逆境に強い二刀流!? ヘルスケア株式 好成績ファンドは?

逆境に強い二刀流!? ヘルスケア株式 好成績ファンドは?

投資情報部 川上雅人

2023/05/01

逆境に強い二刀流!? ヘルスケア株式 好成績ファンドは?

日本は3年ぶりに行動制限のないGW(ゴールデンウィーク)に突入しました。JTBによるとGWに1泊以上の国内旅行に出かける人は前年比53%増の2,450万人となり、コロナ禍前の2019年の水準(2,401万人)を超える推計です。この推計は4月6日時点でした。政府は4月27日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを5月8日から5類(季節性インフルエンザ並み)に移すことを正式決定したため、さらなる上振れも期待されます。老若男女あらゆる人々が動き出すGWとなりそうです。今回は、老若男女問わず、すべての人に関わりの深い「医療」=「ヘルスケア」の株式投資について考えます。

世界の医療支出は、先進国の高齢化などを背景として拡大傾向が続いています。例えば、医療大国の米国では2000年から2020年までの医療費支出は、景気の変動に左右されずに毎年増加傾向となっています。
医薬品、バイオテクノロジー、医療機器・器具、医療・健康サービスの企業で構成されるヘルスケア業界は、
①世界的な高齢化による医療支出の拡大(65歳以上の比率は今後も上昇が見込まれる)
②新興国の人口増加(アジア、アフリカなどの人口増加と所得水準の向上に伴う医療ニーズの拡大)
③バイオ技術の発展による医薬品市場の拡大(進化する感染症ワクチン、がん免疫治療薬、糖尿病治療薬など)
といった投資環境が、今後も追い風になると予想されます。

こうした環境下で、米国の代表的な株価指数・S&P500の業種別指数であるS&P500ヘルスケア(以下、ヘルスケア)について長期の実績を確認します。2000年4月末以降の直近23年間、ヘルスケアとS&P500(いずれも米ドル建て・配当込み)を比較したものが図表1となります。
2000年からの3年程度は、ITバブル崩壊によってIT関連株を中心に株式市場全体が苦戦したためS&P500は低迷しました。一方で、ヘルスケアはこの間の下落が相対的に小さかったことが主要因となり、長期ではS&P500を上回る上昇となっています。

次に株式市場の下落局面でヘルスケアの下落が相対的に小さかったことを確認するため、暦年ベースでS&P500と比較したものが、図表2です。
ITバブル崩壊の影響が大きかった2002年、リーマンショックの2008年、高インフレ対応のために累計4.25%の断続利上げが行われた2022年の大幅下落局面を見ると、ヘルスケアはS&P500に対して下落が小さかったことが確認できます。
一方で、S&P500の上昇局面においては、暦年ベースではS&P500の上昇よりも小幅にどどまった年が多かったようです。ただし、上昇局面でもヘルスケアがS&P500に勝った年もそれなりに多く(2021年以降、S&P500の上昇局面でのヘルスケアの勝敗は8勝10敗)、比較的健闘していることが分かります。
ヘルスケアは生活必需品や公益事業の業種と並んでディフェンシブ(景気動向に業績が左右されにくい)という側面も持ちながら、上昇局面においてもそれなりに上昇している業種といえます。
この要因は、安定した収益基盤を持つ医薬品企業や高成長を実現したバイオテクノロジー企業の存在などが挙げられます。実際に、企業が稼いだ利益額を示すEPS(1株当たり利益)の前年比では、ヘルスケアはS&P500と比較すると、リーマンショックの期間やコロナショックの年でもマイナスとはならずに安定して拡大しています(図表3)。(ただし、2023年のヘルスケアはS&P500とともに減益となる予想です。)
加えて、年率換算EPS成長率で見てもS&P500よりも高いことが確認できます。
このことから、ヘルスケア株式への投資は、ディフェンシブ性と成長性を兼ね備えた二刀流投資といえそうです。

