【マーケット・フラッシュ】シリコンバレー銀行が経営破綻。米国株への影響は?
投資情報部 齊木 良
2023/03/13
カリフォルニア州に本社があるSVBファイナンシャル グループ(SIVB)傘下で、新興企業向け融資を行うシリコンバレー銀行が3月10日に経営破綻しました。2022年末の資産規模は2090億ドルで全米16位、預金は1754億ドル、支店数は17で、破綻規模は2008年に経営破綻した米貯蓄金融機関ワシントンミューチュアルに次ぐ2番目の大きさです。なお、銀行破綻は2020年10月以来となります。
シリコンバレー銀行は1983年に設立され、テクノロジーやライフサイエンス、ヘルスケア業界の顧客がメインで、そのほか、プライベートエクイティやベンチャーキャピタルの顧客を有します。総資産に占める債券比率が高く(50パーセント強)、金利上昇の悪影響を受けやすい状況でした。
新興企業などの顧客はそもそもIPO市場の低迷やプライベートファンディングの低迷で手元資金確保の必要があり、また、下記の8日発表の対応策に敏感に反応し、預金を引き出して、その結果、シリコンバレー銀行が資金不足に陥いりました。3月8日に対応策を発表しましたが、わずか2日で経営破綻になりました。
<経営破綻までの流れ>
3月8日
利上げの悪影響によるバランスシート改善を目的として、米国債やエージェンシー債で210億ドルを売却、18億ドルの損失が出ると発表しました。合わせて22.5億ドルの資金調達を発表して、乗り切る予定でした。
3月10日
FDIC(米国預金保険公社)は、シリコンバレー銀行がカリフォルニア州金融保護当局に閉鎖され、FDIC管理下になったと発表しました。顧客は最大25万ドルまでは全額保護される予定です。
なお、10日のマーケットでは大手金融機関のJPモルガン チェースとウェルズ ファーゴの株価がそれぞれおよそ2.5%と0.6%の逆行高、バンク オブ アメリカとシティグループは1パーセント未満の下落に留まっており、大手銀行への影響は軽微でした。一方、ストリーミング配信機器のロク(ROKU)は、シリコンバレー銀行にロクの預金の26%に相当する4.9億ドルの預金があると公表し、10日の時間外取引で株価が下落しました。向こう12か月の金融支払いの履行には問題がないとしていますが、ロクのようなケースが今後多く発表されるかどうかは、注視されると思われます。また、シリコンバレー銀行が新興企業向けで(個人よりは預金額が多いため)預金の多くは保護対象外と見られています。保護対象外の預金者には前払い配当が支払われる予定ですが、預金の返還がなければ、たとえば従業員への給与支払いが滞る等の影響が想定され、実体経済への悪影響の可能性もあります。従って、短期的には金融株を中心に相場は不安定な動きが続く可能性が高いと思われます。特に懸念されるのは、次の『シリコンバレー銀行』探しがマーケットで始まることで、現時点で株価が大きく下げているのはサンフランシスコを拠点とし、ベンチャー企業やテクノロジー企業の富裕層向け事業を行うファースト リパブリック バンク(FRC)、ウェスタン アライアンス バンコープ(WAL)、パックウェスト バンコープ(PACW)、仮想通貨関連向けのシグネチャー バンク(SBNY)等の株価推移には注意が必要と思われます。なお、シグネチャー バンク(SBNY)はNY州当局により12日、事業停止になったと報じられました。
<銀行株のパフォーマンス(%)>
- *BloombergのデータよりSBI証券作成。名称はBloombergより取得しており、当社HPの表記と異なる場合があります。SIVBは現地で取引停止されています。
ただし、通常の銀行は顧客が個人、法人など多岐に渡りますがシリコンバレー銀行は新興企業向けの特異な銀行で、また、米銀行業界全体では利益をしっかり出しており(2022年の純利益は2630億ドル)、銀行全体の問題にはなりにくいと思われることから、徐々にマーケットは落ち着きを取り戻すと考えられます。また、FDICによると銀行全体の含み損は6200億ドルありますが、シリコンバレー銀行のケースではやむ無く債券売却の必要に迫られました。今後顧客による預金引き出しが相次いで資金不足に陥るというケースにならなければ、債券売却による実現損として表面化するケースは少なくなると考えられます。
マーケットが落ち着きを取り戻すタイミングとして考えられるのは3月21-22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)と思われます。FOMCが控える中で、FRBの利上げの悪影響がシリコンバレー銀行の経営破綻として表面化しました。破綻連鎖を防ぐためにも今月のFOMCでは25bpsの利上げの可能性が高まったと考えられます。FEDウォッチでも25bpsに傾いています。FOMCで25bpsの利上げにとどまれば、マーケットは徐々に落ち着きを取り戻していく可能性があると思われます。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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