投資戦略2020年の回顧と2021年の予想

2020年の回顧

新型コロナウイルス感染症の患者数は増え続けている。2021年に入ってもこの傾向は暫く続くであろう。ただ、致死率は2020年3月をピークに低下している。まるで「学習曲線」さながらである。株式相場は、致死率の低下を背景に上昇してきた。感染者数的には、「正常化」は2021年以降のテーマであろう。しかし、致死率を見ると「正常化」は2020年のテーマであった。特に株式相場についてはそうであった。2020年の日経平均株価のリターンは、過去10年平均(10.1%)よりやや高い水準で着地しそうである。致死率の低下により、不安心理が後退した結果であろう。必ずしも財政金融政策のおかげではない。

2021年の展望

2021年には、新型コロナウイルス感染症によって先送りを余儀なくされた課題に改めて取り組む年になる。株式市場にとってはグロース株によって嵩上げされたバリュエーション調整が鍵を握る。低金利によって高バリュエーションは必ずしも正当化されない。現在のTOPIXのPERは23倍だ。過去10年平均(15倍)に戻るだけで調整幅は単純計算で35%になる。東証一部上場企業の新年度の営業増益率は31%(会社四季報)との予想である。ただ、大幅増益もバリュエーション調整で相殺される危険性がある。グロース株には既に調整の兆しがあるだけに年前半には要注意だ。年前半安、後半回復という展開を予想する。日経平均株価のレンジは、23,000円から27,000円、年末は25,000円と予想する。

2021年のキーワード

デフレのROEからインフレのESGへ。5年前の2015年、ROEという言葉を含む記事数は446件であったのに対しESGという言葉を含む記事数は33件であった(いずれも日本経済新聞)。2020年はどうか。ROEを含む記事数が108件まで減少していたのに対し、ESGを含む記事数は512件まで増加した(12/23現在)。部分最適のROEがデフレ的であるのに対して、全体最適を志向するESGはインフレ的である。時代は、デフレからインフレへと移行しつつある。

北野 一
SBI証券 金融調査部長(チーフストラテジスト)

1982年に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。債券ディーラー、為替アナリストを経て、金融ビックバン後、東京三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)で株式ストラテジスト。2006年からJPモルガン証券、2013年からはバークレイズ証券にて日本株ストラテジーを担当。2016年からは、みずほ証券でエクイティ調査部長。2019年7月にSBI証券入社。日本株ストラテジストとして再スタート。

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