株価下落の東証グロース株~買い好機の銘柄は?

株価下落の東証グロース株~買い好機の銘柄は?

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2023/03/22

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不安定な展開が続く

3/14(火)~3/20(月)の東京株式市場では、日経平均株価が0.9%、東証グロース市場指数が0.2%それぞれ下落しました。後者は3/9(木)まで6営業日続伸した後、3/14(火)までは3営業日続落となり4.9%下落しました。3/15(水)~3/20(月)は一進一退となり、結果的にほぼ横ばいとなりました。

米国では3/9(木)以降、金融機関の経営不安・破綻に関するニュースが続き、株価が大きく下落し、それが日本にも波及しました。3/12(日)にシリコンバレー銀行の預金が全額保護されることが発表されたにもかかわらず、3/13(月)~3/14(火)と「余震」が続きましたが、それ以降は少し落ち着きを取り戻しています。

欧州では、クレディ・スイスの経営不安が再燃しましたが、同じスイスのUBSと合併することで不安の解消が計られています。ただ、UBSの「救済」過程で、AT1債(金融機関が発行する永久劣後債)を無価値にするとのプランが表明され、金融不安が続いていることを印象付けました。このこともあってか、3/20(月)は日経平均株価、東証グロース市場指数ともに急反落となっています。

東証グロース市場の銘柄は、おもに旧東証マザーズ市場と旧ジャスダックグロース市場の銘柄から構成され、基本的には中小型株の集まりです。大型株も多く含まれるTOPIXグロース銘柄とは性質がやや異なると考えられます。このため、金融不安がもたらす金利低下は追い風でも、リスクオフ的な空気が蔓延し、市場のボラティリティが高まることは逆風であるとみられます。このため、東証グロース市場が本格的に反発に転じるには、金融不安の後退が必要であるとみられます。

3/14(火)~3/20(月)の東証グロース市場時価総額上位銘柄では、VTuberのマネジメントを行うANYCOLOR(5032)の上昇が目立ちました。3/15(水)に今期業績予想の上方修正、および東証プライム市場への指定替えを申請したと発表し、3/16(木)と3/17(金)の2営業日で35.6%も上昇しました。一方、東証グロース市場の時価総額トップであるビジョナル(4194)は下げが目立ちました。3/16(木)に発表された今年度上半期の業績について、上半期累計の営業利益は58億円(前年同期比42%増)と大幅増益になりました。しかし、第1四半期(22/8~10期)の増益率46%に対し、第2四半期(22/11~23/1期)は同36%にとどまったうえ、市場予想を下回り、増益ペースの減速感が強まりました。

時価総額100億円超の幅広い銘柄の中では、ウェブマーケティング支援のマクビープラネット(7095)が上昇率トップとなりました。3/16(木)に今年度第3四半期の決算を発表するとともに、通期業績の上方修正を発表し、好感されました。値上がり率第2位は上記のANYCOLOR(5032)がランクインしました。

なお、3/20(月)・3/21(火)のNYダウは累計で700ドル弱上昇し、3/22(水)の東京株式市場は全般的に買い先行となっています。イエレン米財務長官が預金の全額保護を、今回破綻した銀行以外にも広げる可能性を示唆したこと、ECB(欧州中銀)が金融機関破綻の際は株式で損失吸収後にAT1債を処理する方針を示したこと等、金融不安後退につながる報道が続きました。

図表1 日経平均株価と東証グロース市場指数の推移

図表2 主な東証グロース市場指数構成銘柄の値動き

図表3 3/14(火)~20(月)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

株価下落の東証グロース株~買い好機の銘柄は?

