日経平均は調整?「次の主役」担う好業績銘柄を探る

日経平均は調整?「次の主役」担う好業績銘柄を探る

投資情報部 鈴木 英之

2023/08/18

日経平均は調整?「次の主役」担う好業績銘柄を探る

日経平均株価は昨年末26,094円から本年6/19(月)33,772円まで29%上昇した後は、高値圏でのボックス相場になっていました。このボックス相場では、7/12(水)取引時間中安値31,791円、8/7(月)同31,830円が下値支持ラインになっていました。したがって、この下値支持ラインを下回ると、株価は調整局面入りの可能性が大きくなります。

8/17(木)の東京株式市場では日経平均株価終値が31,626円となり、上記の下値支持ラインを割り込みました。同株価は、冒頭の約半年の上昇相場が終了し、その調整局面に入った可能性が大きそうです。想定される下値メドとしては以下の5点を中心に考えたいと思います。

(1)31,213円・・・22年末から本年6/19高値の上昇幅に対する3分の1押し

(2)31,000円・・・心理的節目。一目均衡表のクモ下限も近い(8/17・8/18時点に限る)

(3)30,965円・・・100日移動(8/17時点)

(4)30,395円・・・6/19高値から10%下落した水準

(5)30,000円・・・心理的な節目。22年末から本年6/19高値の上昇幅に対する半値押し(29,933円)に近い

株価調整のおもな理由は、米長期金利が再び上昇基調を強めてきたことです。米経済指標は総じて強く、FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーもインフレへの警戒を続けています。反面、欧州や中国の景気に不透明感が漂い、総じてグローバルな投資家のリスク許容度が悪化しやすい環境になっています。

東京株式市場は例年、お盆休み以降にむしろ商いが細る傾向があります。8月前半は決算発表が佳境となるため、市場参加者は夏季休暇を取りにくい面がありますが、後半であれば休みが取りやすいでしょう。さらに、米レイバー・デーが予定される9/4(月)までは米国の投資家が夏季休暇をとりやすい季節でもあり、市場参加者がさらに減少する要因になりそうです。市場参加者が減ると、売買注文の「板」が薄くなり、株価急変のリスクも高まりやすいとみられます。

投資家サイドとしては、基本的に、現金に余裕を持たせたポジションとしたいところです。調整局面を経て物色対象が変わりやすくなってくる点にも注意したいところです。そうした中、決算発表シーズは8/15(火)頃までにおおむね終了。今後は好決算銘柄を改めて買う動きも出てきそうです。そこで、株式市場全般の下落が、押し目買いチャンスになりそうな銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行なってみました。

(1)東証プライム市場上場銘柄

(2)時価総額が1,000億円超

(3)3月、12月決算銘柄で8/4(金)以降に決算発表

(4)予想EPSを公表しているアナリストが3名以上

(5)市場予想EPSが過去4週間で上昇

(6)四半期営業利益(3月決算銘柄は24.3期1Q、12月決算銘柄は23.12期2Q累計)が市場コンセンサスを超過

(7)同四半期営業利益は前年同期比で黒字転換、または10%超の増益

(8)今期会社予想営業利益が増益で、かつ当初予想から下方修正されていない

(9)今期市場予想営業利益が増益で、会社予想を上回っていること

(10)来期市場予想営業利益が今期市場予想比10%超の増益予想

図表の銘柄は、(1)~(10)のすべての条件を満たしており、四半期営業増益率の大きい順に並べられています。

市場コンセンサスおよび財務データはBloombergデータを参照にしています。

■図表 日経平均は調整?「次の主役」担う好業績銘柄を探る

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名

株価
(8/17)

