アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~小型株の「ラッセル2000」が大幅続伸!!関連銘柄をご紹介~

投資情報部 榮 聡
2023/12/18
先週はFOMC(米連邦公開市場委員会)で公表された経済見通しが来年に3回の利下げを示唆したことから、米10年国債利回りは4%を割り込み、株式は続伸となりました。今週の株価材料として、出遅れ物色の継続、住宅関連指標、コンファレンスボード消費者信頼感、などが注目されます。
小型株指数の「ラッセル2000」の上昇が目立っていることから、今回も先週に続いてこれに関連するバンガード ラッセル2000 ETF(VTWO)、バンガード ラッセル2000グロース株 ETF(VTWG)、スーパー マイクロ コンピューター(SMCI)、ライベント コーポレーション(LTHM)、シナプティクス(SYNA)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(日足、6ヵ月)

FOMCが市場の想定以上にハト派となったことから、S&P500指数は25日移動平均線の上昇を待つことなく、上放れました。あと2.1%にまで迫った2022年1月の史上最高値4,818.62ポイントが意識されそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
不動産 | 5.3% | 10.9% | 9.6% |
素材 | 4.0% | 5.9% | 4.7% |
資本財・サービス | 3.6% | 6.8% | 7.4% |
金融 | 3.6% | 6.7% | 7.1% |
一般消費財・サービス | 3.5% | 7.0% | 5.8% |
情報技術 | 2.5% | 4.3% | 12.8% |
S&P500 | 2.5% | 4.5% | 6.0% |
エネルギー | 2.4% | -0.8% | -9.7% |
生活必需品 | 1.6% | 2.3% | -1.0% |
ヘルスケア | 1.5% | 4.4% | 1.6% |
公益事業 | 0.9% | 2.4% | -1.5% |
コミュニケーションサービス | -0.1% | 0.0% | 3.0% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ブロードコム | 19.6% |
USバンコープ | 11.3% |
モルガン・スタンレー | 11.3% |
チャールズ・シュワブ | 10.8% |
キャタピラー | 10.1% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
エクセロン | -9.5% |
オラクル | -9.1% |
ファイザー | -7.5% |
イーライリリー | -4.3% |
アドビ | -4.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.5%、NYダウは2.9%、ナスダック指数は2.8%の上昇でした。S&P500指数2022年1月の史上最高値4,818.62ポイントまで2.1%、NYダウは史上最高値を更新中、ナスダック指数は2021年11月の史上最高値16,212.23ポイントまで9.4%の位置となっています。
12/12(火)の11月消費者物価指数はインフレ鈍化を示し、12/13(水)のFOMC結果発表ではFRBの経済予測が来年3回の利下げを示唆してハト派と捉えられ、いずれも株価上昇を促しました。
また、12/14(木)の11月小売売上高は前月比0.3%増と予想以上に強かったものの、FOMCを経た長期金利を押し上げることはなく、逆に経済のソフトランディング期待を醸成する方向に作用して株価を支持したとみられます。
年初来S&P500指数に割り負けていたラッセル2000指数、地方銀行株が大幅な上昇となったほか、生成AI関連としてソフトウェアに割り負けていた半導体株が上昇するなど、出遅れ分野を物色する動きが目立ちました。
業種指数では、米長期金利低下を受けて「不動産」「金融」などが上昇しています。「金融」は金利収入の動向よりもバランスシートのリスク低下(債券価格が上昇している)が評価されているとみられます。「素材」「資本財・サービス」は出遅れ物色の一環とみられます。
個別株では、ブロードコム(AVGO)の上昇が目立ちました。12/12(火)にシティグループが「買い」でカバレッジを再開、目標株価を1,100ドルに設定したことがきっかけとなりました。AIの追い風がスマホ関連などの調整を相殺すると指摘、また、VMウェア買収による恩恵が強調されました。
今週の米国株式
S&P500指数は、史上最高値4,818.62ポイントまで2.1%に迫っており、これを意識した動きが想定されます。仮にこの水準に達したとして、2024年予想EPSを基準とした予想PERは19.7倍と計算できます。PERの水準としてはかなり高いものの、到達不可能ではないでしょう。
ただし、予想PERが20倍を超えてどんどん上昇することは考えずらいです。史上最高値を更新したとしても、短期的な投資戦略としてはある程度利食いを入れて、その後の調整を待つのがよさそうです。
今週の株価材料として、出遅れ物色の継続、住宅関連指標、コンファレンスボード消費者信頼感、などが注目されます。
