アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~10-12月期決算発表で注目の2024年12月期の業績モメンタム改善銘柄~
投資情報部 榮 聡
2024/01/15
先週はS&P500指数が25日移動平均線まで調整して短期的な株価の上昇過熱感を解消し、反発に転じました。今週の株価材料として、10-12月期決算発表、中国の経済指標、共和党のアイオワ州党員集会、などが注目されます。
今回は10-12月期決算の発表に合わせて2024年12月期のガイダンスを発表する企業が多いことから、2023年12月期から2024年12月期にかけて業績モメンタムの改善が見込まれる企業に着目し、インテル(INTC)、ゼネラル エレクトリック(GE)、スリーエム(MMM)、アムジェン(AMGN)、ネットフリックス(NFLX)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(日足、3ヵ月)
25日移動平均線からの反発となり、相場上昇モメンタムが潰えていないことが確認されました。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 4.9% | 0.9% | 14.1% |
コミュニケーションサービス | 3.4% | 6.0% | 10.1% |
S&P500 | 1.8% | 1.4% | 10.5% |
一般消費財・サービス | 1.5% | -1.9% | 11.0% |
生活必需品 | 1.2% | 2.9% | 9.3% |
ヘルスケア | 0.9% | 5.1% | 8.0% |
不動産 | 0.6% | -0.4% | 15.4% |
資本財・サービス | 0.6% | -0.3% | 10.3% |
金融 | -0.5% | 0.8% | 13.2% |
素材 | -1.0% | -1.5% | 7.7% |
公益事業 | -1.9% | -0.2% | 6.9% |
エネルギー | -2.4% | -1.0% | -8.0% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
エヌビディア | 11.4% |
セールスフォース | 8.3% |
アマゾン・ドット・コム | 6.5% |
メタ・プラットフォームズ | 6.4% |
アクセンチュア | 5.9% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ボーイング | -12.6% |
テスラ | -7.8% |
CVSヘルス | -6.0% |
AT&T | -5.7% |
ウェルズ・ファーゴ | -5.0% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.8%、NYダウは0.3%、ナスダック指数は3.0%の上昇でした。
年初の相場下落は「利食い売り」が主因だったとみられ(つまり、ファンダメンタルズが主因ではなかったと考えられます)、25日移動平均から反発に転じました。1/11(木)には市場予想を上回る12月消費者物価指数を受けてS&P500指数は前日比0.8%安までありましたが小幅安まで戻して引け、基調の強さを印象付けました。
経済指標では、注目された12月消費者物価指数は、総合指数、コア指数とも市場予想を上回りましたが、金利の上昇にはつながりませんでした。一方、12月のNY連銀インフレ期待は市場予想を下回って低下しています。
個別株では、サムスン電子の10-12月期決算の速報で営業利益が前年同期比35%減と市場予想を下回った一方、台湾セミコンダクターの12月売上高は前年比8.4%減で市場予想を上回り、半導体市場のへのインプリケーションはまちまちでした。
業種指数では、相場反発をけん引した大手テクノロジー銘柄の構成ウェイトが大きい「情報技術」「コミュニケーションサービス」が大幅な上昇となりました。個別株では、エヌビディア(NVDA)が上昇トップでした。中国向けに設計され、米国の規制を回避できるAI半導体を第2四半期に量産開始すると発表、また、AIへの対応力を高めたデスクトップPC向けGPUの新製品を発表しました。
今週の米国株式
S&P500指数は25日移動平均線まで調整して短期的な株価の上昇過熱感を解消し、再び史上最高値の4,818.62ポイントに向けて出直したと考えられます。1/12(金)の終値は、史上最高値まで0.7%に迫っています。
今週の株価材料として、10-12月期決算発表、中国の経済指標、共和党のアイオワ州党員集会、などが注目されます。
10-12月期の決算発表が始まり、1/12(金)に発表の大手商業銀行を含むS&P500指数採用銘柄のEPSはいずれも市場予想を上回りましたが、株価の反応はややネガティブでした。S&P500指数採用企業のEPS(発表済企業と発表予定企業の混合)は前年同期比0.1%減の予想です(FactSet社集計、1/12(金)時点)。
今週はゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、台湾セミコンダクター、トラベラーズなどの決算発表が予定されています。通常決算発表の2週目には一般事業会社の決算発表が増えますが、今回は12月決算企業の年度末のため、発表日程が後ろ倒しになります。
中国の経済指標では、1/17(水)に中国の10-12月期実質GDP(前年比+5.3%の予想、前期は同+4.9%)、中国の12月鉱工業生産(前年比+6.8%の予想、前月は同+6.6%)、同小売売上高(前年比+8.0%の予想、前月は同+10.1%)などの発表が予定されています。市場予想通りに中国経済の経済指標が堅調となると、米国経済のソフトランディングへの信頼感が増すと期待されます。
