アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~政策効果が表面化!!製造業投資、インフラ投資の関連銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~政策効果が表面化!!製造業投資、インフラ投資の関連銘柄~

投資情報部 榮 聡

2023/06/26


先週は高値警戒、機関投資家の買い一巡、パウエルFRB議長のタカ派発言などを受けて反落となりました。今週の株価材料として、物色動向、金融当局者の発言、物価指標、などが注目されます。

今回はバイデン政権の「INVESTING IN AMERICA」(アメリカへの投資)政策の効果が表面化しつつあることから、その恩恵が期待される銘柄として、ロックウェル オートメーション(ROK)パーカーハネフィン(PH)バルカン マテリアルズ(VMC)マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)ユナイテッド レンタルズ(URI)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

5月半ばから6月半ばにかけて4,100ポイント近辺から4,400ポイント近辺まで上昇した「上昇過熱感」を冷ます過程にあるとみられます。半値押しの4,250ポイントが意識されやすいとみられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は6/15(木)終値~6/23(金)終値によります。)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
ヘルスケア 0.2% 3.8% 3.7%
一般消費財・サービス -0.2% 9.1% 17.8%
生活必需品 -0.4% 1.3% 1.7%
S&P500 -1.8% 3.4% 9.5%
コミュニケーションサービス -1.8% 2.1% 14.0%
資本財・サービス -1.8% 5.3% 6.6%
素材 -1.9% 4.8% 3.7%
公益事業 -2.1% 1.3% -1.0%
金融 -2.2% 2.3% 5.7%
情報技術 -2.8% 3.0% 17.5%
エネルギー -3.6% -1.2% -0.5%
不動産 -4.1% 0.8% 1.0%
騰落率上位(5日) 騰落率
メルク 4.8%
アボットラボラトリーズ 2.9%
メタ・プラットフォームズ 2.4%
ユナイテッドヘルス・グループ 2.4%
アマゾン・ドット・コム 1.7%
騰落率下位(5日) 騰落率
クアルコム -8.2%
インテル -7.9%
アクセンチュア -7.8%
ゴールドマン・サックス・グループ -7.4%
IBM -6.5%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.4%、NYダウは1.7%、ナスダック指数は1.4%の下落でした。

先週の相場下落は、(1)テクニカル面では5月半ばから6月半ばにかけての相場上昇による「上昇過熱感」を冷ます調整が必要となっていた、(2)需給面では相場の先行きを慎重に見ていた機関投資家のポジション引き上げが一巡したとみられる、(3)ファンダメンタルズ面では、先々週にFOMCメンバーの2023年末政策金利見通し(レンジ中央値)が5.1%から5.6%へ引き上げられて年内2回の利上げが示唆されたネガティブサプライズを先週になって正当に織り込んだため、と考えられます。

6/21(水)のパウエルFRB議長議会証言では追加利上げの必要を示唆して、相場の下落要因になりました。しかし、FOMC後の会見では多数を占めるタカ派メンバーに対して全体をまとめるフォローの役割にまわったためにハト派の印象を与えましたが、議会証言ではメンバー全体の意見を代表して話したため、タカ派に聞こえたとみられます。追加利上げの必要性が高いとの基本的な見方は変わっていないとみられます。


業種指数では、「ヘルスケア」「生活必需品」などディフェンシブ業種が相対的に優位となりました。「一般消費財・サービス」はアマゾンドットコムが上昇した寄与が大きく、アナリストからクラウド事業や広告事業で評価する声が相次いで上昇しました。個別銘柄では、メルク(MRK)が上昇トップでした。同社はがん免疫治療薬「キイトルーダ」の売上増で、業績が拡大が続いており、景気感応度が低いディフェンシブ株の代表として買われたとみられます。

経済指標では、5月住宅着工件数が年率換算163.1万戸(前月比21.7%増)で、市場予想の同140万戸(前月比1.2%減)を大幅に上回りました。住宅着工件数は、住宅ローン金利の上昇、住宅価格の上昇、融資態度の厳格化などを受けて2022年4月の年率換算180万戸から2023年4月に134万戸まで低下傾向が続いてきましたが、安定化の兆しと考えられます。