東京株式市場が下落局面となっています。日経平均株価はバリュー株優位の物色から3/9(木)には28,734円の年初来高値(取引時間中)を付けましたが、3/20(月)まで6.2%下げています。これに対し、東証グロース市場指数は2/9(木)に年初来高値(同)を付けた後、3/20(月)までに6.7%下落しています。

やや東証グロース市場の方が下げが厳しくなりました。2/2(木)から3/2(木)まで、米国10年国債利回りが3.39%→4.06%と急上昇し、相対的にグロース株が不利な投資環境になったことが響きました。3/8(水)以降は欧米の金融不安を背景に、金利が低下に転じましたが、金利低下に強いはずのグロース株の上昇にはつながりませんでした。財務面での体力が大型株に比べて乏しい中小型銘柄にとり、金融危機は不向きな投資環境といえるでしょう。

ただ、欧米の金融危機は、世界的に逆金融相場から金融相場へシフトするトリガー(引き金)になったかもしれません。米国政策金利の最終到達水準(ターミナルレート)が切り下がり、同金利が低下に転じるタイミングが接近する可能性も出てきました。次に相場が立ち上がる時はグロース株主導となる可能性もありそうです。

今回の「新興株ウィークリー」では、大きく下げた東証グロース株について、買い好機になっている銘柄を発掘すべく、スクリーニングを行なってみました。基本的には、業績拡大が続いているものの、市場のリスク許容度の低下等を背景に大きく下落した銘柄をあぶり出すことが狙いです。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証グロース市場に上場
(2)時価総額100億円超1,000億円未満
(3)今期会社予想予想営業利益が10%超の増益予想
(4)直近四半期累計営業増益率が(3)の予想営業利益率を超えていること
   ※直近決算が本決算の場合は前期(通期)営業増益率を直近四半期累計営業増益率とします
   ※直近四半期営業利益と比較する前年同期の数字がない場合は、この分析を除外します
(5)過去20営業日(3/17時点)の1営業日当たり平均出来高が2万株超
(6)信用規制が実施されていないこと

図表4の銘柄は上記(1)~(6)の条件をすべて満たし、東証グロース市場が年初来高値を付けた2/9(木)以降、3/20(月)までの株価下落率が大きい順に並べたこのです。

株価下落率が大きくなってはいますが、(3)および(4)の条件を満たしているため、大幅営業増益が見込め、かつ業績予想下方修正のリスクも小さめとみられるため、反発局面での上昇率は大きくなると期待されます。

図表4 業績拡大を見込みながらも株価が大きく下落した東証グロース市場銘柄

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名  株価(3/20) 株価騰落率(2/9比) 今期会社予想営業増益率 四半期営業増益率
7794 7794 7794 7794 イーディーピー 12,020 -59.1% 138.6% 172.7%
9563 9563 9563 9563 Atlas Technologies 1,483 -35.0% 18.3% 32.8%
9246 9246 9246 9246 プロジェクトカンパニー 4,765 -30.1% 32.5% -
2987 2987 2987 2987 タスキ 1,023 -27.1% 32.4% -
5136 5136 5136 5136 tripla 2,010 -26.1% 204.8% -
9218 9218 9218 9218 メンタルヘルステクノロジーズ 1,117 -23.3% 35.2% 167.4%
7373 7373 7373 7373 アイドマ・ホールディングス 3,960 -19.8% 23.8% 83.4%
3991 3991 3991 3991 ウォンテッドリー 1,527 -19.2% 23.8% 34.3%
9556 9556 9556 9556 INTLOOP 6,490 -17.8% 50.4% -
9272 9272 9272 9272 ブティックス 3,470 -15.4% 19.3% 55.9%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとに、SBI証券が作成。
  • ※株価、時価総額は3/20時点。20日間平均出来高は3/17まで20営業日の平均出来高。



以下、図表4に掲載した銘柄の一部について、コメントします。

tripla(5136)~ 決算発表後の株価急落は「過剰反応」の可能性

★日足チャート(3ヵ月)

  • ※データは2023/3/22(日足) 10:45時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■宿泊業のDXを支援

宿泊業のDX(ITによる業務・ビジネスモデル等の改善)を支援。(1)triplaBook(公式サイト予約システム:前期売上構成比54.5%)、(2)triplaBot(AIで問い合わせに対応:同42.8%)等が主力製品です。
このうち、(1)については、4クリック、3つの顧客情報入力で予約につなげることができ、予約成立率を引き上げられるのがメリットです。(2)は、顧客からの問い合わせにAI(人工知能)で対応する仕組みで、自社開発のAIが自然な言語でやりとりを処理し、問い合わせの95%に対応(残りはオペレーター対応)しています。機械学習機能を備え、日・英・中簡・中繁・韓の5言語に対応しています。
同社は2015年4月の設立の若い企業です。経営陣はみな、様々なIT企業を経由して現在に至っており、従業員(22年9月末・正社員数は71名)も世界15か国から集まっているなど、多様性の高い企業文化が強みとみられます。


