米金利上昇による株安の1ヵ月 上昇したファンドは?

米金利上昇による株安の1ヵ月 上昇したファンドは?

投資情報部 川上雅人

2023/08/28

米金利上昇による株安の1ヵ月 上昇したファンドは?

2023年8月は米国長期金利の上昇が目立っています。大手格付け会社のフィッチ・レーティングが1日に米国の外貨建て長期債格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げたことや、米財務省の中期債の発行規模引き上げによる需給悪化懸念に加え、米経済指標が総じて堅調だったことなどから、米10年国債利回りは昨年10月の水準を超え、一時4.33%まで上昇しました。足元の24日時点では4.24%となっており、金利上昇はやや一服しています(図表1)。

米金利上昇を受けて、8月の世界の株式市場は軟調な動きとなっており、日米欧と中国(香港)、インドの株価指数は揃って下落しています(図表2)。米国では2023年好調だったNASDAQ総合の下落が8月の前半では目立ちました。また、7月は好調だった香港ハンセンが中国の不動産開発大手企業の破産申請や景気減速懸念などで8月(24日まで)は9.3%の大幅下落となっています。

為替市場では、米金利上昇に伴って米ドルを中心に円安となっています(図表3)。

こうした投資環境下で、SBI証券取り扱いファンドの1ヵ月パフォーマンスをチェックします。1ヵ月の基準価額騰落率ランキングは「投信」→「ランキング」にある「騰落率(上位)」の「前月比」で確認できます。(詳細はこちら

7月の後半6営業日と8月(23日まで)の1ヵ月基準価額騰落率ランキングの上位8ファンド(一部ファンドは除外)が図表4になります。

米金利上昇で世界的に株式市場が軟調となった1ヵ月間では、トルコ株式、原油やコモディティ、エネルギー関連の資産などが上昇しました。それぞれのファンドについて特徴を確認します。

図表1  米長期金利(10年国債利回り)の推移 (2022年8月31日~2023年8月24日)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表2  主な株価指数の比較 (2022年末~2023年8月24日 2022年末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表3  主な為替レート(対円)の比較 (2022年末~2023年8月24日 2022年末=100)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成

図表4  1ヵ月好成績ファンドの特徴と運用成績

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
*1ヵ月
基準価額
騰落率
1年
リターン
3年リターン
(年率)
1年
標準偏差
1 トルコ株式オープン(愛称:メルハバ) 収益性、成長性、安定性などを勘案したトルコ株式 17.51% 86.15% 29.24% 38.01
2 UBS原油先物ファンド WTI原油指数に価格が連動するETFに投資 10.26% 1.22% 46.26% 21.71
3 シェール関連株オープン 米国、カナダおよびメキシコのシェール関連企業の株式 8.14% 12.13% 43.21% 26.59
4 世界シェールガス株ファンド シェールガスの探査、開発、生産などを行う企業の株式 7.06% 9.94% 40.04% 26.28
5 GS MLPインフラ関連証券ファンド 年2回決算コース(愛称:ザ・シェール) 米国およびカナダに上場するMLP、MLP関連証券など 6.63% 16.05% 42.58% 24.84
6 iシェアーズ コモディティインデックス・ファンド S&P GSCIトータルリターン指数に連動する運用成果をめざす 6.38% -1.57% 38.45% 18.93
7 iFreeActive エドテック 日本を含む世界の教育関連株式 6.35% 5.00% -19.67% 19.66
8 アライアンス・バーンスタイン・M&Aプレミアム(為替ヘッジなし) 公表されたM&A(企業の合併および買収)案件等において、買収の公表と成立との間で発生する価格差(スプレッド)を収益の源泉とする 5.96% 1.91% - 14.72

※SBI証券取り扱いファンドの1ヵ月基準価額騰落率ランキング(7/21~8/23、レバレッジ型・通貨選択型・毎月決算型ファンドは除く)
※1年・3年リターン、1年標準偏差は7月末基準
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

直近1ヵ月 好成績ファンドの特徴は?