1/15(月)に共和党のアイオワ州党員集会が開かれ、2024年大統領選挙の本格的な始まりとなります。1/14(日)にNBCニュースが報じた世論調査では、トランプ氏が51%の圧倒的支持を集め、2位のフロリダ州デサンティス知事が22%、3位のニッキー・ヘイリー元国連大使が12%、4位の実業家ヴィヴェック・ラマスワミ氏が8%となっています。「反トランプ」候補の一本化の動きが出るか注目されます。
経済指標では上記のほか、1/17(水)に米国の12月小売売上高(前月比+0.4%の予想)、1/18(木)に米国の12月住宅着工件数(前月比-8.7%の予想)、同建設許可件数(前月比+0.6%の予想)、1/19(金)に米国の1月ミシガン大学消費者信頼感(前月の69.7から70.0に改善の予想)、米国の12月中古住宅販売件数(前月比+0.3%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は1/12(金)から本格的に始まった2023年10-12月期の決算発表で注目が高まる可能性のある銘柄を探りました。
年度の決算期末が12月の銘柄は、10-12月期および2023年12月期の決算発表とともに、2024年12月期の業績ガイダンスを公表するケースが多くなります。2023年12月期から2024年12月期にかけて業績モメンタムが改善する企業は注目される可能性があります。そこで、米国の主要企業からなるS&P100指数採用銘柄について、以下の条件でスクリーニングを行いました。
【スクリーニング条件】
・前期(23年12月期)から今期(24年12月期)にかけて売上・EPSの前年比増減率が2%ポイント以上改善予想
・通期予想EPSの修正率(過去3ヵ月)が0.0%以上
・2023年10-12月期決算が増収増益予想
この条件で抽出された銘柄が図表3です。ここから、インテル(INTC)、ゼネラル エレクトリック(GE)、スリーエム(MMM)、アムジェン(AMGN)、ネットフリックス(NFLX)を選んでご紹介いたします。
図表3 2023年度から2024年度にかけて業績モメンタムが改善予想の銘柄(S&P100指数採用銘柄を対象)
コード | 銘柄名 | 前期売上 予想増加率 (%) |
前期EPS 予想増加率 (%) |
今期売上 予想増加率 (%) |
前期EPS 予想増加率 (%) |
売上 モメンタム %ポイント |
EPS モメンタム %ポイント |
通期EPS 修正率 (%) |
INTC | インテル | -14.5 | -48.3 | 14.2 | 92.8 | 28.6 | 141.2 | 63.7 |
GE | ゼネラル・エレクトリック | -14.0 | 1.6 | 9.7 | 73.7 | 23.8 | 72.2 | 13.0 |
ABT | アボットラボラトリーズ | -8.3 | -16.9 | 4.1 | 4.1 | 12.3 | 21.0 | 0.3 |
MMM | 3M | -7.9 | -9.7 | 3.0 | 7.6 | 10.9 | 17.4 | 2.7 |
AMGN | アムジェン | 6.9 | 4.8 | 15.3 | 7.1 | 8.4 | 2.3 | 1.1 |
UNP | ユニオン・パシフィック | -3.5 | -8.5 | 4.0 | 10.7 | 7.5 | 19.2 | 0.3 |
NFLX | ネットフリックス | 6.3 | 23.0 | 13.8 | 30.8 | 7.5 | 7.8 | 1.3 |
VZ | ベライゾン・コミュニケーションズ | -2.4 | -9.5 | 1.3 | -2.3 | 3.7 | 7.3 | 0.2 |
CMCSA | コムキャスト | -0.6 | 7.1 | 2.3 | 9.8 | 2.9 | 2.7 | 2.9 |
GILD | ギリアド・サイエンシズ | -0.8 | -6.6 | 2.1 | 7.1 | 2.9 | 13.6 | 2.4 |
注:売上モメンタムは、「今期売上予想増加率-前期売上予想増加率」で計算、EPSモメンタムも同様です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (1/12) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | インテル(INTC) | 47.12ドル | 25.7 | 【CPUでの巻き返しを期待】 10-12月期の売上が8四半期ぶりに前年同期比プラスに転じると見込まれており、2024年12月期も増収増益への転換が見込まれています。同社は半導体の微細化で台湾セミコンダクターに劣後したことで、ライバルのAMDに市場シェアを奪われ、2019年から業績の悪化傾向が続いていました。一方、この10-12月期にはAMDのCPUに対して競争力を引き上げた新製品が投入され、業績モメンタムの改善が見込まれています。株価はアナリストの目標株価を超えて買われ過ぎが示唆されていますが、10-12月期決算で新製品が順調と判明すれば目標株価は引き上げられる可能性が高いでしょう。 | |
買付 | ゼネラル エレクトリック(GE) | 129.79ドル | 28.2 | 【事業の整理が完了】 2023年2月にヘルスケア事業を分離して、従来の幅広いコングロマリットから航空事業とVernova(発電事業と再生可能エネルギー事業の会社)の会社に整理されています。航空事業は民間航空機市場の回復が続いて、2025年まで前年比10%以上の売上成長が見込まれ、利益率も20%台に回復すると見込まれています。Vernovaの事業見通しも、バイデン政権による「インフレ削減法」によって2024年の事業環境は改善すると想定されます。2023年7-9月期の受注は前年同期比19%増と、今後の事業改善を示唆していました。 | |
