中国株 ココがPOINT!  ~中国がついにWithコロナへ一歩、海外投資家は買いへ、保険株も出遅れ修正に~

中国株 ココがPOINT!  ~中国がついにWithコロナへ一歩、海外投資家は買いへ、保険株も出遅れ修正に~

投資情報部 李 燕

2022/12/01

11/24-11/30の香港市場はボラティリティを伴いながら反発しました。主要指数は「ゼロコロナ政策」への抗議デモを嫌気し、今週初めは大幅に下落しました。その後、中国当局がWithコロナに向けた重要な一歩となる高齢者のワクチン接種強化と、不動産市場への追加支援を発表すると、急反発しました。

今回は、海外投資家の動向と保険株の出遅れ修正についてご紹介したいと思います。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:11/30(水)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(11/30(水)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
06862 海底撈(Haidilao) 32.8% 52.2% 9.5% 火鍋チェーン中国最大手。リオープン関連銘柄が買われた流れの一つ。中国当局が高齢者のワクチン接種を強化すると同時に、不必要なロックダウンをけん制する方針を示した。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] 28.1% 168.8% 20.9% 中国不動産大手。中国当局が立て続けに不動産会社の資金調達を支援する措置を発表し、買い材料となった。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] 23.2% 79.5% -7.1% 中国不動産大手。中国当局が立て続けに不動産会社の資金調達を支援する措置を発表し、買い材料となった。
06098 CG SERVICES 21.8% 159.1% 25.8% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。中国当局が立て続けに不動産会社の資金調達を支援する措置を発表し、買い材料となった。(SBI証券取り扱いなし)
01928 金沙中国 [サンズ・チャイナ] 18.5% 60.1% 22.1% カジノ大手。マカオ政府が同社を含む既存のカジノ事業者6社に対し、来年1月からの新たな営業ライセンスを付与した。大手証券会社数社がポジティブ材料だとし、同社をトップ推奨銘柄に挙げた。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00883 中国海洋石油 [CNOOC] -0.6% 4.4% -6.3% 中国石油・天然ガス大手。原油先物価格がやや軟調に推移し、小幅安となった。
00066 香港鉄路[MTRコーポレーション] -1.2% 9.0% -6.1% 香港の公共交通サービス会社。香港で運営ている鉄道路線が事故を起こし、大手証券会社が目標株価を引き下げた。
00011 恒生銀行[ハンセン・バンク] -2.1% 7.6% -2.3% 香港の大手銀行。テクニカル要因のもよう。MACDが下降トレンドを示し、売り優勢となった。
00017 新世界発展[ニューワールト] -4.3% 10.7% -28.9% 香港の不動産会社。大手証券会社が目標株価を引き下げた。
01929 周大福珠宝集団[チョウタイフックジュエリー] -11.2% -0.4% -12.3% 宝飾類の小売会社。決算内容が市場予想を下回り、大手証券会社が目標株価を引き下げた。

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09626 ビリビリ 23.5% 84.2% -32.7% 動画プラットフォーム大手。決算内容が市場予想を上回り、大手証券会社が目標株価を引き上げた。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のBILIとなっています。)
09868 小鵬汽車[シャオペン] 20.8% 29.4% -53.4% 新興EVメーカー。3Qの納車台数実績と4Qの納車台数ガイダンスは市場予想を下回ったが、3Qの粗利益率が予想以上に改善し、好感された。
03690 美団(Meituan) 18.2% 34.3% -11.6% 中国フードデリバリー最大手。リオープン関連銘柄が買われた流れの一つ。中国当局が高齢者のワクチン接種を強化すると同時に、不必要なロックダウンをけん制する方針を示した。
06060 衆安在線財産保険 16.2% 38.8% -9.1% オンライン保険大手。保険株が買われる流れの一つ。中国当局が私的個人年金を本格的に導入し、保険会社による年金保険の販売が始まった。
02015 理想汽車[リーオート] 16.2% 45.3% -32.4% 新興EVメーカー。大手証券会社が来年は補助金の終了と競争激化が予想されるものの、EVの普及は続く見込みだとし、同社をトップ推奨銘柄に挙げた。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のLIとなっています。)
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00700 騰訊 [テンセント・ホールディングス] 1.8% 43.0% -11.3% ゲーム・フィンテック大手。11月初めからの反発で50日移動平均線を突破した後、100日移動平均線が上値抵抗線となり、上昇幅は限定的だった。
03888 金山軟件 [キングソフト] 1.7% 6.8% 6.1% ゲーム・ソフトウェア大手。市場予想を下回った決算を発表した後、売り優勢でしたが、大手証券会社が目標株価を引き上げ、小幅高となった。
00981 中芯国際 [SMIC] 0.4% 5.5% 10.1% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。フィラデルフィア半導体(SOX)指数が横ばいで推移し、半導体関連株もおおむね小動きとなった。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] -0.6% 45.6% 17.2% 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。フィラデルフィア半導体(SOX)指数が横ばいで推移し、半導体関連株もおおむね小動きとなった。
00268 金蝶国際軟件 [キングディー・ソフトウエア] -1.8% 9.0% -13.6% ソフトウェア会社。11月初めからの急騰でRSIが買われ過ぎサインとされる70%に達した後、売り優勢となった。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

