好決算発表で株価上昇に期待の中小型株(前編)

好決算発表で株価上昇に期待の中小型株(前編)

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/08/09

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好決算発表で株価上昇に期待の中小型株(前編)

東証グロース市場指数は6/21(水)の年初来高値1,092.99ポイント(終値ベース)をピークに、8月上旬まで下落局面が続いています。この間、米国10年国債利回りは3.7%台から4%台に乗せ、日本の10年国債利回りも同期間に0.3%台から0.6%前後まで上昇しており、世界的に「金利上昇局面」です。金利上昇局面に弱いグロース株にとっては逆風であったとみられます。

ちなみに日経平均株価も6/21(水)終値33,575円に対し、8/8(火)終値は32,377円と冴えません。米経済の底堅さを背景に、米国での金利上昇における到達点が読み切れておらず、上記のように金利上昇局面になったことが逆風となっています。ただ同期間のTOPIXや東証スタンダード指数はほぼ横ばいで、バリュー系の銘柄は総じて底堅い展開のようです。

そうした中、国内上場企業の決算発表も佳境を迎え、8/10(木)に発表社数ベースでピークとなる予定です。東証スタンダード市場や同グロース市場の銘柄も同様に、決算発表を迎える銘柄が多くなっています。今後は決算発表を受けた個別物色が中心の展開になりそうです。

なお、今の所銘柄数は限定的ですが、東証スタンダード市場や同グロース市場の銘柄で決算発表が終わった銘柄も日々増えています。東証の主力企業であれば、新聞報道等でも決算内容が紹介されるケースも多いですが、中小型株では記事化されることは少ないです。しかし逆に、好決算でも気づかれにくい銘柄も多くなるとみられます。

そこで「新興株ウィークリー」では、決算発表を実施した中小型株から好決算銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行なってみました。

(1)東証グロース市場またはスタンダード市場に上場

(2)時価総額1,000億円未満

(3)8/4(金)まで20営業日の1日当たり平均出来高が2万株以上

(4)7/24(月)~8/4(金)に決算発表済みの銘柄

(5)直近四半期(累計)※の営業利益が1億円超

(6)直近四半期(累計)※の営業利益が前年同期比で50%超増益、または黒字転換

(7)信用取引の規制銘柄、注意喚起銘柄の対象になっていない

 ※直近四半期(累計)・・・3月決算企業は1Q(23.4-6期)、9月決算企業は3Q累計(22.10-23.6期)、12月決算企業は2Q累計(23.1-6期)

    

「図表」の銘柄は、上記の条件をすべて満たしています。掲載の順番は、(6)の営業増益率順(ただし黒字転換が最上位)となっています。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 8/1(火)~8(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 好決算発表で株価上昇に期待の中小型株(前編)

