SVB破綻で混沌とする株式市場!米金融政策が示す次の一手は?

SVB破綻で混沌とする株式市場!米金融政策が示す次の一手は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/03/14

米銀行が3行破綻!日本の金融株にも売りが広がる

3月第2週(3/6~10)の日経平均は、前週末比216円50銭高(+0.8%)と週足ベースで続伸。

低PBRの割安株や、高配当銘柄が選好されました。東証が「PBR1倍割れ」企業に、資本効率の改善要請を行ったことや、日本では3月決算の企業が多数であることが背景にあります。週半ばまでは堅調に推移しましたが、終盤では米銀行の健全性に関する懸念が広がり、弱含みで終えました。

同期間の米国市場は、NYダウが▲4.4%、ナスダックが▲4.7%と東京市場を大きくアンダーパフォームしました。週前半はFRB議長のタカ派発言などを受け、FRBによる金融引締め政策が加速するのではという懸念が株価を押し下げた形です。後半は米銀行に対する健全性への不安が生じたことから市場心理が悪化。前半とは逆に、FRBの金融引締めに対する加速観測は後退したものの、不安感からのリスクオフムードが勝ったもようです。

米銀行に対する懸念では、おもに暗号資産企業に銀行サービスを行うシルバーゲート・キャピタルが経営難から任意清算計画を、新興企業向けに融資を行うシリコンバレー銀行(SVB)が損失補填のための増資を行うと週内にそれぞれ発表。その後、SVBは3/10(金)、シルバーゲート・キャピタルは3/12(日)に破綻となりました。

日本にも、米国の銀行破綻の影響は波及しています。日経平均株価採用銘柄の下落率上位(3/6~13、図表8)では、10銘柄のうち、7銘柄が金融関係でした。他には、6位のソフトバンクグループ(9984)は米国の新興企業へ積極的に投資を行っていることが嫌気された形です。

3月第3週(3/13~17)初日となる3/13(月)の日経平均は、米銀行の破綻に関する懸念が波及し、下落スタートになりました。

ただ、SVB破綻に関しては、現地時間3/12(日)、米財務省と米連邦準備理事会(FRB)、米連邦預金保険公社(FDIC)が共同声明で、一部の債権者を除いた預金の全額保護を発表しています。しかし、同日にシグネチャー バンクの事業停止も伝わり、米国の銀行は週内で合計3行が破綻しました。東京株式市場は、3/14(火)も大きく売りが先行する形で取引を開始しました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(3/6~13)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(3/6~13)

SVB破綻で混沌とする株式市場!米金融政策が示す次の一手は?

3/10(金)、米カリフォルニア州を拠点にスタートアップ企業向け融資を主力とするシリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻しました。総資産2,090億ドルと全米16番目の大きさであるSVBの経営破綻は、銀行破綻としてはワシントン・ミューチュアル(2008年)以来の規模となりました。SVBは8日に保有債券の売却に伴う損失計上、および増資計画による再建策を発表しましたが、預金者による資金の引き上げが大きくなったこともあって、わずか2日で破綻に追い込まれました。また、SVB以外にも、暗号通貨関連企業との取引がメインのシルバーゲート銀行(8日)やシグネチャー銀行(13日)も事実上の破綻に追い込まれるなど銀行の破綻が相次ぎました。

米銀行の相次ぐ破綻に大きく影響しているのが米国の金融引き締めと言われています。利上げによりSVBの取引先となるスタートアップ企業は、資金調達に苦戦するようになりました。その一方でSVBは多くの資金を米国債や住宅ローン担保証券(MBS)で運用していたのですが、金利上昇による単価下落で含み損を抱えていました。そこに預金口座から資金を引き上げる動きに対応するため、米国債やMBSを余儀なく売却したことで、多額の損失が露わとなりました。

一連の経営破綻が利上げの副作用といっても過言ではないだけに、市場では更に倒産する企業が出てくることが懸念されています。金融市場の動きを見ると、株式市場において影響を受けているのが銀行株です。S&P500の銀行株指数は3/8(水)から3/13(月)の4営業日で14.3%下落。また、日本の銀行株指数も連れ安しており、3/10(金)と3/13(月)の2営業日で9.2%下落しました。米国債市場でも2月上旬以降、堅調な経済指標を手掛かりに上昇基調にあった2年国債や10年国債の利回りが急低下へ転じました。

図表9 日米銀行株指数と米国金利

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


こうした状況下で注目されるのが金融政策への影響です。米国では3/21(火)、3/22(水)に連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。一連の経営破綻の発生前である3/8(水)時点で、市場は同FOMCでの利上げをほぼ織り込んでおり、中には0.50%と、1月会合から利上げペースが再加速するとの見方もありました。しかし、SVBの破綻後はこうした見方が一転し、直近3/13(月)時点では、次回FOMCでの利上げを織り込む動きはほぼ皆無となりました。しかも、年後半には利下げへ転じるという見方が復活しており、市場ではFRBがハト派へ転じるという見方を急激に織り込みにいっています。

もし、次回FOMCで利上げが敢行されるようであれば、金利低下を織り込んでいた市場の動きが揺り戻されることになるでしょう。金利上昇に対する懸念と、金融システム不安のダブルパンチにより、市場は短期的にリスク回避の動きが強まる可能性があります。逆に市場の見方に沿う格好で利上げ見送りとなれば、インフレ対応の遅れが意識される可能性がありますが、短期的には金利低下を促すとともに株式市場にとってプラスとなると考えられます。いずれにせよ、FOMCで示される次の一手が、株式市場を大きく動かすものと考えられます。

市場ではFRBのハト派化が予想されていますが、ここで注意しなければならないのは、現状、米国はFOMCの政策メンバーが公の場で金融政策に関する発言が禁じられたブラックアウト期間にあることです。つまり、この件に関して金融当局者からの見解が示されておらず、前述の市場の動きは思惑のみで動いているということになります。一方、エコノミストの見解に目を向けると、今回の一件で利上げの可能性は吹き飛んだとの見解もあれば、逆に金融システムの問題とインフレ制御の問題は切り離すべきとの意見も聞かれます。実は、米金融政策の方向性について、全く予断を許さない状況と言えるでしょう。

こうした状況の中、(グローバルの)金融政策の動きとして参考になるのは、3/16(木)に開催されるECB理事会ではないでしょうか。SVB破綻後、英国や独国など欧州主要国では自国の金融システムへの影響を精査する動きが顕著になっています。今回のECB理事会において、市場では0.50%pt(3.00%⇒3.50%)の利上げが予想されています。SVB破綻を受けて政策金利の動向や金融システムに対してどのような見解が示されるかは、来週のFOMCを占う上でも大きなヒントになると考えられます。

図表10 市場が見込むFFレート見通し

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

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