夏相場後半に活躍期待の中小型株

夏相場後半に活躍期待の中小型株

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/08/02

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夏相場後半に活躍期待の中小型株

東京株式市場は、戻りを試す展開になっています。日経平均株価は7/12(水)に一時31,791円まで下げた後反発する場面もありましたが、25日移動平均線に頭を抑えつけられ、7/28(金)には一時32,037円まで再下落する展開となりました。しかしその後は8/1(火)の高値33,488円まで急回復し、同じ日にTOPIXは、取引時間中ベースで90年7月23日以来の高値水準を回復。ただ、8/2(水)は一転反落し取引開始となりました。

東証グロース市場もほぼ、日経平均同様の動きとなりました。7/28(金)取引時間中安値から、8/1(火)取引時間中高値までは、日経平均、東証グロース市場指数はともに4%台の回復となっています。

7/28(金)に日銀金融政策決定会合の結果が発表され、YCC(長短金利操作)における長期金利の許容変動幅について、これまでの±0.5%を超えた動きを許容する(ただし±1%超は許容されない)との修正が発表されました。これについて、市場参加者の多くが「YCCにおける長期金利の許容変動幅が実質的に±1%までに変更された」と考え、金融緩和からの転換が意識され、同日の東京市場は全体的に売り優勢の展開になりました。

ただ、日銀による臨時買いオペもあり、日銀が0.6%程度で長期金利の上昇を抑えてきたことから、長期金利の上昇は一服し、ドル円相場も円安・ドル高方向に戻り、7/31(月)と8/1(火)の上昇につながりました。本年は2月以降、月の第1営業日の日経平均は上昇しており、8月もその傾向が続いた面もありそうです。8/2(水)は米ハイテク株安の影響に加え、「月初の買い」の反動、米国債格下げへの警戒という面もありそうです。

中小型株も方向感が見えにくい展開です。決算発表を控えている銘柄が多く、様子見の銘柄も増えているように思われます。そうした中、8月以降の「夏相場後半」ではどのような中小型株がリード役になるのでしょうか。「7月に活躍した銘柄」にヒントを求めるべく以下のようなスクリーニングを行なってみました。

(1)東証グロース市場またはスタンダード市場に上場

(2)時価総額100億円以上1,000億円未満

(3)7月末終値が6月末終値に対して10%以上上昇

(4)7/31(月)まで20営業日の1日当たり平均出来高が2万株以上

(5)今期会社予想営業利益が前期比10%以上の増益、または黒字転換

(6)8/1(火)~8/4(金)に決算発表(予定)の銘柄を除く

(7)信用規制銘柄・注意喚起、および継続企業の前提に疑義が生じている銘柄を除く(当社信用取引規制銘柄は含まず)

(8)直近四半期(3ヵ月)が赤字の銘柄を除く

 

    

「図表」の銘柄は、上記の条件をすべて満たしています。掲載の順番は、(5)の会社予想営業増益率が大きい順としました。

業績面での裏付けも有している銘柄が多くなっているため、8月以降の「夏相場後半」での活躍も期待できそうです。ただ、決算発表シーズンでもあり、同発表日がこれから接近している銘柄については、発表内容の確認も必要になるでしょう。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 7/25(火)~8/1(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 夏相場後半に活躍期待の中小型株