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(8/8・円)
直前四半期営業利益(百万円) 前年同期比営業増益率 備考
7291 7291 7291 7291 日本プラスト 470 389 黒転 自動車用樹脂部品メーカー。主力製品はハンドル、エアバック等。海外売上高比率は64%(23.3期)。半導体供給不足緩和に伴う得意先の生産回復で、北米・東南アジアが赤字脱却
3698 3698 3698 3698 CRI・ミドルウェア(9) 1,146 253 +3514.3% 音声や映像を圧縮したり、機器の特性に合わせて再生するミドルウェア等が独自技術。3Q累計はゲーム会社にミドルウェアが浸透
6946 6946 6946 6946 日本アビオニクス 5,550 275 +742.0% 各種防衛システム用機器や防衛・宇宙、産業向けの「情報システム」が売上高(1Q)の81%を占め、防衛予算の増加があり受注も2%増
6882 6882 6882 6882 三社電機製作所 1,383 565 +450.0% 電源機器事業(売上高構成比71%、23.3期)、パワー半導体事業(同29%、同)。受注堅調が続く。生産能力を拡大しつつ粗利率の改善も取り組み、4期連続(営)増益の見込み
6016 6016 6016 6016 ジャパンエンジンコーポレーション 5,140 228 +134.8% 海運・造船業向けにエンジンを生産。アフターサービス堅調、ライセンス事業の強化も奏功し、1Q(4-6月期)は期初計画上回るペースで(営)増益。進捗率45%
8018 8018 8018 8018 三共生興 695 582 +125.9% 繊維商社。『DAKS』、『レオナール』等。インポート・ライセンスビジネスを展開。粗利率の改善や人流・外出機会の増加が寄与し、業績堅調
2112 2112 2112 2112 塩水港精糖 235 315 +84.3% 砂糖、オリゴ糖など。『パールエース印』『オリゴのおかげ』。原材料価格の高騰により値上げを実施。出資先からの配当金を受領し、(経)利益予想が大幅増。通期(営)利益は減益予想
6565 6565 6565 6565 ABホテル 2,988 862 +74.9% 東祥(8920)の子会社で、そのホテル事業を担当。全国旅行支援へ参加し、稼働率を高めに維持。朝食等リピート客改善施策等も奏功
4107 4107 4107 4107 伊勢化学工業(12) 8,140 2,458 +63.7% ヨウ素で世界15%の生産シェア。近年は造影剤、偏光フィルム等に用途を拡大。「ペロブスカイト型太陽電池」向けも。ヨウ素市況が堅調
2987 2987 2987 2987 タスキ(9) 1,142 1,766 +57.0% 投資用不動産。前年同期単独営業益11.2億円から57%増益。最先端のテクノロジーを装備し先進的な暮らしを提供のIoTレジデンスが好調
  • ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成。
  • ※銘柄名の右横カッコ内の数字は決算月で、無記載の銘柄は3月決算銘柄。
  • ※タスキ(2987)の営業増益率は23.9期3Q累計連結営業利益を、22.9期3Q累計単独営業利益と比較して計算しました。

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■CRI・ミドルウェア(3698)~音声・映像技術をゲームや各種機器に提供

★日足チャート(1年)

  • ※データは8/9(日足) 11:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★四半期業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■音声・映像ソリューションが強み

1983年に音声・映像技術や人工知能を研究・開発するCSK総合研究所として設立され、1996~2000年には、家庭用ゲーム機の「セガサターン」や「Dreamcast」向けにミドルウェアを提供。01年にCSK・セガグループを離れ「CRI・ミドルウェア」を設立し、「PlayStation2」や「Xbox」、「NINTENDO GAMECUBE」向けにミドルウェアを提供してきました。

自社開発の音声圧縮技術や圧倒的な映像圧縮技術(高画質のまま映像データを1000分の1に圧縮)が強み。それをミドルウェア(ソフトウェアとハードウェアをつなぐ部品)に使い、様々な機器(ハードウェア)の特性に合わせ、音声や映像をきれいに再生することができます。

同社の主力事業は「ゲーム事業」で売上高(2023.9期3Q累計)の70%を占めています。スマホ用、家庭用、アーケード用など各種ゲーム向けに上記のミドルウェアを提供したり、音響制作を行なったり、ゲーム自体の受託制作・コンテンツ制作(北米・中国等)を行なったりしています。残りは「エンタープライズ事業」で、家電、遊技機、IoT機器、モビリティ等の機器に音声・映像技術を提供しています。

■「V字回復」に向け順調に進捗

同社営業利益は22.9期に4.5億円あったものの、21.9期2.8億円、続く22.9期は0.9億円と縮小。特に前期は中国のロックダウンで海外でのコンテンツ製作が打撃を受け、3Q(22.4-6期)の営業損益は0.4億円の赤字になりました。

23.9期3Q累計(22.10-23.6期)の売上高は21.6億円(前年同期比10%増)、営業利益2.5億円(前年同期は700万円)とV字回復に向け順調な進捗になっています。通期の会社計画では売上高27.8億円(前期比2%減)、営業利益3.3億円(同240%増)となっており、営業利益の進捗率は76%となっています。

