アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米国市場の上昇をけん引!?決算を受けて業績上方修正が大きい銘柄~

投資情報部 榮 聡
2023/11/13
先週は米10年国債利回りが4.5~4.6%台でのもみ合いとなったことを受けて株式は続伸となりました。今週の株価材料として、10月小売売上高、米中首脳会談、10月物価指標などが注目されます。
今回は7-9月期決算発表を挟んで通期予想EPSの上方修正が大きい主要銘柄から、インテル(INTC)、ゼネラル エレクトリック(GE)、メタ プラットフォームズ A(META)、アマゾン ドットコム(AMZN)、ブラックロック A(BLK)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

一目均衡表の「雲」が上値抵抗帯となっており、一旦「雲」の中でもみ合いとなる可能性が高そうです。ただ、相場反発を先導しているナスダック指数は11/10(金)終値で「雲」を大きく上に突き抜けており、このまま抜ける可能性もあるでしょう。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 4.8% | 6.6% | 8.4% |
コミュニケーションサービス | 2.2% | 1.5% | 3.1% |
S&P500 | 1.3% | 2.0% | -1.1% |
一般消費財・サービス | 0.9% | 2.3% | -4.3% |
資本財・サービス | 0.8% | 0.6% | -5.8% |
金融 | 0.3% | 2.0% | -2.9% |
生活必需品 | 0.2% | 3.2% | -7.3% |
ヘルスケア | -1.0% | -3.1% | -6.9% |
素材 | -1.8% | -0.4% | -6.5% |
不動産 | -2.1% | 0.1% | -8.1% |
公益事業 | -2.6% | 1.6% | -6.6% |
エネルギー | -3.8% | -7.1% | -7.1% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ブッキング・ホールディングス | 7.5% |
エヌビディア | 7.4% |
アドビ | 6.0% |
ゼネラル・エレクトリック | 5.8% |
アップル | 5.5% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
バイオジェン | -9.9% |
ゼネラル・モーターズ | -9.8% |
ネクステラ・エナジー | -7.1% |
ギリアド・サイエンシズ | -6.9% |
フォード・モーター | -6.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.3%、NYダウは0.7%、ナスダック指数は2.4%と2週続伸でした。
米10年国債利回りが4.5~4.6%台で推移したことを受けて株式は上昇基調が続きました。11/9(木)にはパウエルFRB議長が「必要があれば利上げをためらわず」と発言したことを受けて金利は反発、株式は反落となる場面がありました。
しかし、パウエルFRB議長の発言内容は、これまでの発言から大きく変化したものではありませんでした。市場ではFRBによる利上げ休止まで織り込んでいるとコメントされていたため、織り込みが行き過ぎていた反動が出たと考えられます。トレンドの変化ではないと判断され、11/10(金)には前日の下げを取り戻して余りある上昇となりました。
企業決算は全体として引き続き堅調でした。S&P500指数の7-9月期経済指標では、11月のミシガン大学消費者信頼感は前月の63.8から60.4に低下して、個人消費の減速を示唆しました。
業種指数では、マイクロソフト、アップル、エヌビディアなどがけん引して「情報技術」が大幅に上昇しました。ネット企業を含む「コミュニケーションサービス」も上昇です。長期金利が反落を経てもみ合っていることから、成長銘柄の物色が活発化しているとみられます。
個別株では、大手旅行予約サイトのブッキング ホールディングス(BKNG)が上昇トップでした。イスラエル、ハマス紛争を受けて株価が下落していましたが、好調な7-9月期決算を確認して戻しています。また、同社のシステムメンテナンスが原因でホテルへの支払いが遅れた件について、謝罪とともに金銭的補償を行うことを発表しています。
今週の米国株式
10-12月期の米国市場は反発が期待できると考えられます。(1)10-12月期は予想PERの計算基準が2023年予想EPS(S&P500指数は221ポイント)から2024年予想EPS(同246ポイント)に切り替わるタイミングであること(予想数字はFactSet社集計)、(2)7-9月期の決算発表は市場予想を上回って推移しており、(1)の移行はスムーズに行われると期待されること、(3)米国の景況感は年末にかけてピークアウトが見込まれ、これに沿って米10年国債利回りもピークアウトが想定される、ことが背景になると考えられます。
なお、11/17(金)には歳出関連法案成立までのつなぎ予算の期限が到来しますが、歳出関連法案の成立にはまだ時間がかかると見られています。新たな暫定予算措置によって年末あるいは来年1月まで期限を延ばす可能性が高いようです。
今週の株価材料として、10月小売売上高、米中首脳会談、10月物価指標などが注目されます。