先々週辺りから、株価が出遅れている銘柄への見直し買いがみられ、これが継続するか注目されます。12/15(金)には11月からの相場上昇を先導した銘柄群で、先週にかけて調整していた銘柄群に反発するものが散見され、物色の循環が効くようなら、株価指数の高値圏での維持に効くと考えられます。
住宅関連指標は長期金利の反落を受けて改善基調に向かうと想定されます。個人消費の鈍化が想定される中で、住宅には個人消費の鈍化がきつくならないための下支えの効果が期待されるため、経済のソフトランディングを実現するために重要です。
12/18(月)に12月NAHB住宅市場指数(前月の34から37に改善の予想)、12/19(火)に米国の11月住宅着工件数(前月比-0.9%の予想)、同じく住宅建設許可件数(前月比-2.5%の予想)、12/20(水)に米国の11月中古住宅販売件数(前月比-0.5%の予想)、米国の11月新築住宅販売件数(前月比+1.3%の予想)の発表が予定されています。
12月のコンファレンスボード消費者信頼感は12/20(水)に発表予定で、前月の102.0から104.0に改善の予想です。緩やかな個人消費の減速と大きな齟齬のない数字であることが望まれます。
経済指標では上記のほか、12/22(金)に米国の11月個人消費支出物価指数(前年比+2.8%の予想、前月は+3.0%、コア指数は前年比+3.3%の予想、前月は+3.5%)、12/22(金)に米国の11月耐久財受注(前月比+2.2%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
先週に続いて今週も小型株指数の「ラッセル2000」を取り上げます。
ラッセル2000指数は、年初来S&P500指数にアンダーパフォームが続いていましたが、ここ3週間ほどS&P500指数を上回って上昇する日が目立っています(図表3)。先週はS&P500指数が2.5%上昇したのに対して、ラッセル2000指数は5.5%上昇して市場の注目が高まっています。
小型株は投資リスクが高いため、幅広い銘柄に分散投資ができるETFが最初の選択となるでしょう。バンガード ラッセル2000 ETF(VTWO)、バンガード ラッセル2000グロース株 ETF(VTWG)をご紹介します。
個別銘柄については、12/7(木)~12/14(木)までの5営業日の指数上昇寄与上位20銘柄に、以下の条件を課して図表4の銘柄を抽出しました。
【スクリーニング条件と結果】
① 今期予想営業利益率がプラス
② 来期予想EPSが黒字
③ 来期予想増収率が10%以上
④ アナリストのレーティング付与数が10以上
⑤ BUY比率が30%以上
このうち、デュオリンゴ(DUOL)、e.l.f.ビューティー(ELF)は先週号で取り上げましたので、今回はスーパー マイクロ コンピューター(SMCI)、ライベント コーポレーション(LTHM)、シナプティクス(SYNA)を選んでをご紹介いたします。
図表3 小型株指数の「ラッセル2000」がS&P500を猛追

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 ラッセル2000構成銘柄を対象としたスクリーニング
コード | 銘柄名 | 営業利益率 (今期予想) (%) |
予想EPS (今期予想) (ドル) |
予想EPS (来期予想) (ドル) |
来期 増収率 (%) |
レーティング付与数 | BUY比率 |
SMCI | スーパー・マイクロ・コンピューター | 11.4 | 17.48 | 19.2 | 12.0 | 12 | 83.3 |
DUOL | デュオリンゴ | 1.6 | 0.22 | 0.7 | 31.0 | 13 | 46.2 |
ELF | e.l.f.ビューティー | 17.4 | 2.65 | 3.1 | 21.2 | 14 | 78.6 |
ACAD | アカディア・ファーマシューティカルズ | 21.1 | -0.34 | 1.0 | 33.0 | 20 | 60.0 |
SYNA | シナプティクス | 11.2 | 2.43 | 6.2 | 28.8 | 13 | 61.5 |
LTHM | リベント | 43.8 | 1.89 | 1.7 | 17.7 | 21 | 76.2 |
注:データは12/14(木)時点です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (12/15) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | バンガード ラッセル2000 ETF(VTWO) | 79.66ドル | - | 【小型株へのエクスポージャーを提供】 小型株のラッセル2000指数のパフォーマンスへの連動を目指すETFです。グロースおよびバリュースタイルに分散した米国小型株へのエクスポージャーを提供します。11月末の純資産総額は65.3億ドル、分配利回りは1.6%、経費率は0.1%です。 | |