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(8/1・円)
株価上昇率
(7月・月間)
今期会社予想
(営)増益率
備考
6547 6547 6547 6547 グリーンズ(8/14・本) ※ 1,462 11.1% 黒転 全国に97店舗、14,404室(23.3末)を展開するホテルチェーン。コロナ期の赤字から脱却し今期は最高益更新へ。株主優待制度もあり
5161 5161 5161 5161 西川ゴム工業(8/8・1Q) 1,401 13.0% 342.7% 自動車ドア周辺に装着する部品(ウェザーストリップ)の設計・製造・販売等。自動車メーカーの生産回復により、前期(23.3期)業績は予想を上振れ。今期(24.3期)営業利益は大幅増見通し
9522 9522 9522 9522 リニューアブル・ジャパン(8/14・中間) 1,031 27.7% 155.9% 再生可能エネルギーによる発電所をトータルで手掛ける。再エネ導入は政府が支援。前期は公開買い付け(TOB)実施し、最終赤字。今期は黒転し、最高益を更新予定
6176 6176 6176 6176 ブランジスタ(8/10・3Q) 898 22.6% 135.3% 電子メディア事業。雑誌「旅色」で観光需要回復を図る自治体とのタイアップが拡大。今期(23.9)からの新事業が好調で、上期時点で過去最高の営業・経常利益を達成
4231 4231 4231 4231 タイガースポリマー(8/9・1Q) 684 13.7% 101.7% ホースやゴムシートが主力。今期(24.3期)からの業績本格回復見込む。本田技研(7267)向けの売上が39%(23.3期)。海外売上高比率は56%(同)。今期想定為替レートは1ドル=130円
6994 6994 6994 6994 指月電機製作所(8/7・1Q) 538 11.0% 70.8% フィルムコンデンサの老舗。産業機器やxEV向けで、脱炭素化の流れが追い風。収益性の改善が目標。産業機器向け等が牽引し、今期(24.3期)は大幅増益見通し
7086 7086 7086 7086 きずなホールディングス(10月・1Q) 1,820 19.2% 36.3% 家族葬に特化。自社出店とM&Aで店舗拡大中。コロナ禍からの回復と簡素化ニーズ増により、最高業績3期連続更新予定
9268 9268 9268 9268 オプティマスグループ(8/10・1Q) 1,347 12.2% 35.1% 中古日本車を海外へ輸出。ディーラーから買い手に届くまでの多様なニーズに対応。前期(23.3期)は船腹不足が重しに。今期(24.3期)は上場来最高の売上・営業利益の更新見込む
8920 8920 8920 8920 東祥(11月・2Q) 1,385 13.5% 27.6% 前期(23.3期)は営業利益31億円(同30%減)。ABホテルは大幅増益もスポーツクラブ、不動産が不調。今期は営業利益27%増が会社予想
9558 9558 9558 9558 ジャパニアス(10月・3Q) 3,365 10.3% 22.2% エンジニア派遣等。創業来、20年超黒字継続。旺盛なエンジニア需要を背景に業績好調。5年以内にプライム市場への区分替えを目指す
5967 5967 5967 5967 TONE(10月・1Q) 1,167 28.8% 18.6% ボルト締結機器等を建築、航空・宇宙など多岐に亘る分野で展開。建築向けシヤーレンチは世界シェアNo1。新製品群の投入と原価低減により、7期ぶり水準の営業利益達成が会社計画
6489 6489 6489 6489 前澤工業(8/7・本) 927 10.1% 11.6% 水インフラ。上下水道事業が主要。官公庁向けが大多数。メンテナンス需要の増加が追い風
7367 7367 7367 7367 セルム(8/10・1Q) 1,267 10.1% 10.0% 人材・組織開発のコンサルティング。顧客は大手企業が6割。確固たる顧客基盤を有し、今期(24.3期)は3期連続で増収増益と堅実成長の見通し
  • ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成
  • ※銘柄名の右は、(直近決算発表予定日・該当期間)。該当期間は、1Q=第1四半期、2Q=第2四半期、3Q=第3四半期、本=通期(本決算)
  • ※グリーンズ(6547)は当社信用取引規制銘柄に指定されています(2023/8/2現在)

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■グリーンズ(6547)~コロナ禍の赤字継続から一転、最高益更新へ

★週足チャート(3年)

★業績推移(百万円)

■全国にホテル展開~観光需要復活の追い風

1957年7月に三重県四日市市の「新四日市ホテル」として創業され、23年3月時点では全国に97店舗、14,404室を擁するホテル事業者です。

価格を抑えた宿泊特化型の「コンフォート」ブランドのホテルを全国展開している「チョイスホテル事業」と、地域の実情に合わせた「グリーンズホテルス事業」の2形態で展開しています。さらに、ホテル用不動産の有効活用を狙う不動産管理事業にも展開しています。

自社で用地を保有して運営する所有直営方式のホテルは2店舗にとどまり、他はホテルオーナー等が建築した建物を賃借するリース方式が多いです。この方式は、ホテルを所有することで生じる資産価値の目減り等のリスクを抑えられること、出店時の投資資金を抑えられること、修繕費をオーナーが負担するため、運営コストが抑えられること等のメリットがあります。

