【9月相場展望】「米金利上昇へ警戒」でも注目したい投資対象は?

【9月相場展望】「米金利上昇へ警戒」でも注目したい投資対象は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/08/29

日経平均は小幅反発。売買代金は少なく、夏枯れ相場

8月第4週の(8/18-25)の日経平均は、前週末比173円52銭高(+0.55%)と週足ベースで小幅反発。同期間は東証プライム市場の売買代金は連日3兆円を下回り、いわゆる“夏枯れ相場”の様相を呈しました。売買代金が少ないため、通常ならあまり動意づくまでには至らない材料でも、相場が敏感に反応する場面が見受けられました。

日経平均は、前週に1,000円超も大幅安したことに対する自律反発や、円安などが追い風となり、週初から4日続伸。計836円の大幅高となりました。その後、現地時間23日(水)の引け後(東京市場は24日寄り前)に米国の画像処理半導体大手エヌビディアが、5-7月期決算を発表。実績や見通し、ほとんどの項目で予想を上振れた非常に好調な内容でした。しかし、AI関連による業績伸長期待が事前に織り込まれていたことや、好材料出尽くしとの見方が広がり、24日(木)のエヌビディアの株価は決算発表前とほぼ横ばいとなりました。「エヌビディアの決算通過→グロース株全面高」という期待感が崩れたことで、東京市場でも失望感が広がり、半導体関連などのグロース株を中心に売り圧力が膨らみました。

前述の失望売りに関連し、日経平均株価採用銘柄の下落率上位(8/18~25、図表8 )では、半導体のテスタ大手でエヌビディア向けに検査装置を提供するアドバンテスト (6857)や、半導体製造装置を手掛けるSCREENホールディングス (7735)がランクイン。他には、前週に続き中国景気見通しの不透明感が嫌気された形で花王 (4452)や安川電機(6506)等の顔ぶれが並びました。

日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(8/18~25、図表7)では、4-6月期決算が軟調で株価低迷後、反発基調となった銘柄のランクインが目立ちました。また、米長期金利が依然として高止まりしているため、食料品や銀行などのバリューセクターに買いが集まりました。

8月第5週の日経平均は、大幅反発でスタート。前週末、ジャクソンホールでのパウエル議長講演ではサプライズはなく、安心感から米国株高となった流れを引き継ぎました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(8/18~25)

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(8/18~25)

【9月相場展望】「米金利上昇へ警戒」でも注目したい投資対象は?

8月の日経平均は1日(火)につけた33,476円から下値を探る動きとなりました。米国において長期金利が上昇し、半導体関連やテクノロジーなどの成長株(グロース株)が売られた影響で、国内でも値がさ株を中心に軟調に推移し、日経平均は8/18(金)に31,450円と初旬から2,000円ほど下落しました。その後は、米長期金利の上昇が一服したこともあって日経平均は戻り歩調を辿っており、28日(月)には32,169円と32,000円台を回復しました。

今週末から9月相場がスタートします。日経平均の先行きを考える上で最も注目されるのは、引き続き米長期金利の動向でしょう。先週、米国ワイオミング州ジャクソンホールでは、パウエルFRB議長の講演が行われました。市場では、金融政策(ひいては長期金利)の方向性に関するメッセージが発せられるとの期待が高まっていましたが、実際は期待されたほどの見解が示されず、やや肩透かしを食う格好となりました。もっとも、同氏は、金融当局は必要に応じて追加利上げに動く用意があるとして、市場において利上げ打ち止めなど、楽観的な見方が広がらないように釘を刺しました。

図表9は政策金利(FFレート)の見通しについて、FOMC政策メンバーの予想(6月ドットチャートの中央値)と、市場参加者の予想(FFレート先物から算出)を比較したグラフです。もともと、市場参加者の予想はFOMCメンバーの予想に比べて、軌道が低め(ハト派的)となる傾向がありました。これは市場参加者が、FRBが早期に利上げを打ち止め、利下げへ転じるといった期待が反映されたものでした。しかし、最近ではようやく、FOMCの予想に市場予想が接近してきています。とはいえ、FOMCメンバーは年内にあと1回の追加利上げ(0.25%pt×1回)を予想しているのに対し、市場参加者の予想では、それがまだ十分に織り込まれていません。経済指標などのデータ次第ではありますが、次回のFOMCが開催される9/19・20に向けて、追加利上げの可能性が高まるようであれば、米長期金利が現状の水準よりも上昇する可能性があるでしょう。

図表9 政策金利予想(FOMCメンバー VS 市場参加者)

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成


そうした中、今週の米国は金融政策の方向性を占う上で注目される経済指標の発表が相次ぎますが、最も注目されるのは9/1(金)に労働省より発表される8月雇用統計でしょう。非農業部門雇用者数の市場予想(図表10参照)は、前月比+17.0万人であり、インフレの一因とされる強い雇用市場について減速することが見込まれています。

もっとも、過去2ヵ月分の統計を振り返ると、労働省雇用統計の前哨戦にあたる民間版のADP雇用統計が、6、7月統計において市場予想を上回る結果となり、その後に発表される労働省雇用統計に向けて長期金利が上昇するきっかけになりました。今回もADP雇用統計が市場予想(前月比+19.5万人)を上回るようであれば、金利上昇につながる可能性があり要注目と言えるでしょう。

また、雇用関連指標以外では、8/31(木)発表の7月個人所得・個人支出、9/1(金)発表の8月ISM製造業景況指数が発表されます。前者はFRBが金融政策を行う上でベンチマークとするインフレ指標であるPCEデフレータの動きが注目されるでしょう。

図表10 米非農業部門雇用者数と失業率

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成


一方、国内市場では9/1(金)に発表される23年4-6月期法人企業統計が注目されます。これは国内の法人企業の活動実態を調査した統計となります。そして同統計内で発表される設備投資は、翌週に発表される4-6月期GDP統計(改定値)にも反映される注目の指標です。国内の設備投資については、6月調査の日銀短観で、大企業・全産業の23年度設備投資計画(除くソフトウェア投資)が前期比+13.4%と二桁の伸びと、堅調な推移が見込まれています。ここもと製造業を中心に、円安進展を背景とする国内回帰の動きが強まる中、国内設備投資について活発な動きが続いている模様です。市場予想を上回る強い動きとなれば、設備投資関連への注目が強まることが期待されるでしょう。

図表11 法人企業統計 設備投資と企業利益

  • ※BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

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