日経平均急落で「買い好機」の好決算銘柄は?

日経平均急落で「買い好機」の好決算銘柄は?

投資情報部 鈴木 英之/栗本奈緒実

2023/08/04

日経平均急落で「買い好機」の好決算銘柄は?

東京株式市場が急落しています。日経平均株価は、8/2(水)に768円の急反落。8/3(木)も548円下げ、2日累計で1,317円下げました。8/1(火)に格付け機関のフィッチ・レーティングが米国債の格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げたことが市場の驚きを誘ったとみられています。

国債の格付け引き下げは、(1)信用度の低下による金利上昇懸念、(2)市場のリスク許容度低下による株価下落懸念、(3)格下げされた国債から他国債券への需要が増加(資金流出懸念)、(4)政府の借入コスト上昇、等の影響が警戒されます。事実、米国においては政治的な駆け引きを背景に債務上限問題が繰り返される状況が続いています。

ただ、基本的には株式市場の過剰反応である側面が強そうです。今回の米国債格付け引き下げがあっても、やはり米国債は「オンリーワン」的な存在であるからです。米国ドルは基軸通貨であり、世界貿易の多くは米ドルを介して行われます。したがって、米ドルが手元になくなることは、その国の破綻につながる訳ですが、米国は極論的には「ドルを刷ればよい」訳で、破綻するリスクは相対的に最も低い方であると考えられます。

むしろ、米国、日本ともに株価上昇の過熱感を指摘する向きも多かったことから、今回の株価下落が「ガス抜き」になっている側面も大きそうです。過去30年、日経平均の月別平均騰落率を計算すると、8月は-1.0%で12ヵ月のなかで最低パフォーマンス(ただし過去3年は上昇)と冴えない傾向があります。「ガス抜き」は今月いっぱい程度続くかもしれません。

ただ、現在進行中の決算発表をみる限り、企業業績は総じて回復傾向とみられます。ファンダメンタルズの良さを味方に、調整一巡後は株価が回復してくる可能性も大きそうです。現在は好決算銘柄への投資好機なのかもしれません。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、調整局面で投資したい好業績銘柄を抽出すべく以下のスクリーニングを行なってみました。

(1)東証プライム市場上場銘柄

(2)時価総額が1,000億円超

(3)3月、12月決算銘柄で、で、7/14(金)から8/2(水)までに決算を発表

(4)予想EPSを公表しているアナリストが3名超

(5)市場予想EPS(Bloombergコンセンサス)が過去4週間で5%超上昇

(6)四半期営業利益(3月決算銘柄は24.3期1Q、12月決算銘柄は23.12期2Q累計)が市場コンセンサスを超過

(7)通期業績予想について、市場予想営業利益(Bloombergコンセンサス)が会社予想を超過

(8)コンプライアンス上の問題や信用規制(注意喚起・日々公表を含む)がない

図表の銘柄は、(1)~(8)のすべての条件を満たしており、今期市場予想EPS4週変化率の大きい順に並べられています。

■図表 日経平均急落で「買い好機」の好決算銘柄は?

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 株価
(8/3)
四半期営業増益率(前年同期比) 通期会社予想営業増益率(前期比) 今期市場予想EPS4週変化率 業績ポイント
2222 2222 2222 2222 寿スピリッツ 10,410 165.9% 17.3% 10.3% 地域の特性に特化したギフトスイーツ。『ルタオ』、『ザ・メープルマニア』等。利益率20%超(23.3)期。1Qとして売上・各利益は過去最高を更新。人流回復の追い風続き、連続最高業績更新に向け順調
4091 4091 4091 4091 日本酸素ホールディングス 3,349 48.2% 6.7% 10.1% 産業ガス、電子ガス、医療用ガスを30超の国で提供。24.3期1Qは主力ガス販売減を値上げでカバーし、日米欧で増益を確保
3116 3116 3116 3116 トヨタ紡織 2,580.5 551.0% 44.7% 9.4% おもに自動車向けを中心とするシート事業が売上高(23.3期)の4分の3。海外向けの売上が過半(同)。増産効果や車種構成の変化が増益に寄与
6305 6305 6305 6305 日立建機 4,297 82.7% 3.2% 7.0% 日本で売上第2位、世界でも上位の建機メーカーで鉱山機械にも展開。資源価格高止まりが鉱山機械に追い風。値上げや円安効果等で増益
6981 6981 6981 6981 村田製作所 8,192 -44.8% -26.2% 6.6% 日本を代表する電子部品メーカーで「積層セラミックコンデンサ」の世界シェア4割。主力の通信向けが前四半期比で改善傾向
7211 7211 7211 7211 三菱自動車工業 572 46.7% -10.8% 6.5% 円安や高採算の商品の販売増などが寄与し、(営)(経)利益1,500億円→1,700億円、(純)利益1,000億円→1,100円に通期目標を上方修正
6995 6995 6995 6995 東海理化電機製作所 2,191 黒字転換 20.1% 6.5% トヨタ系列の一角で、自動車部品を製造。4-6月期が黒字転換。客先生産台数の増加や円安により、通期売上・各利益項目を上方修正
7203 7203 7203 7203 トヨタ自動車 2,407.5 93.7% 10.1% 6.3% 1Q(営)利益は、市場予想を上回り、日本初の1兆円越え。最大政策保有株のKDDI(9433)の一部売却も公表。株価は上場来高値(8/2)
4927 4927 4927 4927 ポーラ・オルビスホールディングス(12) 1,905 82.3% 27.2% 5.2% 国内・海外ともに増収、大幅増益。脱マスクで、シワ改善、UVケア用品が伸長。(営)利益9億円分通期目標を上方修正
  • ※Bloombergデータ、会社データ、各種報道等をもとにSBI証券が作成。
  • ※銘柄名右横に(12)と記載されたポーラ・オルビスホールディングスのみ12月決算、他は3月決算
  • ※四半期営業増益率は、ポーラ・オルビスホールディングスのみ23.12期2Q累計、他は24.3期1Qの前年同月比営業増益率。

