アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~5-7月期決算の好調銘柄、エヌビディア、セールスフォース、シスコシステムズほか~
投資情報部 榮 聡
2023/09/04
先週は米国景気の沈静化を示す経済指標が立て続けに出たことから、米10年国債利回りの低下傾向が続いて、テクノロジー株が主導して株式は週間で続伸となりました。今週の株価材料として、金融当局者の発言、4-6月期家計純資産変化、8月の中国貿易統計、などが注目されます。
今回は8月中旬以降に発表された5-7月期決算の好調銘柄から、エヌビディア(NVDA)、セールスフォース(CRM)、シスコ システムズ(CSCO)、ウォルマート インク(WMT)、ロス ストアーズ(ROST)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
かなり戻ってきましたが、4,600ポイントの直近高値を超えるには、バリュエーションがネックになりやすいと考えられます。2024年の予想EPS245.93ポイントを基準に動くようになるのは、もう少し先の可能性があるでしょう。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 4.4% | 3.2% | 6.0% |
エネルギー | 3.8% | 4.2% | 13.3% |
素材 | 3.6% | 0.1% | 6.7% |
コミュニケーションサービス | 3.5% | 1.9% | 7.1% |
一般消費財・サービス | 3.0% | -1.1% | 8.8% |
S&P500 | 2.5% | 0.8% | 5.5% |
資本財・サービス | 2.0% | 0.3% | 7.7% |
金融 | 2.0% | -0.8% | 5.7% |
不動産 | 1.4% | -0.3% | 0.5% |
ヘルスケア | 0.1% | 0.7% | 2.4% |
生活必需品 | -0.3% | -3.2% | -1.2% |
公益事業 | -1.7% | -2.6% | -3.8% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
インテル | 10.1% |
3M | 8.1% |
アドビ | 7.3% |
SLB | 6.5% |
アップル | 6.1% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | -7.2% |
クラフト・ハインツ | -3.8% |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | -3.5% |
デューク・エナジー | -2.9% |
ユナイテッドヘルス・グループ | -2.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.5%、NYダウは1.4%、ナスダック指数は3.2%のそれぞれ上昇となりました。
米国景気の沈静化を示す経済指標が立て続けに出たことから、米10年国債利回りの低下傾向が続いて、テクノロジー株が主導して株式は週間で続伸となりました。
市場予想より弱く出た米経済指標として、4-6月期の実質GDP改定値(前期比年率2.1%増、速報値は同2.4%増)、8月ADP雇用統計(前月比17.7万人増、予想は19.5万人増)、7月JOLTs求人(882.7万人、予想は945万人)、8月コンファレンスボード消費者信頼感(106.1、前月は117.0、予想は116.0)などがあります。
一方、週末にかけては7月個人消費支出物価指数が市場予想と一致ながら、前月からインフレ加速を示し、9/1(金)の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比18.7万人増と市場予想の同17.0万人増を上回ったことから、米10年国債は上昇に転じ、株式は頭打ちとなりました。
業種指数では、「情報技術」が4.4%と大幅な上昇でした。アップル、マイクソフトがけん引したほか、業種を構成する65銘柄のうち、HPインクを除く64銘柄が上昇しました。個別で上昇トップのインテル(INTC)は、ゲルシンガーCEOが8/31(木)にカンファレンスで7-9月期業績は会社ガイダンスの中央値を上回っていると発言して好感されました。パソコン向けプロセッサーの在庫は通常状態に戻っており、顧客による注文回復を促しているとみられます。
今週の米国株式
今週の米国株式は引き続き米10年債利回り次第と考えられますが、4.3%を超えてどんどん上昇するほど米経済の基調は強くないとみられます。一方、バリュエーションの高さがネックになって、直近高値の4,600ポイントを超えていくのも難しそうです。S&P500指数で4,600ポイントの予想PERは2023年予想基準で21.2倍、2024年予想基準で18.7倍相当です。指数ベースでは当面もみ合いが想定されます。
今週の株価材料として、金融当局者の発言、4-6月期家計純資産変化、8月の中国貿易統計、などが注目されます。
来週にサイレント期間を控えていることもあり、今週は金融当局者の発言が多数予定されています。FRBによる政策金利に関する市場予想(FedWatch、9/4(月)時点)は、9月FOMCは据え置きの確率が93%とほぼ決まりだと思われますが、11月FOMCでは据え置きが62%、0.25%ポイントの利上げが36%と見方が分かれています。
