日経平均が一時1ヵ月ぶりの安値に下落!今後の展開は?
投資情報部 鈴木 英之
2024/05/30
5/30(木)の日経平均は寄り付きから大きく下落し、一時37,617円と900円超下落する場面がありました。
この引き金となったのは前日の米国株安の動きなのですが、その背景には主に2つの点が挙げられます。1つは利下げ期待が後退したことなどを手掛かりに米国金利が上昇傾向にあることです。米10年国債利回りは5月半ばに一時4.3%台へ低下していました。しかし、その後は再び上昇へ転じ、足元では4.6%台に到達しました。米金融政策を巡り、市場ではFRBが今年9月から利下げを開始し、年内に1回から2回程度の利下げが行われるのではないかと見られていたのですが、足元ではこうした見方が後退しています。米国では6/11・12に連邦公開市場委員会(FOMC)の開催を控え、今週末からブラックアウト期間(金融当局者が公に金融政策に関する発言を禁じられる)に入ります。これを前に市場では当局者による発言への注目が集まりやすくなりますが、28日にカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁が「追加利上げの可能性を完全に排除した訳ではない」と発言するなど、タカ派色の強い見解に市場が反応したと見られます。
また、これまで株式市場をけん引してきた人工知能(AI)への期待を手掛かりとする相場の一服感が意識されたようです。前述のとおり、このところ米長期金利は上昇傾向にあり、本来ならばAIや半導体などの成長株(グロース株)にとって逆風の展開になっても不思議ではありませんでした。ところが、実際はAI関連銘柄の筆頭格である米エヌビディアの好決算や、同社の好材料が続いたこともあり、半導体関連株などを含めて堅調に推移してきました。しかし、昨日の米国市場ではAI関連株が売られ、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が大幅に下落。この流れを受けて国内株式市場でも値がさハイテク株を中心に売り優勢の展開となりました。
外部環境の悪化に加えて、国内市場で不気味な?動きとして意識されているのが日本の長期金利の上昇です。10年国債利回りは、イールドカーブコントロール政策(※24年3月に撤廃)で上限目途とされていた1%を超えても尚、上昇が続いており、30日には一時1.1%と13年ぶりの高水準に到達しました。国内長期金利の上昇は、日本株にとって一長一短の面もあるのですが、このところの金利上昇は、国内債としては急ピッチであり、株式市場でも警戒されていると見られます。
当面の日経平均については、日米の金利動向次第の動きになると考えられます。米国では来週からブラックアウト期間に入ります。FOMC開催までは金融政策に関する材料が少なくなることから、米金融緩和観測の後退を手掛かりとする米国金利の上昇局面は、一旦、おちつく可能性があります。一方、日本の長期金利については、米国金利に連動している面があり、米金利の上昇が止まれば、こちらも一服することが想定されます。ただ、国内金利については、日本の金融引き締め観測など、日本独自の材料が意識されるようであれば、もう一段の金利上昇の可能性に注意する必要がありそうです。
また、AI相場については、AIの成長性に対する中長期的な見方に変化があるわけではないと考えられます。ただ、以前のようにエヌビディアを中心に、金利上昇でも株価が大きく上昇するような局面ではなくなってきている可能性があります。したがって、この点についても、金利動向を見ながらの動きになると考えられます。以上のことを考慮すると、当面の日経平均は、日米の金利上昇が一服することで、一旦、自律反発の展開が想定されるでしょう。
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