一部掲載銘柄を解説

■寿スピリッツ(2222)~インバウンド需要回復が追い風

★月足チャート(10年)

  • ※データは2023/8/4(月足)11:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★四半期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■『ルタオ』...etc 熱狂的ファンをつくるお土産で躍進

お土産などのギフトスイーツを手掛ける企業です。各地に17の子会社を有し、地域ごとの「地域性(Local)」や「専門店性(Specialty)」に特化した製品の企画・生産・販売を行っています。北海道の『ルタオ』や東京の『ザ・メープルマニア』が有名です。

『熱狂的ファンづくり』が会社の基本ポリシーです。地方で売上が低迷している製菓会社を買収し、マーケティングなどの面から『ブランド価値の創出』を行うことで、売上を伸ばしてきました。インバウンドの効果もあり、業績は急拡大。2015/5以前からの株式所有者は「テンバガー(10倍株)」、またはテンバガー以上となった成長力のある企業です。

■人流回復の追い風が継続。1対5の株式分割の実施を公表

行動規制の緩和に伴う人流回復により、業績は堅調です。

前期(23.3期)は、期中に3回の業績上方修正を実施。結果的に、売上、各利益項目で過去最高を更新。その他の項目でも史上初の経常利益率20%超え、ROE*も29.9%(東プライム市場全体8.5%、7月末)と過去高水準となりました。

今期1Q(24.3期4-6月期)も前期同様、人流回復による追い風が続き、1Qとして過去最高業績を達成。『ザ・メープルマニア』等を擁する子会社シュクレイが伸長を牽引した格好です。通期業績に対する進捗率は、概ね会社計画通りとなりました。

インバウンド売上(国際線ターミナル売店卸売売上高)は前期4Q(23.3期1-3月)が7割程度の回復であったのに対し、今期1Q(24.3期4-6月)はコロナ発生前(20.3期4‐6月期比、101.2%)水準まで回復。中国人観光客の受け入れが本格的に再開されれば、さらなる押し上げ要因になると想定されます。

同決算発表と同時に、2023/9/30(土)を基準日とした1:5の株式分割の実施を発表。流動性の向上と投資家層の拡大が目的としています。2024年はNISA制度が拡充される予定です。年間投資額の上限が定められた同制度下において、投資単位の引き下げは有効な施策として期待されるでしょう。

■村田製作所(6981)~積層セラミックコンデンサ等で高シェアの電子部品大手

★週足チャート(3年)

  • ※データは2023/8/3(週足)15:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。 
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★四半期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■原材料からの製品化までの一貫生産が強み

日本を代表する電子部品メーカーのひとつです。主力の「積層セラミックコンデンサ」は、電気を蓄えたり、放出したりする部品で、モバイル機器や家電機器、IoT機器から近年は車載向けへと幅広い分野で使われています。その他、ノイズを除去する「EMI除去フィルタ」や必要な電波だけ通す「表面波フィルタ」等が有名です。

グローバルネットワークを生かしてニーズを先読みし、原材料からの一貫生産で多くの高シェア製品を抱えています。主力の「積層セラミックコンデンサ」は世界シェア4割、「表面波フィルタ」は同5割と推測されています(22.3期、同社HPより)。

用途別(24.3期1Q)では通信36.5%、モビリティ27.1%が上位。地域別(23.3期)には中国・台湾等の「中華圏」が50%等、海外売上高比率が91%のグローバル企業です。ライバルであるTDKや太陽誘電は海外生産比率が高いのに対し、村田製作所は国内生産比率が高く、技術流出を防ぐ配慮がほどこされています。

■四半期業績は底入れの様相?

24.3期1Q(23.4-6期)は売上高3,676億円(前年同期比16%減)、営業利益501億円(同45%減)と大幅減収減益。モビリティ以外の全分野で落ち込みました。

ただ、同四半期の営業利益は381億円を見込んでいた市場予想(Bloombergコンセンサス)に対しては上振れ、直前四半期(23.1-3期)に対しては増収増益を確保し、底入れの様相が強まったという意味では「好決算」であったといえそうです。主力の通信向けでも前四半期比で増収を回復している点は心強い点です。

会社側は24.3期の営業利益を2,200億円(前期比26%減)と予想していますが、市場(Bloombergコンセンサス)では2,686億円(同10%減)を予想。続く25.3期の市場予想営業利益は3,653億円(同36%増)となっており、利益底打ち直後の現在は買い好機と言えるかもしれません。

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