連休明けの国内株式市場は急変動の可能性!?その理由は?

連休明けの国内株式市場は急変動の可能性!?その理由は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/08/08

日経平均は反落。米国債の格下げが売りのきっかけとなる。企業決算は悲喜こもごも

8月第1週(7/31-8/4)末の日経平均は、前週末比566円48銭安(▲1.7%)と週足ベースで反落。7月第4週の上昇分(454円)をすべて打ち消す軟調な展開となりました。

日本時間8/2(水)の寄り前、格付け会社のフィッチ・レーティングスが財政見通しの悪化等を背景に、米国債の格付けを最上の「AAA」から「AAプラス」に引下げると発表。株式市場で高値警戒感が広がっていた中、売りのきっかけとなった形です。同期間の他株価指標は、TOPIXが▲0.7%、TOPIXグロース指数が▲1.3%、バリュー指数が▲0.2%であり、日経平均には先物主導とみられる売りが続きました。売り圧力が強まる中、32,000円が下値抵抗ラインとして作用しました。

また、4-6月期の決算発表シーズンが本格化し、業績や見通し内容でも株価の明暗が分かれた形です。

日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(7/31終値を8/7終値と比較・図表7)の首位は、ニッスイ(1332)でした。8/4(金)に今期1Q(23.4‐6月期)の決算を発表し、営業利益が97億円(前年同期比45%増、通期目標の36%)と大幅増益となりました。複数回にわたる値上げにより、食品事業の回復が増益に寄与しました。他には、大手海運3社がランクイン。4-6月期の決算発表では、円安や自動車船の好調などを背景に、通期業績の上方修正を行いました。

下落率上位(7/31終値を8/7終値と比較・図表8)の多くは、4-6月期決算発表で軟調な業績や見通しを示した企業です。首位の住友ファーマ(4506)は、7/31(月)に発表した1Q(4-6月期)決算で▲389億円の最終赤字を計上(通期予想は同▲800億円)。米国での主力薬の独占販売が、2月に終了したことが業績の重しとなったほか、北米事業の構造改善費用がかさんだ形です。

8月第2週の日経平均は上昇スタート。決算内容が好感された銘柄が、押し上げ材料となっています。同週は国内企業の決算発表が佳境を迎える週である上、10日(木)夜に米7月消費者物価指数(CPI)の発表、11日(金)は休場を控えています。重要日程を多数控えた週で最終日が休場のため、慎重な相場展開が予想されるでしょう。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(7/31終値を8/7終値と比較)

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(7/31終値を8/7終値と比較)

連休明けの国内株式市場は急変動の可能性!?その理由は?

国内株式の投資指標の1つにNT倍率があります。NT倍率は日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割った倍率であり、NとTは両指数の頭文字をあらわします。NT倍率の上昇は日経平均が、低下はTOPIXが、相対的にアウトパフォームしていることを示しています。

図表9上段図は、NT倍率の長期推移を示したグラフです。2010年代から2021年初め頃までNT倍率は上昇トレンドにありました。これは、値がさ株(株価の高い株)、かつグロース株(成長株)の株価変動の影響を受けやすい日経平均が、TOPIXをアウトパフォームし続けたことを意味していますが、NT倍率上昇の背景にあったのが、米国の低金利政策でした。2010年代の米国は、米国債購入政策などにより長期金利が低位で推移する中、経済は緩やかな成長を遂げてきました(ゴルディロックス経済)。そうした中、米国ではテクノロジー企業などが急成長を遂げてきており、その影響が日本株にも及んだと言えます。

しかし、図表9下段図を見ると、2021年以降のNT倍率は低下へ転じています。これは米国の長期金利(10年国債利回り)が上昇し始めたことが関係していると言えるでしょう。また、ここ数ヵ月間のNT倍率にフォーカスすると、NT倍率は5月初旬に上昇しましたが、米10年国債利回りの上昇が鮮明になり始めた6月下旬以降、再び低下へ転じています。

図表9 NT倍率と米10年国債利回り(上段図:長期推移、下段図:短期推移)

