アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~出遅れの「AIソフトウェア」に注目!マイクロソフト、アルファベット、オラクルほか~

投資情報部 榮 聡
2024/03/18
先週の米国株式市場はオラクルの決算がテクノロジー株の物色を刺激して最高値を更新したものの、強いインフレ指標を受けた長期金利の上昇で週末にかけて軟化しました。今週の株価材料として、3月FOMC、エヌビディアの技術カンファレンス(GTC)、米10年国債利回り、などが注目されます。
今回は年初来大幅上昇の「AI半導体」に出遅れている「AIソフトウェア」の関連銘柄から、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット A(GOOGL)、オラクル(ORCL)、セールスフォース(CRM)、サービスナウ(NOW)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(週足、2年)

2022年10月の底入れから「N字波形」を形成、2023年7月~10月の押し幅に対する「倍返し」を達成しました。テクニカル的には一旦上昇波が出尽くした可能性がうかがえます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 3.7% | 6.8% | 7.8% |
素材 | 1.5% | 6.3% | 6.6% |
コミュニケーションサービス | 0.5% | 1.0% | 13.1% |
生活必需品 | 0.4% | 2.9% | 5.6% |
金融 | 0.4% | 2.8% | 9.0% |
S&P500 | -0.1% | 2.2% | 7.9% |
資本財・サービス | -0.2% | 3.2% | 8.2% |
情報技術 | -0.4% | 3.0% | 10.8% |
公益事業 | -0.5% | 3.2% | -0.5% |
ヘルスケア | -0.8% | -0.3% | 8.2% |
一般消費財・サービス | -1.2% | -0.3% | 0.5% |
不動産 | -3.1% | 1.2% | -1.9% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
3M | 11.8% |
オラクル | 11.7% |
ペイパル・ホールディングス | 6.5% |
コノコフィリップス | 6.2% |
アルトリア・グループ | 4.8% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
アドビ | -10.7% |
ボーイング | -8.0% |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | -7.9% |
テスラ | -6.7% |
ブロードコム | -5.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.1%、NYダウは0.02%、ナスダック指数は0.7%の下落でした。S&P500指数はわずかながら、2週連続の下落でした。
3/12(火)は企業向けソフトウェアのオラクルの決算が好感されてテクノロジー株への物色を刺激して、S&P500指数は再び最高値を更新しました。オラクルの12-2月期決算は、クラウド収入の成長が安定しつつあることを示唆、受注残の指標となる残存履行義務は大型契約の締結を受けて市場予想を大幅に上回りました。
一方、週末にかけてはインフレ指標が市場予想を上回って米10年国債利回りが上昇する中、小売売上高が弱めに出て、株価は軟化しました。
経済指標では、2月消費者物価指数、2月生産者物価指数ともに市場予想を上回って、インフレ沈静の鈍化が示唆され、米10年国債を押し上げる方向に働いたとみられます。2月小売売上高は、前月比+0.6%で市場予想の同+0.8%を下回り、1月分も同-0.8%から同-1.1%に下方修正されました。
業種指数では、米国の原油在庫減少やウクライナによるロシアの製油所攻撃などを受けてWTI先物価格が1バレル80ドル台に乗せたことから、「エネルギー」が上昇トップでした。2位の「素材」は銅価格の上昇によってフリーポート マクモラン(FCX)がけん引しました。
個別株では、12-2月期決算を発表したアドビ(ADBE)の下落が目立ちました。3-5月期売上高見通しが、市場予想に届かず失望売りにつながりました。画像生成AIによる業績拡大が期待されてきましたが、OpenAIなどの新興企業との競争激化も懸念されているもようです。なお、同決算発表と同時に、時価総額の9%超にあたる大規模な自社株買い計画を発表しています。
今週の米国株式
S&P500指数の予想PERが21.1倍まで上昇していることから、上昇一服となる可能性が高いとみられます。予想PERがさらに上昇するケースとして、「AIバブル」の発生が考えられますが、いまのところエヌビディアを例外としてAIで収益が様変わりしたという大手企業はなく、AIバブルとなる可能性は低いとみています。
2000年のITバブルのときは、インターネットの普及によって世の中が大きく変わることが容易に想像できたため、その後5年、10年で起こりうることを一気に相場に織り込みにいき、結果的に「ITバブル」となりました。このときと比べて、現在のAIの普及による全産業へのインプリケーションはまだはっきりしていないと言えるのではないでしょうか。
今週の株価材料として、3月FOMC、エヌビディアの技術カンファレンス(GTC)、米10年国債利回り、などが注目されます。
