vol.5 追証(おいしょう)の仕組と対処法

マーケティング部 外国株式チーム

2023/2/20

vol.5 追証(おいしょう)の仕組と対処法

追証(おいしょう)とは?

信用取引をしたことがない人でも、追証(おいしょう)という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。信用取引のリスクを表す言葉として、使用されることが多いですが、追証の発生原因や回避策など正しく理解している方は 、多くないように思います。

そこで、今回は追証(おいしょう)が発生する仕組や、発生した場合の対処法、回避策などを解説します。少し長くなりますが、ぜひ最後までお読みください。

追証(おいしょう)は、追加保証金を省略した言葉です。
米株信用取引を行うには、米ドルや米国株式などの保証金を証券会社に差し入れる必要があります。建玉に対しどのくらいの実質保証金があるか表す維持率(委託保証金率)は、株価の値動きにより日々変動します。(詳しくは、「vol.4 注意が必要な維持率は?」をご覧ください。)
維持率(委託保証金率)があらかじめ決められた一定ラインを下回った場合、建玉を維持するために保証金を追加する必要があります。これが「追証(追加保証金)」です。

米株信用で追証となるラインは30%です。国内株式の信用取引の追証ラインは20%なので、米株信用は高く設定されています。維持率が30%を割れると追証となり、維持率30%に対し不足している金額を追加保証金額として、期日までに証券会社に差し入れる必要があります。

追証発生タイミングと確認方法

取引時間中、株価は常に変動しますが、追証の判定はリアルタイムでは行われず、取引終了後に2回行われます。
1回目の追証判定の結果は、取引終了後の9時頃に表示されます。
2回目の追証判定の結果は、毎営業日システムメンテナンス終了後19時30分頃に表示されます。

1回目は、米国市場の終値を使って、代用有価証券評価額、評価損益を計算した結果、追証となっていないかチェックします。2回目は、建玉を持ち越したことで増加する諸経費を加味し、追証となっていないかチェックします。
1回目は増加分の諸経費を加味していないため、1回目と2回目の判定で判定結果や追証金額が変動することがあります。1回目の追証判定の結果、発生した追証金額ピッタリの金額を入金すると諸経費分が不足となり、追証が解消できませんので注意が必要です。

追証の発生状況や追証金額、解消期限の確認は、外国株式取引サイトや米国株アプリの画面内に表示されるメッセージで確認できます。
建玉を保有中は、定期的に口座にログインし、状況を確認しましょう。

<追証発生イメージ>外国株式取引サイト

<追証発生イメージ>米国株アプリ

追証が発生した場合にメールで連絡する「米国株式信用取引通知メールサービス」もありますので、米株信用取引を利用中の方は、登録しておきましょう!

追証が発生した場合の対処法

追証が発生した場合、維持率が30%を回復するよう期日までに対応する必要があります。

どのような対応をとればよいでしょうか?維持率を上げるための方法は大きく分けて2つあります。「保証金を増やす」か「建玉を減らす」です。
維持率の計算方法を思い出してみましょう。維持率の計算方法は下記のとおりです。

まず一つ目の「保証金を増やす」は、分子を大きくすることで維持率を上げる方法です。
米ドル保証金や代用有価証券を増やすことで維持率を上げることができます。具体的には、住信SBIネット銀行からの外貨入金、米ドル預り金の保証金への振替、保護預りの米国株式の代用有価証券への振替などです。

二つ目の「建玉を減らす」は、分母を小さくすることで維持率をあげる方法です。建玉を決済することで、必要な保証金額は少なくなります。決済した建玉の30%の額を追証金額に充当することができます。

二つの解消方法には、それぞれメリット・デメリットがあります。
「保証金を増やす」ことで解消する場合、建玉を維持することができるので、将来的に相場が回復すれば、利益を得る可能性もあります。しかし、相場の悪化が続くと、さらに保証金が必要となる可能性もあり、投資余力との我慢比べになります。
「建玉を減らす」ことで解消する場合、損益を確定するので、将来相場が悪化しても損失の拡大はありませんが、相場が改善してもその恩恵を受けることはできません。また、決済する建玉が損失の場合、損金の支払いが必要ですので、決済損額が口座にある米ドル残高以上の場合、預り金不足となり不足金の入金が必要となります。
どちらの方法で解消するかは、お客さま自身の今後の相場の見通しや、投資余力から決める必要があります。