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

現状、米10年国債利回りは、過去1年で3度目となる4%超えとなっています。これまではその後、低下へと転じて3%台へ戻しましたが、今回はどうなるのでしょうか?そのカギを握るのが、今週後半のイベントだと考えられます。

今週は10日に7月消費者物価指数、11日に7月生産者物価指数、8月ミシガン大学消費者信頼感指数、など物価関連指標の発表が相次ぎます。先月の米国市場では7月上旬に発表された雇用関連指標が堅調に推移したことで10年国債利回りが4%台へ上昇し、株式市場の重石になりましたが、その後に発表された6月消費者物価指数の伸びが市場予想よりも鈍化したことなどを手掛かりに金利上昇が一服しました。今週発表される7月消費者物価についても、前月に続きインフレが抑制されていることが示唆されれば、金利低下の材料になりますが、現状の市場予想(ブルームバーグ集計)では、消費者物価(CPI)が前年同月比+3.3%(6月実績:+3.0%)、食品・エネルギーを除くコアCPIが同+4.7%(6月実績:+4.8%)となっています。エネルギー価格下落の影響が一巡するなか、CPIの伸び率の再拡大が予想されていることなど予断を許さない状況と言えるでしょう。

図表10 消費者のインフレ期待とガソリン価格

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

また、11日発表の8月ミシガン大学消費者信頼感指数では、消費者による1年先、および5-10年先のインフレ見通し(インフレ期待)が発表されます。このうち、1年先インフレ期待は、ガソリン価格の影響を強く受ける傾向がありますが、このところ原油価格が上昇傾向を辿る中、ガソリン価格についても同様にじりじりと価格が切り上がっていることは気になるところです。1年先インフレ期待はもとより、長期的なインフレ見通しを示す5-10年先インフレ期待の上昇率が拡大するようであれば、長期金利の上昇が促される可能性があるでしょう。

更に、米長期金利の動向を占う上では、今週半ばから後半にかけて行われる米国債の四半期定例入札(クオータリー・リファンディング)も要注目となります。8/2に米国財務省は、今回の入札における米国債の発行額を合計で1,030億ドル(3年国債:420億ドル、10年国債:380億ドル、30年国債:230億ドル)と市場予想を上回る規模となることを発表。更に、今後も発行額を増加させる方針を示しました。

一方、8/1に世界3大格付け会社の1社であるフィッチ・レーティングスが米国債の長期外貨建て発行体格付けを最上格AAAからAA+へ1段階引き下げたことは記憶に新しいところです。今回の国債入札はフィッチによる米国債格下げが発表されて初めの実施となるため、投資家の需要動向を含めて市場の関心が高まっていると見られます。入札時の投資家の買い意欲を示す応札倍率や、落札された国債利回りの水準などを通じて、市場が無難な結果と判断すれば、市場で流通している国債についても買い戻しの動き(利回り低下)となる一方、不調と受け止められれば米国債の売りに拍車がかかる可能性があります。

これまで述べてきたように、米国では週後半に米国債の動向に大きな影響を及ぼしかねないイベントが集中しております。そうしたなか、国内は11日(金)が休場となるため、米国市場における10日、11日の2日分の値動きが、14日(月)にまとめて反映されることになります。日本はお盆の時期で商いが細りやすいタイミングにあるだけに、思わぬボラティリティの上昇(価格急変)の可能性に注意する必要があります。仮に米国長期金利が大きく上昇するようであれば、週明けの国内株式市場は、日経平均が主導して軟調な展開となり、NT倍率の低下に拍車がかかる可能性があるでしょう。

ちなみに、ご参考までに米長期金利の上昇とNT倍率の低下を想定しつつ、過剰な値動きの影響を軽減する取引方法としては、TOPIXのインデックスを買い(例:ブルファンドの買い)つつ、同量の日経平均のインデックスを売る(例:ベアファンドの買い)といった戦略などが有効ではないかと考えられます。

図表11 米国債の応札倍率の推移

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

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