「上半期」に株価が大きく下げたものの業績良好な中小型9選

「上半期」に株価が大きく下げたものの業績良好な中小型9選

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/09/27

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「上半期」に株価が大きく下げたものの業績良好な中小型9選

多くの企業にとって、間もなく、24.3期の上半期が終わろうとしています。9/26(火)時点での主要指標の、前年度末(23.3)に対するパフォーマンスは以下の通りです。


日経平均・・・・・・・・・+15.2%

TOPIX・・・・・・・・・・・+18.4%

東証スタンダード市場+9.1%

東証グロース市場・・・-3.5%

S&P500指数…‥+5.6%


米10年国債利回り・・・3.47%→4.53%

ドル・円相場・・・・・・・・・133.53円→148.95円


日本株は米国株と比べ総じて好調であったといえそうです。東証が、PBR1倍割れの上場企業に対し、改善案を求めたこともあり、バリュー銘柄の回復が目立ちました。米国景気が想定以上に強く、インフレ懸念が根強く残ったため、米長期金利は上昇しました。日本の長期金利も同じ期間に上昇(032%→0.74%)しましたが、日米長期金利差は拡大し、外為市場では円安・ドル高が進みました。

結局、日本国内の株価指標の中では、東証グロース市場指数の見劣りが目立つ展開でした。同市場はグロース銘柄が多い分、内外の金利上昇傾向が逆風でした。円安・ドル高についても、東証グロース市場銘柄の多くは内需系銘柄が多いため、追い風にはなりませんでした。

年度下半期以降はどうなるのでしょうか。米国経済が予想外に強いことは確かですが、コロナ禍での家計向け経済対策で貯蓄余剰となっていた面が強く、いわば「余熱」でここまで保ってきたように思われます。下半期は米国経済のピークアウトを想定すべきかもしれません。米長期金利が反落すれば物色方向も変化し、グロース銘柄に出番が回る可能性もありそうです。

今回の「新興株ウィークリー」では、年度上半期に大きく下げた銘柄の中から、業績面で裏付けがあり、押し目買いを狙えそうな銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行なってみました。


(1)東証スタンダード市場または東証グロース市場に上場

(2)株価が本年3/31(金)→9/25(月)に10%超下落

(3)9/25(月)まで20営業日の1日当たり平均出来高が2万株以上

(4)時価総額100億円以上1,000億円未満

(5)純利益(前期)が黒字で、通期会社予想純利益も黒字

(6)直近四半期(累計)純利益の前年同期比増益率が通期会社予想純利益増益率を上回っている、

      または直近四半期(累計)純利益の通期会社予想純利益に対する進捗率が「標準※以上」

    ※「標準」・・・1Qならば25%、2Q累計ならば50%、3Q累計ならば75%。図表ではカッコ内に参考表示。


図表の銘柄は上記条件のすべてを満たしています。掲載の順番は、(2)の株価下落率が大きい順になっています。

【参考】 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

【参考】 9/19(火)~26(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 「上半期」に株価が大きく下げたものの業績良好な中小型9選

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価
(9/25・円)
23.3末比騰落率 四半期純利益増益率 進捗率 今期会社予想純利益増益率
5139 5139 5139 5139 オープンワーク(12) 3,230 -50.0% 61.6%
(標準50%)
40.2%
7373 7373 7373 7373 アイドマ・ホールディングス(8) 2,170 -45.5% 21..7% 91.8% 
(標準75%)
25.2%
7094 7094 7094 7094 ネクストーン★ 1,859 -39.8% 122.3% 20.9%
(標準25%)
10.9%
4377 4377 4377 4377 ワンキャリア(12) 3,115 -30.9% 53.3% 91.2%
(標準50%)
29.8%
3187 3187 3187 3187 サンワカンパニー(9)★ 848 -19.1% 12.9% 91.8% 
(標準75%)
23.4%
4074 4074 4074 4074 ラキール(12) 1,689 -17.9% 28.1% 33.9%
(標準50%)
21.4%
2937 2937 2937 2937 サンクゼール★ 3,810 -14.8% 33.2% 
(標準25%)
3.6%
4417 4417 4417 4417 グローバルセキュリティエキスパート★ 4,695 -11.9% 48.9% 17.8%
(標準25%)
44.2%
9558 9558 9558 9558 ジャパニアス(11) 3,005 -11.6% 56.3% 47.1%
(標準50%)
29.1%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データ、各種報道等をもとに、SBI証券が作成
  • ※「23.3末比騰落率」は9/25(月)終値を本年3/31(金)終値と比較した騰落率
  • ※「四半期純利益増益率」は直近四半期累計純利益の前年同期比増益率。比較できない場合は「-」で表示。
  • ※銘柄名右横のカッコ内数字は決算月を示しています。カッコ内数字がない銘柄は3月決算銘柄です。
  • ※銘柄名右横に★のある銘柄は、3月決算または9月決算銘柄で、9/27(水)が権利付き最終日、9/28(木)が権利落ち日です。9/28以降に★印の銘柄を買い付けても、23.9末の配当を受け取る権利はありませんのでご注意ください。