今週の米国株式

先週はパウエルFRB議長のタカ派発言に加え、6/22(木)にはイングランド銀行が0.50%の予想以上の利上げを行い、6/23(金)には6月グローバル製造業PMIが予想以上の低下となり、利上げによる景気鈍化のシナリオが意識されたとみられます。今週は5月半ばから6月半ばにかけての相場上昇過熱感を冷ます動きが続いて、もみ合いとなる可能性が高いとみられます。

その先には4-6月期の決算発表が控えますが、S&P500指数採用銘柄のEPSは前年同期比6.5%減が予想されています。株価が大きく上昇した後ですので、決算発表が近づく7月上旬には市場の警戒感が高まる可能性がありそうです。

今週の株価材料として、物色動向、金融当局者発言、物価指標、などが注目されます。

テクノロジー株に対する物色は一服となっていますが、AI関連の中心銘柄となっているエヌビディアは比較的堅調な値動きとなっており、選別が進んでいる気配もうかがえます。下掲のアクセンチュアのAIに関する発言を見ると、企業は生成AIのインパクトを非常に重視しているものの、足もとの業績に顕在化するケースは当面少ないだろうと想定されます。

今週もパウエルFRB議長が欧州中央銀行のイベントに参加して発言することが見込まれるほか、複数の金融当局者の発言が予定されています。2023年末の政策金利について、2回の利上げを予想するFOMCメンバーと2回の利上げとなる確率は12%でしか織り込んでいない金融市場(日本時間6/26(月)午前9時のFedWatchによる)には引き続き乖離が生じており、発言が市場インパクトをもたらす可能性があります。

5月の個人消費支出物価指数は総合指数が前年比3.8%増(前月は同4.4%増)、コア指数が同4.7%増(前月も同4.7%増)の予想です。総合指数では原油価格などを受けて全体としてはインフレ沈静が進むものの、コア指数ではサービス価格など下がりにくさが確認される見通しです。もし、コア指数が予想よりも低下するなら、相場のポジティブ要因になりそうです。

経済指標では上記のほか、6/27(火)に米国の5月新築住宅販売件数(前月比1.2%減の予想)、米国の6月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の102.3から104.0に改善の予想)、6/30(金)に中国の6月製造業PMI(前月の48.8から49.0に改善の予想)、非製造業PMI(前月の54.5から53.2に悪化の予想)、などが発表予定です。

企業イベントでは、カーニバル、キャノピーグロース、マイクロンテクノロジー、ナイキの決算発表が予定されています。

AIについてアクセンチュアが語ったこと

企業のIT戦略に関するコンサルティングを行うアクセンチュアがAIについて何を語るかは要注目です。同社が6/22(木)に発表した3-5月期決算では、決算リリースに言及はありませんでしたが、説明会では以下のような言及がありました。

・企業の関心は高い・・・生成AIほど企業のリーダーや世間の注目を急速に集めた「技術の波」は過去になかった。同社が前週に終えたアンケートでは、97%のエグゼクティブが生成AIは自社や業界に変革を起こす、67%の組織がデータとAIへの投資を増やす、と答えたとしています。

・まだ初期の段階・・・同社のすべての顧客がAI、特に生成AIに関心をもっているが、スターティングポイントはそれぞれ様々だ。しかし、大部分の企業は、AIに向けてデータ、人材、プロセスを準備することが目前の課題となっている。

・同社自身も30億ドルの投資・・・6/13(火)のリリースで、AI分野における10年以上にわたる知見と経験を強化するため、データとAI関連事業に今後3年間で30億ドルを投資すると発表しています。データとAI向けの人員を4万人から8万人に倍増し、現在1,600名超いる生成AIなど先端AIの専門家も拡大する計画です。

