グロース市場「底入れ」!?押し目買い候補銘柄を探る
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2023/08/23
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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グロース市場「底入れ」!?押し目買い候補銘柄を探る
東証グロース市場指数は、5/26(金)924.92をボトム(終値ベース)に、6/21(水)1,092.99(同)まで18%も上昇しましたが、その後は再び下落に転じ、8/18(金)の914.15(同)まで16%も下落しました。2023年の年初来安値(終値ベース)は904.99ですから、それが意識される水準に接近したことになります。
世界的に、長期金利の指標的な存在となっている米10年国債利回りは、6/21(水)に3.72%でしたが、8/21(月)には4.33%まで上昇しました。約15年ぶりの高金利ということになります。PERやPBRが高い傾向にあるグロース市場銘柄は、金利上昇に弱いという特質があり、現在は投資環境的に逆風が強いと考えられます。
もっとも、東証グロース市場指数が年初来安値に接近したことで、値頃感は強まってきました。米国経済は確かに予想以上に強いものの、これから更によくなっていくというよりも、余熱の高い状態が思ったよりも長く続いているということではないでしょうか。仮に米長期金利がピークアウトに向かっているならば、東証グロース市場指数はボトム形成に向かっているといえるかもしれません。
仮に、東証グロース市場指数をボトム接近、投資チャンスととらえるならば、どのような銘柄が投資対象として有望でしょうか。ある程度株価が大きく下がっていて、リバウンドを狙えることや、業績面での裏付けを持っている銘柄が好ましいかもしれません。そこで「新興株ウィークリー」では、以下のようなスクリーニングを行なってみました。
(1)東証グロース市場に上場
(2)時価総額100億円以上
(3)6/21(水)を起点に8/22(火)まで株価が14%(この期間の東証グロース株指数の下落率)超下落
(4)8/18(金)まで20営業日の1日当たり平均出来高が3万株以上
(5)直近四半期(累計)の営業利益が以下の条件を満たしていること
・金額的には1億円超で、前年同期比増益率が10%超
・前年同期比増益率が、通期会社予想営業増益率を超過、
または四半期累計営業利益の通期会社予想営業利益に対する進捗率が「標準」※以上
(6)通期会社予想営業利益が前期比で10%超の増益予想
(7)信用取引の規制銘柄、注意喚起銘柄の対象になっていない
「図表」の銘柄は、上記の条件をすべて満たしています。掲載の順番は、(3)の株価下落順となっています。なお、(5)の進捗率に関する「標準」ですが、たとえば第3四半期累計営業利益の場合、1年間の4分の3ですから75%が「標準」となります。
【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移
【参考】 8/15(火)~22(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄
■図表 グロース市場「底入れ」!?押し目買い候補銘柄を探る
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価 (8/22・円) |
騰落率(6/21終値比) | 四半期営業増益率 | 備考 |
9560 | 9560 | 9560 | 9560 | プログリット(8) | 1,067 | -46.7% | 84.3% | 英語コーチングサービスを提供。新型コロナの5類移行で対面を含む英語学習需要が回復傾向。営業利益の通期計画に対する進捗率は95% |
4376 | 4376 | 4376 | 4376 | くふうカンパニー(9) | 340 | -32.3% | 59.9% | 住宅・不動産や各種コンサルティング、結婚情報、地域情報等を提供。投資・インキュベーションも。3Qは投資・インキュベーションの貢献が大きい |
4417 | 4417 | 4417 | 4417 | グローバルセキュリティエキスパート | 4,800 | -30.6% | 50.2% | 中小企業のサイバーセキュリティ対策を教育、コンサル、ソリューション等の面から支える。1Qはこれらのすべての分野で売上高が伸長 |
7094 | 7094 | 7094 | 7094 | ネクストーン | 1,787 | -27.1% | 123.4% | 著作権者からの委託を受け、音楽の利用許諾や著作権料の配分等を行う。CD/映像ソフトのリリース増加、配信市場の拡大他が追い風 |
5038 | 5038 | 5038 | 5038 | eWeLL(12) | 4,160 | -26.6% | 33.4% | 訪問介護に必須の在宅保険請求業務の効率化サービス。高齢化を背景とした在宅医療市場の拡大により業績拡大が継続 |
7373 | 7373 | 7373 | 7373 | アイドマ・ホールディングス(8) | 2,078 | -26.5% | 36.2% | 中小企業向け営業支援サービス等を展開。3Q決算を受け、通期会社予想営業利益を20.3億円から22億円に上方修正 |
4194 | 4194 | 4194 | 4194 | ビジョナル(7) | 6,780 | -24.8% | 38.4% | ハイクラス転職支援サイト『ビズリーチ』等。多方面から収益源を有するのが特徴。企業の求人意欲を背景に業績堅調。3Q累計(営)進捗率は79% |
3773 | 3773 | 3773 | 3773 | アドバンスト・メディア | 1,569 | -24.4% | 13.6% | 音声認識技術サービスが主軸。AI音声認識対話アバターやAI音声認識を用いたアプリ等も展開。今期も2桁増収・(営)増益が会社予想 |
4377 | 4377 | 4377 | 4377 | ワンキャリア(12) | 3,475 | -17.6% | 50.9% | 求人サイト、メディア運営、企業人事向けSaaS事業等。2015年創業だか、急成長。通期計画に対し、2Q累計の(営)の進捗率は91%超 |
- ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成。
- ※銘柄名の右横カッコ内の数字は決算月で、無記載の銘柄は3月決算銘柄。
- ※四半期営業増益率は、四半期累計営業利益の前年同期比増減率
一部掲載銘柄を詳細に解説!
