半導体株急変動!「エヌビディア決算」を控え、一部投資家が取った投資手法は?

投資情報部 鈴木 英之

2024/05/29

東京株式市場は一見、方向感に乏しい動きが続いています。しかしテクニカル的には当面の「弱気」局面を脱し、「強気」局面に転じた可能性が大きそうです。

一般的に、日経平均株価の日々線が25日移動平均線を上回れば「強気」局面、下回れば「弱気」局面と理解されます。日経平均株価の日足終値は5/16(木)以降、連日で25日移動平均線を上回っており、「強気」局面への転換を示唆しています。さらに、25日移動平均線自体が上昇基調なら「強気」局面、下落基調なら「弱気」局面とする考え方もあります。日経平均株価の25日移動平均線は5/24(金)に前日比で上昇に転じており、やはり「強気」局面への転換を示唆しています。

日経平均株価が当面の安値を付けたのは4/19(金)で、それ以降同株価はジリ高傾向に転じました。また4/19以降、東京株式市場では決算発表が本格化しましたが、株主還元の強化等を打ち出す企業が多く、そのことが株価の下支え要因になりました。

また、4/19(金)を底に、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が上昇し、日本の半導体関連株を刺激したことも強い追い風になりました。結局同指数は、4/19(金)から5/24(金)まで21%上昇し過去最高値を更新しました。

そんな半導体関連銘柄をめぐる動きの中、市場で大きく注目されたのが米半導体大手エヌビディアの決算発表でした。同社はAI(人工知能)向け半導体で約8割のシェアを有するファブレス(工場を持たない)半導体メーカーです。同社は日本時間2/22(木)早朝、24年4月期3Qの決算発表を実施しましたが、同決算発表は「満点」と評されるほどで好調で、それを好感して2/22(木)の東京株式市場では、半導体関連株が軒並み上昇しました。

そして、同社の本決算発表となったのが日本時間5/23(木)早朝でした。今回も同社決算は「満点」とされ、同日の東京株式市場では半導体関連株が総じて強い動きになりました。

そうした中、一部の投資家が利用した取引手法をご紹介したいと思います。それは、「SBI株オプション」です。今回は「コールの買い」をご紹介したいと思います。「SBI株オプション」は、ターゲット価格を決めた「約定日」の翌営業日終値が、ターゲット価格よりも上昇するか、下落するかを予想して行う取引です。

取引実例として「ディスコ(6146)コールの買い」をご紹介します。ディスコは半導体シリコンウェハから半導体チップを切り分けるダイシングソーで高い世界シェアを有する企業です。仮にエヌビディア株が日本時間5/23早朝に好決算を発表すれば、5/23にディスコ株も上昇するかもしれません。以下、あくまでも「実例」であり、今後も同手法が利益につながるとは限りませんのでご注意ください。

○5/22(水)の午前8時30分までにディスコ(6146)の「コールの買い」をターゲット価格100%で発注します。
  ※5/23早朝にエヌビディアの決算発表を確認する前日である点にご注意ください。

○5/22(水)の始値57,240円が約定価格です。
         約定価格の100%(57,240円)がターゲット価格です。
         また、約定価格の1.57%=898.668 円が支払うべきプレミアム価格(コスト)です。

○結果・・・ディスコ株は5/23(木)に前日比4,590円高で終値は62,260円となりました。この価格が、今回取引の評価価格になります。

    (1株当たり差損益)=(ディスコ株の上昇金額)-(プレミアム価格)
                =(62,260円-57,240円)-898.668円=4,121.332 円(利益)

ディスコ株の上昇見通しを前提としたトレードは成功し、1株当たり4,121円33銭の利益が実現しました。実際の取引では最低取引単位100株で412,133円の利益が出る計算です。

残念ながら、仮に5/23(木)終値が58,138円(57,240+898.668:呼び値を考慮)以下の場合は損失が出ます。しかし、5/23(木)終値がターゲット価格(57,240円)をいくら下回っても、最大損失はプレミアム料の1株898.668円(100株で89,866円)だけになります。

最後に「SBI株オプション」の利点とリスクをおさらいしておきます。

【株オプションの利点とリスク】

★想定される利点

(1)損失の限定・・・「コールの買い」にせよ、「プットの買い」にせよ、想定される最大損失額が「プレミアム価格×株数」に限定されることです。「実例」では、最大損失額は1株当たり898.668円ですから、100株で89,866円に限定される計算です。

(2)1株当たりのプレミアム価格を投資金額とすれば、投資する間に固定される資金も抑えられることになります。

※ディスコ株(現物)を5/22(水)始値(57,240円)で最低投資単位の100株購入すると、572万4千円の資金が必要であり、売却までその金額が固定されることになります。

(3)投資額に対して高いパフォーマンスも・・・「実例」において、利益は1株当たり4,121円33銭でした。したがって100株で412,133円の利益が出る計算です。(1)のプレミアムを投資金額とすれば、それに対し高い利益が出る可能性もあります。

(4)「SBI株オプション」では、取引期間が「1日(1 Day)」に単純化されていますので、オプション取引でプレミアム評価に関係する「時間的価値」を考慮する必要が原則ありません。

(5)ETF(上場投信)も投資対象ですので、日経平均株価や米国株、REIT価格等、幅広い商品を投資対象とし、リスクを限定して投資することが可能です。

★注意すべきリスク

(1)リスクを大きく取ろうとすれば、投資する株数を大きくすればよい訳ですが、投資資金(プレミアム)がすべて失われるケースもあります。

(2)取引期間が短いため、想定していた相場観が、その分実現されない可能性が大きくなりそうです。経済指標や個別企業のイベント等をしっかり把握して活用した方が、勝率アップにつながりそうです。

(3)現物株投資では、買付価格を上回った部分がそのまま利益(税込み)になりますが、株オプションでは、評価価格とターゲット価格の差がそのまま利益ではなく、プレミアム価格を引いた金額が利益の計算です、現物株取引の同数量の取引よりも利益が圧縮される計算になります。

利点とリスクを十分ご理解いただいて取引にご参加いただければ、株価の乱高下が想定される株式市場への対応力が増すのではないでしょうか。慣れない間は、投資株数を抑えて参加することも重要かと思われます。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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