「押し目」到来?!業績上方修正・株価上昇に期待したい主力銘柄は?

「押し目」到来?!業績上方修正・株価上昇に期待したい主力銘柄は?

投資情報部 鈴木 英之/栗本奈緒実

2023/07/07

「押し目」到来?!業績上方修正・株価上昇に期待したい主力銘柄は?

日経平均株価は7/3(月)に一時33,762円まで上昇して年初来高値を更新し、90年3/12(月)以来の高値水準を回復しました。ただ、その後はやや軟調な展開になっています。

日経平均株価は3/20(月)→7/6(木)の間、26,945円→32,773円となり22%上昇しました。同じ期間に日経平均予想PERは12.63倍→15.36倍となり、20%上昇、同予想EPS(1株利益)は2,133円→2,161円と1%上昇しました。PERが市場心理(期待)、EPSが企業業績(現実)を表していると考えるのならば、ここまでの日本株は期待が先行する形で上昇してきたとみることができます。

2018年以降、日経平均の予想PER(月足)は11倍台から25倍台(21年1月)で推移してきました。ただ、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大で、上場企業の業績予想が混乱した20年4月~21年4月(同16~25倍)の予想PERの異常値であるとみなせば、PER15倍台は高い方の水準であると考えられます。今後、日経平均株価がさらに上値を追っていくには、日経平均予想EPS(1株利益)の上昇も必要ではないかと考えられます。言い換えれば、日本株は「理想買い」の段階から「現実買い」に移行しないと、本格上昇は難しいのかもしれません。

その意味で、7/3(月)に発表された「日銀短観」(6月調査)は、大企業製造業の業況判断指数が7四半期ぶりに改善し、今後の企業業績の拡大を期待させる強い内容でした。7/4(火)~7/6(木)の株式市場は大きめに下げていますが、基本的には「スピード調整」の範囲内とみられ、さらにETFの分配金支払いに絡む資金捻出の売りが絡んだ一時的な下げとみられます。日経平均株価は7/6(木)に25日移動平均線を割り込み、翌日の7/7(金)はヘッジ売りから売り先行になりましたが、出遅れた投資家等にとっては押し目買いのチャンスになるかもしれません。

押し目買いを狙う銘柄としてはどんな銘柄が良いでしょうか。折しも、7月下旬以降は23年4~6月期の決算発表が本格化します。「日本株投資戦略」では、決算発表で好業績、しいては業績予想上方修正を発表し、その後の株価上昇も期待できるような銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行なってみました。

(1)東証プライム市場上場銘柄

(2)時価総額が1,000億円超

(3)12月、または9月決算の銘柄

(4)予想EPSを公表しているアナリストが2名以上

(5)市場予想EPS(Bloombergコンセンサス)が過去4週間で上昇

(6)今期市場予想営業利益が会社予想営業利益を上回っている。※会社予想営業利益を未公表の銘柄は純利益を使用

(7)23年1~3月期の営業増益率(前年同期比)が今期会社予想営業増益率を上回っている。※同上

図表1の銘柄は、(1)~(7)のすべての条件を満たしており、今期市場予想増益率の大きい順に並べられています。

決算発表の主力は3月決算銘柄です。しかし、3月決算銘柄が今回発表を予定しているのは第1四半期の業績です。第1四半期だけをみて、業績予想修正を決断する企業は、相対的に少なそうです。この決算期の銘柄の分析は別途行いたいと思います。また6月決算企業の場合は、新たに会社側から発表される24年6月期の業績予想が読み切れない(必要以上に保守的な予想をしてくるリスクがある)ため、分析対象から外しました。

12月決算銘柄の場合は第2四半期なので、好業績ならば、通期業績予想の上方修正につながる可能性はありそうです。表1の銘柄は結果的にすべて、12月決算銘柄です。9月決算企業は抽出されませんでした。

■図表1 「押し目」到来?!業績上方修正・株価上昇に期待したい主力銘柄は?