買付 | スリーエム(MMM) | 108.12ドル | 11.0 | 【業績モメンタムの改善期待】 2023年7-9月期の部門別オーガニック売上成長は、2024年1-3月期にスピンオフ計画のヘルスケアが前年同期比2.4%増のほかはいずれも同マイナスで、産業景気の低迷を背景に足もとまで事業環境は厳しい状態が続いています。一方、7-9月期は売上が前年同期比4%減、調整後EPSが同3%増で、市場予想に対してはそれぞれ4%、14%上回って、改善に向けての兆しもみられます。通期の調整後EPSガイダンスは、コスト削減の効果が出ていることを受けてレンジ中央値を2%引き上げました。 | |
買付 | アムジェン(AMGN) | 306.51ドル | 15.4 | 【企業買収と肥満治療薬の開発に注目】 主力の関節リウマチ治療薬「エンブレル」が特許切れで売上減少中であり、乾癬治療薬「オテズラ」などの主要製品も今後数年で特許切れを迎えることを受けて、昨年10月に希少疾患治療薬を手掛けるホライゾンセラピューティクスを買収、甲状腺眼症治療薬「Tepezza」と痛風治療薬「Krystexxa」を手に入れています。また、開発中の肥満治療薬「AMG133」が注目されています。少ない投与回数で効果が出ていることから、開発に成功すれば既に投入されているノボノルディスク、イーライリリィの肥満治療薬に対しても競争力をもつと期待されています。 | |
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 492.16ドル | 30.7 | 【新規加入者数の増加が期待される】 昨年初から進めている共有アカウント対策の成果が出ていることから、加入者純増が好調に推移する可能性が注目されます。2023年7-9月期の加入者純増は876万人と市場予想の620万人を上回りました。業績は四半期の売上が、4-6月期に前年同期比3%増、7-9月期に同8%増、10-12月期に同11%増(会社ガイダンス)と伸びが加速するトレンドです。米、英、仏での一部プランの値上げも業績にポジティブで、アメリカではベーシックプランで2ドル、プレミアムプランで3ドルを引き上げています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
15(月) | ・日本工作機械受注(12月) ・米国市場休場(マーチンルーサーキングデー) ・世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議、19日まで) ・アイオワ州党員集会(共和党) |
|
16(火) | ・ドイツZEW景気指数(1月) ・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(1月) ・FRBウォラー理事の講演 |
ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー |
17(水) | ・中国実質GDP(10-12月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高(12月) ・米小売売上高(12月) ・米鉱工業生産(12月) ・米NAHB住宅市場指数(1月) ・地区連銀経済報告(ベージュブック) ・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の講演 ・20年国債入札 |
USバンコープ |
18(木) | ・日本機械受注(11月) ・EU27ヵ国新車販売台数(12月) ・米住宅着工・建設許可件数(12月) ・米新規失業保険申請件数(1月13日に終わる週) ・フィラデルフィア製造業景気指数(1月) ・アトランタ連銀ボスティック総裁の講演 |
台湾セミコンダクター |
19(金) | ・ミシガン大学消費者信頼感(1月、速報値) ・米中古住宅販売件数(12月) ・サンフランシスコ連銀デイリー総裁の講演 |
トラベラーズ |
22(月) | ||
23(火) | ・日銀政策金利 ・リッチモンド連銀製造業景気指数(1月) ・2年国債入札 |
ジョンソン&ジョンソン、3M、P&G、ベライゾンコミュニケーション DRホートン、ゼネラルエレクトリック、テキサスインスツルメンツ |
24(水) | ・HCOBユーロ圏製造業PMI(1月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(1月) ・5年国債入札 |
マイクロソフト、テスラ、IBM、AT&T、ネットフリックス サービスナウ、ラムリサーチ |
25(木) | ・ECB主要政策金利 ・ドイツIFO企業景況感(1月) ・シカゴ連銀全米活動指数(12月) ・米実質GDP(10-12月期、速報値) ・米耐久財受注(12月) ・米新規失業保険申請件数(1月20日に終わる週) ・米新築住宅販売件数(12月) ・7年国債入札 |
インテル、ビザ、ダウ、ラスベガスサンズ ユニオンパシフィック、アメリカン航空 |
26(金) | ・米個人所得・個人支出(12月) ・米個人消費支出物価指数(12月) ・米中古住宅販売成約(12月) |
アメリカンエキスプレス |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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