こうした特性を持つヘルスケア株式に投資を行うファンドの3年リターンランキングが図表4となります。

図表1  S&P500ヘルスケア vs S&P500 長期比較(2000年4月~2023年4月* 月末値 2000年4月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230501_01_01.png

※米ドル建て・配当込みの指数で比較、2023年4月は27日迄のデータ
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表2 S&P500ヘルスケア vs S&P500 暦年騰落率(2001年~2023年*)

  ヘルスケア S&P500 勝敗 備考
2001年 -12.0% -11.9% × ITバブル崩壊
2002年 -18.8% -22.1% ITバブル崩壊
2003年 15.1% 28.7% ×  
2004年 1.7% 10.9% ×  
2005年 6.5% 4.9%  
2006年 7.5% 15.8% ×  
2007年 7.2% 5.5%  
2008年 -22.8% -37.0% リーマンショック
2009年 19.7% 26.5% ×  
2010年 2.9% 15.1% ×  
2011年 12.7% 2.1%  
2012年 17.9% 16.0%  
2013年 41.5% 32.4%  
2014年 25.3% 13.7%  
2015年 6.9% 1.4%  
2016年 -2.7% 12.0% × 高額薬価引き下げ
2017年 22.1% 21.8%  
2018年 6.5% -4.4%  
2019年 20.8% 31.5% ×  
2020年 13.4% 18.4% ×  
2021年 26.1% 28.7% ×  
2022年 -2.0% -18.1% 断続利上げ
2023年* -2.2% 8.3% ×  

※米ドル建て・配当込みの指数で比較、2023年は4月27日迄
※勝敗の〇(×)は、S&P500ヘルスケアが優位(劣位)な年
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表3 S&P500ヘルスケア vs S&P500 実績EPS(前年比)(2007年~2022年 年次)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230501_01_03.png

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 ヘルスケア株式ファンド 3年リターンランキング

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年リターン 3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 JPMグローバル医療関連株式ファンド 世界の医療関連企業の株式 -0.39% 19.22% 11.82
2 ブラックロック・ヘルスサイエンス・ファンド(為替ヘッジなし) 世界のヘルスサイエンス関連企業の株式 3.85% 18.52% 11.78
3 メディカル・サイエンス・ファンド(愛称:医療の未来) 世界のメディカル・サイエンス企業の株式 7.98% 17.10% 12.87
4 SMT MIRAIndex バイオ・メディカル 世界のバイオ&メドテック インデックス -4.14% 16.77% 17.00
5 iTrustバイオ 世界のバイオ医薬品関連企業の株式 12.20% 16.65% 14.10
6 ピクテ・バイオ医薬品ファンド(1年決算型)為替ヘッジなしコース 世界のバイオ医薬品関連企業の株式 11.60% 15.99% 14.11
7 フューチャー・バイオテック 世界のバイオ&医療機器関連企業の株式 5.40% 15.89% 13.73
8 グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド(愛称:健次) 世界のヘルスケア&バイオ企業の株式 -0.23% 14.73% 12.56
参考 SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・S&P500) S&P500インデックス -2.61% 25.19% 16.67

※ SBI証券取り扱いの「国際株式」の中で「医療」、「ヘルス」、「バイオ」のワードから抽出し、ヘルスケア株式の組入比率が高いファンドを3年リターンでランキング 複数のコースを持つファンドは上位ファンドのみを表示(2023年3月末基準)

好成績ヘルスケア株式ファンドの特徴は?

