日経平均調整継続で投資チャンス?好業績主力株を探る

日経平均調整継続で投資チャンス?好業績主力株を探る

投資情報部 鈴木 英之/栗本奈緒実

2023/07/21

日経平均調整継続で投資チャンス?好業績主力株を探る

日経平均株価は7/12(水)の取引時間中に付けた31,791円を安値に、7/19(火)には一時32,896円まで値を回復しました。しかし、32,900円台に位置(7/20時点)する25日移動平均線が当面の上値抵抗ラインとなり、そこを上抜けそうもない空気が広がる中、7/20(木)には405円安と波乱になりました。

米国半導体株安の余波で、日経平均株価への影響が大きい半導体株が総じて下げたこと、テスラ株やネットフリックス株が時間外で下げ、日米企業の決算発表に警戒感が広がったこと等も影響したとみられます。

そうした中、7/20(木)の取引終了後に、精密モーター大手のニデック(6594)が24.3期1Q(2024年3月期第1四半期)の決算発表を実施しました。同四半期の営業利益は前年同期比34%増え、市場予想を上回る好調な内容でした。一方、半導体製造装置のディスコ(6146)は同四半期の営業利益が前年同期比21%減少し、市場予想を下回る厳しい内容でした。

東京市場でもいよいよ、24.3期1Qの決算発表が本格化してきたことになります。7月末頃までは、半導体関連株を含む電子機器の決算発表も多い予定ですが、同業界は日銀短観で、3月時点での先行き見通しよりも6月の現況が厳しかったために、業績が期待以下となる銘柄も出てくると考えられます。株式市場も、「今一つな決算発表」を横目に、調整局面が続くかもしれません。

そうした中、投資家にとって買い安心感が相対的に強い銘柄は「決算発表が終わった直後の銘柄」ではないでしょうか。現在であれば、2月、5月、8月、11月を本決算期末とする銘柄で、大幅増益の銘柄などが対象となる可能性があます。決算発表後の最初の反応は一巡した可能性はありますが、ここから先、アナリストの評価上昇が期待できる銘柄もありそうです。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、「決算発表が終わった直後の銘柄」で、四半期(通期)大幅増益となり、今後の株価上方修正が期待できるような銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行なってみました。

(1)東証プライム市場上場銘柄

(2)時価総額が1,000億円超

(3)2月、5月、8月、11月決算銘柄

(4)直前四半期23.3-5期の営業利益が前年同期比20%超の増益、または黒字転換

(5)直前四半期累計(注)の営業利益が前年同期比20%超の増益、または黒字転換

      (注)2月決算は23.3-5期、5月決算は23.5期通期、8月決算は22.9-23.5期、11月決算は22.12-23.5期)

(6)直前四半期累計の営業増益率が通期会社予想営業増益率を超過(ただし、四半期累計営業損益が黒字転換の場合は最優先)

(7)直前四半期累計の営業利益の通期会社予想営業利益に対する進捗率が「標準」(注)以上

      (注)「標準」・・・2月決算は25%、8月決算は75%、11月決算は50%、5月決算銘柄は未考慮

(8)コンプライアンス上の問題や信用規制(注意喚起・日々公表を含む)がない

図表の銘柄は、(1)~(8)のすべての条件を満たしており、(4)の四半期増益率の大きい順に並べられています。結果的には、5月、11月決算の銘柄は抽出されませんでした。なお、ローソン(2651)は営業損益の開示がないため、事業利益ベースでの分析になっています。

■図表 日経平均調整継続で投資チャンス?好業績主力株を探る

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名

株価
(7/20)

