円高の1年 オルカン・S&P500 を上回った 3年好成績ファンドは?

円高の1年 オルカン・S&P500 を上回った 3年好成績ファンドは?

投資情報部 川上雅人

2025/05/19

2025年 主な海外株式ファンドの運用成績は?

2025年4月の世界株式は、初旬に米相互関税の発表などから世界景気の悪化懸念が拡がり株価は大幅下落となりました。その後は、相互関税の上乗せ分について、90日間の停止が発表されたことや、米中貿易摩擦の緩和期待が拡がったことなどから反発となりました。
為替市場においては、年初から米景気の減速懸念や米相互関税の不透明感などから円高ドル安が進行していましたが、4月下旬からは日銀の利上げ観測が後退したことや株高を受けて、やや円安ドル高に転じました。
こうした投資環境を受けて、主な海外株式ファンドの2025年のパフォーマンス(5/14まで)は図表1となっています。
基準価額の計算に使われてるドル円TTMは6.9%下落し、海外株式ファンドの基準価額押し下げ要因となりました。ファンド別ではeMAXIS Slim 全世界株式(以下、オルカン)は4.0%の下落、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(以下、S&P500ファンド)は7.8%の下落、SBIセレクトの人気ファンドである野村業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)は9.9%の下落となっています。
2025年は長期のパフォーマンスが良好だったファンドほど4月上旬までの下落が大きくなり、その後は反発しているものの、結果的にはこれまで大きく上昇したファンドほど下落が大きくなっている傾向にあります。

今後の投資戦略を考える上で、オルカンやS&P500ファンドの保有者は、値動きの異なるファンドに投資することと、値動きの異なるファンドの中でも長期で好パフォーマンスを上げているファンドへの分散投資が有効と考えます。なお、オルカンは米国株式に約63%投資しているため、S&P500ファンドと値動きの傾向は類似しています。
そのような視点から、円高となった2024年4月末から2025年4月末までの1年リターン(ドル円TTMは▲9.1%、ユーロ円TTMは▲3.5%)において、ほぼ横ばいにとどまったオルカンやS&P500ファンドと比較して上昇し、かつ3年でも好成績となったファンドが、スクリーニングの1つのアイデアとして有効と考えます。そのファンド一覧が図表2となり、それぞれのファンドについてコメントします。

図表1 2025年 海外株式ファンドのパフォーマンス比較 (2024/12/30~2025/5/14 2024/12/30=100)

  • ※QUICKデータをもとにSBI証券作成
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

図表2 NISAで買える オルカン・S&P500を上回る 3年好成績ファンド

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1年
リターン
3年
リターン
(年率)
5年
リターン
(年率)
3年
標準偏差
(年率)
1 iFreeNEXT FANG+インデックス 米国テクノロジー企業10銘柄で構成されるFANG+インデックスへの連動を目指す 12.80% 36.90% 35.11% 27.02
2 中欧株式ファンド ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアを中心に、それらの周辺諸国の株式に投資 16.90% 33.20% 29.77% 20.48
3 イタリア株式ファンド 主にイタリアの上場企業または同国において主な事業を展開する企業の株式 6.33% 26.32% 24.40% 18.09
4 ダイヤセレクト日本株オープン 三菱グループ企業の株式の中から流動性や信用リスク等を勘案して銘柄を決定 1.93% 24.30% 23.19% 13.77
5 SMT ゴールドインデックス・オープン(為替ヘッジなし) 金現物に投資するETFに投資し、LBMA金価格(円換算)に連動する投資成果を目指す 28.33% 24.11% 19.99% 14.11
6 イノベーション・インデックス・シェアリングエコノミー 世界各国の企業の中から、シェアリングエコノミー(共有経済)関連企業の株式に投資 12.96% 23.23% 17.62% 19.55
7 インデックスファンドDAX(ドイツ株式) ドイツの株価指数であるDAX指数(円換算)の動きに連動する投資成果を目指す 17.14% 23.02% 21.28% 16.00
8 グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:未来の世界) 個別企業の競争優位性、成長力の評価等に基づき選定した質の高いと考えられる企業の株式に投資 8.05% 22.55% 18.01% 19.45
9 WCM 世界成長株厳選ファンド(資産成長型)(愛称:ネクスト・ジェネレーション) 参入障壁の持続可能性、企業文化、構造的成長力等に基づき世界の株式に投資 29.64% 22.06% - 20.55
10 グローバル・フィンテック株式ファンド 世界の株式の中から主にフィンテック関連企業の株式などに投資 23.12% 21.92% 12.37% 35.62
参考 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) S&P500インデックスファンド -0.15% 15.16% 21.86% 16.37
参考 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 全世界株式(日本を含む)インデックスファンド 0.20% 13.97% 19.60% 13.65
  • ※NISA・成長投資枠対象ファンド(SBI証券ネット取り扱い)の中で1年リターンがオルカンを上回ったファンドを3年リターン順に表示(2025年4月末基準)
  • ※ 投資対象が同じファンドは3年リターン最上位のファンドのみを表示
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

円高の1年でも上昇! 3年好成績ファンドは?