3/19(火)と3/20(水)に開催される3月のFOMCでは、政策金利は据え置きの見込みです。市場の注目は、FOMCメンバーによる2024年末の政策金利予想になりそうです。前回は4.625%(年内3回の利下げ相当)が中央値でした。金利先物市場の価格から政策金利を予測するFedWatchでは、2024年末の政策金利は、2回の利下げが29%、3回の利下げが37%、4回の利下げが21%の、それぞれ確率となっています(日本時間3/18(月)午前9時)。
エヌビディアによる年次技術カンファレンスであるGTCが3/18(月)から3/22(金)にかけて開催されます。AI利用の最新動向が明らかになると期待されます。同社は決算発表で2023年にAI計算の4割が「推論」向けになっているとコメントしましたが、その点についてつっこんだ話(解説)が出るか注目されます。仮にその解説がAIコンピュータの先行きに関して市場の信頼を高めるなら、エヌビディアは一段高となることが想定されます。
米10年国債利回りが上昇しつつあります。2月下旬の高値4.35%を超えるか注目です。これを勢いよく超えてくるようですと、株式を抑える要因になると想定されます。
経済指標では、3/18(月)に中国の2月鉱工業生産(前年比+5.2%の予想、12月は同+4.6%)、同じく小売売上高(前年比+5.6%の予想、12月は同+7.2%)、3/19(火)に米国の2月住宅着工件数(前月比+7.4%の予想(前月は同-14.8%))、住宅建設許可件数(前月比+2.0%の予想)、3/21(木)に米国の2月中古住宅販売件数(前月比-1.5%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は以下にご説明する背景から、AI関連のソフトウェア銘柄をご紹介いたします。
年初来の相場上昇をけん引していたエヌビディアが3/8(金)に高値974.00ドルから終値875.25ドルへ10%を超える下落と「高値波乱」の様相で、物色に変化が出る可能性がありそうです。
出遅れ物色の矛先としては、テクノロジー以外を探す動きもあると思われますが、テクノロジーの中で「AI半導体」の先駆に対して出遅れている「AIソフトウェア」が注目される可能性もあると考えて今回取り上げる次第です。
図表3は、「AI半導体」と「AIソフトウェア」の株価の動きを2023年初からみたものです。エヌビディアの株価上昇が激しいために、株価の軸を左右に分けて違うスケールで表示している点にはご注意ください。
これを見ると、エヌビディアの決算発表を契機に「AI半導体」が先駆して上昇した後、「AIソフトウェア」が追随して上昇するパターンが、2023年の5月下旬~7月、11月~12月に見られます。
2024年に入ってここ1ヵ月は「AIソフトウェア」の上昇は止まっていますが、過去のパターンからは、再び物色される可能性がありそうです。そこで、「AIソフトウェア」として、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット A(GOOGL)、オラクル(ORCL)、セールスフォース(CRM)、サービスナウ(NOW)を選んでご紹介いたします。
図表3 「2024年の注目銘柄5選」の株価推移

注:「AI半導体」はエヌビディアとAMDの株価パフォーマンスの平均、「AIソフトウェア」は、マイクロソフト、アドビ、セールスフォース、オラクル、サービスナウの株価パフォーマンスの平均。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 「今週の5銘柄」の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (3/15) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | マイクロソフト(MSFT) | 416.42ドル | 35.7 | 【AIが業績に貢献し始める】 ・生成AIの刺激もあって企業のデジタルトランスフォーメーションは加速する可能性が高く、幅広いソフトウェアを擁する同社の恩恵は大きいと考えられます。また、オープンAI社との親密な関係によって生成AIでも強いポジションを確保できていると考えられます。 ・10-12月期決算は前年同期比で大きく伸び、また、市場予想も上回って好調です。クラウド収入は前年同期比24%増で7-9月期の伸びに並び、AI機能を付加した「Office365」(法人向け)の売上は前年同期比17%増と伸びました。ソフトウェア株は昨年後半に好調であった反動で、年明け以降は一部の半導体銘柄ほどには買われていない印象で、買い余地がありそうです。 | |
買付 | アルファベット A(GOOGL) | 141.18ドル | 20.0 | 【年初来株価の出遅れが目立つ】 ・年初来悪材料が重なり(10-12月期決算で広告収入が予想を下回る、生成AIの「ジェミニ」に不具合など)、株価は低調に推移していましたが、テクノロジー株の中で株価の出遅れが目立ってきたため、直近では見直し買いが入っているとみられます。生成AIの「ジェミニ」の不具合は痛いものの、同社のAIリソースの厚さを考えれば、いずれ解決してくると期待されます。 ・10-12月期決算については、主力の広告収入が市場予想を下回って失望を招きましたが、全体としては売上が前年同期比15%増、EPSが同56%増、それぞれ市場予想に対して2%、3%上回って堅調な決算でした。 | |
買付 | オラクル(ORCL) | 125.54ドル | 22.5 | 【生成AI向けインフラ需要が高まる】 ・企業向けソフトウェアの大手。リレーショナルデータベースで31%のトップシェアを誇り、ここから生じる安定的なキャッシュフローをクラウドサービスに投じて成長を目指します。昨年半ばより生成AIのインフラストラクチャではトップシェアをもつと発言しており、12-2月期決算の好調はこれを裏付けるものと考えられます。 ・ 12-2月期決算は、クラウド収入が前年同期比25%増となって市場予想を上回り、成長が安定しつつあることが示唆されました。また、受注残の指標である残存履行義務は、大型契約の締結を受けて12-2月期末時点で800億ドルと、アナリストが予想した590億ドルを大幅に上回りました。 | |
