「半導体」再上昇へ?~好業績の中小型半導体関連株を探る

「半導体」再上昇へ?~好業績の中小型半導体関連株を探る

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/08/30

信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。

「半導体」再上昇へ?~好業績の中小型半導体関連株を探る

これまで、半導体市況の低迷が続いてきました。WSTS(世界半導体統計)によると、世界半導体出荷額は2022年7月以降、前年同月比で減少が続き、特に同年11月以降は2桁台での減少が続いてきました。本年2月には前年同月比で24%を超える減少となっています。特にDRAMやNANDフラッシュなど、記憶をつかさどる役割を有するメモリーは前年同月比6割超下げる月もあり、厳しい市況となりました。

しかし、そんな半導体市況の底入れを示唆する現象がみられ始めました。第一に、冒頭でご説明した世界半導体出荷額の下げ渋りが指摘されます。8/4(金)に、WSTSから発表された世界半導体出荷額は前年同月比8%弱の減少となりましたが、前月の23%減からは減少率が急速に小さくなりました。大きく減少が続いてきたDRAMやNANDフラッシュ等のメモリーもマイナス幅が大きく減少。また、イメージセンサーは再び大幅増に転じてきました。また、DRAMの大口価格は6月に下げ止りの様相を呈しています。

さらに8/23(水)に発表された米半導体大手エヌビディアの5~7月期決算ですが、純利益が市場予想を大きく上回り前年同期比で9倍を超える増益となりました。AI(人工知能)向け半導体の市場が急速に立ち上がってきたことを示しているようです。同社が設計しているGPUは大量のデータを並列で処理するのに向いているので、AI向けに強く、同市場では約8割のシェアを有しているとみられます。

半導体出荷額の下げ渋りとAI向け市場の急拡大により、半導体市況は底を打った可能性が大きいとみられます。フィラデルフィア半導体指数は年初来高値から6%程度下げています(8/29時点)が、逆に言えば、それしか下げていなかったのです。実は昨年10月の安値から見ると6割も上昇しており、実は上昇第2波に入っているのかもしれません。ここからはAI向けや車載向けの市場を軸に「スーパーサイクル」第2波になるのではないでしょうか。

そこで「新興株ウィークリー」では、今後の株価上昇を期待できる半導体株を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行なってみました。

(1)東証グロース市場、またはスタンダード市場に上場

(2)SBI証券Webサイトの銘柄検索ウィンドウに「半導体」と入力し、出力される銘柄

(3)時価総額50億円以上1,000億円未満

(4)8/29(火)まで20営業日の1日当たり平均出来高が2万株以上

(5)直近四半期(3ヵ月)の営業利益が前年同期比で増益、または黒字転換

(6)信用取引の規制銘柄、注意喚起銘柄の対象になっていない

    

「図表」の銘柄は、上記の条件をすべて満たしています。掲載の順番は、(3)の時価総額順となっています。なお、半導体関連銘柄の多くが直近四半期に営業減益に陥る中、(5)の条件を満たしている銘柄は、業績面で、相対的に好調であると考えることができそうです。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 8/22(火)~29(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 「半導体」再上昇へ?~好業績の中小型半導体関連株を探る

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価(8/29・円) 時価総額(8/29・百万円) 直近Q営業増益率(3ヵ月・前年同期比)
5218 5218 5218 5218 オハラ 1,354 34,459 15.1%
6918 6918 6918 6918 アバールデータ 4,275 31,711 24.0%
6125 6125 6125 6125 岡本工作機械製作所 5,510 25,996 36.1%
6882 6882 6882 6882 三社電機製作所 1,403 20,975 450.0%
6337 6337 6337 6337 テセック 3,395 19,619 70.9%
6227 6227 6227 6227 AIメカテック 2,854 16,068 35.8%
6614 6614 6614 6614 シキノハイテック 2,744 12,139 224.7%
6862 6862 6862 6862 ミナトホールディングス 636 5,000 84.7%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成。
  • ※四半期営業増益率は、直近四半期営業利益(3ヵ月)の前年同期比増減率

掲載銘柄を解説!

