が近づく7月上旬には市場の警戒感が高まる可能性がありそうです。

今週の株価材料として、金融当局者発言、AI相場の持続、短期的な上昇過熱感、などが注目されます。

6/21(水)、6/22(木)にパウエルFRB議長による半期に一度の議会証言があるほか、複数金融当局者の発言が予定されています。今後の政策金利についてFOMC参加者の見通しと市場予想は依然として乖離しているため、発言が市場インパクトをもつ可能性がありそうです。

先週はオラクル、アドビなどの好決算がAI関連への物色を一段と強めました。今週は直接AIに関連する企業の決算はないものの、アクセンチュアは大企業のIT戦略の構築に深く関わっているため、大企業によるAIに対する取り組みに関してどのようなコメントが出てくるか注目されます。

S&P500指数の50日移動平均乖離率は5.5%、100日移動平均乖離率は7.4%と短期的にはやや上昇過熱感がみられます。過熱感の解消は株価の調整で行われるのか、水準を保ったまま日柄の経過によってなされるのか、注目されます。現在の市場センチメントの強さから考えると後者の可能性が高そうです。

経済指標では、6/20(火)に米国の5月住宅着工件数(前月比0.1%減の予想)、同住宅建設許可件数(前月比0.6%増の予想)、6/22(木)に米国 の5月中古住宅販売件数(前年比0.7%減の予想)、などが発表予定です。

企業イベントでは、フェデックス、アクセンチュアの決算発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は生成AIに関連の深いソフトウェア企業をご紹介いたします。

先週に四半期決算を発表したソフトウェア企業のオラクル、アドビともAI関連の需要が業績を押し上げているとコメントして、AI関連銘柄に対する物色を支えました。

AIと親和性の高いソフトウェア企業として、サービスナウ(NOW)アドビ(ADBE)オラクル(ORCL)マイクロソフト(MSFT)セールスフォース(CRM)を選んでご紹介いたします。

図表3 AI関連として物色されているソフトウェア企業

銘柄名(コード) 株価
5/24
(ドル)
株価
6/16
(ドル)
騰落率
(%)
予想PER
(倍)
時価総額
(億ドル)
サービスナウ(NOW) 502.55 565.48 12.5 56.9 1,152
アドビ(ADBE) 365.76 495.18 35.4 29.8 2,271
オラクル(ORCL) 98.32 125.46 27.6 22.6 3,387
マイクロソフト(MSFT) 313.85 342.33 9.1 32.4 25,454
セールスフォース(CRM) 209.06 211.76 1.3 26.9 2,063

注:株価騰落率計算の起点とした5/24(水)はエヌビディアの2-4月期決算発表を織り込む前日です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(6/16)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートサービスナウ(NOW)565.48ドル59.5

【同社事業はAIとの親和性が高い】

・5/17(水)のエヌビディアのリリースで、生成AIの分野でエヌビディアと提携を結んだことが発表されています。サービスナウはエヌビディアのソフトウェア、サービス、インフラを使って、サービスナウのプラットフォームのデータを用いてトレーニングした大規模言語モデルを開発します。

・企業向けにワークフローをデジタル化するサービスを主力に、人事、法務、経理などのサービスをクラウド経由で提供する企業です。どのようなデジタル・トランスフォーメーションにおいても需要なパーツとなる、ワークフローオートメーションに対する需要拡大の恩恵を受ける会社で、クラウドソフトウェアの同業を上回る成長が期待されています。ワークフローの自動化サービスとAIとの親和性が高いと判断されて、エヌビディアに同分野の提携先として選ばれたとみられます。

買付チャートアドビ(ADBE)495.18ドル31.6

【画像生成AI「Firefly」を公開】

・ソフトウェアの世界的大手です。画像編集の「Photoshop」、グラフィックデザインの「Illustrator」等のクリエイター向けサービスや、総合PDFソリューションの「Adobe Acrobat」など世界標準のサービスを多数擁します。2016年にAIテクノロジー基盤の「Adbe Sensei」を投入し、AI技術の利用に早くから注力してきた会社です。2023年3月、商用利用に特化した画像生成AI、「Adobe Firefly」のベータ版を公開し、利用が始まっています。

・3-5月期決算は売上が前年同期比10%増、調整後EPSは同17%増で市場予想を上回りました。6-8月期もガイダンスも市場予想を上回り、通期ガイダンスは従来より売上が0.5%、調整後EPSが1.6%上方修正されました。生成AI機能が同社のソフトウェアの需要を喚起する見通しです。