買付 | セールスフォース(CRM) | 294.33ドル | 30.1 | 【収益改善が進む】 ・顧客関係管理(CRM)やマーケティング、カスタマーサービスなどを支援する企業向けソフトウェアをクラウドベースで提供する企業で、主力の顧客関係管理ソフトウェアでは世界トップ。これまで企業買収を繰り返し、規模の拡大を追い求めてきましたが、2022年末より収益性を重視するように経営の舵が切られました。 ・11-1月期の売上は前年同期比11%増、調整後EPSは同36%増と堅調です。マーケティング&販売費用等の抑制で、調整後営業利益率は前年同期の29.2%から31.4%に改善、受注高(残存履行義務)は前年同期比17%増で市場予想を5%上回って好調です。初めての配当支払いを開始し、100億ドルの自社株買いを承認しました。2025年1月期のガイダンスは売上が市場予想を下回ったものの、調整後EPSは市場予想を上回りました。GAAPベースの営業利益率は20.4%程度、調整後営業利益率は32.5%程度へさらなる改善を見込みます。 | |
買付 | サービスナウ(NOW) | 743.91ドル | 56.2 | 【企業のAI対応で活躍が期待される】 ・企業向けに各種ソフトウェアを提供して、業務の自動化を促進するサービスを提供しています。この仕事はAIとの親和性が高く、生成AIが売上増につながりやすい企業として注目されます。生成AIを業務執行に取り込むためのバーチャル・エージェント「Now Assist」を投入、エヌビディアが企業向けの分野で同社を提携先として選んだほか、コンサルティング大手のアクセンチュア、デロイトなど企業向けサービスで重要な企業と提携を進めています。企業が生成AIの機能を業務執行に生かしていく上で、頼れる存在になりつつあると考えられます。 ・10-12月期決算は、売上が前年同期比26%増、EPSが同36%増と好調でした。1-3月期の売上見通しは前年同期比24%増で市場予想を上回り、2024年の売上見通しも前年比22%増で、市場予想をわずかながら上回りました。昨年後半にAI機能を付加して価格を引き上げた製品を投入しており、これが順調に拡大すれば、売上の加速が可能と期待されています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、マイクロソフトが2024年6月期、オラクルは2024年5月期、セールスフォースは2025年1月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
18(月) | ・日本機械受注(1月) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(2月) ・米NAHB住宅市場指数(3月) |
エヌビディアの技術カンファレンス(GTC、21日まで) |
19(火) | ・日銀政策金利 ・ドイツZEW景気指数(3月) ・米住宅着工・建設許可件数(2月) ・20年債入札 |
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20(水) | ・米FOMC政策金利 | マイクロンテクノロジー |
21(木) | ・EU27ヵ国新車登録台数(2月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(3月) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(3月) ・米新規失業保険申請件数(3月16日に終わる週) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(3月) ・米中古住宅販売件数(2月) |
ナイキ、フェデックス、ルルレモンアスレティカ |
22(金) | ・ドイツIFO企業景況感(3月) ・アトランタ連銀ボスティック総裁が討論に参加 |
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25(月) | ・シカゴ連銀全米活動指数(2月) ・アトランタ連銀ボスティック総裁が討論に参加 ・米新築住宅販売件数(2月) ・2年債入札 |
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26(火) | ・米耐久財受注(2月) ・S&PコアロジックCS住宅価格(1月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(3月) ・5年債入札 |
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27(水) | ・中国工業部門利益(2月) ・7年債入札 |
カーニバル |
28(木) | ・米実質GDP(10-12月期、確報値) ・米新規失業保険申請件数(3月23日に終わる週) ・米中古住宅販売成約(2月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(3月、速報値) |
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29(金) | ・米個人所得、個人支出(2月) ・米個人消費支出物価指数(2月) ・米国市場休場(グッドフライデー) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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