先週の中国株市況

11/24-11/30の香港市場では、ハンセン指数が6.1%上昇、ハンセンテック指数は6.8%上昇しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、17.1%上昇しました。

主要指数は「ゼロコロナ政策」への抗議デモを嫌気し、今週初めは大幅に下落しました。その後、中国当局が高齢者のワクチン接種強化と不動産市場への追加支援を発表すると、急反発しました。抗議デモはむしろ、リオープンに向けた動きを加速させる可能性があるとの声も浮上しました。

高齢者のワクチン接種強化は、市場にとって大きなポジティブ・サプライズとなりました。というのは、これまで中国が「ゼロコロナ政策」を堅持してきたのは、高齢者のワクチン接種率が低く、「ゼロコロナ政策」を解除すれば死者数が大幅に増える恐れがあると考えていたためです。したがって、高齢者のワクチン接種強化は、中国当局がWithコロナに向けて重要な一歩を踏み出したことを示します。

11/25日のレポート(中国株 ココがPOINT!  ~復調のカギを握る「コロナ政策」、凸凹道ながらトンネルの先は光~)でご紹介しましたように、中国当局は香港が実施してきたリオープンに向けた措置を段階的に導入しています。今回の高齢者のワクチン接種強化も、その一つです。したがって今後、中国本土は香港と同様に、「ゼロコロナ政策」を徐々に緩和していくと思われます。

背後には、重要な政治イベントである共産党大会の終了に伴い、中国当局が経済の立て直しに軸足を移していることが挙げられます。この点は、中国当局が「ゼロコロナ政策」の調整と同時に、立て続けに不動産支援策を打ち出したことからも明らかだと思われます。

中国当局は11月中旬以降、不動産市場への支援措置として、「3本の矢」を放ちました。すなわち、1)金融機関による不動産会社への融資支援、2)不動産会社の債券発行に対する支援、3)不動産会社のエクイティファイナンス(たとえば債務返済を目的とした株式発行)に対する支援です。

上記の3つは、いずれも中国当局がこれまで不動産市場を抑制するために、制限を課した分野です。それが一転して、3つとも解除されました。11/28に3本目の矢に当たる3)が発表されると、現地では「不動産市場を“救う”ために、不動産会社を“救う”」との表現を用いた報道も目立ちました。

「3本の矢」を受け、業種別上昇率では、不動産が上位1位となりました。不動産デベロッパー大手のカントリーガーデン(02007)や龍湖集団(00960)、万科企業(02202)がそろって大幅高となりました。金融も、不良債権問題に対する懸念の後退で持ち直し、上昇率上位3位となりました。

上昇率上位2位は、一般消費財でした。中国当局が高齢者のワクチン接種を強化すると同時に、不必要なロックダウンをけん制する方針を示し、一部の都市が即日にロックダウンを解除しました。それを好感し、ビール大手の華潤ビール(00291)や青島ビール(00168)、バドワイザーAPAC(01876)などが急反発しました。

自動車も大幅高となりました。ロックダウン懸念の後退に伴う販売回復への期待に加え、新エネルギー車に対する補助金政策が延長される可能性があるとの噂も買い材料となりました。電気自動車(EV)メーカーのシャオペン(09626)やBYD(01211)が反発しました。

新エネルギー車に対する補助金政策は年内に打ち切られる予定です。EV関連銘柄にとって、補助金政策の終了はバークシャー・ハサウェイによるBYD株の売却に加えて、株価抑制要因の一つとなっていました。したがって、もし延長が事実なら、大きなプラス材料となります。一方、あくまでも噂に過ぎない場合は株価変動をもたらす可能性もあります。ただ、足元で中国当局が成長重視へ転じていることからすると、延長の可能性も十分あるかもしれません。

