日経平均は保ち合い放れ!~今後注目すべき3つのイベントは

日経平均は保ち合い放れ!~今後注目すべき3つのイベントは

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/03/07

日経平均、年初来高値を更新!中国需要回復が株高に寄与

3月第1週(2/27~3/3)の日経平均は、前週末比473円99銭高(+1.7%)と週足ベースで反発。しばらく続いた保ち合いから抜け出し、上昇相場となりました。年明けから上値が重く、中々抜けられなかった27,500円近辺をついに突破した形で、3/6(月)には終値28,237円と昨年12/1(木)以来の高値水準まで上昇しました。また、TOPIXも同様に保ち合い相場から抜け出し、日経平均とともに年初来高値を更新した形です。

東京市場が堅調なパフォーマンスとなった要因には、中国景気見通しの回復があります。3/1(水)に発表された中国の2月製造業PMIは52.6(予想:50.6)と2012年4月以来の高水準となりました。同期間の東証業種別の上昇率上位には、鉄鋼、鉱業、石油など、ゼロコロナ政策から中国の需要見通し悪化の煽りを受けていた業種が顔を並べました。日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(2/27~3/6、図表7)でも、同様の業種からランクインした銘柄が多くあります。

他には卸売業の上昇率も業種別第3位であり、3月の配当取りとみられる動きがありました。卸売業に属する商社株の好業績には、資源価格の上昇が寄与しています。しかし、米欧中央銀行の積極的金融引締めにより世界的に景気見通しが悪化。原油などでも需要減少観測が生じ、足元の原油価格はロシアのウクライナ侵攻前の水準まで落ち着きを見せています。大手商社の来期(24.3期)市場予想は、資源価格の下落などから減収・減益見通しです。

一方、市場では2023年後半に原油価格が1バレル100ドルに上昇すると予想する声が増えています。背景には、中国需要の回復やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、米国シェールオイル生産鈍化などにより、石油生産量が消費量を満たせないとの見方があります。直近では、前述の中国2月製造業PMIが堅調な数値を示したことも、この原油高観測を強める材料となりました。そして、3/5(日)に開幕した全人代では、2023年の実質GDP成長率目標が前年比5%前後と発表されました(前年は3%増)。世界の資源需要動向の鍵を握る中国経済指標は、今後更に世界の注目を集めることが予想されます。

投資家の皆様には原油価格は2023年にも再上昇する可能性があるということも念頭に置いておくこともお勧めします。もし、再びの資源高となれば商社の業績にとっては、かなりの好材料となるため、減益見通しが覆される可能性も今後大いに考えられます。

同期間は米国市場も、NYダウが+1.7%、構成銘柄のほとんどがグロース株のナスダックは+2.6%と堅調でした。東京市場同様、中国景気見通し回復やFRB(米連邦準備制度理事会)メンバーのハト派発言が株高要因です。3月第2週(3/6-10)はパウエルFRB議長発言や2月雇用統計の発表などの注目イベントが予定されています。さらに、週内最終営業日(3/10)に雇用統計の発表を控え、身動きがとりづらい展開が予想されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(2/27~3/6)

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(2/27~3/6)

日経平均は保ち合い放れ!~今後注目すべき3つのイベントは

米国では3月21から22日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)に向けて、今週末(3/11)からFRB当局者が金融政策に関する発言を控えるブラックアウト期間に入ります。ブラックアウト前には金融当局者の駆け込み的な発言が増える傾向にありますが、その中でもっとも注目されるのは、7日に上院銀行委員会、8日に下院金融委員会で行われるパウエルFRB議長の議会証言でしょう。

最近、米国では経済活動やインフレに関して堅調なデータが目立ちます。そうした中FOMCの政策メンバーからはインフレ抑制に向けて、一段とタカ派姿勢を強める発言が相次いでいます。今週の議会証言でもパウエル議長は改めてインフレの抑制に向けて強い姿勢を示す可能性が高いと見られます。

昨年12月に開催されたFOMCでは、政策メンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)を通じ、今回の利上げ局面における最終的な到達点(ターミナルレート)は5.125%(5.00-5.25%)と示されていました。1月雇用統計が発表される前の時点で市場参加者は、実際の政策金利の軌道がターミナルレートに達する前に利下げに転じると予想していました。しかし、現状では、ターミナルレートは引き上げ方向にあるとの見方が広まりつつあります。今回の議会証言でパウエル議長がターミナルレートの具体的な水準に言及することはないと見られますが、それでも同氏がタカ派的なスタンスを示すことで、市場の予想する政策金利の水準が大きく引き上がるようであれば、株式市場において金利上昇を嫌気した売りが膨らむ可能性があります。

図表9 米国政策金利見通し(FOMC VS 市場予想)

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


次に米国の経済指標で注目されるのは、10日に発表される2月雇用統計でしょう。そもそも、米国市場において金融引き締め観測が強まったきっかけとなったのは2月3日に発表された1月雇用統計でした。非農業部門雇用者数は前月比+51.7万人と市場予想(同+21.0万人)を大きく上回り、失業率は3.4%と約54年ぶりの水準へ低下するなど、昨年からの急ピッチな利上げにも関わらず堅調な雇用市場が示されたことで、市場において金融引き締めの長期化観測が高まりました。

  1月雇用統計は暖冬だったことが雇用改善に大きく貢献した模様であり、今回発表される2月統計でも暖冬効果が継続している可能性があります。2カ月連続で強いデータが示されれば、金融引き締め観測とともに長期金利が上昇する可能性があります。米10年国債利回りは、2月上旬の3.4%から足元で4.0%前後へ上昇しましたが、統計結果次第では昨年10月につけた4.2%台に到達する可能性があるでしょう。



図表10 米国雇用統計

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


一方、国内では2月9から10日かけて日銀金融政策決定会合が開催されます。今回は黒田体制で行われる最後の会合であり、植田次期体制への移行を前にイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の修正・撤廃を含めた措置を講じるのではないか、との見方が根強く残されているようです。

現時点でその可能性は低いと見られます。1月の会合前には、国債の現物や先物市場においてYCCの撤廃を予想した債券売りが活発になりましたが、その際、日銀は動きませんでした。現状、YCCを撤廃する強い動機は無いと見られるため、短期筋などに急かされる格好で日銀が動くとは考え難いでしょう。

もっとも、日銀がサプライズでYCCの修正・撤廃に動くとすれば、今週の会合を前に国債市場で売り圧力が高まっていない場合なのかもしれません。昨年12月のYCCの修正は、市場参加者からはほぼノーマークであり、意表を突く格好となりました。YCCはいずれ撤廃される方向なのは間違いなさそうなのですが、特定の投資家層が利することを防ぐタイミングで行うためには、こうしたサプライズは避けられないのかもしれません。いずれにせよ、日銀会合前後の相場の動きに注意する必要があるでしょう。

図表11 日本10年国債利回りと長期国債先物価格

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


おすすめ記事(2023/03/07 更新)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎のSPAN掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額はSPAN証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。