3年リターン1位のiFreeNEXT FANG+インデックスは、米国テクノロジー企業10銘柄で構成されるNYSE FANG+指数(配当込み・円ベース)の動きに連動した投資成果を目指すファンドです。組入銘柄はアップル、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、ネットフリックス、クラウドストライク、サービスナウ、アルファベット、エヌビディア、ブロードコムとなっています(※)。5年リターンでもトップクラスの実績ですが、10銘柄集中投資のため値動きの振れ幅を示す標準偏差が大きくなっています。
2位の中欧株式ファンドは、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアを中心に、それらの周辺諸国の株式等に投資しているファンドです。投資国比率は、ポーランド72.8%、ハンガリー11.4%、チェコ5.5%となっています(※)。安定した経済成長などを背景に投資している3ヵ国の株価指数は好パフォーマンスとなっていることから、1年や5年でも好成績のファンドです。
3位のイタリア株式ファンドは、主としてイタリアの金融商品取引所に上場している企業または同国において主な事業を展開する企業の株式等に投資しているファンドです。組入上位銘柄は大手電力会社のエネル、大手商業銀行のビーぺルバンカ、天然ガス輸送および貯蔵施設の運営を行うスナム、イタリア最大規模の金融機関のインテーザ・サンパオロ、自動車メーカーのフェラーリなどとなっており、組入銘柄数は13銘柄です(※)。イタリアの株価指数は5年間上昇基調となっており、通貨ユーロが相対的に堅調なことから1年、3年、5年いずれもS&P500ファンドを上回るパフォーマンスとなっています。
4位のダイヤセレクト日本株オープンは、三菱グループ企業の株式の中から流動性や信用リスク等を勘案して銘柄を決定しているファンドです。組入上位銘柄は三菱重工業、三菱電機、三菱商事、東京海上ホールディングス、三菱地所などとなっており、組入銘柄数は22銘柄です(※)。1年リターンはS&P500・オルカンと大きな差はありませんが、3年・5年リターンではS&P500ファンドを上回る実績です。
5位のSMT ゴールドインデックス・オープン(為替ヘッジなし)は、金価格に連動を目指すインデックスファンドです。株式市場の下落局面でも金価格が上昇したことから1年で特に好成績です。
6位のイノベーション・インデックス・シェアリングエコノミーは、世界各国の企業の中から、シェアリングエコノミー(共有経済)関連企業の株式に投資しているファンドです。組入上位銘柄は旅行関連のオンラインサービスを展開する米国のブッキング・ホールディングス、ネットフリックス、世界でオーディオストリーミング配信サービスを提供しているルクセンブルグ籍のスポティファイ・テクノロジー、アマゾン・ドット・コム、建設・産業機器のレンタル会社として世界最大級を誇る米国のユナイテッド・レンタルズなどとなっており、組入銘柄数は82銘柄です((※)。
7位のインデックスファンドDAX(ドイツ株式)は、ドイツの株価指数に連動する投資成果を目指すファンドです。組入上位銘柄は欧州最大のソフトウェア開発会社のSAP、電気メーカーのシーメンス、世界有数の金融グループであるアリアンツ、ドイツテレコム、航空宇宙企業のエアバスなどとなっており、組入銘柄数は40銘柄です(※)。
8位のグローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:未来の世界)は、投資アイデアの分析・評価や、個別企業の競争優位性、成長力の評価に基づき選定した質の高いと考えられる世界の企業の中から、市場価格が理論価格より割安と判断される銘柄を厳選して投資を行うファンドです。組入上位銘柄はメタ・プラットフォームズ、ウーバー・テクノロジーズ、南米市場最大の電子取引サイトを運営するアルゼンチンのメルカドリブレ、スポティファイ・テクノロジー、料理や日用品の宅配サービス大手である米国のドアダッシュなどとなっており、組入銘柄数は34銘柄です(※)。
9位のWCM 世界成長株厳選ファンド(資産成長型)(愛称:ネクスト・ジェネレーション)は、参入障壁の持続可能性、企業文化、構造的成長力、バリューエーション等に基づき世界の株式に投資するファンドです。組入上位銘柄は、アプリケーション技術プラットフォームを提供する米国のアップラビン、消費者向けインターネット企業であるシンガポールのシー、ドイツのエネルギー企業のシーメンス・エナジー、プライベート・エクイティ・ファンドを中心に運用を行う投資管理会社である英国の3iグループ、スウェーデンの航空機メーカーのサーブなどとなっており、組入銘柄数は35銘柄です(※)。世界の幅広い業種の成長企業に投資しているファンドといえ、1年リターンはトップクラスの実績となっています。
10位のグローバル・フィンテック株式ファンドは、カナダを拠点に、クラウドベースのEコマースプラットフォームを提供するショッピファイ、金融サービスプラットフォームを手がけるフィンテック証券アプリ企業である米国のロビンフッド・マーケッツ、暗号資産取引プラットフォームを運営する金融インフラ技術プロバイダーの米国のコインベース・グロ―バル、ビッグデータ解析のソフトウェアプラットフォームを提供する米国のパランティア・テクノロジーズ、レストラン向けクラウドベースのオールインワンデジタルテクノロジープラットフォームの運営を手掛ける米国のトーストなどとなっており、組入銘柄数は40銘柄です(※)。ビットコイン価格との連動性が高いのが特徴で、標準偏差がかなり大きいファンドです。

上記ファンド10本の投資対象は様々で、①オルカンやS&P500ファンドよりも標準偏差(リスク)は高いが、長期で高いリターンが期待されるファンド(1位、6位、8位、9位、10位のファンドで、主に米国や世界の成長株式)と、②オルカンやS&P500ファンドとは値動きが異なる好成績ファンド(欧州株式や国内株式、金)、大きく2つに分けられるのではないかと思われます(図表3参照)。
各ファンドの特徴を理解した上で、これらのファンドを組み合わせて保有することで、収益の分散化を図るのも有効と考えます。

(※)組入銘柄の情報は3月末基準(4位、7位、9位のファンドは4月末基準)。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。

図表3 3年好成績ファンドのパフォーマンス比較 (2022/3/31~2025/5/14 2022/3/31=100)

  • ※QUICKデータをもとにSBI証券作成
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

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