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■サンクゼール(2937)~「久世福商店」を運営。イオンモールなどの商業施設に多数出店

★日足チャート(1年)

  • ※データは9/27(日足) 10:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■「久世福商店」、「サンクゼール」を運営。Eコマースや米国事業も進出

食品製造販売会社です。全国各地の優れた逸品を、多様な販売チャネルを通じて販売しています。

一般的なスーパーなどでは売っていない、差別化されたユニークな商品群が同社製品の特徴です。少々贅沢な日常使いからギフト使いまでの中高価格帯の食品ブランドという位置づけとなっています。

2013年、主力ブランドである「久世福商店」の展開を契機に、業績を拡大してゆきました。

主力の店舗事業は、売上高の72%を占めています(23.3期)。施設年商150-500億円規模でイオンモールなどの商業施設を中心に、全国で158店舗を運営中(同)。会員制の大型倉庫店コストコは、全売上高の15%超を占める主要顧客です(同)。

また、他社ブランドのOEM製造*を担うホールセール事業が全売上高構成比の17%です(同)。スーパーマーケットなどを展開する小売企業が主要顧客で、23.3期は売上高が前期比1.3倍、前々期比2.3倍と右肩上がりで成長しています。

他には重点成長事象としてギフト商品が売れ筋のEコマース事業(6%.同)や、米国を中心としたグローバル事業(5%.同)を展開中です。

*OEM製造:委託を受けた他社のオリジナル製品を製造すること。

■株主優待の新設、大手証券会社による調査開始が好感

22年10月の新規上場後、初の通期決算にあたる前期(23.3期)決算発表へ向けての期待感が一服したことや、大株主による売却の影響で、4月半ば以降の株価は低迷が続いていました。

8/8(火)の今期1Q(23.4-6月期)決算発表で、堅調な業績進捗と同時に株主優待*の新設を発表。同発表後、株価が回復の兆しを見せ始めました。

その後、9/12(火)に大手日系証券が目標株価4,200円で調査を開始したことが好感され、株価がさらに一段高となりました。9/26(火)時点で、4月半ばにつけた高値から7月末の安値の半値戻しを上回る水準まで回復しています。

【株主優待の内容は、100株以上の保有で(1)2,500円相当の自社商品詰め合わせ及び、(2)500円相当の自社店舗とECサイトで利用可能な優待券が付与されます。500株以上の保有では(1)5,000円相当、(2)が1,000円相当となります。なお、優待の付与対象は3月時点で6カ月以上の継続保有が条件です。23年9月末時点でも株主に登録されている必要があります】

※9/27(水)が権利付最終日です。9/28(木)以降に買い付けても9月末時点での株主には登録されませんのでご注意ください。

■グローバルセキュリティエキスパート(4417)~「すべての企業をセキュリティの脅威から護る」ことを目指す

★日足チャート(1年)

  • ※データは2023/9/27(日足)10:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■「サイバーセキュリティ教育カンパニー」を標榜

サイバーセキュリティに特化し、その教育に注力。大株主はビジネスブレイン太田昭和(保有比率は5/10付会社側試算で40.8%)と兼松エレクトロニクス(非上場・20%)他となっています。

企業向けの「セキュリティ訓練サービス」やエンジニア向けの「セキュリティ教育講座」を展開する「教育事業」が売上高の18.6%(23.3期)を占めています。その他は、「脆弱性診断サービス」を含む「コンサルティング事業」が同25.0%、「セキュリティソリューション事業」が同32.8%、「ITソリューション事業」が同23.7%となっています。

サイバーセキュリティ人材の多くは一部の大手専門企業に偏在しています。そのため、中堅・中小企業の多くがサイバーセキュリティ業務を外部に委託していますが、専門企業のサービス提供能力にも限界があり、中堅・中小企業の多くは、サイバーセキュリティについて相談先がないのが現状となっています。