11/15(水)に発表予定の10月小売売上高は米長期金利のトレンドを決める重要指標と考えられます。前月比0.3%減と、7ヵ月ぶりにマイナスが予想されています。市場予想通り小売売上高の鈍化が示されれば、5%台からピークアウトしている長期金利に安定感をもたらすと見られます。また、今週・来週と小売大手の8-10月期決算の発表が予定されており、各社の市場見通しが注目されます。
11/15(水)~11/17(金)にサンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で米中首脳会談が予定されています。前回の2022年11月から約1年ぶりの会談となります。6月から7月にかけてブリンケン国務長官を含む複数の米要人が訪中して地ならしをした後ですので、米中の経済取引、台湾問題などで話し合いの枠組み構築に進展があるか注目されます。
11/14(火)に発表予定の消費者物価指数では、総合指数は前年比3.3%増の予想(前月は同3.7%増)、コア指数は前年比4.1%増の予想(前月は同4.1%増)、11/15(水)に発表予定の生産者物価指数では、総合指数は前年比2.3%増の予想(前月は同2.2%増)、コア指数は前年比2.7%増の予想(前月は同2.7%増)です。生産者物価ともコア指数の低下の勢いが鈍ると見込まれています。
経済指標では上記のほか、11/15(水)に中国の10月鉱工業生産(前年比4.5%増の予想、前月は同4.5%増)、同小売売上高(前年比7.0%増の予想、前月は同5.5%増)、11/17(金)に米国の10月住宅着工件数(前月比0.7%減の予想)、同住宅建設許可件数(前月比1.4%減の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は7-9月期決算発表を挟んで通期予想EPSの上方修正が大きい銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)をご紹介いたします。図表3に抽出された銘柄には、テクノロジー大手の一角や銀行が多く見受けられます。
ここから、目標株価乖離率、来期の予想PERなども勘案して、インテル(INTC)、ゼネラル エレクトリック(GE)、メタ プラットフォームズ A(META)、アマゾン ドットコム(AMZN)、ブラックロック A(BLK)を選んでご紹介いたします。
図表3 米小売売上高は7ヵ月ぶりに前月比マイナスとなるか

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 7-9月期決算発表を挟んで予想EPSの上方修正が大きい銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)
コード | 銘柄名 | 予想EPS 修正率 (4週) |
目標株価 乖離率 (%) |
株価騰落率 (3ヵ月) (%) |
株価 (11/9) (ドル) |
予想PER (来期予想) (倍) |
INTC | インテル | 64.2 | 0.6 | 9.0 | 37.8 | 20.2 |
GE | ゼネラル・エレクトリック | 13.1 | 16.1 | -0.4 | 113.1 | 24.7 |
COF | キャピタル・ワン・ファイナンシャル | 11.2 | 7.5 | -5.5 | 104.5 | 7.6 |
META | メタ・プラットフォームズ | 9.9 | 16.8 | 4.8 | 320.6 | 17.6 |
AMZN | アマゾン・ドット・コム | 6.7 | 24.6 | 1.5 | 140.6 | 32.7 |
BLK | ブラックロック | 6.6 | 16.5 | -6.5 | 651.8 | 17.3 |
C | シティグループ | 5.4 | 23.3 | -6.4 | 41.5 | 7.2 |
WFC | ウェルズ・ファーゴ | 4.7 | 22.9 | -7.5 | 40.4 | 8.2 |
JPM | JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー | 4.3 | 17.8 | -6.0 | 144.3 | 9.4 |
CAT | キャタピラー | 3.0 | 16.5 | -17.5 | 234.2 | 11.4 |
注:データは11/9(木)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (11/10) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | インテル(INTC) | 38.86ドル | 40.9 | 【10-12月期は増収に転換へ】 7-9月期は、前年同期比減収減益ながら、売上・EPSとも市場予想を大きく上回りました。10-12月期の売上ガイダンスは、レンジ中央値で前年同期比8%と増収への転換を示します。売上モメンタムの改善は、PC市場の改善に加えて、同社の競争力を増した製品の投入が背景になっているとみられます。主力のCPU市場で、AMDに対して市場シェアを失ってきた流れが変わる可能性に期待が高まっています。ただし、株価はアナリストによる目標株価平均に近づいていますので、短期的には押し目買いがよいかもしれません。 | |