■グローバルセキュリティエキスパート(4417)~高成長が続くサーバーセキュリティ専業企業
★日足チャート(6ヵ月)
- ※データは8/23(日足) 10:00時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■「サイバーセキュリティ教育カンパニー」を標榜
サイバーセキュリティに特化し、その教育に注力。大株主はビジネスブレイン太田昭和(保有比率46%※)と兼松エレクトロニクス(非上場・20%)他となっています。
※5/10付会社側試算では40.8%まで低下
企業向けの「セキュリティ訓練サービス」やエンジニア向けの「セキュリティ教育講座」を展開する「教育事業」が売上高の18.6%(23.3期)を占めています。その他は、「脆弱性診断サービス」を含む「コンサルティング事業」が同25.0%、「セキュリティソリューション事業」が同32.8%、「ITソリューション事業」が同23.7%となっています。
サイバーセキュリティ人材の多くは一部の大手専門企業に偏在。そこで、中堅・中小企業の多くがサイバーセキュリティ業務を外部に委託していますが、専門企業のサービス提供能力にも限界があり、中堅・中小企業の多くは、サイバーセキュリティについて相談先もいないのが現状となっています。
同社は中堅・中小企業をメインターゲットにビジネスを展開しています。すべての企業のサイバーセキュリティに対する自衛力を引き上げることがミッションであるとしています。
■1Qも好調なスタート。将来はプライム市場上場をにらむ
同社の売上高や利益は高い成長を続けています。19.3期から23.3期にかけては、売上高が13億円→55億円(年平均44%成長)、営業利益が0.38億円→7.36億円(19倍)と拡大中。売上高営業利益率も同期間に3.0%→13.3%と向上しています。
会社資料によると、ネットワークセキュリティ市場は2018年度5,016億円から2022年度は6,344億円と年率6%のペースで成長していますが、同社の成長率(上記)はそれを大きく上回っています。ITエンジニアがセキュリティのスキルを取得することがデファクトスタンダード(市場競争によって業界標準と認められた規格)となりつつあることに加え、中堅・中小企業の対策ニーズも飛躍的に高まっています。
24.3期は売上高70億円(前期比25%増)、営業利益10.8億円(同47%増)が会社計画です。すべての事業においてまんべんなく増収が見込まれています。営業利益について中期計画では25.3期に営業利益15億円、26.3期に22億円が見込まれています。
7/28(金)に24.3期1Q(4-6月期)決算を発表。売上高14.5億円(前年同期比23%増)、営業利益1.9億円(同50%増)と順調なスタート。人的資本への投資を積極化したものの、増収効果により大幅増益を確保しました。特にセキュリティソリューションは売上高・粗利ともに計画を大きく上回った模様です。
流通株式確保のため、ビジネスブレイン太田昭和が5/10付で40万株売却したため、流通株式比率が31%(会社側試算)に上昇。将来的にはプライム市場上場に向け、さらなる企業価値向上を目指します。
■アドバンスト・メディア(3773)~AI音声認識技術を活用したサービス。業績の本格拡大はこれから!?
★日足チャート(6ヵ月)
- ※データは2023/8/23(日足)10:10時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★四半期業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■領域特化型・高精度のAI音声認識。コンタクトセンター、WEB会議、電子カルテetc
音声認識技術サービスを主軸とする企業です。
AI(人工知能)による音声認識技術(AmiVoice)は、高精度の自動文字起こしが可能です。同技術を用いたソリューションサービスの提供や、アプリのライセンス販売等を軸に事業を拡大。他には、VTuber向けとして、会話生成AI「ChatGPT」と連携させたAI音声対話アバターの提供等を行っています。
コンタクトセンターや電子カルテ等の作成が必要な医療現場、自治体の議会といった専門用語が飛び交うような現場でも文字起こしが可能です。作業時間の削減や品質向上等の業務効率化につながっています。東京都議会や多数の名立たる大企業でも使用されており、近年のDX化推進が一層の追い風となっています。
音声認識市場でのシェアは7年連続第1位を獲得(会社資料より)。
特に専門性の高い医療文書向けにおいてはシェアは、72.2%(同)と他の追随を許さない水準です。
■業績拡大はここからが本番か?
2005年に上場して以降、赤字が長引いていました。18.3期に黒字転換となり、22.3期、23.3期(前期)に業績が安定成長し始め、株価も右肩上がりとなりました。
前期までは「展開期」で、売上高に対するストック比率の向上に注力。今期(24.3期)から26.3期までを「拡大期」としています。最終年度の26.3期は、売上高100億円(23.3期比93%増)、営業利益30億円(同177%増)が会社計画です。業績拡大が好感された展開期を大きく上回るハイペースな成長見通しとなっています。
左図にあるよう、業績は4Q(1-3期)偏重型です。1Q(4-6期)は他四半期より低水準の傾向ですが、今期は1Q(4-6月期)としては過去最高を更新。通期業績見通しに対する営業利益の進捗率は約11%でしたが、前期も同程度です。よって、一見すると心許ない進捗率ですが堅調な結果であったといえるでしょう。
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