アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~7-9月期に業績モメンタムが加速すると予想されている主要銘柄~

投資情報部 榮 聡
2023/10/02
先週は米10年国債利回りが概ね4.5%以上で推移したことに加え、UAW(全米自動車労働組合)のスト拡大懸念、政府閉鎖の可能性も意識されたことから、S&P500指数は週を通じて軟調な展開となりました。今週の株価材料として、米10年国債利回り、9月雇用統計、UAW(全米自動車労働組合)のストライキの行方、などが注目されます。
今回は10月半ばから発表が始まる7-9月期決算(8-10月期決算も含む)が前四半期から業績モメンタムが加速すると予想されている銘柄から、エヌビディア(NVDA)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、アルファベット A(GOOGL)、メタ プラットフォームズ A(META)、ネットフリックス(NFLX)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

FOMC結果発表の翌日9/21(木)に米10年国債利回りが4.5%近くまで上昇したことを受けて「雲」を下抜けました。その後は安値圏でのもみ合いとなっています。9/29(金)には「転換線」が上値を抑えている様子がうかがえます。9月小売売上高の発表がある10月半ばまでは上値が重い展開が想定されます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 1.3% | 0.4% | 11.3% |
素材 | 0.2% | -6.0% | -5.2% |
コミュニケーションサービス | 0.0% | -2.7% | 2.8% |
情報技術 | -0.1% | -7.1% | -5.8% |
一般消費財・サービス | -0.3% | -5.5% | -5.0% |
資本財・サービス | -0.5% | -6.5% | -5.6% |
S&P500 | -0.7% | -5.0% | -3.6% |
ヘルスケア | -1.1% | -3.3% | -3.1% |
金融 | -1.6% | -4.0% | -1.6% |
不動産 | -1.6% | -7.8% | -9.7% |
生活必需品 | -2.1% | -4.0% | -6.6% |
公益事業 | -7.0% | -5.3% | -10.1% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | 5.3% |
ナイキ | 5.3% |
エヌビディア | 4.5% |
インテル | 4.0% |
クアルコム | 3.1% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ネクステラ・エナジー | -15.4% |
サザン | -6.7% |
エクセロン | -6.0% |
デューク・エナジー | -5.4% |
IBM | -4.5% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.7%の下落、NYダウは1.3%の下落、ナスダック指数は0.1%の上昇でした。
米10年国債利回りが概ね4.5%以上で推移したことに加え、UAW(全米自動車労働組合)によるスト拡大懸念、政府閉鎖の可能性も意識されたことから、S&P500指数は週を通じて軟調な展開となりました。
前日比プラスを記録した9/25(月)にはアマゾンがChatGPTを運営するOpenAIの競合企業であるAnthropicへの出資を発表したことが刺激材料となりました。また、同様に前日比プラスとなった9/28(木)には上昇が続いてきた米10年国債利回りが4.69%を付けたあと低下したことからピーク感が出たことが要因とみられます。
経済指標で注目された8月個人消費支出物価指数は、総合指数が前年比3.5%で前月の同3.4%増から上昇、コア指数が同3.9%増と前月の同4.3%増から低下、いずれも市場予想と一致しました。全体としてインフレ沈静化を示唆すると捉えられたとみられます。
業種指数では、原油価格の高止まりを受けて「エネルギー」が上昇しました。個別銘柄では、9/28(木)引け後に6-8月期決算を発表したナイキ(NKE)が上昇上位でした。中国事業が低調となる可能性が懸念されていましたが、値上げが奏功して調整後EPSが市場予想を26%上回ったことが好感されました。
今週の米国株式
米国市場は月別の株価パフォーマンスが1年で最も悪い9月を経て、1年で株価が最も上昇しやすい10月~12月の四半期を迎えます。10月~12月に株価が上昇しやすいのは、株価のPER(株価収益率)を計算するときに用いる予想EPS(1株当たり利益)の基準年が今年度から来年度に移行するため、株価評価の割高感が緩和、または、割安感が強まることによると考えられます。
S&P500指数のEPSは2023年予想の219ポイントに対して2024年予想の246ポイントへ12%増加する予想で、今年の10-12月も株価は上昇しやすいお膳立てとなっています。ただし、米10年国債利回りが落ち着くことが必要条件と考えられるため、今後は足もとで強い経済指標の鈍化、原油価格の落ち着き、UAW(全米自動車労働組合)によるストライキの終結などが実現するか見極める必要があるでしょう。
なお、市場の懸念材料となってきた米国の政府機関の一部閉鎖は土壇場で回避されることとなりました。9/30(土)に連邦議会の上下院が45日間予算執行できるつなぎ予算を超党派で可決、恒久的な財政措置を話し合うために11月中旬まで猶予が設けられました。
今週の株価材料として、米10年国債利回り、9月雇用統計、UAWのストライキの行方、などが注目されます。