買付 | バンガード ラッセル2000グロース株 ETF(VTWG) | 179.76ドル | - | 【小型グロース株へのエクスポージャーを提供】 ラッセル2000グロース株指数のパフォーマンスへの連動を目指すETFです。同指数はラッセル2000インデックス構成銘柄のうち株価純資産倍率が高く、成長率の予想値・実績値がともに高い企業からなります。11月末の純資産総額は7.5億ドル、分配利回りは0.88%、経費率は0.15%です。 | |
買付 | スーパー マイクロ コンピューター(SMCI) | 300.11ドル | 17.2 | 【サーバーソリューション企業】 データセンターやクラウド、AI、5G/エッジ・コンピューティングなど様々な市場向けに、サーバーおよびストレージ・システムを提供しています。2022年9月にいち早く、エヌビディアの最新GPU「H100」を搭載した新しいシステム製品を発表しました。2023年6月期は通期の売上⾼が初めて70億ドルを達成しましたが、経営陣は短期的には100億ドル、中期的には200億ドルという目標に向けて成⻑戦略を実⾏していくと意気込んでいます。7-9月期はエヌビディアのGPU「H100」搭載のシステムに対する強い需要が業績をけん引しました。同社はAI関連製品が売上⾼の半分を占めるようになっており、AI投資ブームが続く間はその恩恵を受けると予想されます。 | |
買付 | シナプティクス(SYNA) | 117.91ドル | 48.5 | 【ヒューマンインタフェースの技術をもつ会社】 ヒューマンインタフェース(HMI)に関連するハードウェアおよびソフトウェアの開発企業で、タッチパッド製品、タッチディスプレイドライバ、スマートフォンにおける指紋を用いた生体認証技術、アクティブペン、スマートホームデバイスおよび自動車における遠距離場の映像・音声技術などを扱います。2024年6月期は事業環境の悪化を受けて大幅減収減益ですが、2025年6月期には業績の回復が予想されています。7-9月期の売上は前年同期比47%の減収ですが5四半期ぶりの前期比増収となり、会社は事業安定化の兆しがあるとコメントしています。 | |
買付 | ライベント コーポレーション(LTHM) | 17.30ドル | 10.2 | 【リチウムを生産する会社、明日にも合併完了へ】 リチウムイオン電池向けなどのリチウムを生産している企業です。2019年に化学企業のFMCから分離しました。なお、リチウム生産で世界最大手のアルベマールの2022年売上が73.2億ドルに対して、同社の売上は8.1億ドルとかなり差があります。事業規模による不利を和らげるため、オーストラリアのリチウム生産会社Allkem社と対等合併することに、2023年5月に合意しています。合併に必要となる当局の承認は11月中に受けており、12/19(火)の特別株主総会で完了する見込みです。売上は電気自動車(EV)の普及に伴うリチウム需要の拡大を受けて、2023年が前年比12%増、2024年が同18%増と拡大基調が予想されています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、スーパーマイクロコンピューターとシナプティクスが2024年6月期、ライベントコーポレーションは2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
18(月) | ・ドイツIFO企業景況感(12月) ・米NAHB住宅市場指数(12月) |
|
19(火) | ・日銀政策金利 ・米住宅着工件数・建設許可件数(11月) |
フェデックス |
20(水) | ・EU27ヵ国新車登録台数(11月) ・米中古住宅販売件数(11月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(12月) ・20年国債入札 |
マイクロンテクノロジー |
21(木) | ・米実質GDP(7-9月期、確報値) ・米新規失業保険申請件数(12月16日に終わる週) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(12月) ・5年インフレ連動債入札 |
カーニバル、ナイキ |
22(金) | ・米個人所得・個人支出(11月) ・米個人消費支出物価指数(11月) ・米耐久財受注(11月) ・米新築住宅販売件数(11月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(12月、確報値) |
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25(月) | ・米国市場休場(クリスマスデー) | |
26(火) | ・シカゴ連銀全米活動指数(11月) ・S&PコアロジックCS住宅価格(10月) |
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27(水) | ||
28(木) | ・日本鉱工業生産(11月) ・米新規失業保険申請件数(12月23日に終わる週) ・米中古住宅販売成約(11月) |
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29(金) | ・中国製造業・非製造業PMI(12月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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