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名

株価
(7/6)

今期市場予想営業増益率 銘柄概要・1Q決算概要
4578 4578 4578 4578 大塚ホールディングス(7/31 13:30) 5,327 60% 大塚製薬、大鵬薬品等を傘下に。1Qは売上高の66%を占める医薬品事業で、グローバル4製品が総じて好調
4927 4927 4927 4927 ポーラ・オルビスホールディングス(7/31) 2,148.5 39% スキンケアに強みを有する化粧品メーカー。高価格帯商品が好調。1Q営業利益は前年比137%増。海外の伸びが大きい
6465 6465 6465 6465 ホシザキ(8/10) 5,049 34% 業務用厨房機器大手。1Qは海外売上比率43%。前年比営業73%増益。売上面は海外、利益面は国内がけん引
5108 5108 5108 5108 ブリヂストン※(8月) 5,785 22% 世界的タイヤメーカー。ミシュランに次ぐ世界第2位。前期売上構成比は北米45%、日本24%他。1Q純利益は前年比68%増
4911 4911 4911 4911 資生堂※(8/8) 6,359 14% 1Q売上構成比は日本26%、中国22%他。1Q営業利益は、国内赤字縮小で前年比2.4倍。トラベルリテールが稼ぎ頭
8804 8804 8804 8804 東京建物(8/10) 1,878 4% 旧安田系総合不動産。オフィスビル関連、住宅関連が中心。1Qは営業利益が前年比7%増。住宅売上戸数が増加
2914 2914 2914 2914 日本たばこ産業(7/31) 3,127 -2% 主力のたばこ事業は、西欧、アジア他、幅広くグローバル展開。1Q営業利益は前年比15%増。予想配当利回りは6%に迫る
1911 1911 1911 1911 住友林業(8/8) 3,445 -32% 売上構成比(22.12期)は海外住宅・不動産51%、住宅建築が32%。1Qは前年比営業12%減益も、米住宅市場回復の手応え
  • ※Bloombergデータ、会社データ、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
  • ※市場予想営業増益率はBloomberg集計の市場コンセンサス。
  • ※銘柄名右横カッコ内の日付は会社が公表した決算発表予定日。ただし、予告なく変更される場合もあります。大塚ホールディングス(4578)は取引時間中に発表の予定です。
  • ※ブリヂストン(5108)および資生堂(4911)は、会社予想営業利益の公表がないため、純利益を分析対象にしています。

一部掲載銘柄を解説

■大塚ホールディングス(4578)~高い創薬比率を誇るグローバル企業

★月足チャート(10年)

  • ※データは2023/7/7(月足)11:00時点。
    ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■医薬関連事業を核にグローバル展開

「医薬関連事業」(22.12期売上構成比66%)、ポカリスエットやカロリーメイト等でおなじみの「ニュートラシューティカルズ事業」(同25%)を主力事業とする会社です。

地域別売上高(22.12期)は日本38%、北米39%、欧州10%他となっており、グループ196社のうち145社は海外、全173工場のうち122工場が海外というグローバル企業です。

医薬関連事業では、持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」、抗精神病薬「レキサルティ」、V₂-受容体拮抗剤「サムスカ」「ジンアーク」※、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」をグローバル4製品として重要視しています。

※V₂-受容体拮抗剤・・・尿中の水分が血中に再吸収されることを阻害し水のみを体外に排出する薬剤

同事業では、2020年代半ばに複数の薬品が特許の期限切れを迎える「特許の崖」を控えているようです。反面、いまだ治療法が見つかっていない疾病の薬剤ニーズに対し、38の開発プロジェクトを有しています。一般的な製薬会社の自社創薬比率が2~3割といわれる中、自社創薬比率は76%と高い開発力が強みとみられます。

「ニュートラシューティカルズ事業」(日々の健康維持に有用である科学的根拠を持つ飲料・食料~造語)では、「ポカリスエット」「ネイチャーメイド」他を主力ブランドとしています。

