アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~住宅建設に底入れの兆し、住宅関連銘柄に注目~

投資情報部 榮 聡
2023/07/03
先週は市場予想を上回る複数の強い経済指標に加え、インフレ沈静を示唆する物価指標の組み合わせが好感され、S&P500指数は年初来高値を更新して引けました。今週の株価材料として、6月雇用統計、企業景況感、FOMC議事要旨(6月13日、14日開催分)、などが注目されます。
今回は住宅建設市場が底入れする兆しが見られるため、その恩恵が期待される銘柄として、DR ホートン(DHI)、レナー A(LEN)、マスコ コーポレーション(MAS)、バルカン マテリアルズ(VMC)、ユナイテッド レンタルズ(URI)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

強い経済指標を受けて大幅に反発、6/16(金)に付けた高値を超えて引けました。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
不動産 | 5.0% | 2.7% | 1.8% |
エネルギー | 4.8% | 2.2% | -6.4% |
素材 | 4.0% | 5.9% | 2.1% |
資本財・サービス | 3.9% | 6.6% | 5.8% |
金融 | 2.9% | 3.1% | 4.6% |
情報技術 | 2.9% | 4.6% | 17.0% |
一般消費財・サービス | 2.5% | 8.3% | 15.4% |
S&P500 | 2.3% | 3.9% | 7.9% |
公益事業 | 0.7% | 1.2% | -2.6% |
ヘルスケア | 0.6% | 2.1% | 1.4% |
生活必需品 | 0.6% | 1.5% | -0.7% |
コミュニケーションサービス | 0.4% | 1.3% | 12.2% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
チャーター・コミュニケーションズ | 12.6% |
フォード・モーター | 7.9% |
テキサス・インスツルメンツ | 7.4% |
サイモン・プロパティー・グループ | 7.2% |
フェデックス | 6.7% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | -9.3% |
ファイザー | -4.2% |
アムジェン | -2.2% |
アルファベット | -2.2% |
ブリストル マイヤーズ スクイブ | -1.7% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.3%、NYダウは2.0%、ナスダック指数は2.2%の大幅反発でした。
先週は、6/27(火)の6月消費者信頼感、5月新築住宅販売件数、5月耐久財受注など主要な月次経済指標が市場予想を上回ったうえ、29日(木)の1-3月期実質GDPの確定値が前期比年率2.0%増へ改定値の同1.3%増から上方修正されました。さらに、6/30(金)には5月個人消費支出物価指数が順調なインフレ鈍化を示しました。経済の予想以上の堅調とインフレ鈍化の組み合わせが好感されて大幅な反発となりました。
6/28(水)にはパウエルFRB議長がECBフォーラムで2回連続の利上げの可能性も排除しないと発言して相場を抑える要因になり、また、中国への半導体輸出に関して新たな規制が検討されているとのWSJ報道で半導体株が下落するなど、悪材料もありましたが、上記の好材料が凌駕しました。
業種指数では、経済指標の強さを受けて景気敏感業種が軒並み騰落率上位に並びました。個別銘柄でトップのチャーター コミュニケーションズ A(CHTR)はケーブルTVの会社で、「コードカッティング」の動きを受けて業績、株価ともに低迷していますが、出遅れ物色で買われた可能性がありそうです。
経済指標では、5月個人消費支出物価指数の総合指数が前年比3.8%増へ前月の同4.3%増から大幅に低下、コア指数も同4.6%増へ前月の同4.7%増から低下しました。コア指数は同4.7%増で前月と変わらずと予想されていましたが、低下して相場にポジティブに効いたとみられます。
今週の米国株式
先週は強い経済指標とインフレ鈍化の組み合わせが好感されて年初来高値を更新しました。ただ、S&P500指数の予想PERは20.2倍に達しており、高値警戒が生じやすいでしょう。また、来週末後半から4-6月期の決算発表が始まりますが、S&P500指数採用銘柄のEPSは前年同期比6.8%減の予想です。株価が大きく上昇した後ですので、決算発表が近づくにつれて市場の警戒感が高まる可能性がありそうです。
今週の株価材料として、6月雇用統計、企業景況感、FOMC議事要旨(6月13日、14日開催分)、などが注目されます。
6月雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比22.5万人増の予想です。4月の29.4万人、5月の33.9万人と強い数字から従来からの鈍化トレンドに回帰すると見込まれています。平均時給は前年比4.2%増の予想で、前月の同4.3%増から低下の予想です。非農業部門雇用者数が予想並みの低下、平均時給の前月から低下なら、相場にポジティブとなりそうです。
企業景況感については、6月ISM製造業景気指数は前月の46.9から47.2に、同ISM非製造業景気指数は前月の50.3から51.3に改善の予想です。企業景況感は通常、経済活動の先行指標と捉えられますが、昨年来の景気サイクルではこれら景況感の悪化が示唆するほど、足もとでハードデータ(景況感でない実際の経済活動の結果)の悪化は見られていません。逆に企業景況感が堅調なハードデータにサヤ寄せとなるか注目です。