四半期累計営業増益率(前年同期比) 来期市場予想営業増益率(前期比) 今期市場予想EPS4週変化率 業績ポイント
1969 1969 1969 1969 高砂熱学工業 2,730 黒字転換 11.1% 0.7% 空調設備工事業界のリーディングカンパニー。24.3期1Qは産業設備を中心に繰越工事が順調に進捗し、営業利益が23億円と黒字転換
2767 2767 2767 2767 円谷フィールズホールディングス 2,372 988.7% 17.9% 1.9% 大手メーカー等と提携し、パチンコ・パチスロを企画・開発・販売する他、「円谷プロダクション」関連事業。1Qはパチンコ・パチスロ向けが好調で、営業利益20億円
9616 9616 9616 9616 共立メンテナンス 6,246 170.6% 34.3% 8.0% ビジネスホテル「ドーミーイン」等のホテル事業が主力。学生・社員寮管理も。1Qは主力ホテル事業が大幅に拡大し、営業利益は29億円に
8086 8086 8086 8086 ニプロ 1,106 148.4% 19.5% 0.9% 人工腎臓(ダイアライザ)に強みを有する医療機器事業や医薬事業他を展開。1Q営業利益は73億円。コロナ後の需要機会を逃さず販売・販促。円安が輸出増に寄与
4921 4921 4921 4921 ファンケル 2,640.5 84.3% 12.2% 1.1% 化粧品、栄養補助食品。1Qは人流再開もあり、化粧品が伸びたほか、栄養補助食品も増えた。広告宣伝の効率化等も手伝い営業利益は32億円
7936 7936 7936 7936 アシックス(12) 5,202 75.4% 12.9% 15.0% 競技用シューズ等をグローバルに展開。年初から各種スポーツイベント再開の追い風。円安・販売価格適正化も追い風。2Q累計営業利益336億円は過去最高。通期会社予想営業利益370→460億円に上方修正
6465 6465 6465 6465 ホシザキ(12) 5,455 73.4% 14.9% 3.7% 業務用厨房機器でグローバル展開。業務用製氷機で国内トップ。2Q累計は日米欧で売上高が拡大し営業利益は229億円。通期会社予想営業利益340→370億円に上方修正
7867 7867 7867 7867 タカラトミー 2,259 50.5% 14.1% 3.1% 「トミカ」のトミーと「リカちゃん」のタカラが合併して誕生した国内玩具大手。1Qはおもに国内玩具の回復で増収・大幅増益に。プラレール等の定番商品では大人向けにも市場開拓
4527 4527 4527 4527 ロート製薬 3,700 36.0% 10.6% 0.8% アイケア関連、スキンケア関連、内服関連を開発・製造・販売。国内市場が、顧客ニーズに合った商品開発が奏功し大幅に回復。通期会社予想営業利益350→370億円に上方修正
7269 7269 7269 7269 スズキ 5,222 33.9% 10.4% 0.6% 国内軽自動車でダイハツとトップ争い。インドでマルチ・スズキがトップシェア。国内外で販売が好調で、1Qは増収・大幅増益に。通期会社予想営業利益を3,300→3,600億円に上方修正
  • ※Bloombergデータ、会社データ、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名右横に(12)と記載された銘柄は12月決算、他は3月決算。
  • ※四半期営業増益率は、12月決算銘柄は23.12期2Q累計、他は24.3期1Qの前年同月比営業増益率。

一部掲載銘柄を解説

■ホシザキ(6465)~M&Aを駆使し成長を続けるグローバル企業

★日足チャート(6ヵ月)

  • ※データは2023/8/18(日足)13:30時点。 ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★連結業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■業務用厨房機器で高シェア

業務用厨房機器の大手です。売上構成比(22.12期)は製氷機18.6%、冷蔵庫28.7%、食器洗浄機6.5%、ディスペンサ7.4%、保守・修理17.6%他、他社製品の仕入販売も行っています。

国内シェアは製氷機59%(2020年)、冷蔵庫43%(同)、ビールディスペンサ73%(同)、食器洗浄機49%(2019年)と高い比率を誇ります。海外売上高比率が4割を超えるグローバル企業です。

