アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国株は買い場到来!?何を買えばよい?~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国株は買い場到来!?何を買えばよい?~

投資情報部 榮 聡

2023/10/10

先週は米10年国債利回りが高止まりしたことからはじめ調整基調でしたが、10/6(金)には強い雇用統計と金利上昇にもかかわらず、大きく反発しました。今週の株価材料として、FOMC議事要旨、7-9月期決算発表、物価指標、などが注目されます。

今回は過去3ヵ月の株価が堅調で、かつ、米10年国債利回りの上昇が加速した9/19(火)~10/5(木)には調整した銘柄から、イーライ リリィ(LLY)ブッキング ホールディングス(BKNG)アルファベット A(GOOGL)インテル(INTC)アドビ(ADBE)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(日足、6ヵ月)

7/27(木)に4,600ポイント台の高値を付けてから調整は約2ヵ月半におよび、200日移動平均線に接近していました。年末にかけての反発をうかがう動きが想定されます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は10/2(月)終値~10/9(月)終値によります。)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
公益事業 2.9% -8.0% -11.7%
コミュニケーションサービス 2.5% 1.2% 7.3%
情報技術 2.0% -1.7% -1.2%
資本財・サービス 1.9% -2.8% -3.6%
不動産 1.5% -7.0% -10.1%
ヘルスケア 1.4% -1.0% 1.1%
S&P500 1.1% -2.7% -1.4%
素材 0.7% -4.2% -3.9%
金融 0.4% -3.4% -1.6%
エネルギー -0.1% -3.0% 9.8%
一般消費財・サービス -0.4% -5.1% -4.8%
生活必需品 -2.4% -6.5% -8.5%
騰落率上位(5日) 騰落率
ロッキード・マーチン 7.0%
ゼネラル・ダイナミクス 7.0%
イーライリリー 6.2%
エクセロン 5.7%
サザン 5.1%
騰落率下位(5日) 騰落率
モンデリーズ・インターナショナル -6.9%
ネクステラ・エナジー -5.4%
コカ・コーラ -4.7%
ペプシコ -4.6%
ゼネラル・モーターズ -4.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.5%の上昇、NYダウは0.3%の下落、ナスダック指数は1.6%の上昇でした。

米10年国債利回りは一時2007年以来となる4.8%台まで上昇したことから、米株式市場ははじめ調整基調が続きました。強めの経済指標に加え、金融当局者の発言も政策金利の「Higer for Longer」(より高い時期がより長く続く)に沿ったものが多かったことが要因です。

一方、10/6(金)には9月雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比33.6万人増と市場予想の17.0万人増を大きく上回って10年国債利回りも上昇しましたが、株式は引けにかけて大きく上昇しました。値ごろ感が出てきていると考えられます。

先週の経済指標で、金利上昇に寄与したものは、8月求人数(961万人、予想は880万人)、9月ISM製造業景気指数(49.0、予想は47.8)、金利低下に寄与したものは、9月ADP雇用統計(前月比8.9万人増、予想は15.0万人増)、9月ISM非製造業景気指数(53.6、予想も53.6)とみられます。

業種指数(10/2(月)終値~10/9(月)終値によります)では、米10年国債利回りに上昇一服感が出たため、テクノロジー企業など成長株が買われて「情報技術」「コミュニケーションサービス」が上位となったほか、売り込まれていた「公益事業」が上昇上位でした。個別銘柄では、週末の中東紛争ぼっ発を受けて、ロッキード マーチン(LMT)ゼネラル ダイナミックス(GD)など防衛関連株が10/9(月)に大きく上昇しました。

今週の米国株式

米国市場は月別の株価パフォーマンスが1年で最も悪い9月を経て、1年で株価が最も上昇しやすい10月~12月の四半期に入りました。10月~12月に株価が上昇しやすいのは、株価のPER(株価収益率)を計算するときに用いる予想EPS(1株当たり利益)の基準年が今年度から来年度に移行するため、株価評価の割高感が緩和、または、割安感が強まることによると考えられます。

S&P500指数のEPSは2023年予想の219ポイントに対して2024年予想の246ポイントへ12%増加する予想で、今年の10-12月も株価は上昇しやすいお膳立てとなっています。ただし、米10年国債利回りが落ち着くことが必要条件と考えられるため、今後は足もとで強い経済指標の鈍化、原油価格の落ち着き、UAW(全米自動車労働組合)によるストライキの終結などが実現するか見極める必要があるでしょう。

なお、週末に発生した中東紛争はそれ自体がリスク要因となるほか、原油価格の上昇を通じて長期金利上昇を刺激するという経路でも警戒されるため、注視していく必要があるでしょう。

今週の株価材料として、FOMC議事要旨、7-9月期決算発表、物価指標、などが注目されます。

前回のFOMC(9月19日、20日開催分)後に米10年国債の利回り上昇が加速しました。主に2023年の政策金利見通しが上方修正されたことが材料になったと考えられますが、どのような議論があったか議事要旨も注目されるでしょう。また、今週は金融当局者の発言が多数予定されています。