米10年国債利回りは、年内の追加利上げと来年以降の利下げ幅の縮小が示唆されたFOMCの結果発表以降、上昇基調が強まっています。経済指標の堅調、原油価格の上昇、ストライキによる賃金・インフレ上昇懸念などが背景にあると見られます。ただ、経済指標は9月分から鈍化すると想定され、一段と上昇する可能性は低いと考えられるでしょう。
10/6(金)に発表予定の9月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比16.5万人増と、雇用市場の鈍化が示されると予想されています。米10年国債利回りが落ち着き、株式市場にポジティブとなるためには、市場予想に沿った弱めの数字が望ましいと考えられます。
UAW(全米自動車労働組合)のストライキは、9/29(金)からGMとフォードの2工場が加わって5工場に拡大、ストライキに参加している人員はUAW全組合員の約17%にまで拡大したと報道されています。今回ストライキの工場が増えなかったストランティスでは交渉が一部進展していると報じられていますが、GM、フォードについては交渉が進まず、長期期化が懸念されます。
経済指標では上記のほか、10/2(月)に米国の9月ISM製造業景気指数(前月の47.6から47.9に改善の予想)、10/4(水)に米国の9月ADP雇用統計(前月比15.0万人増の予想)、米国の9月製造業受注(前月比0.4%増の予想)、米国の9月ISM非製造業景気指数(前月の54.5から53.5に悪化の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は10月半ばから発表が始まる7-9月期決算(8-10月期決算も含む)が前四半期から業績モメンタムが加速すると予想されている銘柄をご紹介いたします。
業績モメンタムは、「7-9月期の売上・EPSの前年同期比伸び率 - 4-6月期の売上・EPSの前年同期比伸び率」で測ります。S&P100指数採用銘柄について、売上のモメンタムが2%ポイント以上改善すると予想され、7-9月期の売上が前年同期比増収の銘柄を図表3にリストアップしています。
ここから、過去3ヵ月の今期予想EPSの修正動向、目標株価からの乖離率なども勘案して、エヌビディア(NVDA)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、アルファベット A(GOOGL)、メタ プラットフォームズ A(META)、ネットフリックス(NFLX)を選んでご紹介いたします。
なお、筆者の休暇の関係で、スクリーニングに使用した四半期業績予想のデータとEPSの修正率は9/21(木)時点のものになります。ご承知おきください。
図表3 四半期決算のモメンタム加速が見込まれている銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)
銘柄名 | 売上 モメンタム 4-6月期⇒ 7-9月期 |
EPS モメンタム 4-6月期⇒ 7-9月期 |
売上 増加率 7-9月期 予想 |
EPS 増加率 7-9月期 予想 |
売上 増加率 4-6月期 実績 |
EPS 増加率 4-6月期 実績 |
EPS 修正率 (3ヵ月) (%) |
目標株価 乖離率 (%) |
エヌビディア | 68.7 | 43.3 | 170.3 | 472.8 | 101.6 | 429.4 | 14.6 | 48.5 |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 20.7 | 45.7 | 2.5 | 0.9 | -18.2 | -44.8 | 0.0 | 36.6 |
アルファベット | 11.4 | 16.6 | 19.4 | 35.6 | 8.0 | 19.0 | 2.3 | 16.2 |
メタ・プラットフォームズ | 9.6 | 96.1 | 20.6 | 117.2 | 11.0 | 21.1 | 1.3 | 24.6 |
IBM | 4.9 | 23.8 | 4.5 | 18.1 | -0.4 | -5.6 | 0.1 | 2.0 |
ネットフリックス | 4.9 | 10.6 | 7.6 | 13.4 | 2.7 | 2.8 | 0.0 | 25.4 |
サーモフィッシャーサイエンティフィック | 2.8 | 18.1 | 0.2 | 11.6 | -2.6 | -6.5 | -0.4 | 22.1 |
デューク・エナジー | 2.7 | 32.7 | 1.1 | 12.5 | -1.6 | -20.2 | -0.1 | 12.9 |
ウォルト・ディズニー・カンパニー | 2.4 | 152.5 | 6.3 | 147.0 | 3.8 | -5.5 | 0.2 | 34.6 |
注:スクリーニングに使用した四半期決算の予想データとEPSの修正率は9/21(木)時点、目標株価乖離率は9/29(金)のデータによります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (9/29) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | エヌビディア(NVDA) | 434.99ドル | 40.5 | 【生成AI向けにGPU売上が急増】 ・同社の四半期売上は、2-4月期の72億ドル、5-7月期の135億ドル、8-10月期ガイダンスの160億ドルと急増しています。IT大手が生成AIのサービス提供に向けてデータセンターでAIコンピュータの投資を行っており、同社のチップセット「H100」がこれをほぼ独占する形で需要を取り込んでいます。 ・同社の「H100」はエヌビディアが過去10年にわたって行ったAI関連ソフトウェアの蓄積を背景に売れているとみられることから、簡単には切り崩せないとみられます。 | |