■オハラ(5218)~市場は全固体電池関連としても注目?

光学製品用途向けのガラス素材、レンズ材等を製造する「光事業」の他、半導体製造用露光装置向け高均質ガラスや極低膨張ガラスセラミックス、石英ガラス等を製造する「エレクトロニクス事業」にも展開しています。セイコーグループ(8050)、キヤノン(7751)がそれぞれ19.3%ずつ、同社株を保有しています(23.10期2Q)。

6/9(金)に23.10期2Q累計の決算発表を実施。営業利益は15億円(前年同期比20%増)でした。世界的な半導体設備投資の増加基調を受け、収益力の高い「エレクトロニクス事業」が拡大し、貢献しました。トヨタと全固体電池関連技術で特許を共同請願している経緯もあり、「全固体電池」関連の中の有力な1社としても注目されそうです。3Q決算発表は9/8(金)の予定です。



■AIメカテック(6227)~日立製作所からスピンアウト。半導体製造装置等が拡大

16年7月に、日立製作所(6501)から独立して設立され、21年7月に東証2部に新規上場(現在はスタンダード市場)しました。IJP(インクジェット・プリンティング)ソリューション事業(売上構成比25%)、半導体関連事業(同45%)、LCD(液晶ディスプレイ)事業(同30%)に展開しています(23.6期)。顧客は中国、韓国、台湾等の企業が中心です。

8/8(金)に発表の23.6期(通期)決算は売上高154億円(前期比5.3%増)、営業利益6.6億円(同9.4%減)でした。4Q(4-6月期)単体でみると、営業利益11億円(前年同期比35%増)と3Qまでの赤字を挽回した格好です。先端半導体パッケージ、パワー半導体向けが好調でした。東京応化工業(4186)から事業譲渡もあり拡大しています。24.6期は営業利益14億円(前期比112%増)を計画しています。



■アバールデータ(6918)~東京エレクトロン等から製造装置を受託。受注残の消化が進む

産業用電子機器メーカーです。半導体製造装置関連は東京エレクトロン(8035)やニコン(7731)等から受託し、全売上高の62%を占めています(23.3期)。今期1Q(23.4‐6月期)は、難入部材が入り始めたことで、長納期となっていた受注残の消化、製品化による顧客への提供が進み、営業利益は6.8億円(前年同期比24%増)と好調でした。メモリ価格下落による設備投資削減等の影響で調整直面に入り、回復には時間を要すると述べました。



■岡本工作機械製作所(6125)~創業95年以上、『磨く』技術に特化。シリコンウエハをより薄く・より平らに加工 

研削・研磨用の砥粒加工機の世界的企業です。半導体製造装置も手掛けており、全売上高の約3割(23.3期)を占めています。「シリコンウエハをより薄く・より平らに加工する技術」が得意分野です。今年4月、シリコンウエハの世界的大手SUMCO(3436)の工場がある佐賀県伊万里市に、半導体サービス拠点を拡充するため不動産を取得しました。今期1Q(4‐6月期)の半導体関連装置事業は、新機種の開発やサービス拠点の拡充などの諸施策を進め、セグメント売上高55億円(前年同期比77%増)、営業利益17億円(同92%増)と大幅増収増益を達成。全体の業績も押し上げた格好です。



■三社電機製作所(6882)~パワー半導体にも展開。15.3期以来の利益水準回復を予想

今期(24.3期)創業90周年を迎える、電源機器事業とパワー半導体事業(売上高構成比29%、海外売上高比率56%、23.3期)を展開する企業です。パワー半導体はFA分野の製造用ロボットや業務用エアコン、新幹線など車輛用補助用電源など産業用電源向けに展開。営業利益は15.3期の20億円超をピークに低迷が続いていました。高付加価値製品の拡販や、生産部材の標準化、自動化設備の導入等で収益力の向上に邁進中。また、23.3期では、値上げが利益増に寄与しました。今期1Q(23.4‐6月期)決算発表では、売上高68億円(前年同期比8.6%増)、営業利益5.6億円(同450%増)と大幅増益を達成。利益率の向上(+3.2億円)が寄与したほか、小型電源用の電源機器や半導体事業の主力製品であるパワーモジュール等の売上が好調(+2.4億円)でした。旺盛なパワー半導体需要が続き、受注も堅調な模様です。