米国の個人消費の先行きを占う要素として、雇用市場の動向とともに、FRBが発表する家計の純資産の動向も重要と考えられます。4-6月期の家計の純資産額が9/8(金)に発表予定です。前期比増加になっていれば、今後個人消費は鈍化していくにしても、急減となることはなく、緩やかな減速にとどまるだろうと考えられます。
この夏はテイラー・スウィフト、ビヨンセによる久しぶりのコンサートツアー、映画バービーのヒットによって米国の個人消費が押し上げられた可能性があると話題となっています。モルガンスタンレーでは85億ドル(約1.2兆円)の押し上げと推計しています。一時要因のため、秋にかけて消費減速となる可能性がありますが、家計の純資産に余裕があれば市場の懸念を和らげると期待できるでしょう。
中国経済の先行きに対する懸念が高まっているため、9/7(木)に発表予定の中国の8月貿易統計も注目されそうです。輸出は前年比9.0%減の予想(前月は同14.5%減)、輸入は前年比9.0%減の予想(前月は同12.4%減)で、前年比のマイナス幅が前月から縮小する予想です。懸念後退の契機となるか注目されます。
経済指標では上記のほか、9/5(火)に米国の7月製造業受注(前月比2.5%減の予想)、9/6(水)に米国の8月ISM非製造業景気指数(前月の52.7から52.5に悪化の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は8月中旬から始まった5-7月期の決算発表について、好調なものをご紹介いたします。スクリーニング条件は、(1)5-7月期決算が売上・EPSとも市場予想を上回った、(2)売上・EPSとも前年同期比増加している、の2点で条件に合うものを図表3にリストアップしました。
ここから、エヌビディア(NVDA)、セールスフォース(CRM)、シスコ システムズ(CSCO)、ウォルマート インク(WMT)、ロス ストアーズ(ROST)を選んでご紹介いたします。
図表3 5-7月期決算の好調銘柄(S&P500指数採用銘柄対象)
銘柄(コード) | 売上 予想比 (%) |
EPS 予想比 (%) |
売上 前年同期比 (%) |
EPS 前年同期比 (%) |
エヌビディア | 22.3 | 30.2 | 101.6 | 429.4 |
ロス・ストアーズ | 4.0 | 13.8 | 7.7 | 18.9 |
TJX | 2.6 | 11.5 | 7.7 | 23.2 |
インテュイット | 2.5 | 13.2 | 12.3 | 50.0 |
オートデスク | 1.8 | 10.5 | 8.7 | 15.8 |
メドトロニック | 1.8 | 8.3 | 4.5 | 6.2 |
ディア | 1.2 | 24.6 | 9.9 | 65.6 |
ウォルマート | 1.2 | 8.5 | 5.7 | 4.0 |
シスコシステムズ | 1.0 | 7.7 | 16.0 | 37.4 |
セールスフォース | 0.9 | 11.8 | 11.4 | 78.2 |
ヒューレット・パッカード・エンタープライズ | 0.1 | 5.4 | 0.7 | 2.1 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (9/1) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | エヌビディア(NVDA) | 485.09ドル | 46.6 | 【市場予想を大幅に上回る決算】 ・5-7月期決算は、売上が前年同期比2倍、調整後EPSが同5.3倍、それぞれ市場予想を22%、30%上回る非常に好調な決算でした。8-10月期の売上ガイダンスも、160億ドル±2%で、市場予想の125億ドルを28%上回りました。AIの計算に使われるGPU(画像処理半導体)を中心としたモジュール「H100」が、生成AIへの対応を急ぐクラウドサービス大手向けに急拡大しています。 ・同社はAIコンピューティングの市場の8割以上を支配しており、また、その強さはハードウェアではなく、過去10年にわたって積み上げてきたAI向けソフトウェアの蓄積にあるとみられることから、同社による市場支配は続きやすいと考えられます。株価は年初来3倍以上に上昇しているため、目先は利食いをこなす必要があるでしょうが、再び上昇基調を取り戻すと期待されます。アナリストの目標株価平均値は、640ドルまで引き上げられています。 | |
買付 | セールスフォース(CRM) | 221.53ドル | 27.5 | 【通期利益見通しを上方修正】 ・5-7月期決算は売上が前年同期比11%増、調整後EPSは同78%増、8-10月期のガイダンス中央値は売上が同約11%増、調整後EPSは同46%増で、いずれも市場予想を上回って堅調でした。通期業績のガイダンス中央値は、前回に比べて売上は0.4%、調整後EPSは8.5%引き上げられ、調整後営業利益率は約30%(前期実績は22.5%)に達する見込みです。 ・値上げに加え、クラウドサービスおよびビジネスソフトウェア製品に対する底堅い需要が背景となっています。同社は昨年度より売上拡大から利益率の改善を重視するよう経営の舵を切りましたが、その流れが継続していると言えそうです。なお、市場で注目されている生成AIに対する取り組みに関しては、決算リリースでは言及はありませんでした。 | |
