家族信託にかかる費用の相場と失敗しない活用方法 (株式会社ファミトラ 2025.4.30)

家族信託は、認知症対策や相続対策として注目を集めている制度ですが、その導入を考える際に多くの人が気にするのが「費用」です。また、家族信託を適切に活用するためには、そのデメリットや注意点も理解しておく必要があります。この記事では、家族信託にかかる費用の相場と、失敗しない活用方法について詳しく解説します。
家族信託の費用内訳と相場
家族信託にかかる費用は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
- 契約に関する費用
- 登記に関する費用
- 信託契約締結後にかかる費用
それぞれの費用について詳しく見ていきましょう。
契約に関する費用
- コンサルティング費用
専門家に家族信託の相談や設計を依頼する際にかかる費用です。一般的に、信託財産の合計額の1%〜1.5%程度が相場となります。
また、多くの場合、最低報酬額が定められています。
- 信託契約書作成費用
信託契約書の作成にあたって専門家に支払う費用です。信託財産額や設計により、個別の見積になります。
上述のコンサルティング費用に含まれているケースもあります。
- 公正証書作成費用
信託契約を公正証書で作成する場合の費用です。信託する財産の評価額によって変動します。
登記に関する費用
- 登記代行手数料
不動産を信託財産とする場合、信託登記が必要です。登記代行手数料として専門家に支払う費用は、1管轄(管轄する法務局の数)あたり10万円程度が相場です。
- 信託登記の登録免許税
信託登記の際には登録免許税が発生します。土地は固定資産評価額の0.3%(2026年3月31日まで)、建物は0.4%です。
信託契約締結後にかかる費用
- 信託監督人報酬等
信託監督人を設置する場合や、信託の組成を依頼した専門家に信託契約の締結後も引き続きサポートを依頼する場合は、ランニングコストがかかる場合があります。
家族信託の費用相場
専門家に依頼して家族信託を組成する場合、一般的な費用の相場は50万~100万円程度です。ただし、信託財産の規模や内容などによって大きく変動する可能性があります。
具体的な例として、信託財産が5,000万円(預貯金1,000万円+自宅不動産4,000万円)で、信託の継続期間が10年間の場合を考えてみましょう。
- コンサルティング費用:5,000万円 × 1% = 50万円
- 信託契約書作成費用:15万円
- 公正証書作成費用:2.9万円(証書の枚数により手数料の加算があります)
- 登記代行手数料:10万円
- 登録免許税: 12.5万円(土地3500万円、建物500万円と想定)
合計:約90.4万円
(注)家族信託の設計内容によっては、締結後ランニングコストが発生する可能性があります。
家族信託を失敗しない活用方法
家族信託は有効な財産管理・承継の手段ですが、信託契約書の内容によっては、様々な問題が発生する可能性があります。以下に、家族信託を失敗しないための重要なポイントを紹介します。
委託者に判断能力があるうちに契約を結ぶ
家族信託は、委託者(財産を信託する人)に判断能力がある間に契約を結ぶ必要があります。判断能力を喪失した後では、新たに家族信託を設定することはできません。したがって、早めの検討が重要になります。
家族信託で希望が叶えられるかを確認する
家族信託は万能な制度ではありません。任意後見制度や遺言との併用等も検討し、家族の状況に最適な方法を選ぶことが重要です。
家族に情報共有をする
家族信託の内容について、家族間でしっかりと情報共有しておくことが重要です。特に、対象とする財産の種類や税金に関すること、受託者に任せる信託事務の内容などを明確にしておきましょう。
専門家に相談する
家族信託は組成から終了まで、長い期間受託者が財産管理を行うことになります。そのため、状況の変化に応じて柔軟な対応が可能な契約書を作成することが重要です。また、法務などの専門知識が必要であり、自分で手続きを進めようとしてトラブルになるケースもあるため、まずは専門家に相談することをおすすめします。
税金に注意する
家族信託は必ずしも節税対策にはなりません。むしろ、理解不足で余計な税金を支払うことになる可能性もあります。必要に応じて税務の専門家に相談し、適切な設計を行うことが重要です。
信託できない財産があることを理解する
金融商品の種類によっては信託財産にできない場合があります。事前に、取引している金融機関等に確認することが必要です。
遺留分に配慮する
家族信託には遺言機能があります。そのため、承継内容を決定する際には、法定相続人の遺留分に配慮が必要です。
まとめ
家族信託は、資産凍結の回避や相続対策として有効な手段ですが、主に下記に記載の部分に費用が必要です。
- 契約に関する費用
- 登記に関する費用
- 信託契約締結後にかかる費用
費用の相場は50万~100万円程度ですが、信託財産の規模や内容によって大きく変動する可能性があります。
また、家族信託を失敗なく活用するためには、以下の点に注意しましょう:
- 早めの対策を行う
- 家族信託の必要性を十分に検討する
- 家族間で情報を共有する
- 専門家に相談する
- 税金に注意する
- 信託できない財産があることを理解する
- 遺留分に配慮する
家族信託は、適切に活用すれば大変有効な財産管理・承継の手段となります。しかし、その複雑さゆえに、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることが重要です。自分の状況に最適な方法を選び、安心して将来に備えられるよう、十分な準備と検討を行いましょう。
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