OTA(オンライン旅行代理店)を通じた販売や、旅行会社への客室提供がおもな販売方法です。客室単価の設定についてはレベニューマネジメントの手法を採用し、需要動向を正確に予想したうえで、柔軟に設定できるような仕組みになっています。

■連続9四半期の営業赤字から回復し、最高益へ

宿泊は国内観光客のみならず、多くの外国人観光客も利用している模様です。業績的にはコロナ直前の19.6期に純利益で過去最高益を記録しました。

しかし、2020年1月にWHO(世界保健機構)により、新型コロナウイルズのパンデミックが宣言され、同社の損益も20.1-3期から9四半期連続で営業赤字に陥り、一時は「継続企業の前提」に疑義が生じていました。

その後、22.4-6期以降は営業黒字を回復。5/12(金)に発表された23.6期3Q決算(累計)では売上高268億円(前年同期比51%増)、営業利益28億円(前年同期は25億円赤字)と回復が続きました。これを受けて会社側は、通期会社予想業績について、売上高を336億円から350億円(前期比37%増)、営業利益を26億円から31億円(前期は21億円の赤字)、予想1株配当を6円から9円に、それぞれ上方修正しました。純利益は26億円の予想で、19.6期の15億円という過去最高益を更新する見込みです。

8/14(月)には23.6期の決算発表が実施される予定です。今期は好調に業績回復を果してきましたが、地盤である三重をはじめ、全国旅行支援が終了することで国内客の増加にブレーキがかかる可能性には注意です。ただ、中期的にはエリア、都市規模、契約形態の多様化を果しながら出店を拡大する方針。新しくレジャーがメインのターゲットも増やしてゆく方針です。

12/27(水)時点で100株を保有する株主に優待割引券2,000円相当が贈呈(保有株式数増加により優待額は増加)される株主優待を実施する予定です。

■きずなホールディングス(7086)~家族葬に特化。出店加速で3期連続・過去最高業績更新予定

★週足チャート(3年)

★業績推移(百万円)

■家族葬に特化。早期の投資回収がしやすい小規模ホールで積極的出店

家族葬市場のリード役です。創業当時の20年以上前から、家族葬事業に特化してきました。

「家族葬のファミーユ」や「花駒」等の子会社3社と、関連会社「学研ファミーユ(持ち分比率49%)」で構成されています。10都道府県で130の直営ホールを運営。さらに、ネット集客業を含めると全国33都道府県で葬儀が施行可能です(23.5期末時点)。

直営ホールでの葬儀施行が売上構成比の85%超(23.5期)を占め、収益・成長の柱です。M&Aや高効率な自社出店のもと、成長を遂げてきました。大規模ホールに比べ、同社がメインとする小規模ホールモデルは、早期の投資回収がしやすい傾向があります。

2030年(31.5期)までに300店舗体制を確立するのが目標。24.5期が20店、25.5期が23店で、26.5期が23店と、数期先まで積極的出店方針を掲げています。

透明で競争力のある価格設定の他、「1日1組貸切ホール(少人数に最適なサイズ且つ他者に気兼ねなく利用可)」や「オーダーメイド型葬儀」が強みです。

日本では死亡者数が増える一方、1回の葬儀にかける単価は低下傾向で、全体の市場規模は横ばいの見通しです(会社資料より)。しかし、コロナ禍や、世間のニーズの変化により、同社のターゲットである中小規模葬儀の比率は増加傾向にあります。

■3期連続で過去最高業績更新予定。オーダーメイド型が人気

前期(23.5期)は、2期連続で過去最高の売上高・利益を更新。期初計画を上回った投資を、葬儀件数増加による売上増が上回った格好です。簡素化ニーズの高まり等から単価は低下したものの、高単価のオリジナルプラン(オーダーメイド型葬儀)が増加し、業績を押し上げました。

今期(24.5期)は売上高126億円(前期比20%増)、営業利益16億円(同36%増)と3期連続で過去最高業績を更新する予定です。前期から続くオリジナルプランの増加の他、コロナ終息による葬儀規模の回復で、単価の上昇を見込んでいます。

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