■市場は会社予想を上回る利益を予想

23.12期1Qの売上高は4,483億円(前年同期比17%増)、営業利益767億円(同3.7倍)でした。また、経常的な収益力を示すとして同社が採用する事業利益は736億円(同73%増)と拡大しました。

グローバル4製品の売上高が前年同期比で17%伸び、医薬関連事業が同20%増となりました。同事業の事業利益も同71%増え、全社に対する比率も95%になり、全体のけん引役になりました。

同社の通期会社予想売上高は1兆8,000億円(前期比3%増)、営業利益2,100億円(同39%増)で、それに対し好調なスタートを切った形です。営業利益の今期市場予想は2,411億円(Bloombergコンセンサス)と見込まれ、最高益を更新する見通しになっています。

グローバル4製品のうち、抗精神病薬「レキサルティ」はアルツハイマー型認知症に伴う行動障害に対する治験で有効性が確認され、同社は6/27(火)に年内に厚生労働省に対して効能追加を申請する方針と発表しました。

発表後の株価は総じて堅調に推移しているようです。2019年以降はおおよそ5,000円前後が上値抵抗ラインでしたが、本年5月以降明確に上放れてきました。過去最高益の確度がさらに高まれば、最高値更新もありそうです。

■ポーラ・オルビスホールディングス(4927)~インバウンドや脱マスクが追い風。グローバル展開加速を図る

★週足チャート(3年)

  • ※データは2023/7/7(週足)11:00時点。
    ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■スキンケアに強み。海外事業に伸びしろあり

訪問販売が祖業で高価格帯の「ポーラ(売上高構成比60%、22.12期)」と、中価格帯で業界でいち早く通販事業を取り入れた「オルビス(24%、同)」を基幹に展開する化粧品会社です。

主力ブランドのポーラでは、委託販売契約に基づく事業を展開。エステ併設店型の「ポーラ ザ ビューティー」店舗数は全国で約2,800店に上ります。

スキンケアに研究リソースを集中し、特に「シワ・シミ」領域に強みを有します。海外でも人気を博す最高峰のエイジングケアシリーズ『B.A.』や、日本で初めてシワを改善する医薬部外品として承認されたクリーム『リンクルショット』等が有名です。

海外売上高比率は17%です(22.12期)。同業の資生堂の77%(同)、コーセーの44%(同)と比べ低水準ですが、反面、伸びしろがあるともいえるでしょう。中計によると、2023年に20-25%、2029年に30-35%を目標としています。

グローバル展開の加速を図るため、2024年から新たな海外組織体制がスタートする予定です。中国を重点市場とし、2023年に25店舗の出店計画があります。

また、2023年1月から代表取締役社長に就任した横手氏は海外事業畑の出身であることも、グローバル展開加速の期待材料です。

■1Qは想定上回る進捗。粗利率の高いポーラで伸びが目立つ

今期1Q決算(23.12期1-3月)では、売上高421億円(前年同期比11%増)、営業利益45億円(同137%増)と大幅増益を達成。売上増や、販管費が2Qにずれ込みし費用が抑えられた形です。

粗利率の高い「ポーラ(原価率:18.4%、23.12期1Q)」での営業利益が、国内が約2倍、海外が約3.4倍となりました。国内では、百貨店・BtoBの伸張率が30%、ECが+18%とけん引した形です。海外では、中国の経済正常化が追い風となりました。

通期業績に対する進捗率は、売上高23%、営業利益30%と好調でしたが、通期予想の上方修正はありませんでした。会社側は「想定を上回る進捗ではあるが、第1四半期の段階においては、まだ状況を見定める必要がある」とコメントしています。

また、インバウンドに関し、中国旅行客の本格的な戻りは下期以降と想定していますが、今期1Q決算発表時点のガイダンスでは前年並みで織り込んでいる模様です。

国内での脱マスク、足元でのインバウンド需要の増加が今期業績の押し上げ要因、業績見通しの上方修正の期待材料となり得るでしょう。今期2Q(4-6月)決算発表予定日は7/31(月)です。

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