前回のFOMCでは、メンバーの2023年末政策金利予想(誘導レンジの中央値)が5.1%から5.6%へ引き上げられたことから、利上げに積極的なメンバーが多いことはすでに分かっています。その後もパウエルFRB議長による議会証言、ECBフォーラムでの発言があったために、議事録がサプライズとなる可能性は小さそうです。
経済指標では上記のほか、7/3(月)に5月建設支出(前月比0.5%増の予想)、7/5(水)に米国の5月製造業受注(前月比0.8%増の予想)、7/6(木)に米国の6月ADP雇用統計(前月比24万人増の予想)、などが発表の予定です。
今週の5銘柄
今回は住宅関連銘柄をご紹介いたします。
6/20(火)発表の5月住宅着工件数が前月比21.7%増、6/27(火)発表の5月新築住宅販売件数が前月比12.2%増と住宅関連で強い数字が出ています。
先週ご紹介したように、建設支出のうち非住宅は昨年半ばから増加基調となっていますが、ここにきて住宅も底入れとなると建設支出の伸びが加速する可能性が高くなっています。
5月の建設支出は本日7/3(月)に発表予定で、4月の前月比1.2%増に続いて前月比0.5%増の予想です。幅広い投資がモニターしている建設支出で強い数字となると、建設関連への物色が強まる可能性があるでしょう。
住宅関連ETFの「iシェアーズ住宅建設ETF」は年初から41%の上昇と、S&P500指数の16%、ナスダック指数の32%をも上回る上昇となっています。シクリカル性が非常に強いため、ファンダメンタルズの悪化が目立った昨年後半が買い場になった形です。ただ、バリュエーションは市場平均よりも低いものが多く、ファンダメンタルズの改善を受けて、上昇の余地はあると考えられます。
そこで今週は、ホートン(DHI)、レナー A(LEN)、マスコ コーポレーション(MAS)、バルカン マテリアルズ(VMC)、ユナイテッド レンタルズ(URI) を選んでご紹介いたします。バルカンマテリアルズとユナイテッドレンタルズは、典型的な住宅関連ではありませんが、これまで住宅建設向けが足を引っ張っていたため、これが改善するとなると懸念要因が減ることになります。
なお、2022年12月28日付けの外国株式特集レポート「住宅ローン金利のピークアウトで注目の住宅関連銘柄」もご参照ください。
図表3 住宅関連ETFとS&P500指数

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 iシェアーズ住宅建設ETFの組入上位銘柄(6月27日時点)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (6/30) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | DR ホートン(DHI) | 121.69ドル | 10.9 | 【米国最大の住宅メーカー】 ・米国最大の住宅メーカーで、本社はテキサス州アーリントンにあります。米国南部を中心に33州110市場に展開し、1次取得向けから高級住宅まで幅広く取り扱い、戸建て住宅の市場シェアは約15%です。販売価格が40万ドル以下の住宅の売上が65%を占めます(2023年3月までの12ヵ月)。会社規模の大きさに加えて比較的買いやすい住宅にフォーカスしていることから、厳しい事業環境下でも相対的に堅調な業績を達成できるとみられます。 ・1-3月期の売上は前年同期比横ばい、調整後EPSは同32%減でしたが、売上・EPSとも市場予想を上回りました。2023年9月期の売上ガイダンスを前年比6%減~1%減相当の315~330億ドルとして、市場予想の285億ドルを大きく上回りました。1-3月期の受注額は前年同期比11%減ですが、10-12月期の同40%減から落ち込みの程度が改善となっています。業績の落ち込みの程度は予想よりも軽くなりつつあるとみられます。 | |
買付 | レナー A(LEN) | 125.31ドル | 10.0 | 【DRホートンに肉薄する大手】 ・米国の大手住宅メーカーで、本社はフロリダ州マイアミにあります。米国南部、中西部、西部、西海岸などの26州で事業展開しています。同業の買収を重ねてDRホートンと2強を構成するまでに拡大してきました。マルチファミリー、シングルファミリー賃貸、土地ストラテジーなどの事業を分社化する意向を2021年の初めに発表しています。 ・3-5月期は、売上が前年同期比4%減、調整後EPSが同36%減となりましたが、市場予想を上回りました。2023年11月期の販売戸数ガイダンスを6.2~6.6万戸から6.8~7.0万戸(前年比2~5%増相当)に引き上げました。3-5月期の受注戸数は前年同期比1%増、受注額は同10%減でした。6-8月期の受注戸数を1.8~1.9万戸として3-5月期の1.79万戸から増加と見込んでいます。2023年の落ち込みは想定よりも軽くなりつつあります。 | |
