米FRB金利据え置きで注目高まる 金利水準と新興国債券!?

米FRB金利据え置きで注目高まる 金利水準と新興国債券!?

投資情報部 川上雅人

2023/06/19

米FRB金利据え置きで注目高まる 金利水準と新興国債券!?

米連邦準備制度理事会(FRB)は14日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.00~5.25%とし、11会合ぶりの据え置きを決定しました。決定は全会一致で、市場予想通りではありましたが、利上げは10会合連続で止まりました。

ただし、同時に発表された金利・経済見通しでは予想を上回る堅調な経済とより緩慢なインフレ鈍化を想定し、2023年末までに合計0.50%ポイント利上げとの見方(予想中央値)が示されました。年後半からの利下げはなく、2024年にインフレ率の低下によって累計1%程度の利下げが行われるのではとの見方です。

利下げ見通しは後ずれとなりましたが、今回示されたターミナルレート5.6%に達した後に利下げが予想される米国の金利環境下においては、新興国など高金利国の債券への投資に注目が集まると考えます。そのため、今回は債券ファンドの中でも新興国債券に焦点を当てます。

新興国債券ファンドにおいて、3年リターンが良好なファンドを図表1で示しました。上位6本はメキシコ、ブラジル、インドネシアの単一国に投資している債券ファンドで、3年リターンが年率で13~19%台となっています。

好成績となっている要因は、主に現地通貨の上昇にあります(図表2)。2023年5月末基準での過去3年間のメキシコ・ペソ、ブラジル・レアル、インドネシア・ルピアの上昇率(対円の年率換算)は、それぞれ17.5%、10.9%、8.0%となっています。この3年間はコロナショックによって新興国通貨が対円で下落した後の反発・上昇局面となったため、メキシコ・ペソやブラジル・レアルは米ドル(年率+9.0%)を上回る上昇となりました。

これらの新興国通貨の上昇は、自国の政策金利の引き上げが要因といえます(図表3)。ブラジルは高インフレに対応するため累計11.75%も政策金利を引き上げました。メキシコでも同様に累計7%の利上げ幅となっています。これら2ヵ国は米国の累計利上げ幅の5%を上回っています。一方、インドネシアについては累計の利上げ幅は2.25%です。

その後、ブラジルは2022年8月から、インドネシアも2023年1月から、メキシコは2023年3月から、インフレ率の低下を考慮して政策金利を据え置いています。

こうしたことに加えて米国長期金利の上昇が2022年10月をピークに一服したこともあって、3ヵ国の長期金利は低下基調となっています(図表4)。

これら3ヵ国においては、政策金利据え置きによって、これまでのような通貨の上昇は期待しにくいものの、債券については高金利と金利低下による価格上昇を享受しやすい環境といえます。

特に、金利水準が相対的に高いブラジルとメキシコについては債券への投資妙味が高いと考えます。

また、5年間で見た場合に、コロナショック後の通貨の下落が大きかったことから、上昇率が相対的に低いブラジル・レアル(図表2参照)については、高い実質金利(=名目金利-予想インフレ率)からも通貨高の余地が残ると考えます。

将来的には、日銀の金融緩和修正によって円高新興国通貨安となる可能性も考えられます。しかし、円高修正が限定的であれば、高金利となっている新興国債券への長期投資については、長期の金利収入の積み上げ効果によるプラス要因が円高によるマイナス要因を吸収することが期待されます。

図表1 好成績 新興国債券ファンドの特徴と運用成績

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年
リターン
3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
ポートフォリオ
最終利回り
1 メキシコ債券オープン(資産成長型)(愛称:アミーゴ) メキシコ・ペソ建てのメキシコ国債等 27.89% 19.34% 10.27 9.1%
2 フランクリン・テンプルトン・ブラジル国債ファンド(年2回決算型) ブラジル・レアル建てのブラジル国債 14.51% 16.42% 11.95 12.7%
3 ブラデスコ ブラジル債券ファンド(成長重視型) ブラジル・レアル建てのブラジル国債 15.35% 14.92% 13.44 11.9%
4 イーストスプリング・インドネシア債券オープン(年2回決算型) インドネシア国債(インドネシア・ルピア建て) 14.76% 14.43% 10.69 6.6%
5 DWS ブラジル・レアル債券ファンド(年1回決算型) ブラジルの国債及びレアル建の国際機関債等 16.83% 13.79% 17.36 12.2%
6 ブラジル・ボンド・オープン(年1回決算型) ブラジル・レアル建て債券 18.31% 13.41% 17.43 12.6%
参考 iFree 新興国債券インデックス 新興国債券インデックス(現地通貨建て) 11.80% 6.22% 6.85 7.0%