今週の後半から7-9月期決算の発表が始まります。7-9月期のS&P500指数EPSは、前年同期比0.1%減の予想で4-6月期の同4.1%減から改善の予想です。改善傾向が示されれば、2024年予想EPSへの信頼感が高まり、株高につながりやすいと考えられます。

物価指標では、10/11(水)の9月生産者物価指数が総合指数は前年比1.6%増の予想(前月は同1.6%増)、コア指数は前年比2.3%増の予想(前月は同2.2%増)、10/12(木)の9月消費者物価指数は総合指数が前年比3.6%増の予想(前月は同3.7%増)、コア指数は前年比4.1%増の予想(前月は同4.3%増)です。コア指数はいずれも上昇率の低下が見込まれており、インフレ鎮静化のトレンド継続と捉えられそうです。

経済指標では上記のほか、10/12(木)に中国の9月貿易統計(輸出は前年比8.3%減の予想、前月は同8.8%減、輸入は前年比6.0%減の予想、前月は同7.3%減)、米国の10月ミシガン大学消費者信頼感・速報値(前月の68.1から67.1に悪化の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は過去3ヵ月の株価が堅調で、かつ、米10年国債利回りの上昇が加速した9/19(火)~10/5(木)には調整した銘柄をご紹介いたします。

中期的なトレンドは良いものの、主に長期金利の上昇というマクロ環境によって調整したもので、今後米10年国債利回りが落ち着いてくるときには、相場の回復をけん引する銘柄になるのではないかと考えました。

10/5(木)時点のデータで、S&P100指数採用銘柄について過去3ヵ月の株価騰落率が5%以上(S&P500指数は4.2%の下落です)の銘柄を図表3に抽出しました。

ここから、9/19(火)~10/5(木)の株価騰落率、過去3ヵ月のEPS修正率を勘案して、イーライ リリィ(LLY)ブッキング ホールディングス(BKNG)アルファベット A(GOOGL)インテル(INTC)アドビ(ADBE)を選んでご紹介いたします。

図表3 過去3ヵ月に株価騰落率が7%以上だった銘柄

コード 銘柄名 株価騰落率
(3ヵ月)
(%)
株価騰落率
9/19-10/5
(%)
EPS修正率
(3ヵ月)
(%)
AMGN アムジェン 18.9 0.3 2.2
LLY イーライリリー 16.9 -5.8 11.6
CHTR チャーター・コミュニケーションズ 16.1 -4.0 -2.0
BKNG ブッキング・ホールディングス 14.7 -3.0 6.2
COP コノコフィリップス 13.0 -7.9 -0.1
GOOGL アルファベット 12.5 -2.2 4.7
INTC インテル 12.3 -1.2 65.8
UNH ユナイテッドヘルス・グループ 10.0 7.4 0.3
CAT キャタピラー 8.4 -6.7 10.4
ABBV アッヴィ 7.4 -3.9 1.2
ADBE アドビ 7.3 -4.7 1.3
CVX シェブロン 7.2 -2.0 3.7
IBM IBM 7.1 -3.4 1.3

注:スクリーニングに使用した株価騰落率とEPSの修正率のデータは10/5(木)時点です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(10/9)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートイーライ リリィ(LLY)571.76ドル45.4

【新型の糖尿病治療薬が順調】

・米国ではノボノルディスクの肥満治療薬の利用が広がっており、食品株下落の背景になるのではと言われるほどです。イーライリリィはノボノルディスクと同種の肥満治療薬を承認申請しており、今年中の承認が期待されています。

・ 4-6月期の売上は前年同期比28%増、調整後EPSは同38%増で、売上・EPSとも市場予想を上回りました。大幅な売上増には、薬の権利売却による約9%ポイントの寄与を含みます。主力の「トルリシティ」が同5%減で市場予想を下回った一方、新型の糖尿病治療薬「マンジャロ」が9.8億ドル(1-3月期は5.7億ドル)と順調で、同57%増となった乳がん治療薬の「ベージニオ」などがけん引しました。通期の調整後EPSガイダンスを9.70~9.90ドルへ1.05ドル引き上げました。

買付チャートブッキング ホールディングス(BKNG)3009.72ドル36.6

【記録的な旅行シーズンを迎える】

・パンデミック後の旅行回復の恩恵を受けて業績は好調です。4-6月期決算は売上が前年同期比27%増、EPSが同97%増、予約総額の同15%増、宿泊予約は同9%増でした。会社は「予約総額、宿泊予約は想定を上回って推移しており、この強さは7月に入っても継続している。われわれは記録的な旅行シーズンを迎えている。」とレジャー需要の強さについてコメントしています。