2000年以降、同社製品は「グッドデザイン賞」「省エネ大賞」「地球温暖化防止大賞」など、合計12回受賞しており、外部からの高い評価も強みです。

一方で企業買収(M&A)にも前向きで、1999年には売上高が900億円未満の企業でしたが、おおよそ数年に1回のペースでM&Aを実施し、22.12期には、売上高が3,200億円超、時価総額7千億円超の規模にまで拡大しています。

■再上方修正の可能性も

23.12期1Qは売上高905億円(前年同期比24%増)、営業利益118億円(同73%増)と大幅増収増益でした。

続く2Q累計期間(8/10発表)も、売上高1,837億円(前期比22%増)、営業利益229億円(同73%増)と大幅増収増益ペースに減速感は出ていません。

国内では経済回復に伴うフードサービス業界の設備投資需要に迅速に対応。顧客が抱える様々な課題の解決や安心・安全な食環境づくりへ貢献できる付加価値の提供に注力し、売上高は前年同期比13%増となりました。海外も、欧州での買収効果等を含めて好調で同34%増となりました。販売価格適正化や円安も手伝い、営業利益は全体で、前年同期比73%増と膨らみました。

会社側は好調な2Q決算を受け、23.12期の会社予想業績について、売上高3,500億円→3,550億円(前期比10%増)、営業利益340億円→370億円(同32%増)と上方修正しました。上記した販売好調に加え前提為替レートも、ドル・ユーロともに10円分、円安方向に見直されています。

ただ、修正後の前提為替レート(1ドル135円、1ユーロ145円)も為替相場の現状からみれば保守的にみえます。上半期営業利益229億円は修正後予想営業利益370円に対し進捗率61%です。業績予想は再上方修正される可能性もありそうです。

■ロート製薬(4527)~好業績をテコに20期連続増配を予定

★日足チャート(6ヵ月)

  • ※データは2023/8/3(週足)15:00時点。 ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★連結業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■アイケア、スキンケア、内服に展開

アイケア関連(目薬、洗眼薬等)、スキンケア関連(外皮用薬、リップクリーム、日焼け止め、機能性化粧品等)、内服関連(胃腸薬、漢方薬、サプリメント等)を開発・製造・販売しています。


1899年に大阪市で胃腸薬の販売により創業。1909年に当社ブランドイメージのもとになる「ロート目薬」の販売を開始しました。1975年にメンソレータム・ブランドを取得し、スキンケア分野に進出。1988年には米メンソレータム社を買収し、世界100ヵ国以上に広がるネットワークを獲得しました。

地域別売上高(24.3期・第1四半期)は日本60%、アジア(中国、香港、ベトナム他)26%、アメリカ7%、ヨーロッパ6%他となっています。

個別商品では、古くは目薬の他、メンソレータム、パンシロン胃薬等が知られた存在です。最近はニキビや肌荒れの防止に役立つ「メラノCC」や、保湿にこだわったスキンケア商品である「肌ラボ」などが人気商品となっており、インバウンドや越境ECの売上高も計上されています。

■23.3期は業績予想を上方修正、連続増配へ

8/9(水)に発表された23.3期・第1四半期決算では、売上高611億円(前年同期比17%増)、営業利益112億円(同36%増)と増収・増益を確保しました。

日本では、経済活動が回復する中、顧客ニーズに合った商品提案が奏功しました。マスク着用で落ち込んでいたリップクリームも回復してコロナ前を上回りました。


一方、海外が全地域で増収増益となった他、国内でインバウンド売上高も回復傾向となりました。


これらを受け会社側は、24.3通期の業績予想を上方修正し、売上高を2,590億円→2,630億円(前期比10%増)、営業利益を350億円→370億円(同9%増)としました。売上高、営業利益、経常利益、純利益は過去最高を更新する見込みです。また、会社予想1株配当も上期12円+下期12円、通期で24円が予定され、20期連続の増配が見込まれています。

株価は右肩上がりの上昇が継続していますが、業績や配当も現状では、それを裏付ける展開になっています。

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