・過去4ヵ月で100件超の生成AIプロジェクトを販売・・・事例として、三井住友海上火災保険とは顧客サービスで、グローバル放送企業とは個々の顧客向けコンテンツの作成で、化学のライオンデルバセルとはデータ分析の分野で取り組んでいることが紹介されました。

なお、同社の業績に関しては、2023年8月期の売上見通しを前年比8~10%増から同8~9%増へ上限が引き下げられたことが嫌気されて決算発表から4.7%の株価下落となっています。AI関連のプロジェクトは増えても、足もとの景気減速の影響のほうが大きいことを示唆していると言えそうです。

今週の5銘柄

今回はバイデン政権の「INVESTING IN AMERICA」(アメリカへの投資)政策の効果が表面化しつつあることから、その恩恵が期待される銘柄をご紹介いたします。

バイデン政権は、「米国救済計画法」(2021年3月)「インフラ投資雇用法」(2021年11月)「CHIPS&科学法」(2022年8月)「インフレ抑制法」(2022年8月)などを成立させ、「アメリカへの投資」政策を進めています。

その効果は、製造業向け民間建設、公共工事の道路の分野などに表面化しています。これら分野への関連性の高い企業として、ロックウェル オートメーション(ROK)パーカーハネフィン(PH)バルカン マテリアルズ(VMC)マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)ユナイテッド レンタルズ(URI)を選んでご紹介いたします。

図表3 米国の建設支出(年率換算、10億ドル) 民間建設・製造業と公共工事・道路

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(6/23)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートロックウェル オートメーション(ROK)313.27ドル25.9

【オートメーション機器の大手】

・制御機器大手。産業オートメーション機器のほか、IoTなど生産プロセス効率化ソリューションを提供します。産業用オートメーション機器メーカーです。2022年9月期の売上構成比は、インテリジェントデバイスが46%、ソフトウェア&コントロールが30%、ライフサイクル&サービスが24%です。製造業の投資増加から恩恵を受ける可能性が高い企業と考えられます。

・1-3月期業績は、売上が前年同期比26%増、調整後EPSは同81%増、部門営業利益率は21.3%へ前年同期比5.6%ポイント改善と好調でした。バイデン政権の政策による効果に加え、サプライチェーン問題の緩和による事業環境の改善が好調な業績の背景とみられます。受注についても48億ドルと強く、キャンセル率も一桁台前半と低いとコメントしています。2022年9月期のガイダンスは、売上を前年比11~15%増から同13~17%増へ引き上げられ、調整後EPSの中央値を7%引き上げています。

買付チャートパーカーハネフィン(PH)370.12ドル17.7

【産業用動力制御でトップ】

・産業用動力制御システムメーカーで、産業機器向けの油圧機器、フィルター、配管継手、ホース等を扱います。1,350億ドルの動力制御業界で約13%の市場シェアを保有、No1の地位を占めます。部門別売上構成比は、北米インダストリアルが47%、海外インダストリアルが30%、エアロスペースシステムが23%です。製造業の工場を建設する際には、同社製品が多く使用されると期待されます。2022年9月に英国の航空・防衛機器のメギットを買収しています。

・1-3月期の売上は前年同期比24%増で、M&Aなどを除くオーガニック成長率は同12%増で、10-12月期のそれぞれ22%増、10%増から伸びが加速しています。北米事業の売上は同16%増と好調です。2023年6月期のオーガニック売上成長の見通しを従来の前年比6~8%増から同約10%増に引き上げています。ただ、受注に関しては全体が同2%増、北米インダストリアルは同4%減と低調でした(メギット買収による影響を除く伸び率)。

買付チャートバルカン マテリアルズ(VMC)214.43ドル32.9

【砕石、砂利等の建設骨材が主力】

・米国最大の建設資材の会社で、砕石、砂利等の建設骨材、アスファルトや生コン等の建設資材を手掛けます。高速道路の補修での使用が多く、また、その他の土木工事でも使用されるため、インフラ投資と関連性の高い会社と言えるでしょう。足もとの建設骨材需要量はやや低調に推移しているものの、2021年11月に成立した「インフラ投資雇用法」は2026年までのハイウェイ投資プログラムを約60%押し上げると見込まれ、中期的な事業環境は良好と期待されます。