2023.3-5営業増益率(前年同期比) 通期会社予想営業増益率(前期比) 業績ポイント
9601 9601 9601 9601 松竹 10,770 黒字転換 黒字転換 24.2期1Q営業損益は前年同期の7億円赤字から24億円黒字に。映像関連事業で「滝沢歌舞伎ZERO FINAL」の映画館生中継が好調
4530 4530 4530 4530 久光製薬 4,218 739.1% 1.7% 医薬品。医療用と一般用の2本柱。24.2期1Q営業利益は前年5億円から43億円に急増。一般用に経済再開、インバウンド需要増大の恩恵
9861 9861 9861 9861 吉野家ホールディングス 2,726 225.6% 33.9% 24.2期1Q営業利益は前年4億円から14億円に。吉野家、はなまる、ラーメン、海外等増収。利益はハナマル、海外の改善が貢献。原材料高を諸コスト削減で吸収
7630 7630 7630 7630 壱番屋 5,380 138.0% 19.0% 24.2期1Q営業利益は前年5億円から12億円に。国内はメニュー施策や各種キャンペーンが奏功し売上増。カレーソース、トッピング等の値上げで客単価も上昇
3697 3697 3697 3697 SHIFT(8) 32,210 117.2% 36.0% ソフトウェアのテスト・品質保証業。3Q時点の営業利益進捗率が87%超。売上単価、顧客数等でも右肩上がり続く
8233 8233 8233 8233 高島屋 1,963 66.4% 15.3% 23.2期営業利益325億円はすでにコロナ前19.2期266億円を超過。24.2期1Qの営業利益は前年66億円から110億円に。国内消費、インバウンドがともに回復
2651 2651 2651 2651 ローソン(事業利益) 6,875 63.9% -0.5% 24.2期1Q事業利益は前年160億円から262億円に。人流の回復でファストフード、ソフトドリンク、米飯が回復。化粧品では「無印良品」導入を拡大中
2670 2670 2670 2670 エービーシー・マート 7,869 60.4% 4.0% スポーツシューズが全体の6割。コロナは強い逆風で21.2期に大幅減益。22.2期、23.2期と増益で、コロナ前利益をほぼ回復。8/30を権利落ち日として1:3の分割を予定
6432 6432 6432 6432 竹内製作所 4,460 59.5% 13.1% 創業60周年を迎える建機メーカー。海外売上高比率は99%(23.2期)。今期は最高業績更新予定、進捗好調。25.2期に生産能力が1.5倍となる見込み
9974 9974 9974 9974 ベルク 6,600 40.8% -2.4% 埼玉中心に展開するスーパー。「標準化」で業界トップ級の利益率(4.5%超、業界平均3.3%、22.2期)。堅実成長企業
2659 2659 2659 2659 サンエー 4,685 39.6% 4.4% 沖縄県に密着し、小売・外食等も展開。エディオン(家電)、マツモトキヨシ(ドラッグ)、ローソン(コンビニ)等をFC展開。沖縄に内外からの人流が回復していることが追い風
8276 8276 8276 8276 平和堂 2,329 37.7% -39.7% 滋賀中心に展開する総合スーパー。今期営業利益は前期比4割減見込むが、1Q時点の進捗率は、半期89%、通期目標38%と好調。下期に改装続くため目標は据え置き
2685 2685 2685 2685 アダストリア 2,849 37.3% 21.6% アパレル大手、国内外に1,400店舗以上。「グローバルワーク」、「ニコアンド」等。外出需要増や気温上昇が追い風となり、1Qは過去最高を更新
2726 2726 2726 2726 パルグループホールディングス 3,945 29.0% 5.0% アパレル・雑貨。「Kastane」や「3COINS」等。人流回復やEC強化で好調。8月末基準で1:2の株式分割実施予定
9602 9602 9602 9602 東宝 5,591 28.4% 0.3% 利益構成比は映画59%、不動産36%他(23.2期)。コナン、マリオが好調で、通期業績予想を上方修正。宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」が7/14(金)に公開
9793 9793 9793 9793 ダイセキ 4,255 25.2% 3.1% 自治体から許認可を受けた産廃物処理業。リサイクル処理後、企業に販売。1Q・営業利益の進捗率59%超で過去最高。大規模案件が業績牽引。受注も堅調
3543 3543 3543 3543 コメダホールディングス 2,710 21.2% 8.4% 7/19(水)に1000店舗目を開業(フランチャイズが9割超の卸売業)。コロナ禍からの回復と卸売価格の値上げが奏功
  • ※Bloombergデータ、会社データ、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名右横に(8)と記載されたSHIFTのみ8月決算、他は2月決算
  • ※ローソン(2651)は営業損益の開示がないため、事業利益ベースでの分析になっています。同社は国際会計基準(IFAS)を採用し、「事業利益は、営業収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、日本基準における営業利益に相当する指標」であると説明(決算短信)しています。

一部掲載銘柄を解説

■竹内製作所(6432)~長野を本社に世界で活躍し、「建機のベンツ」を展開

★週足チャート(2年)

  • ※データは2023/7/21(週足)9:30時点。 ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■欧米の売上構成比が96%のグローバル企業

長野県を本社とし、世界で活躍する建設機械中堅企業です。製品開発のすべてが日本で行われ、生産は日米で行われています。

地域別売上高構成比(23.2期)は北米55%、欧州41%、日本1%というグローバル企業です。日本ではほぼ無名な存在ですが、建機のシェアは北米で第5位、EUで第2位となっています。

もともと、1971年に世界で初めてミニショベルを開発、つるはしやスコップによる作業を大幅に軽減(人力で1週間の作業が1日に短縮)したという経緯があります。1986年には、土砂やがれき、雪などを運搬するクローラーローダーも同社が世界で初めて開発しました。

