日経平均の下値目途は?まさかの展開で大台割れの可能性!?

日経平均の下値目途は?まさかの展開で大台割れの可能性!?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/07/11

日経平均は2週ぶりの調整。企業決算発表シーズン本格化を前に小休止

7月第1週(7/3-7)の日経平均は前週末比800円62銭安(▲2.4%)と反落。年初来から急ピッチで進んだ株高に2週ぶりの調整が入りました。

週初の7/3(月)に発表された4-6月期の日銀短観(6月調査)で、大企業・製造業業況判断指数が7四半期ぶりに前回比改善となり、市場心理が上向きました。日経平均構成銘柄の過半数を占める製造業でのポジティブ材料が弾みとなり、7/3(月)に33年ぶり高値を更新した格好です。しかし、その後は4日続落。下落額は計1,300円超となりました。週の終盤に米6月雇用統計の発表を控え、市場で警戒ムードが広がりました。

また、東京市場では上昇相場の盛り上げ役で、半導体設計に特化したファブレスメーカーのソシオネクスト(6526)の大幅安が打撃となりました。同社は7/5(水)の大引け後に、大株主による37.5%の大規模売出を発表。需給悪化が嫌気され、他半導体関連株のみならず、東京市場全体にとっても下落圧力となりました。日経平均株価採用銘柄の下落率上位(7/3~7/10、図表8)では、半導体関連銘柄のSCREENホールディングス(7735)、信越化学工業(4063)、HOYA(7741)等がランクインしています。

日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(7/3~10、図表7)のトップは楽天グループ(4755)です。モバイル事業での赤字が拡大する中、7/4(火)に楽天証券HDの上場申請を発表。年初来安水準から買い戻しが入りました。また、他には銀行業から5社、保険業から2社がランクイン。米長期金利が上昇し、割安株が選好された模様です。

6月までの日米両市場では、期待(PER)先行での上昇が続いてきました。7/10(月)時点で、日経平均の予想PERはコロナ後の大規模金融緩和以来の高水準です。AIや半導体といった成長企業への期待感があらかた織り込まれた現在、これから本格スタートする7月の米企業決算や日本の小売企業決算では、企業業績の実力が問われてくるフェーズに入ってくるのではないでしょうか。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(7/3~10)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(7/3~7/10)

日経平均の下値目途は?まさかの展開で大台割れの可能性!?

日経平均は7/7(金)終値が32,388円と、チャート上の節目であり下値支持ラインである6/27(火)の32,538円(図表9の(1))を割り込みました。これでチャート上では、売りシグナルとされるダブルトップを形成したことになり、テクニカルから見れば、当面の日経平均は調整局面入りした可能性があります。

日本経済は回復基調を辿っており、海外投資家の買いなどが期待される中、中長期的に見れば、上昇トレンドにあるとの見方に変化はありません。ただ、現状はこれまで急ピッチで上昇してきたことによるスピード調整や、あるいは外部環境の悪化などが想定される中、日経平均としても一旦、調整に入ると考えられます。

そこで本稿では、今後の相場展開を読みつつ、日経平均の下値目途について考えてみたいと思いますが、結論から申し上げますと、日経平均の下値目途は、13週移動平均線レベル(図表9(2))の31,000円前後とみています。しかし、少し複雑な展開となりますが、場合によっては26週移動平均線レベル(図表9(3))で3万円の大台を一旦割り込む可能性も否定できず、大幅株価調整の可能性に注意する必要があると考えられます。

図表9 日経平均チャート

  • ※BloombergをもとにSBI証券作成

まず、当面の相場動向を占う上でもっとも注目されるのは、米国の長期金利でしょう。米10年国債利回りは、今年に入り概ね3%台半ばから後半で安定的に推移していました。しかし、足元では7月下旬や9月中旬に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)において利上げが再開されるとの思惑から、4%台へ上昇する場面が見られました。また、10年国債利回りが4%台へ近づくと、株式市場ではリスク回避の動きが強まりました。債券版恐怖指数と言われるMOVE指数が、足元で上昇し始めており、当面はボラティリティ(価格変動)の上昇が見込まれる中、10年国債利回りが昨年の高値4.24%を目指すような展開となれば、テクノロジー株などのグロース株を売る動きが強まる可能性があるでしょう。