・1-3月期決算は、製品価格の引き上げによって売上は前年同期比7%増、調整後EPSは同30%増と好調です。建設骨材の数量は前年比2.5%減でしたが、平均価格は同20%増でした。通期の見通しは、1-3月期に行った製品価格引き上げを考慮して、純利益を8.15~8.95億ドルに引き上げました。年間の平均価格は前年比約15%増と見込んでいます。

買付チャートマーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)442.38ドル27.5

【建設骨材の大手】

・米国南東部ノースカロライナ州に本社を置く、骨材(砂利、砕石)、セメント・コンクリートなど建設資材を供給する企業です。南東部、南部、中西部を中心に28州およびカナダなどに事業展開しています。足もとの建設骨材需要量はやや低調に推移しているものの、2021年11月に成立した「インフラ投資雇用法」は2026年までのハイウェイ投資プログラムを約60%押し上げると見込まれ、中期的な事業環境は良好と期待されます。

・1-3月期決算は、製品価格の引き上げによって売上は前年同期比10%増、調整後EPSは同5.5倍に大きく改善しています。2023年12月期のガイダンスは、建設骨材の数量が前年比2%減~同2%増、平均価格が同13~15%増の想定のもと、売上は前年比7~11%増です。

買付チャートユナイテッド レンタルズ(URI)404.38ドル10.3

【建機レンタルの最大手】

・米国最大の建機レンタルの会社で、架空リフト、空気圧縮機、圧縮機、コンクリート機器、地ならし機、フォークリフト、発電機などを提供しています。米国49州に1,400以上の拠点を展開し、2022年の米国市場のシェアは17%のトップで、2位はサンベルトの13%、3位はハークの4%です。用途別の売上は、非住宅建設(インフラ建設を含む)と産業その他が主で、住宅建設向けは小さいです。

・今後の成長要因として、インフラストラクチャ法、EV関連投資、半導体製造、北米のLNG基地投資、インフレ抑制法などをあげており、中期的に事業環境は良好と考えられます。足もとの事業環境は良好で、2023年12月期の売上ガイダンス中央値は前年比約20%増の見込みです。中期の目標として2028年12月期に売上200億ドル(2022年12月期実績は116億ドル)をかかげています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
26(月) ・独IFO企業景況感(6月) カーニバル
27(火) ・夏季ダボス会議(中国・天津、29日まで開催)
・米耐久財受注(5月)

・S&PコアロジックCS住宅価格(4月)
・米新築住宅販売件数(5月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(6月)
キャノピーグロース
28(水) ・パウエルFRB議長が討論に参加
(ECBフォーラム、ポルトガル・シントラ)
マイクロンテクノロジー
29(木) ・ユーロ圏景況感(6月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁発言
・米実質GDP(1-3月期、確報値)
・米新規失業保険申請件数(6月24日に終わる週)
・米中古住宅販売成約(5月)
ナイキ
30(金) ・中国製造業・非製造業PMI(6月)
・米個人所得・個人支出(5月)
・米個人消費支出物価指数(5月)
・米ミシガン大学消費者マインド(6月、確報値)
 
7月
3(月)
・日銀短観(4-6月期)
・財新中国製造業PMI(6月)
・米ISM製造業景気指数(6月)
・米自動車販売台数(6月、4日までに発表)
 
4(火) ・米国市場休場(独立記念日)  
5(水) ・米製造業受注(5月)
・FOMC議事要旨(6月13日、14日開催分)
 
6(木) ・米チャレンジャー人員削減(6月)
・米ADP雇用統計(6月)
・米貿易統計(5月)
・米新規失業保険申請件数(7月1日に終わる週)
・米求人労働異動調査(5月)
・米ISM非製造業景気指数(6月)
 
7(金) ・米雇用統計(6月)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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