買付 | ゼネラル エレクトリック(GE) | 115.27ドル | 43.3 | 【航空機エンジンが業績をけん引】 7-9月期決算は、売上が前年同期比18%増、調整後EPSが前年同期の0.17ドルの赤字から0.82ドルの黒字に転換、それぞれ市場予想を7%、46%上回ったことが通期業績予想の上方修正につながったと考えられます。受注もエアロスペース部門が前年同期比34%増とけん引して、全体でも同18%増と好調です。同社の株価は従来のコングロマリットから分社化する方針が好感されて昨年来上昇基調にありますが、アナリストの目標株価平均は10%以上の上昇余地を示唆しています。 | |
買付 | メタ プラットフォームズ A(META) | 328.77ドル | 21.8 | 【業績回復モメンタムが継続】 昨年末にコスト削減と投資の選別を進めて利益改善に注力するよう方針を転換、引き続きその効果が出ています。決算発表後に株価が下落したのは、CFOが先行きの景気減速を踏まえると2024年の売上成長が不透明だと慎重な物言いをしたことが要因です。しかし、景気が減速しそうなこと、同社の売上が企業の広告出稿からなるため、景気敏感であることは、市場でよく知られたことです。それよりも足もとの業績改善を織り込む動きが続く可能性があるでしょう。 | |
買付 | アマゾン ドットコム(AMZN) | 143.56ドル | 42.1 | 【クラウドサービスが堅調】 7-9月期は、市場予想を上回る増収増益でした。利益はコスト削減が効いて大幅な改善となっています。売上は、ネット通販、サブスクリプション、広告などが市場予想を上回りました。クラウドサービスのAWS売上は市場予想を下回って懸念されました。しかし、投資家向け説明会でCEOは「AWS事業は安定している、同社が合意に達した多くの取引が10-12月の早い時期に実施に移された」と指摘、10-12月期の売上に懸念がないことを示唆したことで安心感が広がりました。 | |
買付 | ブラックロック A(BLK) | 665.00ドル | 17.9 | 【利益が市場予想を大きく上回る】 7-9月期決算は売上が前年同期比5%増で市場予想並みの一方、調整後EPSは同14%増で市場予想を33%上回りました。調整後営業利益率は42.3%へ前年同期の42.0%から改善し、41.3%への悪化を見込んでいた市場予想を上回りました。これがEPS見通しの引き上げにつながったとみられます。一方、運用資産の純増額は26億ドルにとどまり、617億ドルの市場予想を大きく下回りました。7-9月期は政策および市場の不透明感からリスク資産への需要が減退していた影響を受けたと考えられますが、市場が安定するにつれて回復すると期待できるでしょう。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
13(月) | ・日本工作機械受注(10月) | |
14(火) | ・ドイツZEW景気指数(11月) ・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、改定値) ・米NFIB中小企業楽観指数(10月) ・米消費者物価指数(10月) |
ホームデポ |
15(水) | ・日本実質GDP(7-9月期、改定値) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(10月) ・アジア太平洋経済協力会議(APEC) (サンフランシスコ、15日~17日) ・米中首脳会談(サンフランシスコ) ・米小売売上高(10月) ・米生産者物価指数(10月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(11月) |
シスコシステムズ、パロアルトネットワークス |
16(木) | ・日本機械受注(9月) ・米新規失業保険申請件数(11月11日に終わる週) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(11月) ・米鉱工業生産(10月) ・米NAHB住宅市場指数(11月) |
ウォルマート、ターゲット、アプライドマテリアルズ |
17(金) | ・歳出関連法案成立までの米つなぎ予算期限 ・米住宅着工件数・建設許可件数(10月) |
ロスストアーズ |
20(月) | ズームビデオコミュニケーションズ | |
21(火) | ・EU27ヵ国新車登録台数(10月) ・シカゴ連銀全米活動指数(10月) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(11月) ・米中古住宅販売件数(10月) ・FOMC議事要旨(10月31日、11月1日開催分) |
エヌビディア、アナログデバイセズ、ロウズ、ベストバイ、HP |
22(水) | ・米耐久財受注(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月18日に終わる週) ・ミシガン大学消費者信頼感(11月、確報値) |
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23(木) | ・米国市場休場(サンクスギビングデー) ・auじぶん銀行日本製造業PMI(11月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(11月) |
|
24(金) | ・S&Pグローバル米国製造業PMI(11月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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