1位のトルコ株式オープン(愛称:メルハバ)は、トルコ中央銀行が6月から利上げに転じたことで金融政策を含めた経済政策が徐々に正しい方向に向かっているとの期待などから、トルコ株式が上昇していることが寄与しています。通貨トルコ・リラは、6月に続いて7月、8月(24日に17.5%→25.0%)と利上げ継続によって、下げ止まりの動きです。トルコ株式オープンについては値動きのブレを示す標準偏差がかなり高く、価格変動の大きいファンドといえます。

2位のUBS原油先物ファンドは、WTI原油指数に価格が連動するETF(上場投資信託)に投資しています。6月以降の原油価格の上昇や円安でファンドの基準価額は上昇していますが、原油先物価格は8月9日をピークに下落傾向にあります。

3位のシェール関連株オープンは、米国、カナダおよびメキシコのシェール関連企業の株式に投資しています。組入上位銘柄は、石油メジャー一角であるエクソンモービルとシェブロン、石油・天然ガスの探査、開発、生産、販売を手掛けるEOGリソーシーズなどとなっています (※)。エネルギー株式は2023年の前半は調整局面となっていましたが、6月以降は好パフォーマンスとなっています。

4位の世界シェールガス株ファンドの組入上位銘柄は、カナダのエネルギー企業であるカナディアン・ナチュラル・リソーシズ、米国最大の液化天然ガス(LNG)事業者であるシェニエール・エナジー、カナダの石油・天然ガスの探査会社であるARCエナジー・トラストなどとなっています(※)。エネルギー株式のため3位のファンドと値動きが似ています。

5位のGS MLPインフラ関連証券ファンド 年2回決算コース(愛称:ザ・シェール)は、MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップの略で、エネルギー事業を主な収益源とする共同投資事業形態)およびMLP投資会社の株式、エネルギー関連の株式に投資しています。組入上位銘柄はエクソンモービル、シェブロン、MLPのプレーンズ・GP・ホールディングスなどとなっています(※)。MLPは原則として法人税が免除され、エネルギー関連事業から得られる利益の大半を投資家に配当として還元する特徴があり、相対的に高い配当利回りが魅力となっています。ファンドはMLPの組入比率はそれほど高くはありませんが、直近1年はエネルギー株式よりもMLPの方が好パフォーマンスたったため、3位・4位のファンドとの比較では1年リターンが良好となっています。

6位のiシェアーズ コモディティインデックス・ファンドは、S&P GSCIトータルリターン指数(円換算)に連動する運用成果をめざすファンドです。同指数は幅広くコモディティに分散投資されていますが、エネルギーの比率が約6割となっているため、エネルギー価格変動の影響を受けやすいコモディティ・ファンドといえます。

7位のiFreeActive エドテックは、日本を含む世界の教育関連株式に投資するファンドで、エドテックとは、教育とテクノロジーを融合させた新しいビジネス領域です。世界のエドテック市場は拡大が見込まれています。ファンドは過去に一部組入銘柄の株価大幅下落を受け、3年パフォーマンスは低迷していますが、足元は緩やかですが回復基調にあります。

8位のアライアンス・バーンスタイン・M&Aプレミアム(為替ヘッジなし)は公表されたM&A(企業の合併および買収)案件等において、買収の公表と成立との間で発生する価格差(スプレッド)を収益の源泉とするという特殊なファンドです。直近1ヵ月は組入銘柄の株価上昇で好パフォーマンスとなっていますが、7月末までの1年間は通貨要因を除くとマイナスリターンとなっています。ファンドは1年程度の実績しかなく、組入銘柄の株価は合併の遅延などにより下落するケースもあり、足元の好パフォーマンスを継続できるかは不透明といえます。

上記の8ファンドは、米国株式インデックスや全世界株式インデックスと値動きが異なる傾向があるため、一部のファンドについては、ファンド特性を押さえた上で分散投資先として有効と考えます(図表5)。

リスクと取ってリターンを狙うならトルコ株式オープン(愛称:メルハバ)、米国株式で業種分散を図るならGS MLPインフラ関連証券ファンド 年2回決算コース(愛称:ザ・シェール)などが候補と考えます。

なお、23日取引時間外に米半導体大手エヌビディアが好決算を発表も、週末のジャクソンホール会議での米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長による金融引き締めに前向きな「タカ派」発言への警戒感から24日の米国株式市場は軟調な動きとなっています。ジャクソンホール会議後の市場の混乱がなければ、生成AI関連銘柄などに注目が集まり、「5月は生成AI関連銘柄が急上昇! AI関連ファンドの運用成績は?」で取り上げたファンドなどが分散投資先として有望と考えます。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。各ファンドの組入上位銘柄の情報は2023年7月末基準。

図表5 1ヵ月好成績ファンドのパフォーマンス比較 (2022年8月31日~2023年8月23日)

※QUICKのデータをもとにSBI証券作成 (ファンド名は一部愛称または略称)

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