同社はそのような中堅・中小企業をメインターゲットにビジネスを展開。すべての企業のサイバーセキュリティに対する自衛力を引き上げることがミッションであるとしています。

■将来はプライム市場上場をにらむ

売上高や利益は高い成長を続けています。19.3期から23.3期にかけては、売上高が13億円→55億円(年平均44%成長)、営業利益が0.38億円→7.36億円(19倍)と拡大中。売上高営業利益率も同期間に3.0%→13.3%と向上しています。

会社資料によると、ネットワークセキュリティ市場は2018年度5,016億円から2022年度は6,344億円と年率6%のペースで成長していますが、同社の成長率(上記)はそれを大きく上回っています。

24.3期は売上高70億円(前期比25%増)、営業利益10.8億円(同47%増)が会社計画です。営業利益について中期計画では25.3期に営業利益15億円、26.3期に22億円が見込まれています。

流通株式確保のため、ビジネスブレイン太田昭和が5/10付で40万株売却したため、流通株式比率が31%(会社側試算)に上昇。将来的にはプライム市場上場に向け、さらなる企業価値向上を目指します。

7/28(金)に24.3期1Q(4-6月期)決算を発表。売上高14.5億円(前年同期比23%増)、営業利益1.9億円(同50%増)と順調なスタート。人的資本への投資を積極化したものの、増収効果により大幅増益を確保しました。特にセキュリティソリューションは売上高・粗利ともに計画を大きく上回った模様です。

株価は6/19(月)取引時間中の7,800円を高値に9/13(水)の安値4,020円まで48%下落し、5/22(月)の安値4,285円をも下回りました。上場維持基準適合への取り組み(5/31)や、中期計画(6/7発表)への評価が完全に否定されたと理解される水準まで下げた形です。9/26(火)の株価は同安値から10数%程戻した水準です。

■ジャパニアス(9558)~技術者派遣。1999年の創業来20年超の黒字が続く。堅実成長でプライム市場への移行を目指す

★日足チャート(1年)

  • ※データは2023/9/27(日足)10:00時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■エンジニア派遣が主軸。AIやクラウド等の新領域にも展開。1999年の創業来黒字

IT業界において、エンジニア派遣業と受託開発を展開する企業です。主軸のエンジニア派遣では、約9割が顧客企業先へ常駐しています(22.11期)。

IT人材の需要動向が業績を左右する重要な要素です。国内ではIT需要の拡大に反し、人材供給力が低下することから、2023年にはIT人材が約16万人から約79万人不足すると推計されています(経産省の調査・会社資料より)。同社のみならず業界全体で、IT人材獲得のための競争激化が課題です。

事業領域を2分類しています(下記)。

既存領域・・・ソフトウエア、インフラ、メカトロニクス、エレクトロニクス
新規領域・・・Salesforce、クラウド、AI

中計では、既存領域で取引の維持・拡大はもちろん、新規領域で取引の拡大が目標です。専門人材の採用の他、既存領域に属するエンジニアの技術転換及び資格取得により、取引の拡大を図っています。ニーズが多様化するIT業界において、リスキリングによる社員教育に注力しています。

原価計算を徹底することで、1999年の創業来、黒字成長を続けています。2022年に満を持して東証グロース市場に新規上場を果たしました。

■今期も業績目標達成へ向け順調。プライム市場へ移行目指す

前期(22.11期)は売上高83億円(前期比14%増)、営業利益6.1億円(同78%増)と旺盛なエンジニア需要を背景に、堅調な結果となりました。売上高増の他、エンジニアのスキルに見合った案件への戦略的な配置異動やスクール研修での育成が奏功し、単価向上へと繋がった格好です。

7/10(月)に発表された今期2Q(22.12-23.5期)決算では、売上高47億円(前年同期比20%増、通期計画の進捗率49%)、営業利益3.9億円(同56%増、同52%)と好調な内容でした。特に伸長の目立った利益面では、売上増で1.9億円、原価率改善で0.6億円寄与しました。2Q決算発表直後は、株価は一段高となりました。その後、特段材料のないまま3,000円付近で停滞した状態です。10/11(水)の3Q決算発表が、次の株価変動のイベントとなるでしょう。

東証プライム市場へ区分替えを見据えており、「5年以内に達成するだろう」と同社の代表が、4月のインタビューで述べています。プライム市場の上場基準のひとつである流動株式比率35%以上に関しては、自身の保有株を放出するだろうと言及しています。

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