■テセック(6337)~半導体装置専門のグローバルメーカー。テキサス・インスツルメンツなどが主要顧客

半導体製造装置の専門メーカーです。前期(23.3期)の売上高構成比は「ハンドラ」46%、「テスタ」30%他。海外売上高(同)は85%のグローバル企業で、主要顧客にはアナログ半導体大手の米テキサス・インスツルメンツ(TI)がいます。パワーデバイス用テスタなどを軸に、顧客基盤拡大に向けた販売活動の展開や、一部ユニット生産の垂直統合等による能力増強が奏功しました。1Q(4-6月期)は大幅増収増益を達成。受注高は前年同期比78.9%増となり、円安も増益に大きく寄与しました。



■シキノハイテック(6614)~半導体検査・装置、LSIの設計・開発etc。車載向けが好調

エレクトロニクス分野で活躍する企業です。半導体検査装置は自動車関連で国内シェアNo.1を誇ります。

半導体検査・装置関連を手掛ける電子システム事業(売上高構成比45%)、LSI(大規模集積回路)の設計・開発等を行うマイクロエレクトロニクス事業(同32%)、産業用組込カメラやが画像システムの製品開発事業(同23%)の3事業を展開(23.3期)。また、各事業で受託開発も行っています。製造部門を持ち、実装から検査までの一貫体制を擁し、高付加価値で国内トップシェアの製品を多数有しているのが特徴です。主要顧客の顔ぶれはデンソーやルネサス等です。今期1Q(23.4-6月期)は半導体後工程商材への設備投資や、自動車向け製品が好調。高付加価値製品への取り組みや価格転嫁なども奏功し、1.6億円(前年同期比224%増)の大幅増益を達成しました。営業利益の進捗率28%ですが、業績は下期偏重傾向です。受注も好調が続いていると述べており、業績予想の上方修正に期待感がもてるでしょう。



■ミナトホールディングス(6862)~半導体メモリへの書き込みサービスが好調

国内初のデバイスプログラマ*を開発した企業など、連結子会社9社を擁する持株会社です。電子部品やデジタルデバイス、オンライン会議システムの販売など多様な事業を手掛けています。これまで積極的にM&Aを行い、業容を拡大中です。今期1Q(23.4-6月期)はメモリー市況の低迷の影響を受けつつも、利益率の高いROM**(半導体メモリ)へのデータ書き込みサービスで売上が増加し、収益性が改善。売上高は前年同期比19%の減収となるも、営業利益は3.1億円で前年同期比84%増の大幅増益となりました。また、子会社の株式譲渡による特益等で、純利益は1Qとして過去最高を更新。純利益の通期目標に対する進捗率は62%超と高水準です。利益増に寄与したROM書き込みサービスに関し、日本サムスン株式会社、株式会社トーメンデバイスと共同で実施する国内大手メーカー向けプロジェクトは、売上・書き込み数量ともに堅調に推移している模様です。



*半導体メモリ(ROM。下記参照)に、データの書き込み、消去、書換などを行うための装置

**読み取り専用メモリ(Read Only Memory)。データの本棚のような役割で、電源をオフにしても書き込まれたデータは消えない

おすすめ記事(2023/08/30 更新)

口座開設・管理料は
無料!

信用取引口座開設

信用取引を行うには、信用取引口座の開設が必要になります。 WEBサイト上でのお手続きだけで「最短翌日」口座開設完了!

※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。

ご注意事項

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。詳細はこちら

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。