主力の「ゲーム事業」ではゲーム会社の複数ラインへのミドルウェアの浸透が進み、一括ライセンス契約の受注が増え、売上高の下げ渋りや利益率向上に寄与しています。また「エンタープライズ事業」では、カラオケの大型案件受注やモビリティが順調に成長を遂げているようです。

このうち、モビリティ分野では、ゲーム分野で培われた音声・映像技術やエンターテインメントでのノウハウを生かし、車載サウンドをワンストップで提供するソリューションが急速な立ち上がりをみせ、それを採用した自動車が前期末80万台未満から、今2Qには183万台と急増しています。

新規分野としては、アプリでしか実現できなかった動画表現をスマホブラウザで実現し、成約率の向上にもつなげられるWeb動画ソリューションや、監視カメラ等大量のデータを通信をリアルタイムでできるソリューション等について、今後の拡大が期待されます。

■三社電機製作所(6882)~パワー半導体にも展開。15.3期以来の利益水準回復を予想

★日足チャート(1年)

  • ※データは2023/8/8(日足)11:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■パワー半導体を持つ電源機器専門メーカー

今期(24.3期)創業90周年を迎える、電源機器事業とパワー半導体事業を展開する企業です。

祖業は、全国の映画館で使用される「映写機用電源(映写機から発する光源用の電源を安定させるための機器)」の開発。1962年、パワー半導体事業をスタートし、海外進出と国内の生産拠点の拡大を続けています。

国内10拠点(内4工場)、海外7カ国9拠点(内2工場)を展開。海外売上高比率は34%で、うち中国が過半数です(23.3期)。

▷電源機器事業(売上高構成比71%、海外売上高比率25%、23.3期)

環境・エネルギー分野、インフラ設備分野等を支える多種多様な産業向けに展開。パワー半導体を搭載した高性能な製品も取り扱っています。「小容量から大容量。標準からカスタム対応」を掲げ、製品展開は幅広いです。スマホや自動車分野で活躍する表面処理用電源は、国内シェア1位を誇ります(会社資料より)。

▷半導体事業(売上高構成比29%、海外売上高比率56%、同)

大電流・電圧の制御などの電源装置に使用されるパワー半導体を産業用電源向けに展開。FA分野の製造用ロボットや業務用エアコン、新幹線など車輛用補助用電源などで使用されています。ターゲット市場であるサイリスタ/ダイオードモジュール市場では世界シェア3位を獲得(会社資料より)。

■利益率の良化、売上増で1Q堅調。15.3期以来の水準まで利益改善の予想

営業利益は15.3期が20億円超であったのに対し、20.3期が2.5億円、21.3期が4.1億円と低迷が続いていました。高付加価値製品の拡販や、生産部材の標準化、自動化設備の導入等で収益力の向上に邁進中です。23.3期では、値上げが利益増に寄与しました

旺盛な産業用の半導体需要や、データセンター・PC部材向けの電源機器の売り上げが伸長し、業績は目下順調に回復。今期(24.3期)は15.3期以来、営業利益は20億円となる見込み(会社計画)。足元数期ではパワー半導体需要が市場全体で高まっていたことなどもあり、受注は堅調でしたが、生産が追いついていないのが現状です。設備投資などを行い、生産能力の拡大に取り組んでいます。

今期1Q(23.4‐6月期)決算発表では、売上高68億円(前年同期比8.6%増)、営業利益5.6億円(同450%増)と大幅増益を達成。利益率の向上(₊3.2億円)が寄与したほか、小型電源用の電源機器や半導体事業の主力製品であるパワーモジュール等の売上が好調(₊2.4億円)でした。通期計画に対する進捗率も堅調で、通期業績が上方修正される可能性が高まった状態です。

配当性向は、30%が目途で5期連続での増配実施が予定されています(今期は創立90周年の記念配当も予定)。2015年、2018年、2020年、2022年に自社株買いを行っており、株主還元意向が高まっている傾向です。8/8(火)時点のPBRは0.85倍と割安水準であることから、今後も株主還元強化が期待されます。

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