・旅行需要の回復は7-9月期にピークを迎えて、今後は鈍化すると想定されますが、リベンジ消費による押し上げが続いて引き続き堅調な伸びを見せると期待されます。また、PricelineとBooking.comで生成AIによる支援機能の提供を発表している点も注目されます。現在、同支援機能によって顧客が価値を認める要素は何であるかを見極めています。

買付チャートアルファベット A(GOOGL)138.42ドル19.9

【ネット広告が回復基調】

・パンデミック下の需要拡大とその反動減を経て、ネット広告売上の前年同期の売上伸び率は2022年10-12月期を底に回復しつつあり、その動きが続いています。4-6月期決算は売上が前年同期比8%増、EPSが同19%増で、市場予想をそれぞれ3%、9%上回って好調でした。

・マイクロソフトの「ChatGPT」に対抗して導入した会話型人工知能の「Bard」を検索エンジン以外にもGmail、YouTube、Docs(ドキュメントエディタ)などに組み込んでいくことが注目されています。人工知能の機能自体での課金は難しいとみられるものの、サービス利用の推進により中長期の成長性を高める効果が期待されます。

買付チャートインテル(INTC)36.06ドル21.0

【前四半期比改善の見通し】

・PC市場の低迷が続き、データセンター向けも成長が鈍化する中でAMDに対して市場シェアを失い業績は厳しいものとなっています。一方、ファウンドリー事業を立ち上げるなど、2025年の技術リーダーシップの奪回を目指しています。今年は大幅減収減益ながら、来年は10%以上の増収に回帰すると期待されています。

・4-6月期は、前年同期比15%減収、同55%減益ながら市場予想を上回りました。部門売上は、クライアントコンピューティングが前年同期比12%減、データセンター&AIが同15%減ながら、いずれも市場予想を上回りました。7-9月期ガイダンスは、売上が129~139億ドル、調整後EPSを0.20ドルで、4-6月期の売上129億ドル、調整後EPS0.13ドルから改善の見通しで、市場予想を上回りました。

買付チャートアドビ(ADBE)529.29ドル29.6

【新機能追加を背景に11月から値上げへ】

・ソフトウェアの世界的大手です。画像編集の「Photoshop」、グラフィックデザインの「Illustrator」等のクリエイター向けサービスや、総合PDFソリューションの「Adobe Acrobat」など世界標準のサービスを多数擁します。2016年にAIテクノロジー基盤の「Adobe Sensei」を投入し、AI技術の利用に早くから注力してきた会社です。2023年3月、商用利用に特化した画像生成AI、「Adobe Firefly」のベータ版を公開し、利用が始まっています。

・6-8月期は、売上?が前年同期?10.3%増、EPSが4.09ドルといずれも市場予想を上振れました。デジタルメディア部門では、「Acrobat(PDF)」等のドキュメント・クラウドが成?を牽引、デジタル・エクスペリエンス部門ではサブスクリプションが同13%増と好調でした。また、「Firefly」等のAI関連の新機能追加を背景に、11月からの全面的な値上げを発表しています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、アドビは2024年11月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
10(火) ・アトランタ連銀ボスティック総裁、FRBウォラー理事、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁の講演
・米NFIB中小企業楽観指数(9月)
・ニューヨーク連銀1年インフレ期待(9月)
ペプシコ
11(水) ・日本工作機械受注(9月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁、ボストン連銀コリンズ総裁の講演
・米生産者物価指数(9月)

・FOMC議事要旨
 
12(木) ・日本機械受注(8月)
・中国生産者・消費者物価指数(9月)
・中国貿易統計(9月)
・ダラス連銀ローガン総裁、ボストン連銀コリンズ総裁の講演
・米消費者物価指数(9月)
・米新規失業保険申請件数(10月7日に終わる週)
デルタ航空、ドミノピザ
13(金) ・ユーロ圏鉱工業生産(8月)
・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁の講演
・米ミシガン大学消費者信頼感(10月、速報値)
JPモルガンチェースユナイテッドヘルスグループ
ウェルズファーゴ、シティグループ
16(月) ・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(10月) チャールズシュワブ
17(火) ・ドイツZEW景気指数(10月)
・米小売売上高(9月)
・米鉱工業生産(9月)
・米NAHB住宅市場指数(10月)
ジョンソン&ジョンソンバンクオブアメリカ、ゴールドマンサックス
ロッキードマーチン
18(水) ・中国鉱工業生産・小売売上高(9月)
・米住宅着工件数・建設許可件数(9月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
プロクター&ギャンブルテスラネットフリックス
ASMLホールディングス、モルガンスタンレー
19(木) ・新規失業保険申請件数(10月14日に終わる週)
・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(10月)
・米中古住宅販売件数(9月)
ネットフリックスAT&T台湾セミコンダクター
インチュイティブサージカル、フィリップモリスインターナショナル
アメリカン航空グループ
20(金)    

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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