買付 | シスコ システムズ(CSCO) | 58.84ドル | 14.2 | 【生成AI関連の投資に期待】 ・5-7月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回りました。サプライチェーン問題が改善に向かったことで、積みあがっていた受注残をこなして、2023年5月期の売上は前年比11%伸びました。一方、2024年5月期については、企業のIT支出鈍化が見込まれており、売上ガイダンスは市場予想を下回りました。しかし、CEOは「市場シェア拡大と売上高の増加で成長鈍化を乗り切れる」と自信を示しました。 ・シスコシステムズはソフトウェアおよび経常的収入の比率を高めるビジネスモデルの変革を行ったことで、需要の鈍化に対する対応力を高めていると考えられます。エヌビディアのデータセンター向け売上に示唆されるように、クラウドサービス大手が生成AI向けの投資を拡大していることから、その恩恵を受けることが期待されます。 | |
買付 | ウォルマート インク(WMT) | 161.57ドル | 24.7 | 【シェアの拡大が続く】 ・5-7月期決算は、売上が前年同期比6%増、調整後EPSが同4%増で、市場予想を上回って好調でした。米国の既存店売上は同6.4%増(来店客数が同2.9%増、平均客単価が同3.4%増)で市場予想の同4.0%増を大きく上回りました。通期のガイダンスは、売上が前年比4.0~4.5%増、調整後EPSを従来の6.10~6.20ドルから6.36~6.46ドルに引き上げました。 ・消費者はインフレの環境下でバリューと利便性を優先させており、同社はウォルマート店舗、サムズクラブ店舗、eコマースのいずれでも、これに応えることに成功しているとコメントしています。また、同社は食料品販売に強みをもちますが、一般消費財の販売も当初予想を上回って推移しているとコメント、市場シェアの拡大が続いているとみられます。 | |
買付 | ロス ストアーズ(ROST) | 121.70ドル | 23.3 | 【事業環境が改善】 ・売れ残りのブランド品や処分品を仕入れて低価格で販売するオフプライスと呼ばれるアパレルのディスカウントチェーンで、2023年7月時点で2,061店を展開しています。5-7月期決算は、売上が前年同期比8%増、EPSが同19%増で、いずれも市場予想を上回りました。事業環境の改善を受けて2024年1月期の既存店売上のガイダンスを従来の前年比横ばいから同2~3%増に引き上げました。 ・同業のTJXの5-7月期決算も好調であり、事業環境の改善は業界全体に広がっているものとみられます。市場コンセンサスでは、今後の5年間の売上成長率は1桁台の半ばから後半を達成できると見込まれています。既存店売上の伸びは1桁台前半の伸びが期待でき、1,000店以上の出店余地があるためです。さらにテクノロジーに対する投資で業務プロセスを改善することにより、10%以上の利益成長が期待されます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、シスコシステムズは2024年7月期、その他は2024年1月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
4(月) | ・米国市場休場(レイバーデー) | |
5(火) | ・米国製造業受注(7月) | |
6(水) | ・ユーロ圏小売売上高(7月) ・ボストン連銀コリンズ総裁講演 ・ダラス連銀ローガン総裁講演 ・米ISM非製造業景気指数(8月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
|
7(木) | ・中国貿易統計(8月) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、確報値) ・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁講演 ・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁講演 ・アトランタ連銀ボスティック総裁講演 ・米新規失業保険申請件数(9月2日に終わる週) |
|
8(金) | ・日本実質GDP(4-6月期、確報値) ・米家計純資産変化(4-6月期) |
クローガー |
9(土) | ・中国消費者物価指数・生産者物価指数(8月) | |
11(月) | ・日本工作機械受注(8月) ・OECD(経済協力開発機構)の経済見通し |
|
12(火) | ・ドイツZEW景気指数(9月) ・米NFIB中小企業楽観指数(8月) |
・アップルの新製品発表イベント オラクル |
13(水) | ・ユーロ圏鉱工業生産(7月) ・米消費者物価指数(8月) |
|
14(木) | ・日本機械受注(7月) ・ECB主要政策金利 ・米小売売上高(8月) ・米生産者物価指数(8月) ・米新規失業保険申請件数(9月9日に終わる週) |
アドビ |
15(金) | ・中国鉱工業生産・小売売上高(8月) ・中国調査失業率(8月) ・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(9月) ・米鉱工業生産(8月) ・トリプルウィッチング (株価指数先物・オプションの取引期限満了日) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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