買付 | マスコ コーポレーション(MAS) | 57.38ドル | 17.2 | 【住宅設備機器メーカー】 ・世界最大級の住宅設備機器メーカーです。水栓などの配管製品と建築用塗料などを扱う装飾建設製品の2部門からなります。塗料の「BEHR」、水栓・シャワー機器の「Delta」「Hansgrohe」、照明の「Kichler」などの有力ブランドを展開します。同社の最大の販売先はホームデポです。海外売上の構成比が21%(2021年12月期)、主にドイツの水栓メーカー「Hansgrohe」によるものです。 ・住宅市場が落ち込む中でも、住宅関連では比較的価格が低い製品を扱い、修繕・リモデルで購入されることも多いことから、住宅関連の中では相対的に業績の落ち込みは小さくなると想定されます。2023年12月期の市場コンセンサスは、売上が前年比9%減、EPSは同5%減と予想されています。同社は長期的な経営目標として、4~8%の売上成長、若干の利益率改善、平均10%のEPS成長を支える自社株買いの実施をかかげてます。 | |
買付 | バルカン マテリアルズ(VMC) | 225.44ドル | 34.7 | 【砕石、砂利等の建設骨材が主力】 ・米国最大の建設資材の会社で、砕石、砂利等の建設骨材、アスファルトや生コン等の建設資材を手掛けます。高速道路の補修での使用が多く、また、その他の土木工事でも使用されるため、インフラ投資と関連性の高い会社と言えるでしょう。足もとの建設骨材需要量はやや低調に推移しているものの、2021年11月に成立した「インフラ投資雇用法」は2026年までのハイウェイ投資プログラムを約60%押し上げると見込まれ、中期的な事業環境は良好と期待されます。 ・1-3月期決算は、製品価格の引き上げによって売上は前年同期比7%増、調整後EPSは同30%増と好調です。建設骨材の数量は前年比2.5%減でしたが、平均価格は同20%増でした。通期の見通しは、1-3月期に行った製品価格引き上げを考慮して、純利益を8.15~8.95億ドルに引き上げました。年間の平均価格は前年比約15%増と見込んでいます。 | |
買付 | ユナイテッド レンタルズ(URI) | 445.37ドル | 11.3 | 【建機レンタルの最大手】 ・米国最大の建機レンタルの会社で、架空リフト、空気圧縮機、圧縮機、コンクリート機器、地ならし機、フォークリフト、発電機などを提供しています。米国49州に1,400以上の拠点を展開し、2022年の米国市場のシェアは17%のトップで、2位はサンベルトの13%、3位はハークの4%です。用途別の売上は、非住宅建設(インフラ建設を含む)と産業その他が主で、住宅建設向けは小さいです。 ・今後の成長要因として、インフラストラクチャ法、EV関連投資、半導体製造、北米のLNG基地投資、インフレ抑制法などをあげており、中期的に事業環境は良好と考えられます。足もとの事業環境は良好で、2023年12月期の売上ガイダンス中央値は前年比約20%増の見込みです。中期の目標として2028年12月期に売上200億ドル(2022年12月期実績は116億ドル)をかかげています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、DRホートンが2024年9月期、レナーが2023年11月期、その他は2023年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
7月 3(月) |
・日銀短観(4-6月期) ・財新中国製造業PMI(6月) ・米ISM製造業景気指数(6月) ・建設支出(5月) ・米自動車販売台数(6月、4日までに発表) |
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4(火) | ・米国市場休場(独立記念日) | |
5(水) | ・米製造業受注(5月) ・FOMC議事要旨(6月13日、14日開催分) ・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁が講演 |
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6(木) | ・ダラス連銀ローガン総裁が講演 ・米チャレンジャー人員削減(6月) ・米ADP雇用統計(6月) ・米貿易統計(5月) ・米新規失業保険申請件数(7月1日に終わる週) ・米求人労働異動調査(5月) ・米ISM非製造業景気指数(6月) |
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7(金) | ・米雇用統計(6月) | |
10(月) | ・米消費者信用残高(5月) | |
11(火) | ・日本工作機械受注(6月) ・ドイツZEW景気指数(7月) ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) |
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12(水) | ・日本機械受注(5月) ・米消費者物価指数(6月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
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13(木) | ・中国貿易統計(6月) ・ユーロ圏鉱工業生産(5月) ・米生産者物価指数(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月8日に終わる週) |
ペプシコ、デルタ航空 |
14(金) | ・米ミシガン大学消費者信頼感(7月、速報値) | 台湾セミコンダクター、JPモルガンチェース ユナイテッドヘルスグループ、シティグループ ウェルズファーゴ、ブラックロック |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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