図表4にあるヘルスケア株式ファンド8本は、参考のS&P500インデックスファンドと比較すると3年リターンでは劣後していますが、1年リターンではほとんどのファンドがS&P500を上回っています。また、1本のファンドを除き、値動きのブレを示す標準偏差(1年)はS&P500よりも小さくなっています。

3年リターン1位のJPMグローバル医療関連株式ファンドは、世界の医療関連株式に投資しています。組入上位銘柄はユナイテッドヘルス・グループ、アッヴィ、アストラゼネカ(英国)、サーモフィッシャーサイエンティフィックなどとなっています(2023年3月末、以下同じ)(※)。医薬品、バイオテクノジー、医療機器・器具、医療・健康サービスのサブセクターをバランス良く組入れているファンドといえます。3年リターンは良好でしたが、1年リターンがわずかにマイナスとなっています。

2位のブラックロック・ヘルスサイエンス・ファンドは、世界のヘルスサイエンス関連企業の株式に投資しており、組入上位銘柄は、ユナイテッドヘルス・グループ、イーライリリー、アストラゼネカ、ノボ・ノルディクス(デンマーク)などとなっています(※)。医薬品の構成比が高くなっています。1年リターンは高くはないもののプラスとなっています。

3位のメディカル・サイエンス・ファンド(愛称:医療の未来)は、世界のメディカル・サイエンス企業の株式に投資しており、組入上位銘柄はユナイテッドヘルス・グループ、アストラゼネカ、アッヴィ、サノフィ(フランス)などとなっています(※)。バイオテクノロジーの比率がやや高いのが特徴です。1年リターンが7.98%となっており1年でも好成績です。

4位のSMT MIRAIndex バイオ・メディカルは、FactSet Global Biopharm & MedTech Index(税引後配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果を目指すインデックスファンドです。医療機器・器具と医療・健康サービスの組入比率が高いのが特徴で、直近1年で唯一、S&P500に劣後しています。

5位のiTrustバイオピクテ・バイオ医薬品ファンド(1年決算型)為替ヘッジなしコースは同じマザーファンドに投資するファンドです。ファンド名称の通り、バイオテクノロジーの組入比率が78.4%と高いのが特徴です。組入上位銘柄は、ギリアド・サイエンシズ、リジェネロン・ファーマシューティカルズ、アムジェン、バーテックス・ファーマシューティカルズなどとなっています(※)。8ファンドの中ではiTrustバイオが最も1年リターンが高くなっており、バイオテクノロジー企業の銘柄選定が奏功しているようです。

7位のフューチャー・バイオテックはバイオテクノロジーの組入比率が高いのが特徴で、1年リターンもまずまずです。

8位のグローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド(愛称:健次)は、医薬品の組入比率が高いのが特徴です。1年リターンはわずかにマイナスとなっており、これは一部の医薬品企業のパフォーマンスが低迷したことが要因と考えられます。

これらのヘルスケア株式ファンドに、2023年4月28日から低コストアクティブシリーズの米国ヘルスケア関連株ファンドが加わりました。ファンドのコンセプトは「ディフェンシブ+成長」となっており、信託報酬(税込)が年率0.253%と低水準となっています。(詳細はこちら)

コロナショック後の株式市場の上昇局面で、ヘルスケアはS&P500に劣後していましたが、2022年の下落局面においては、下落率を小幅にとどめて存在感を示しました(図表5)。2023年の4ヵ月間では2022年の下落銘柄などの反発局面となっていることもあって、ヘルスケアはS&P500に大きく劣後していますが、直近4月からはやや巻き返しの動きとなっています。

ヘルスケア株式は株式市場の上昇局面では図表3のような利益成長を背景としたマーケットに対する追随力が見込まれ、下落局面においては下値抵抗力を発揮することが期待されます。

株式市場のボラテリティ(価格変動性)が高い投資環境が続くと予想されることからも、好成績のヘルスケア株式ファンドは、S&P500インデックスファンドや全世界株式インデックスファンドに上乗せすべき資産として注目といえます。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。

図表5 S&P500ヘルスケア vs S&P500 約3年間の比較(2020年3月末~2023年4月27日 2020年3月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230501_03_01.png

※米ドル建て・配当込みの指数で比較
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【投資信託に関するご注意事項】

・投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
・投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客さまが実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
・ご投資にあたっては、商品概要や目論見書(目論見書補完書面)をよくお読みください。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。