買付 | アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) | 102.82ドル | 36.6 | 【データセンターとクライアントPCが回復見込み】 ・4-6月期の売上は前年同期比18%減でしたが、四半期ベースでは1-3月期に底入れの形で、7-9月期は前年同期のハードルが下がることもあり、大幅なモメンタム回復の予想です。データセンターとクライアントPC部門は前四半期比2桁増収となる見込みです。 ・AIについてはエヌビディアの独走を許していますが、経営陣は「生成AI向けのMI300シリーズについて顧客の関心は高いと」と説明、「MI300」シリーズは4Qに発売する予定です。同社は旺盛な需要に応えるため、4Qから2024年にかけて生産能力を強化する予定です。 | |
買付 | アルファベット A(GOOGL) | 130.86ドル | 18.7 | 【ネット広告が回復基調】 ・パンデミック下の需要拡大とその反動減を経て、ネット広告売上の前年同期の売上伸び率は2022年10-12月期を底に回復しつつあり、その動きが続いています。 ・マイクロソフトの「ChatGPT」に対抗して導入した会話型人工知能の「Bard」を検索エンジン以外にもGmail、YouTube、Docs(ドキュメントエディタ)などに組み込んでいくことが注目されています。人工知能の機能自体での課金は難しいとみられるものの、サービス利用の推進により中長期に | |
買付 | メタ プラットフォームズ A(META) | 300.21ドル | 17.4 | 【ネット広告が回復基調】 ・パンデミック下の需要拡大とその反動減を経て、ネット広告売上の前年同期の売上伸び率は2022年10-12月期を底に回復しつつあり、その動きが続いています。コスト削減と投資対象の選別を進めていることから、EPSの伸びは特に高くなる見込みです。 ・ショート動画の「TikTok」に対抗して出した「Reels」が売上構成比で10%台後半まで大きくなり、成長をけん引する期待があります。また、人工知能機能の導入は、ユーザーの利便性を高めることで長期的には広告収入の成長につながる期待があります。 | |
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 377.60ドル | 24.3 | 【アカウント共有対策、広告付プランの伸びでモメンタム改善見込み】 ・4-6月期はドル高の影響を受けて売上は前年同期比3%増、EPSは同3%増でした。契約者純増はアカウント共有対策の効果で589万人と予想の206万人を大きく上回りました。7-9月期は売上が前年同期比8%増、EPSが同14%増と、アカウント共有対策や広告付きプランの成長などで伸びが高まる見込みです。 ・9月のカンファレンスでCFOが足もとの売上動向について、広告付プランの寄与が想定したほどではないなど弱めの話をしたことから、このところ株価の調整が目立ちますが、ガイダンスを変更するには至っていません。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアは2024年1月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
10月 2(月) |
・日銀短観(7-9月期) ・パウエルFRB議長とフィラデルフィア連銀ハーカー総裁が討論に参加 ・米ISM製造業景気指数(9月) |
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3(火) | ・クリーブランド連銀メスター総裁が講演 ・アトランタ連銀ボスティック総裁が講演 ・米求人労働異動調査(8月) ・米ワーズ自動車販売台数(9月) |
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4(水) | ・ユーロ圏小売売上高(8月) ・ボウマンFRB理事が講演 ・シカゴ連銀グールズビー総裁が講演 ・ADP雇用統計(9月) ・米製造業受注(8月) ・米ISM非製造業景気指数(9月) |
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5(木) | ・クリーブランド連銀メスター総裁が講演 ・サンフランシスコ連銀デイリー総裁が講演 ・バーFRB副議長が講演 ・米チャレンジャー人員削減(9月) ・米貿易統計(8月) ・米新規失業保険申請件数(9月30日に終わる週) |
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6(金) | ・米雇用統計(9月) | |
9(月) | ||
10(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(9月) ・ニューヨーク連銀1年インフレ期待(9月) |
ペプシコ |
11(水) | ・日本工作機械受注(9月) ・米生産者物価指数(9月) ・FOMC議事要旨 |
|
12(木) | ・日本機械受注(8月) ・米消費者物価指数(9月) ・米新規失業保険申請件数(10月7日に終わる週) |
ドミノピザ |
13(金) | ・中国生産者・消費者物価指数(9月) ・中国貿易統計(9月) ・ユーロ圏鉱工業生産(8月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(10月、速報値) |
台湾セミコンダクター、デルタ航空、JPモルガンチェース ユナイテッドヘルスグループ、ウェルズファーゴ、シティグループ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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