また、お客さまのなかには、追証が発生しても、相場の回復で維持率が自然回復すれば、なにも対応しなくてもいいのでは?と思った方もいるかもしれません。一度発生した追証は、株価の回復により維持率が30%を超えても自然解消となりません。必ず追加保証金額の差し入れが必要となるので、注意しましょう。

追証の解消期限

追証が発生した場合の解消期限は、各社ごとに異なります。SBI証券の場合、追証の発生が19時30分頃に確定すると翌営業日の17時30分が解消期限となります。
もし、ここまでに解消がない場合、新規建て取引ができなくなります。
さらに、追証確定日の翌々営業日17時30分までに解消がない場合は、建玉の強制決済注文が発注されます。

詳しい日程や期限内に解消するための手続き期限は、「追加証拠金(追証)の確認・解消方法」で解説していますので、参考にしてください。

追証発生から解消期限までタイトな日程となっています。SBI証券では、追証が発生した場合、米ドル預り金や米国株式を自動的に振り替える「米国株式信用取引口座 自動振替設定」もあるので、設定がまだの方は、ぜひご利用ください。

追証を回避するには

追証の発生は避けたいのが投資家の心情かと思います。追証を回避するために投資家ができることを3つ解説します。

1.建玉は持ち越さない(デイトレ)
追証判定は、取引終了後に保有する建玉に対して行われます。その日中(現地取引日中)に決済まで行えば、取引終了後には建玉がないため、追証は発生しません。

2.委託保証金に米ドル保証金を組み合わせる
米国株を担保とするのは、米ドルがなくても信用取引ができるという資金効率面でのメリットはありますが、株価変動の影響を受けます。その点、米ドルの価値は変動しないので(※)、米国株だけでなく米ドルも委託保証金に差し入れておくことで株価の変動による影響を抑えることができます。
※最低委託保証金は30万円相当以上の額として当社が定める米ドル額となりますので、当社が最低委託保証金額を変更するまで為替レートの変動による影響は受けません。

3.代用有価証券と同じ銘柄の信用取引は避ける(二階建)
担保にしている米国株(代用有価証券)と同じ銘柄を買建した場合、株価上昇時は二重で利益を得ることができますが、株価下落時は評価損の拡大、代用有価証券評価額の減少と維持率が急激に低下し、思わぬ損失を被る可能性があります。リスク回避のためには二階建取引は避けたほうがいい取引です。

おまけ~あといくら株価が動けば追証?~

信用取引をしているお客さまから、「あといくら株価が動けば追証になるか?」との質問をいただきます。
信用建玉や代用有価証券で複数銘柄保有している場合、複数銘柄の株価の値動きの影響を受けるため、「何ドル下がれば(上がれば)追証になる」と計算することはできません。

リアルタイム委託保証金率画面は、取引時間中、株価の変動や新規建や決済などの取引状況を反映した金額が表示されます。
建代金合計(B)×30%の額が追証ラインとなるので、実質保証金と比較することで、追証までどのくらい余裕があるか参考にすることができます。

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料等およびリスク情報について】

・米国株式信用取引にあたっては、所定の手数料がかかります(手数料はお客さまの取引コース、取引チャネル、取引プランや売買代金等により異なることから記載しておりません)。
・お取引に伴う為替取引には、当社為替スプレッドがかかります。当社為替スプレッドについてはこちらをご確認ください。

【米国株式信用取引に関するリスク】

・米国株式信用取引は、株価や為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
・米国株式信用取引は、多額の利益が得られることもある反面、多額の損失が発生する可能性をも合わせもつ取引です。特に、米国市場には値幅制限(ストップ高・ストップ安)がないため、株価の極端な急騰や急落が発生する可能性があります。米国株式信用取引にあたっては、売買代金の51%以上で、かつ30万円相当以上の額として当社が定める米ドル額の保証金(有価証券により代用することが可能です)を差し入れていただく必要があります(取引保証金の額の約2倍の取引が可能です)。
・米国株式信用取引では株価の変動等により差し入れた保証金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

【米国株式信用取引の「二階建て」に関するご注意】

・委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられますので、二階建てのお取引については十分ご注意ください。
詳しくは、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。