では、その場合、円相場にはどういった影響が考えられるでしょうか?円相場は、7月初旬に144円台へ円安が進行していたのに対し、足元は141円台と円高方向へ揺り戻されています。前述したように米国長期金利は上昇傾向にあり、日米金利差から見れば、円売り・ドル買いが進行するはずです。しかし、リスク回避が強まったことによる、円買い・ドル売りの動きがそれを相殺したため、円高が進んだと言えます。また、米10年国債利回りは、4%を越えて上昇すると、リスク回避の動きが強まることが想定されます。したがって、堅調な米経済指標などを手掛かりに、米長期金利が上昇するような展開となれば、円高・ドル安とともに、株式市場が下押しされることが想定されます。

ちなみに、昨年の日米株式市場は、米長期金利の上昇を受けて米国市場では、ナスダック総合指数を中心に大幅下落したのに対し、日経平均は下値の堅い推移となりました。日本株にとっては、米株安が嫌気される一方で、円安進展による輸出株への買いや、米長期金利が上昇したことによる金融株物色が相場を支えたと考えられます。しかし、現状の円相場は、リスク回避で円高方向に進んでおり、輸出株の買い支えなどが期待し難くなっている点には注意する必要があります。円相場はリスク回避で140円台を割り込むような展開となれば、日経平均は13週移動平均線レベルまで調整する可能性があるでしょう(図表9(2))。

図表10 米10年国債利回りと債券版”恐怖指数”

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

では、当面の相場のリスクシナリオは、どういったものが考えられるでしょうか。これは円相場でいえば少し奇妙なのかもしれませんが、150円を目指し、これを超えるような大幅な円安が進展した場合と考えられます。

今年の円相場は概ね円安基調で推移しています。昨年の円相場も春先から秋口にかけて円安が進展しており、多少の円安ピッチの違いはあれども、方向性に相違はありません。しかし、昨年は円安・ドル高が進む中で、ユーロやポンドといった欧州通貨が、対ドルで大きく下落しておりました。昨年は日本を除いた主要中央銀行による金融引き締めの動きが見られましたが、その中でECB(欧州中央銀行)の金融引き締めが、インフレ抑制に対して後手を踏むのでは、との懸念から、ユーロ離れの動きが見られました。結局、ユーロ安と円安の一歩でドルが独歩高となり、ドル円は一時150円台へ押し上げられることになりました。

現状、欧州通貨は比較的にしっかりとした値動きとなっています。しかし、金融政策を巡っては、主要国に先駆けて金融引き締めに舵を切った英国が、依然として高いインフレに悩まされており、金融政策が後手を踏んでいるとの印象が強まっているようです。もし、ポンド離れ(ひいてはユーロ離れ)の動きとなれば、リスク回避の(円買いではなく)ドル買いにつながる可能性があります。その場合、円相場は円安が進展するものの、強いリスク回避の動きにより、株式市場の調整が大きくなることが想定されます。

少し内容が複雑になりましたので、最後にポイントを整理します。

(A)日経平均の下値目途は13週移動平均線、もしくは26週移動平均線レベルか

(B)米国長期金利は上昇へ。4%超でリスク回避が強まる可能性

(C)円相場は日米金利差拡大による円安よりも、リスク回避による円高が強まる可能性

(D)更にユーロ、ポンド離れの動きがとなれば、「リスク回避の円安」が進行し、日経平均は3万円の大台割れとなる可能性

基本シナリオとして日経平均の下値目途は31,000円レベル(13週移動平均線)を見ています。しかし、欧州通貨の下落が顕著となるようであれば、「リスク回避」が強まるとともに、日経平均は3万円割れとやや厳しい下げになる可能性もあります。もっとも、中長期的に見れば、国内ファンダメンタルズが改善しているとの見方に変わりはなく、長期的な株価上昇トレンドは継続していると考えられます。

図表11 主要通貨(円、ドル、ユーロ、ポンド)の推移

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

おすすめ記事(2023/07/11 更新)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎のSPAN掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額はSPAN証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。