円高を経て、日経平均は反発へ!?その理由は?

円高を経て、日経平均は反発へ!?その理由は?

投資情報部 淺井 一郎 栗本 奈緒実

2022/12/06

FRB議長発言後、米株高!日経平均は、円高で上値が重い展開

11月第5週(11/28-12/2)の日経平均株価は、前週末比505円13銭安(▲1.8%)と週足ベースで反落しました。

同期間のTOPIX(東証株価指数)は▲3.2%であったことと比べると底堅い値動きです。TOPIXは日経平均よりも広範な銘柄が対象で、浮動株時価総額の加重平均を用いているため時価総額が大きい銘柄の寄与度が高いです。対して、日経平均は単純平均を採用しているため値がさ株の寄与度が高いという特徴があります。

前回ご紹介した11/29(火)掲載の冬到来!ファーストリテイリングが日経平均の行方を占う?でもあったように、値がさ株の筆頭格で日経平均の寄与度ランキング首位のファストリ(9983)と、2位の東エレク(8035)がともに同期間+1.6%となっています。日経平均の下落幅がTOPIXより小さく済んだ要因には、前述した2つの値がさ株の上昇が下支えたことが大きかったようです。

東京市場では主要株価指数が軟調に推移した中、米国市場(11/28-12/2)では主要3株価指数が揃って上昇しています。

米株高のきっかけは、週半ば現地時間11/30(水)のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長発言でした。同発言に関しては、10月消費者物価(CPI)、11月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨通過で、楽観気味に傾いていた株式市場に冷や水を浴びせるような内容が発せられるだろうとの予想から、市場は戦々恐々としていました。

そして迎えた実際のFRB議長発言では、意外にも強固なタカ派発言は見受けられませんでした。むしろ、“早ければ”12月FOMC会合での利上げペース減速が示唆され、米10年債利回り(長期金利)は急低下。リスクセンチメントが改善し、グロース株中心に強く買いが入った形です。同日だけでもナスダックは4.4%高しており、週間(11/28-12/2)でみてもナスダックの上昇率は+2.1%とS&P500の+1.1%を上回る高パフォーマンスとなっています。

FRBによる利上げペース減速期待が一段と高まる中で、ドルに対して円高が進行しました。12/2(金)には一時、1ドル133円台までドル安・円高となっています。

11月第5週に起きた円相場の上昇は、日経平均が軟調なった要因としても挙げられます。直近の四半期決算発表に当たる7-9月期決算では、円安による収益増が株式市場を下支えている面がありました。決算発表時に、今後の業績見通しに関しても想定為替レートを円安方向に修正する企業も相次いでいました。したがって、円高が今後の企業業績に対して与える影響は決して小さくないと想定されます。

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(11/28~12/5)では、円安が業績増に寄与しやすい輸送用機器の日産(7201)、三菱自動車(7211)がランクインしています。日産に関しては、売り材料は円高のみではなく、仏ルノーとの提携関係再構築のための協議が難航していると一部で報じられたことによる影響もあったようです。他には、海外売上高比率が8割超のニコン(7731)も7%超の大幅安となりました。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(11/28~12/5)では、中国におけるゼロコロナ政策に対して緩和観測が広がったことを背景に、中国でも人気を誇る化粧品大手の資生堂(4911)がトップとなりました。他にも、中国での売上高が一定上を占めているファストリ(9983)や安川電(6506)が資生堂と同様の理由で、見直し買いが進んだと考えらます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(11/28~12/5)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(11/28~12/5)

円高を経て、日経平均は反発へ!?その理由は?

上述したように、11月第5週(11/28-12/2)の日経平均は、前週末比505円安(▲1.8%)と下落しました。米国株式市場では、NYダウが82ドル高(+0.2%)、ナスダック総合指数が235pt高(+2.1%)と堅調だったのに対し、日経平均の値動きの重さが目立ちました。一方、先週の外為市場では、週間で5円近く円高・ドル安が進行しました。特に12/2(金)の夕方には、1ドル=133円台半ばと、今年8月中旬以来の134円割れとなりました。日本株が軟調に推移した一因には、こうした円相場の動きがあったと見られます。

最近の円高進展の動きを受けて、一部の市場参加者は、今後も一段と円高傾向が続くとの見方を強めているようです。ただ、円相場は8/15から10/21の約2カ月で1ドル=133円台から150円台へ円安・ドル高が進行しました。この当時も急ピッチな円安進行として市場の警戒が高まりましたが、今回の円高は1ヵ月強の期間で”往って来い”の展開となっています(図表9)。円安時よりも更に急ピッチな円高は、さすがにオーバーペースの感が否めません。短期的にさらなる円高が進む可能性は低いと考えられます。

図表9 円相場と日経平均

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券作成


一方、円相場の値動きに大きく影響する日米金利差(本稿では『米国10年国債利回り-日本10年国債利回り』と定義)と円相場の関係に注目すると、現状の金利差に対する円相場の水準は、円高過ぎず、円安過ぎず、概ねフェアバリューと言えるでしょう(図表10)。ここから更に円高・ドル安が進行するには、日米金利差が一段と縮小(実質的には米国10年国債利回りが低下)する必要があります。

図表10 日米金利差と円相場の相関関係

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券作成


ここもとの日米金利差の縮小(≒米国10年国債利回りの低下)は、米国において利上げペースが鈍化するとの思惑が背景にあります。確かに、12/13・14開催のFOMC(米連邦準備制度理事会)では、過去4回にわたって繰り返し行われてきた大幅な利上げ(0.75%pt×4回)に比べ、利上げ幅が縮小するとの見方が強まっています。ただ、もし今回のFOMCで利上げペースが鈍化したとしても、FRBがインフレを抑制するために金融引き締めを継続する、というスタンスに変化はないと見られます。円相場は、FOMC前には利上げペースの減速による日米金利差縮小を手掛かりに円高・ドル安地合いとなりましたが、FOMC後は、こうした動きが逆回転することで円安に揺り戻されるのではないかと考えられます。

最後に円相場と日経平均の関係について整理しておきましょう。この夏からの円安局面(8/15-10/21)では、円安が進んだにも関わらず同期間の日経平均は▲5.8%と下落しており、一部では円安が株価にプラスに働かないとする声も聞かれます。この頃の国内では、円安進行による輸入物価の上昇に伴って、様々な商品の値上げ報道が相次ぎました。こうした報道が、円安が日本経済にとって逆風との印象を強めた可能性があります。もっとも、同期間では、ナスダック総合指数を中心に米国株の下落が顕著であり、日本株の下落はその影響を大きく受けたと考えられます。円安は輸出企業を中心に日本経済にとってプラス(ひいては日本株にとってもプラス)といった見方に変化はないと思われます。円先高観が後退すれば、日本株のプラスになることが予想されるでしょう。

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