■第1四半期の実態は「好調維持」

売上高(営業収支)は、業績数値が確認できる2017年10月期をスタートとし、次年度以降5期連続で増加し、2022年10月期まで5期の増収率は単純平均で46%弱となっています。利益面では、営業利益が2020年10月期3.1億円の赤字、2021年10月期1.3億円の赤字から2022年10月には0.8億円の利益へと黒字転換しました。

これまで顧客が「コロナ2019」の影響を受けていたことは確かでしょう。今後は内外からの旅行需要の回復で、業績は拡大しやすくなるとみられます。

会社側は2023年10月期の売上高は11.7億円(前期比43.7%増)、営業利益は2.55億円と前期から約3倍になりそうです。営業損益が黒字転換した直後であり、利益率も大きく拡大が予想されます。
3/13(月)に発表された第1四半期売上高は2.63億円、営業利益は0.54億円でした。前年同期は四半期決算発表前で、決算短信上は「比較なし」となります。しかし、同時に発表された決算説明資料の参考数値では、売上高が前年同期比49.4%増、営業利益は3.9倍と計算され、ともに「計画を大きく超過」と記載されています。

通期会社予想営業利益に対する進捗率は、第1四半期の段階で21.2%にとどまり、このことが、株価急落につながった可能性もあります。しかし、すべての四半期が、利益の出やすさで等しい訳ではなく、あくまでも進捗率は参考値です。事実、前年同期の第1四半期営業利益進捗率は16.5%でした。今期は、進捗率も大きく改善していることになります。

ブティックス(9272)~介護業界向けにM&A仲介、商談展示会等を展開

★日足チャート(3ヵ月)

  • ※データは2023/3/22(日足) 10:45 時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★通期業績推移

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■介護業界に特化。M&A仲介や展示会開催を行う

介護・福祉業界に特化した企業です。
BtoB向けの展示会を開催する商談型展示会事業(前期売上構成比37%)と、M&A仲介事業(同63%)を2本柱として展開しています。

注力事業として位置付けられているM&A仲介事業では、長年介護・福祉業界に携わっていたことから、業界特有のニーズや豊富な買い手を有しています。そのため、マッチング精度が高く、案件化から成約までの平均期間は3.5ヵ月と非常に短いのが強みです。

また、当社はM&Aの“回転寿司モデル”を採用している点も強みの1つです。多くのM&A仲介業者は譲渡対価数億円~数十億円規模の大型案件を取り扱っています。対して、同社は譲渡対価数百万~1億円程度の中小型案件をメイン顧客とし、多くの数のM&Aを効率よく成約する「回転寿司モデル」を標榜しています。さらに、自社開発の厳格なM&A工程管理システムを用いることで、案件ごとの工程管理の一元化・定形化が可能です。そのため、コンサルタントの大量採用時にも案件進捗の確実性とスピード性が確保でき、業界最安値の手数料体系の実現が可能になっています。


■決算発表後の急落から反転

業績は順調に拡大中で、6期連続となる増益を達成。今期(23.3期)も更新する見通し(会社予想)です。M&A仲介業での好調のみならず、商談型展示会事業でもコロナ2019の行動規制緩和が寄与しています。

同社は、更なる成長のために他業種への本格参入を中計に掲げています。本年2/1(水)には新卒採用市場で活躍する株式会社リアライブの株式取得(子会社化)を発表しています。

2/14(火)の今期第3Q(10-12月)決算発表通過後、株価は急落しました。採用費の高騰や新分野への展開コストが先行し、3ヵ月単体で減益となったことが嫌気された模様です。

株価は、同決算は発表直後は大幅安となりましたが、業績の進捗率やコストが会社予想の想定内であったことから見直し買いが入り、半値戻し水準まで回復しています。

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