※SBI証券取り扱い「国際債券・エマージング」カテゴリーで通貨選択型、毎月決算型、償還日が近いファンドを除く3年リターンランキング。データは5月末基準。
※参考として新興国債券インデックスファンド(現地通貨建て)を表示。
※ポートフォリオ最終利回りは各ファンドのマンスリーレポートを参照し、3・4・5・6位と参考ファンドは4月末基準。1・2位は5月末基準。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

図表2 メキシコ・ブラジル・インドネシア 為替レートの比較(対円) 2018年6月~2023年6月* 月末値 2018年6月末=100)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230619_01_02.png

※QUICKデータをもとにSBI証券作成 (2023年6月は14日まで)

図表3 メキシコ・ブラジル・インドネシア 政策金利の推移 (2018年6月~2023年6月* 月末値)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230619_01_03.png

※QUICKデータをもとにSBI証券作成 (2023年6月は14日まで)

図表4 メキシコ・ブラジル・インドネシア 長期金利(10年国債利回り)の推移 (2018年6月~2023年6月* 月末値)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230619_02_01.png

※QUICKデータをもとにSBI証券作成 (2023年6月は14日まで)

好成績 新興国債券ファンドの特徴は?

3年リターン1位のメキシコ債券オープン(資産成長型)(愛称:アミーゴ)は、メキシコの国債・政府機関債および国際機関債を中心に投資しており、5月末のポートフォリオの最終利回りは9.1%となっています。金利感応度を示すデュレーションは5.0年となっています。直近1年はメキシコ・ペソ上昇と債券利回りの低下と高金利で27.89%と好パフォーマンスになっています。

2位のフランクリン・テンプルトン・ブラジル国債ファンド(年2回決算型)は、主としてブラジル・レアル建てのブラジル国債に投資しており、5月末のポートフォリオの最終利回りは12.7%、デュレーションは0.6年となっています。ブラジルにおいては、短期の債券でも高い金利収入が獲得できることからデュレーションは短めにしていると考えられます。

3位のブラデスコ ブラジル債券ファンド(成長重視型)は、ブラジルレアル建てのブラジル国債を中心に投資しており、4月末のポートフォリオの最終利回りは11.9%、デュレーションは1.7年となっています。

4位のイーストスプリング・インドネシア債券オープン(年2回決算型)は、インドネシアの国債、社債等に投資しています。インドネシア・ルピア建ておよび米ドル建ての債券に投資していますが、米ドル建て債券に投資した場合は実質的にインドネシア・ルピア建てとなるように為替取引を行っています。4月末のポートフォリオの最終利回りは6.6%、デュレーションは6.0年となっています。ブラジルやメキシコの債券ファンドと比べると利回り水準は低いですが、相対的に安定したパフォーマンスとなっています。

5位のDWS ブラジル・レアル債券ファンド(年1回決算型)は、主にブラジル・レアル建のブラジル国債及び国際機関債等に投資しており、4月末のポートフォリオの最終利回りは12.2%、デュレーションは2.3年となっています。ブラジル債券ファンドの中ではデュレーションを長めにしているため、1年リターンでは金利低下で好成績となっています。

6位のブラジル・ボンド・オープン(年1回決算型)は、政府、政府関係機関、国際機関等が発行するブラジル・レアル建て債券に投資しており、4月末のポートフォリオの最終利回りは12.6%、デュレーションは2.7年となっています。ブラジル債券ファンド4本の中では最もデュレーションを長めにしているため、1年リターンは金利低下で好成績となっています。

参考で示したiFree 新興国債券インデックスは、現地通貨建ての新興国債券インデックスであるJPモルガン ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ グローバル ダイバーシファイド(円換算)の動きに連動することをめざすファンドです。通貨別構成比は図表5となっています。メキシコ・ペソ、ブラジル・レアル、インドネシア・ルピアが上位で、最終利回りは7.0%、デュレーションは4.9年となっています。多くの新興国に幅広く分散投資し、リスクを抑えたい方はこのファンドが1つの選択肢といえます。

株式ファンドの価格上昇でリバランス(資産配分の調整)を検討している場合は、リバランス先として債券ファンドへの分散投資がパフォーマンスを安定化させる上で有効と考えます。その際には、先進国債券と比較してリスクは高いものの高金利となっている新興国債券はパフォーマンスを高める上で重要な資産といえます。

なお、6月15日に低コストアクティブシリーズとしてブラジル国債ファンドが設定されました。詳細ページはこちら。設定後1年間の信託報酬は年率0.2475%です。コスト重視の方は、このファンドの活用も有効です。

図表5 iFree 新興国債券インデックス の通貨別構成比 (2023年5月末)

★画像表示:ファイル名 base/g_media_fund_info_plus_230619_03_01.png

※マンスリーレポートのデータをもとにSBI証券作成 

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【投資信託に関するご注意事項】

・投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
・投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客さまが実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
・ご投資にあたっては、商品概要や目論見書(目論見書補完書面)をよくお読みください。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。