買付チャートオラクル(ORCL)125.46ドル22.7

【生成AIのインフラで一歩リード】

・6/12(月)に発表した3-5月期決算では、3-5月期実績、6-8月期ガイダンスとも市場予想を上回りました。CEOは声明で「売上高の伸びはクラウドアプリケーションとインフラストラクチャ事業がけん引した。インフラ事業の成長は加速している」と説明しました。また、同社の「Gen2 Cloud」は、「生成AIのワークロードを走らせるためのトップチョイス」になっているとコメントされています。

・マイクロソフトに次ぐ世界第2位のソフトウェア企業で、法人向けデータベース管理システムのOracle Databaseは世界トップです。2022年5月期の売上構成比は、インフラストラクチャ・クラウドサービス&ライセンスサポートが41%、アプリケーション・クラウドサービス&ライセンスサポートが30%、クラウドライセンス&オンプレミスライセンスが14%、サービスが8%、ハードウェアシステムが7%となっています。

買付チャートマイクロソフト(MSFT)342.33ドル32.3

【アジュール・マシン・ラーニングに組み込まれる】

・5/23(火)のリリースで、エヌビディアの「AIエンタープライズ」(エヌビディアのAIプラットフォームのソフトウェア部分)をマイクロソフトの「アジュール・マシン・ラーニング」に組み込まれることが発表されました。これによって企業向けクラウドサービスのアジュールを利用する大企業が自社のAIイニシアチブを加速することができる見込です。

・マイクロソフトは、AIの関連度合いに関して、エヌビディアに次いで最も大きい企業の一つと考えられます。「ChatGPT」をネット検索サービス「Bing」に導入してシェア拡大を目指し、「ChatGPT」を開発したOpenAIにも出資していることが注目されます。また、同社の幅広いソフトウェアにAI技術を組み込んでいくことが期待されています。

買付チャートセールスフォース(CRM)211.76ドル28.5

【「生成AI」を製品に組み込んでいく】

・顧客関係管理(CRM)やマーケティング、カスタマーサービスなどを支援する企業向けソフトウェアをクラウドベースで提供、主力の顧客関係管理ソフトウェアでは世界トップです。同社はAI技術の利用に注力していることが知られているため市場の期待が高まってますが、今回は「生成AI」を製品に組み込んでいくとする一般的なコメントはありましたが、数値化できるような成果に関する言及はありませんでした。

・2-4月期決算は売上が前年同期比11%増、調整後EPSは同72%増、5-7月期のガイダンス中央値は売上が同約10%増、調整後EPSは同59%増で、いずれも市場予想を上回って堅調でした。一方、残存履行義務は2-4月期が同11%増で市場予想並み、5-7月期は同約10%増で市場予想の同11%増を下回りました。通期のガイダンスは売上を維持の一方、調整後EPSは引き上げました。全体として良好な決算と評価できますが、残存履行義務は若干の売上鈍化を示唆していそうです。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、サービスナウが2023年12月期、アドビが2023年11月期、マイクロソフトが2024年6月期、オラクルが2024年5月期、セールスフォースが2024年1月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
19(月) ・米国市場休場(ジューンティーンス)
・NAHB住宅市場指数(6月)
 
20(火) ・セントルイス連銀ブラード総裁講演
・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁講演

・米住宅着工件数・建設許可件数(5月)
フェデックス
21(水) ・EU27ヵ国新車登録台数(5月)
・パウエルFRB議長議会証言(下院金融サービス委員会)
 
22(木) ・パウエルFRB議長議会証言(上院銀行委員会)
・クリーブランド連銀メスター総裁講演
・シカゴ連銀全米活動指数(5月)
・米新規失業保険申請件数(6月17日に終わる週)
・米中古住宅販売件数(5月)
アクセンチュア
23(金) ・セントルイス連銀ブラード総裁講演
・auじぶん銀行日本製造業PMI(6月)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(6月)
 
25(日) ・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁講演  
26(月) ・独IFO企業景況感(6月) カーニバル
27(火) ・米耐久財受注(5月)
・S&PコアロジックCS住宅価格(4月)
・米新築住宅販売件数(5月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(6月)
キャノピーグロース
28(水)   マイクロンテクノロジー
29(木) ・ユーロ圏景況感(6月)
・米新規失業保険申請件数(6月24日に終わる週)
・米実質GDP(1-3月期、確報値)
・米中古住宅販売成約(5月)
ナイキ
30(金) ・中国製造業・非製造業PMI(6月)
・米個人所得・個人支出(5月)
・米個人消費支出物価指数(5月)
・米ミシガン大学消費者マインド(6月、確報値)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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