今回のトピックス

今回は、海外投資家の動向と保険株の出遅れ修正についてご紹介したいと思います。

【海外投資家の動向】

中国株は、上場先によって大きく3つに分けられます。つまり、中国本土(上海と深セン)市場と香港市場、および米国市場に上場している銘柄です。そのうち、米国と香港市場は中国株を対象とした投資家データがほぼないため、海外投資家の動向を把握するのは難しいです。

一方、中国本土市場は香港経由の「ストックコネクト」の取引データが日々公表されます。香港経由の「ストックコネクト」は海外投資家が中国本土株(A株)を取引する際のメインルートとなっているため、「ストックコネクト」の取引である程度海外投資家の動向を把握することができます。今回は、そのデータを用いて海外投資家の動向を確認してみたいと思います。

図表4 香港経由の「ストックコネクト」による中国A株取引とCSI300指数の推移(年初来)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表4を確認してみると、海外投資家は、10月中旬から下旬にかけて中国A株を大幅に売り越しました。その間は中国共産党大会が開催されており、次期指導部をめぐる不透明感が強まっていた時期でした。特に10月下旬は、「3期目の習政権」の発足に伴い、中国当局が経済成長よりも「共同富裕」を重視し、「ゼロコロナ政策」を堅持するのではないかとの懸念が強まりました。

しかし、大方の予想に反して、「3期目の習政権」は発足してから成長重視の姿勢を示し、「ゼロコロナ政策」についても調整を行いました。それを受け、過度な懸念は後退し、海外投資家は11月に入ってから一転して、中国A株を買い越しました。

今後、買い越しが続くかどうかは、中国当局が成長を重視する施策をどこまで打ち出すか、そしてその効果(経済回復の度合い)がどの程度なのかにかかっていると思います。「成長を重視する施策」に関しては、中国当局の動きからすると市場予想以上の速さで打ち出しています。たとえば、「ゼロコロナ政策」の見直しがその典型例です。「ゼロコロナ政策」は中国経済の足かせとなっている最大の要因とされているため、「ゼロコロナ政策」に対する見直しが今のペースで続くのであれば、海外投資家の買い越しも続くと考えられます。

【保険株の出遅れ修正】
中国株の地合い好転を受け、出遅れの保険株も足元で見直し買いが入りました。主な要因は、以下の3つです。

1)「ゼロコロナ政策」の見直し
保険業界は依然として対面営業の比率が高いため、「ゼロコロナ政策」による行動制限の影響を受ける業種の一つです。したがって、「ゼロコロナ政策」の緩和は保険販売の回復につながる可能性があります。

2)不動産市場への支援
保険会社は顧客から預かった莫大な資金を運用しています。その投資先の一つとして不動産市場(不動産デベロッパーが発行した債券を含む)があり、中国の保険会社は比較的不動産市場へのエクスポージャーが高くなっています。その関係もあり、不動産市場の軟調や不動産デベロッパーの債務問題は保険株のバリュエーションを抑制する要因となっていました。足元で中国当局が本格的に不動産市場に対する支援に動き出したことを受け、保険株のバリュエーション修正に対する期待につながりました。

3)私的年金保険の販売開始
中国当局が私的個人年金を本格的に導入し、保険会社による年金保険の販売が11月末から始まりました。新たな収益減になると見込まれるため、保険株の上昇につながりました。

上記の1)-3)は、いずれも確度が高いものとなっているため、保険株は利益確定売りをこなしつつ、バリュエーション修正のトレンドを維持する可能性があります。ネット大手などに比べればやや地味な業種ですが、ポートフォリオの一部に加えてみるのもいいかもしれません。

図表5 主要保険株の株価とバリュエーション(株価は香港ドル、PERとPBRは倍)

  株価
(11/30終値)
52週高値 52週安値 予想PER 過去5年
平均PER
PBR 過去5年
平均PBR
中国平安保険(02318) 47.75 69.40 31.30 7.76 10.25 0.97 1.96
中国人寿保険(02628) 11.86 15.04 8.53 8.33 15.80 0.69 1.20
AIA グループ(01299) 78.50 92.50 57.25 39.34 23.48 3.04 2.31
衆安保険(06060) 20.10 33.85 13.98 204.72 - 1.75 2.86
太平洋保険(2601) 17.62 25.90 12.10 6.45 15.31 0.69 1.85

注:PERは株価収益率、PBRは株価純資産倍率です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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