設計者が現場に赴き、自分の耳と目で情報を得て、顧客ニーズを十分くみ取った上で、製品開発を行っています。その積み重ねもあってか製品のクオリティに対する顧客の評価は高く、欧米において同社製品は「建機のベンツ」と例えられています。

■過去最高益更新が続きそう

左の株価チャートにあるように、株価は過去最高値圏を推移しています。その理由は、売上・利益ともに過去最高水準にあるためです。特に22.2期、23.3期と売上・利益の伸びが高くなっています。輸出比率が高いため、2021年以降に対ドル・対ユーロで円安が進んだこと、この間に次第に世界的な経済再開が進んだことが追い風になっているとみられます。

24.2期1Qは売上高530億円(前期比25%増)、営業利益85億円(同59%増)と順調なスタートを切っています。会社予想の通期営業利益は240億円(前期比13%増)で1Q営業利益はそれに対し35%の進捗率です。会社予想の前提になっている為替レートはドルが1ドル127円(7/20時点では同139円台)、ユーロが1ユーロ136円(同156円台)とかなり保守的であり、業績上方修正の可能性が膨らみます。

会社予想EPS360円83銭、株価(7/20)4,460円から計算される予想PERは12倍台です。コマツ(同12倍台)、日立建機(同10倍台)とほぼ同じですが、日経平均の予想PERは約15倍で、それに対しては割安感があります。市場コンセンサス(Quickベース)では今後5年間で年平均13.5%の営業増益が期待されており、それを考慮すれば割安感も強まるとみられます。

長短借入金のない無借金経営で財務は堅固と評価できますが、ROEは14%と標準とされる8%を超過しています。

■コメダホールディングス(3543)~FCへの卸売販売が収益源。猛暑や1000キューキャンペーン(センキュー!)に期待

★週足チャート(5年)

  • ※データは2023/7/21(週足)9:30時点。 ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■「コメダ珈琲店」。収益源のメインはFC加盟店(約95%)への卸売販売

「珈琲所コメダ珈琲店」や、甘味処「おかげ庵」ブランドを展開する企業です。ゆとりがあってくつろげる店内空間や、逆詐欺と称される程ボリューミーなシロノワール等の看板メニューで人気を博しています。

ビジネスモデルとしては飲食店ではなく、卸売業に近い存在です。全店舗ののうち、FC加盟店の割合は約95%に上ります。ロイヤルティの他、加盟店へ食材等を卸売り販売し、メインの収益源としています。設備投資負担が抑えられるため、強いキャッシュ・フロー創出力を有するのが特徴です。

▷参考:店舗のFC比率

銀座ルノアール(9853) → 1.7%(19.3期、20.3期以降公表データなし)

ドトール・日レス(3087) → 44.7%(24.2期1Q)

サンマルクHD(3395) → 3.0%(23.3期)

東和フードサービス(3329) → 0%(22.4期)

FC店舗に対し、席数比例の定額ロイヤリティ制度等を導入しています。売上増が店舗の収入増につながるため、FCオーナーのモチベーションは高い状態です。地代・賃料が安い郊外に出店することで、近隣住民の日常利用による多頻度来店を実現。店舗売り上げは安定的な傾向にあります。

東日本中心に新規出店を加速。7/19(水)、グループ1,000店目を新橋にオープンしました。26.2期には1,200店舗を目指しています。うち、海外を80店舗としており、24.2期1Q時点では38店舗(中計より)。コロナ禍で出店が遅れており、店舗展開を強化中です。

■猛暑や1000キューキャンペーン(センキュー!)に期待

今期1Q決算(23.3-5期)では、売上高104億円(前年同期比16%増)、営業利益22億円(同21%増)と増収増益。前期に実施したFC加盟店への卸売価格の値上げ*や、シロノワールが季節限定でアイスバー「ブラックモンブラン」とコラボし来店増に寄与した格好です。

*ご参考

23.2-5月期、既存店での卸売収入は前年同期比114.2%と高水準(全店同データ118.1%)。

今年の夏は猛暑だといわれています。避暑ができ、冷たい飲み物やアイスがある喫茶店にとっては、期待材料となるでしょう。また、前述の節目となる1,000店オープン記念で「1000キューキャンペーン(センキュー!)」を7/4(火)~9/20(水)まで実施中です。

おすすめ記事(2023/07/21 更新)

口座開設・管理料は
無料!

信用取引口座開設

信用取引を行うには、信用取引口座の開設が必要になります。 WEBサイト上でのお手続きだけで「最短翌日」口座開設完了!

※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。

ご注意事項

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。詳細はこちら

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。